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秋の大型コラボネタが相次いでおります

クレア・ワイト・ケラーと組んでウィメンズの新ライン「ユニクロ:シー」を今秋始めるユニクロですが、「マメ クロゴウチ」と2021年春夏から続けてきたコラボは、今秋をもって終了すると発表しました。始まるものあれば終わるものあり。SNSには「今回で終わりだなんて泣きそう」「買い漁っていたから終了するのは困る」といったファンの声があふれています。

既にわれわれが情報をキャッチしているものだけでも、今後も複数社から話題のコラボが発表されます。各社、コロナ期間に仕込んでいたネタの発表が目白押しで、編集部はついていくのに必死。ただし、注目コラボで瞬間風速的に話題になって、その後再び凪が訪れるというのでは意味がない。話題性だけに偏重せず、ブランドにとって長期的に血肉になるような意義あるコラボや取り組みを期待しております。

「WWDJAPAN」編集委員
五十君 花実
NEWS 01

さよなら「ユニクロ×マメ クロゴウチ」 最終コレクションの見どころはここだ!

ユニクロと、黒河内真衣子が手掛ける「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのコラボレーションコレクションが、9月1日(一部は10月下旬)に発売する2023年秋冬物で終了すると発表されました。21年6月発売のファーストシーズンから数えて今回が6回目。昨年、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長も「当社としてはこの協業をずっと続けたい」と話していただけに、「ユニクロ ユー」や「JWアンダーソン」のユニクロコラボのようにずっと続くのだろうと油断していました。終了の報に驚き、悲しんでいる人は私以外にも多いはず。というわけで、最終コレクションをいち早くショールームで取材してきました。

「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ(UNIQLO AND MAME KUROGOUCHI以下、ユニマメ)」は、“下着と洋服の境界線を超えるインナーウエアコレクション”というコンセプトをスタート時から貫いています。実際、ファーストシーズンから常に販売してきたプランジブラ(2290円)やショーツ(790円)を、毎シーズン買い足してきたというファンの声は多いです。今季ももちろんインナーウエアが大充実。定番のプランジブラのほか、注目したいのが繊細なレース調メッシュ素材のインナーです。

メッシュ素材で、ブラやショーツに加えて、ファッション好きの間で最近人気が高まっているアイテムのボディースーツ(3990円)も企画。編み柄のパネル切り替えが女性の身体のラインをいっそう引き立てます。ボディースーツはハードルが高いという人には、セカンドスキン感覚のメッシュのハイネックトップス(2990円)や、メッシュのマキシドレス(3990円)が取り入れやすそうです。

ウール混“ヒートテック”のワッフル素材に注目

ユニクロの通常ラインでは使用していなかったシルク混“エアリズム”素材や、シルク混やウール混の“ヒートテック”素材の研究・開発を進め、いち早く商品化してきたのも、「ユニマメ」の特徴。今季も、糸から開発したウール混の“ヒートテック”素材をワッフル地に編み立てて、トップス(2990円)や裾リブのリラックスパンツ(2990円)に仕立てました。裏起毛になっており、温かさは“ヒートテック極暖”並みだといいます。

ワッフルのカットソーというと、どうしても軍モノ古着の無骨なイメージがつきまとうアイテム。でも、デコルテやうなじをきれいに見せるスクエアのネックラインと、ギャザーを寄せた袖口がぐっとエレガントな印象です。パンツも、ウエストのドローコードの端の始末に金具を使わず、糸を巻きつけて繊細に処理したり、コードを通すハトメをマットなタッチにしたりなど、こだわりのディテールをつめこみました。

ユニクロが強みとする“3Dニット”のアイテムにも、「ユニマメ」はファーストシーズンから取り組んでいました。今季は4型を企画。目玉は、アイレット模様がポイントのボリュームスリーブセーター(3990円)。デコルテの開きが大きいので、中にリブニットブラ(2990円)をレイヤードする着こなしを提案しています。ニットビスチェ(2990円)やスリットスカート(4990円)は、ユニクロ通常ラインの“スフレヤーン”のような起毛糸を使っており、ふんわりとしたタッチがポイントです。

引き続き今季も人気が出そうなレッグウエアは“ヒートテック”のタイツ(1990円)やタビ型つま先のソックス(590円)、ハイソックス(590円)の3型をラインアップ。“ヒートテック”タイツは通常ラインでも販売していますが、最も薄く編み立てているといい、肌の透け感が楽しめる仕様です。

実った稲穂や枯れ草を思わせるカラー

シーズンごとのカラーパレットも毎回詩的で、黒河内さんらしい美意識にあふれていました。ラストコレクションは実った稲穂や草原の枯れ草といった大自然をインスピレーション源にしたといい、ブラウンやベージュのグラデーションがキー。ビジュアルはスコットランドで撮り下ろしたそうです

「ユニマメ」のモノ作りは、シーズンごとにガラリと変えて瞬間的な新鮮さを狙うのではなく、肌に一番近いインナーを主体とするアイテムを女性が安心して買えるように、毎シーズン細かくアップデートを重ねていくという手法が印象的でした。終わってしまうのは悲しいですが、「マメ クロゴウチ」と「ユニクロ」それぞれの次なる展開に期待しましょう!

今までの「マメ クロゴウチ」コラボコレクションを振り返り
「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ」関連記事一覧

第1弾 2021年6月18日発売
ユニクロと「マメ クロゴウチ」がインナーウエアでコラボ 6月18日から全18型を販売

第2弾 2021年11月26日発売
「ユニクロ」×「マメ クロゴウチ」第2弾は11月26日発売 全9型を公開

第3弾 2022年4月29日発売
ユニクロ×「マメ クロゴウチ」第3弾が4月29日に発売 シルク混エアリズムや吸水ショーツに注目
これぞ理想のコラボ!ユニクロ×「マメ クロゴウチ」第3弾 細かなアップデートで磨かれたモノ作り
ユニクロと「マメ」のコラボ第3弾 ヒット請負人MDに聞くこだわりの商品開発

第4弾 2022年11月11日発売
注目の「マメ」コラボはシルクやウール混ヒートテックを開発 22年秋冬ユニクロ展示会から【後編】
ユニクロ×「マメ クロゴウチ」2022秋冬の新作が11月11日に発売 カーキを加えた全21アイテムを公開
ユニクロ×「マメ クロゴウチ」第4弾はウールやシルク混の“ヒートテック”新素材を開発

第5弾 2023年4月28日発売
ユニクロ×「マメ クロゴウチ」23年春夏物は4月28日発売 シアー素材がポイントの23型
「ユニクロ × マメ クロゴウチ」2023年春夏 宮本茉由がまとう透明感あるスタイル  
 
第6弾 2023年9月1日発売
「ユニクロ×マメ クロゴウチ」が23年秋冬で終了 最終コレクションを9月1日に発売
「ユニクロ × マメ クロゴウチ」最終章 モデル・ヨガインストラクターの池田莉子がリアルに役立つ肌見せコーデを提案!
9月1日発売「ユニクロ × マメ クロゴウチ」2023年秋冬コレクションをレビュー&アーカイブを振り返り クリエイター・KARENの注目アイテムは?

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NEWS 02

「ユニクロ:シー」のクレア・ワイト・ケラーは、“真面目なユニクロ”をどう変える?

ユニクロが、英国人デザイナーのクレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)と組んで立ち上げるウィメンズの新ライン「ユニクロ:シー(UNIQLO : C)」を、9月15日の発売に先駆けて報道関係者に公開しました。ユニクロはこの1年だけでも、「マルニ(MARNI)」や「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」などとコラボレーションしていますが、「ユニクロ:シー」ではコラボレーションという言葉を使っていない点に注目。“新しいプロジェクト”という位置づけで、専用のロゴも作成しています。公表されたクレアのコメントにあったのは、「ユニクロの新しいウィメンズラインを創る」という一文。数回で終わるコラボではなく、「+J」「ユニクロ ユー(UNIQLO U)」のような、長期的な取り組みになりそうな予感です。

具体的な商品の話に入る前に、クレア・ワイト・ケラーがどんな人かを振り返っておきましょう。クレアは直近では、「ジバンシィ(GIVENCHY)」のアーティスティック・ディレクターを務めていました(2018年春夏〜20-21年秋冬)。英国のヘンリー王子とメーガン妃の結婚式で、メーガン妃のウェディングドレスを担当したことが話題になりましたが、クレアのファッション業界でのキャリアとして、多くの人の印象に強く残っているのはやっぱり「クロエ(CHLOE)」を手掛けていた時期(12年春夏〜17-18年秋冬)だと思います。

ステラ・マッカートニーやフィービー・フィロ(現フィービー・ファイロ)といったスターデザイナーが「クロエ」を去った後、やや勢いが落ちていたブランドをクレアが復調させ、2010年代前半のウィメンズファッションの大きなムーブメント“エフォートレス(肩の力が抜けた)エレガンス”のリーダーブランドの一つとして注目を集めました。“エフォートレス”は、「ユニクロ:シー」でも使われているキーワードです。そして、単に話題になるだけでなく、しっかり売れていたというのもクレア時代の「クロエ」の特徴。パウダーパステルトーンのシフォンブラウスやコットンレースのドレスといったウエア類と共に、ラグジュアリービジネスに不可欠なバッグでも“ドリュー”や”フェイ“、“ベイリー”など、ヒットをいくつも生み出しました。クレアの起用について、ユニクロのPRも「彼女はクリエイティブの面だけでなく、MDなどビジネスのセンスも含めてバランスがいい」と話しています。

クレアが手掛けていたガーリーで自由で上品な「クロエ」は、日本人とも相性抜群。今も日本の消費者が求めている「クロエ」は、クレア時代のイメージのままのような気がします。そうした状況は日本に限ったものでもないようで、クレアの後任デザイナーと「クロエ」のマッチングは難航しています。クレアの退任後、既に2人のデザイナーがブランドを去ったことも書き加えておきます。

クレアらしさ全開のパステルトーン

さて、そんな魅力あふれるクリエイターのクレアが、あらゆる人に向けた“LifeWear”のユニクロと組むということで、どんなアウトプットになるのか期待は高まります。ショールームでデビューシーズンの全34型を目にしたとき、まず心をつかまれたのはそのカラーパレット。パウダートーンのイエローやピンクを主役に、チョコレートブラウン、グレー、ネイビーに広がる色合いは、まさにわれわれが「クレアのクリエイションと言えば!」で思い出すものです。個人的には、メインビジュアルにも使われているたまご色のような淡いイエローに、特に「これこれ!」と感じました。

ちなみに、こうしたカラートーンのインスピレーション源は、ロンドン東部のハックニーウィックというエリアなんだとか。古い建物と再開発とが融合し、そこを拠点にしている駆け出しのファッションブランドも多くて勢いのある街だそうです。こうしたインスピレーション源に、クレアのロンドンっ子精神が表れていますね。

もう一つ、クレアの強いロンドンスピリッツを感じさせるのがトレンチコートです。トレンチコートは「ユニクロ:シー」のデビューを飾る象徴として、非常に気合いを入れて作ったアイテムだそう。思い返せば、18年春夏のクレアの「ジバンシィ」のデビューショーでも、ファーストルックはトレンチコートでした。クレアの中で、自身の英国人のアイデンティティーを体現するアイテムがきっとトレンチコートなんでしょうね。

今のウィメンズマーケットでは、トレンチコートといえばドレープが流れるエアリーな素材使いであったり、背面をプリーツに切り替えたりしたデザインが主流です。でも、「ユニクロ:シー」のトレンチコートはかなりベーシックで端正な印象。生地はしっかりとしたコットンギャバジンツイルで、肩章やガンパッチも付いた古き良き英国紳士のたたずまい。裏地のチェック柄もトラディショナルです。そして何よりも驚きなのが、これが1万2900円だということ。ジル・サンダー氏による「+J」などは、正直通常のユニクロ価格より結構高かったですが、「ユニクロ:シー」は全商品が通常ラインと同じ価格帯といい、トレンチコートやウールのダブルフェースコート、中綿ロングコートの1万2900円がデビューシーズンの最高価格です。

“買い”はニットやアウター、雑貨類

プリーツをたっぷり寄せたシアーなシフォンドレス(5990円)やボリュームスリーブブラウス(3990円)、アシンメトリーなヘムラインが動きを生むプリーツスカート(5990円)など、どれもクレアらしさが詰まっていますが、ニットや機能性素材のアウターといったユニクロの得意領域と、クレアのクリエイティブが組み合わさったアイテムが「ユニクロ:シー」の真骨頂だと思います。ニットではふわふわのカシミヤ100%、コットンなどを混ぜた甘拠りのソフトタッチウール、しっかりとしたラムウールの3素材をそろえました。クレアは英国のロイヤル・カレッジ・オブ・アートでニットデザインを専攻しており、「クロエ」の前はニット主力の「プリングル オブ スコットランド(PRINGLE OF SCOTLAND)」でディレクターを務めていました。「ユニクロ:シー」のニットにも、そうしたクレアの強みが凝縮されています。

機能性素材のアウターでは、ユニクロの通常ラインでも使用している発熱機能性中綿“パフテック”のキルティングロングコート(1万2900円)やブルゾン(7990円)がイチオシ。ロングコートは内側からウエストを絞れば、よりフェミニンなシルエットに。また、ユニクロのアウターといえばフリースを思い浮かべる人も多いでしょうが、「ユニクロ:シー」では表地がくりくりとした巻き毛タッチのボアで、裏地がフリースになったロングコート(6990円)を企画。ダウンでは、切り替えパターンによって背中に丸みを持たせたノーカラージャケット(7990円)をラインアップしました。

小物雑貨も9型と豊富で、既に注目を集めているローファー(4990円)は見た目を裏切る軽さと、クッション搭載の足入れの滑らかさが特徴。ボアのバケットハット(2990円)やウールキャップ(2990円)も、カジュアルとエレガンスのいいとこ取りで売れそうです。ユニクロの通常ラインでヒット中の“ラウンドミニショルダーバッグ”は一回り大きいサイズにして、フェイクレザーでシックに仕上げました(2990円)。

目指すは“女心も解するユニクロ”

ユニクロはあらゆる人のための“LifeWear”というコンセプトを打ち出し、実際、世界中で老若男女に着られるようになりましたが、どちらかというと機能性素材を使ったファッションのイノベーターというイメージが強く、感性の部分で話題になることは少ない印象です。もちろん、機能性素材のアイテムを日常生活にも取り入れる“ゴープコア”などと呼ばれるスタイルは、年々市場を広げているのでそういった切り口は今後も「ユニクロ」にとってメシのタネであり続けるでしょうが、やはりウィメンズのマーケットだと、機能性では語りきれない感性の領域、「きれい」「すてき」「着ると気持ちがアガる」といった要素が無視できません。

昨年、「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ」についてユニクロを率いるファーストリテイリングの柳井正会長兼社長に話を聞いた際、「ユニクロの服は非常に真面目だが、フェミニンさや繊細さには欠けている」と話していたのが印象的です。そうした課題意識を持っているからこそ、それを得意としている外部のクリエイターと組むのだと柳井会長は話していましたが、「ユニクロ:シー」の狙いも、まさにそこなんだと思います。単発のコラボで瞬間的な売り上げを作るのではなく、クレアが強みとする洗練されたエフォートレスエレガンスを「ユニクロ:シー」を通して学んで、ユニクロの血肉にしていく。

実際、「+J」に取り組んだ後は、ユニクロの通常ラインのシャツなどのパターンもかなり洗練されたと感じましたし、クリストフ・ルメール率いる「ユニクロ ユー」の色使いやアイテム発想は、翌シーズン以降のユニクロの通常ラインに生かされていると感じることが多々あります。そうやって、外部クリエイターの懐を借りて自分たちのクリエイティブやマインドをアップデートし、世界一のファッションブランドへステップアップするというのがユニクロが目指すもの。“真面目で骨太なユニクロ”が、クレアの感性を学ぶことで“女心も分かるユニクロ”にステップアップできるのか、期待したいですね。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。