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ファッションの新基準 “循環型ファッション”のためのキーアクション12

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 ファッションデザインの基準が変わりつつある。形や柄、色、トレンド性などをポイントにしたプロダクトデザインから、プロダクトのデザインはもちろん、再利用や再生産を前提とした、さらに言うとその先の廃棄までを想定した仕組みを含めたデザインが求められるようになっている。キーワードは“循環”だ。(この記事はWWDジャパン2021年1月18日号からの抜粋です)

 では、“循環型ファッション”実現のための具体的なアクションとはどういうものか。12のキーアクションを紹介したい。それぞれが相互関係にあり、独立したアクションではないが、モノ作りのガイドラインにしてもらえれば幸いだ。そしてもう一つ忘れてはならないのはプロダクト自体が魅力的であるかどうかだ。


生産工程の廃棄ゼロの設計思想

 衣類の生産工程で廃棄される繊維の量は、利用される量の約15%といわれている。生産工程での廃棄量をいかに削減するかがポイントだ。廃棄量が少ないパターンメーキング、一着丸ごと立体的に編み上げるホールガーメントの活用、製造工程で出る廃棄物の再利用に加え、サンプル制作でも廃棄を減らすためにデジタルツールや3Dプリンタを活用するなど各工程でアプローチはさまざまある。


循環する素材、低負荷の素材

 地球の資源をこれ以上消耗しないために注目されているのが、リサイクル素材だ。注目は服から服の循環を可能にするリサイクル技術。衣服をはじめとした廃棄物を原料まで戻すケミカルリサイクル技術は、ポリエステルとナイロンでは確立されており、素材の品質を落とさずにリサイクルするのが難しいとされていたコットン(セルロース)でも、開発が進んでいる。漁網や食料の生産工程での廃棄物を利用した素材開発もさかんだ。またリサイクル素材を使わない場合は、環境への負荷が低い素材を選ぶことも重要だ。


生製品寿命が長い、汎用性が高い

 大前提として、製品は汎用性が高く長持ちであるべきだ。「今シーズンは〇〇」といった提案よりも、シーズンレスでタイムレス、堅牢度が高い生地を用いた耐久性のあるデザインが求められる。「長く着られるものは退屈なデザイン」というわけではなく、制限が新たな創造性を生むことも忘れてはならない。さまざまな用途をかなえるアイテムにも注目だ。生産量の抑制はもちろん消費者が買う量も減らすことができる。「ステラ マッカートニー」は水着にも下着にもなる“ステラウエア”を発表した。


修理しやすいデザイン、リペアサービスの提供

 「壊れたら捨てる」しか選択肢がないモノ作りは許されない時代がそこまで来ている。欧米では「修理する権利」という考え方が進んでおり、特に電子製品でその動きが加速している。ファッション製品においても生産側には修理しやすいデザインや設計が求められる。「パタゴニア」は修理方法を公開し、リペアキットを販売。リペアサービスにも力を入れる。


適量生産

 リサイクル素材を用いて生産工程で廃棄ゼロを実現しても、作り過ぎてしまえばそれはサステナブルとは言えない。早急に“売り切る”ことを前提にしたMDの見直しが求められる。AIを用いた需要予測で計画生産の精度を高めている企業も多い。 “売り逃がさない”ために多めに作り、売上高増を求める時代はもう終わり。粗利経営への脱皮が必須だ。スタッフ全員が「少し少なかったかな?」「在庫がなくて不安」に慣れることも大切だ。


リサイクル前提のデザイン

 衣類はさまざまなパーツで構成されており、その分用いる素材も多種多様。再利用しやすい素材選びと分解しやすいデザインが求められ始めている。分解のしやすさはもちろん、どのパーツに何の素材を用いていて、どのようにリサイクルするかを明記することを求められる日も近いかもしれない。リサイクルを前提とした最先端のデザインはモノマテリアル(単一素材)での生産だ。ケミカルリサイクルなどの新技術も後押しする。


回収の仕組みを持つ

 作る責任、売る責任を全うするなら、自社で売った製品を引き取る仕組みを持つことも念頭に置きたい。再利用、再生産を実現するためには、回収が必須で、サプライヤーと新たな仕組みを作り協働することも重要になる。デジタル化が進み店頭の役割を再考することが増えているが、回収拠点として、リペアサービスを行う場として活用するなど、新たなサービス提供の場として期待できる。


リセール

 循環型ファッションを目指す上で重要なのは、その循環スピードをスローにして、製品自体の寿命を長くすること。そのアプローチの一つが再販だ。売ったら売りっ放しではなく、買った商品を売りたいと考える顧客にリセール企業を紹介するサービスを始めるブランドが増えている。また、余剰在庫解消のために、他社の商品を仕入れて販売するオフプライスストアの運営に乗り出す企業も増えている。


生産工程における有害物質物の未使用

 生産工程で有害物質物を使用しないという動きも加速している。特に撥水加工などではこれまで多くの有害物質が用いられてきたが、その代替技術の開発も進む。また、リサイクルするなら毒性物質を使っていないことが重要。従業員の安全、製品の安全、環境負荷ゼロを目標に、有害物質環境排出ゼロを目指す協定ZDHC(Zero Discharge of Hazardous Chemicals)にサインする企業も多い。


透明性とトレーサビリティー

 どんな原料を用いてどこで誰がどのように作ったかなど生産工程改善への取り組みを消費者に伝えるためには、透明性とトレーサビリティー(追跡可能性)が非常に重要になる。環境や人に配慮して作られていたかを証明するため、さまざまな国際基準が登場している。その認証機関は、改善するためのガイドライン作りの手助けになるので、第三者に頼ることで、やるべきことが見えてくることも多い。


省エネルギーへの取り組み

 生産工程で用いるエネルギー(や水)の使用量削減も重要だ。そのエネルギーも太陽光や風力、水力発電といった再生可能エネルギーを用いることが推奨されている。事業で使用する電力の再生可能エネルギー100%化にコミットするイニシアチブ“RE100(100% Renewable Electricity)”へ参加する企業も増えている。また、グローバル化したサプライチェーンをローカルに戻すなど、製造工程でのモノの移動を最小限に抑えることもポイントだ。


共感を得られるビジョン、ストーリー

 循環型ファッションの実現には、消費者を巻き込んだ仕組み作りが必須になる。つまり、企業やブランドのビジョンに共感を得られるストーリー性が大切になる。最も重要なのはわかりやすさと誠実さ。マーケティング的に「サステナビリティはトレンドだからリサイクル素材を用いてサステナブルという単語を使おう」などという短絡的なアプローチでは生活者に見抜かれてしまうので、丁寧なビジョン作りが大切だ。

PICTOGRAM : TOMOHITO SAITO

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