Fashion. Beauty. Business.

TOPICS

必ずしもネガティブではない“撤退”

 確かにヘアケアのイメージが強い「ロレアル パリ」ですが、それでもメイクアップ事業が撤退とは、驚きでした。屈指のグローバルビューティ企業でも、このコロナ禍で日本からの撤退が余儀なくされるのかと思い、思わずビューティの担当者に「大変だね」と声をかけました。

 しかし、もっと大変な企業はたくさんあるようで、「むしろ早めの決断で、しっかりしていると思いました」と。もちろん事業がうまくいかなかったことには変わりありませんが、こう聞くと同じ記事でも印象がガラリと変わりますね。選択と集中。強みに集中するニュースはまだまだ続きそうです。

 

「WWDJAPAN」副編集長
小田島 千春
NEWS 01

「ロレアル パリ」のメイクと「エッシー」が日本撤退

 日本ロレアルは「ロレアル パリ(L'OREAL PARIS)」のメイクアップ事業およびネイルブランド「エッシー(ESSIE)」の日本撤退を発表した。年内に国内の販売を終了する。なお、「ロレアル パリ」のヘアケア・ヘアカラー事業は継続する。新型コロナウイルスの影響でメイクアップの需要が停滞する中での決断だ。

 同社は「2020 年、日本を含め世界中が新型コロナウイルス感染拡大という予期せぬ危機的状況に直面し、人々の日常生活や価値観、生活様式など多くの面で変化を余儀なくされ、消費者の購買行動も大きく様変わりした。そのような状況下でも、『ロレアル パリ』のヘアケア・ヘアカラーカテゴリ ーを成長軌道に乗せることができた。しかし、このような市場環境や消費トレンドに直面し、各ブランドの持続的成長をより確実なものにするためには、ポートフォリオを再構築し、限られた経営資源をより一層集中させていくことが必要であると判断するに至った」とコメントしている。

 「ロレアル パリ」は1969年に日本上陸し、50年以上日本で展開をしてきた。一方「エッシー」は2014年に日本での販売を開始。両ブランドともにドラッグストアやバラエティーショップで展開し、欧米のメイクアップブランドのトレンドをけん引してきた。しかし新型コロナウイルスに加え、最近の韓国・中国メイクの人気による影響も大きく受けた。

トップページに戻る
NEWS 02

ベルリン発2大ファッション&カルチャーメディアが確立する独自のビジネスモデル

有料会員限定記事

 ドイツの首都ベルリンは“ファッションの主要都市”とは言えないが、ストリートやクラブカルチャーをベースに独自のスタイルを確立している。そんな街の背景から生まれたファッション&カルチャーメディアを代表するのが、雑誌だけでなくアパレルも手掛ける「032c」と、オンライン媒体を中心に感度の高い若者にコミットする「ハイスノバイエティ(HIGHSNOBIETY)」だ。広告収入だけに依存しない多角的なビジネスモデルと世界を意識した英語コンテンツで成功した2媒体の編集長に、それぞれの考え方や新たな取り組みを聞いた。
 

雑誌とファッションブランドを軸に世界観を表現する「032c」

 2000年に創刊した「032c」は、ギャラリーのようなプロジェクトスペースの活動の一環として、DIY的アプローチで制作されたファンジンからスタート。20年間でファッション&メディアのプラットフォームへと進化した。「私にとって、『032c』が20歳になって異なるものへと変化し商業的に成功したことは、奇跡のようだ。正直なところ、当初はそんな意向はなかったからね」と、同誌を立ち上げたヨルグ・コッホ(Joerg Koch)編集長兼クリエイティブ・ディレクターは打ち明ける。そして成功の理由を、「当時、私たちはお金がなかったので、資金を投入せずに時間を費やした。2、3年の間に雑誌は発展し、独自のアイデンティティーを見つけ、それが雑誌の強さの一部になったのだと思う。今ではベルリンを含むヨーロッパの都市の生活費が高くなりすぎて、このようなことはできないだろう。しかし、1990年代後半や2000年代初めのベルリンでは、あまりお金をかけずに実現することができた」と説明する。

 “自由、探究、創造性のためのマニュアル(Manual for Freedom, Research & Creativity)”をコンセプトに掲げて年2回発行している同誌の特徴は、取り扱うジャンルやコンテンツのミックス感。ラグジュアリーやデザイナーズからストリートまでのファッションや、音楽、アート、エンターテインメントといったカルチャー、建築、時には政治までもが、1冊の中に共存する。例えば、昨年12月に発売された20周年を祝う最新号では、ベルリンを拠点にするライターやリサーチャー、アートディレクターなどから成るテック&メディア・コレクティブのニューモデルズ(New Models)が「032c」の軌跡をテキストとビジュアルでまとめたほか、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のメンズと「オフ-ホワイト ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」を手掛けるヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が過去20年分の誌面から黒人クリエイターの表現をテーマにした作品を制作。ダニエル・リー(Daniel Lee)「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」クリエイティブ・ディレクターや、マシュー・M・ウィリアムズ(Matthew M. Williams)「ジバンシィ(GIVENCHY)」クリエイティブ・ディレクター、画家のデイヴィッド・ホックニー(David Hockney)、ランド・アートを代表する芸術家のマイケル・ハイザー(Michael Heizer)、撮影監督のロブ・ハーディ(Rob Hardy)、ラッパーのガンナ(Gunna)、俳優のジェレミー・O・ハリス(Jeremy O. Harris)やアリス・パガーニ(Alice Pagani)、DJスクリュー(DJ Screw)らが、フィーチャーされている。

この続きを読むには…
残り3153⽂字, 画像12枚
この記事は、有料会員限定記事です。
紙版を定期購読中の方も閲覧することができます。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
トップページに戻る

最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。