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モデルからデザイナーへ マリエが語る「私はファッションで生きていく」


 タレントやモデルとして活動するマリエが、自身の名を冠したブランド「パスカル マリエ デマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS)」を立ち上げた。現在、来季のニューヨーク・ファッション・ウイークでの発表を目指して準備を進めている。マリエは、タレントとしても活躍していた2011年にニューヨークのパーソンズ・スクール・オブ・デザイン(以下、パーソンズ)に留学した。ニューヨークのファッションシーンを肌で感じた彼女が、今再びニューヨークを目指す理由とは。“デザイナー”マリエを直撃した。


WWDジャパン(以下、WWD):タレントとしても活躍されていた頃だと思いますが、なぜ留学しようと思ったのですか?

マリエ:姉が2人いるんですが、姉の真似をしたくて、姉が読んでいる雑誌を読んでみたり、姉の服をこっそり着てみたり、小さい頃からファッションには興味がありました。父親にデザイナーになりたいと話したのが12歳の時なので、その頃からファッションで生きていきたいと考えていたのだと思います。大学でデザインを学びたいという思いも昔からありましたが、18歳の時に所属事務所から5年契約でバラエティーなどの芸能活動を真剣にやってみないかと言われました。そのときは「このオファーはもしかしたら今しかないかも知れない。だったらもしダメで5年後に大学に行っても遅くないんじゃないか」と思いました。なので、大学に行ったのは昔からの思いを叶えた感じです。


WWD:ニューヨークを選んだ理由は?

マリエ:アントワープ(アントワープ王立芸術アカデミー)やセント・マーチンズ(セント・マーチン美術大学)ももちろん調べて、足も運んでみましたが、芸能活動をさせていただいていた影響もあってか、エンターテインメントと通ずるファッションビジネスをやっているのがニューヨークだと感じたから。デザイン以外にも吸収できるモノがあるのではと思い、パーソンズを選びました。


WWD:留学してみてどうでしたか?

マリエ:留学当初は、ファッション・ウイークにも行けるのかなと思っていたんですが、実際には行きたいと言って簡単に行けるものではないし…。ただ本当に好きなモノに囲まれて、好きなコトを勉強できる環境はすごく幸せでした。緊張しながら出席した初めての授業で、教授が「みんな昨日のニュース見た? 『ドルチェ&ガッパーナ』があんなことになってこんなことになってるよ」と言っていて、「え?私の好きな情報に好きなだけ没頭していれば単位をくれるの?」って感じで。そのとき初めて勉強するってこういうことなんだと思いました。好きなモノに対して熱心になる気持ちは、大人も子供も変わらないんじゃないでしょうか。


WWD:卒業後、帰国するわけですが、ニューヨークに残ろうとは思わなかった?

マリエ:留学中に日に日にファンが離れていくことも感じていたのですが、それでもいつもメッセージをくれるファンがいて、その人たちに何かできないかなと思ったのがきっかけです。ファッションがその人のライフスタイルを動かせるパワーを持っていると思っていて、ファッションを見ればその人の好きな音楽や食べ物が分かるし、全てを反映しているじゃないですか。自分の生き方をファッションで投影できるならファッションでもっと日本の若い人たちにも素敵な生き方を提供できるのではと思いました。それに自分の知っている素敵な情報を誰かに教えてあげたいと思ったとき、自分にはファッションを介してしかないなと思ったことも大きいです。


WWD:仕事へ向き合うスタンスを教えてください。

マリエ:NHKワールドTVの「トウキョウ・ファッション・エクスプレス(TOKYO FASHION EXPRESS)」や「シーズンズ(SEASONS)」(ファッション、カルチャー、イベント、音楽、食をベースに週末の旬なトピックスを配信していくJ-WAVE3時間生放送のラジオ番組)もそうですが、企画書を見た時に「こんな楽しいことを本当に仕事としてやっていいんですか」っていうぐらいいつもテンションが上がります。自分のいいなと思うコトやモノをファンや自分の好きな人たちとシェアできたら、そんな素晴らしいお仕事はない。今、洋服作りにも本格的に取り組んでいますが、3つとも基本的なスタンス・軸は変わらないです。


WWD:ファッションブランドも本格始動しました。どのようなブランドですか?

マリエ:服作りで大切にしていることは自分が納得するまで、こだわって作ること。だからこそ、スポンサーを探してブランドをやるのではなく、自分で予算を立てて時間的な制約の無い中でプロダクトを作っています。それは私の服を着たいと思ってくれている人に最高なモノを届けたいから。サンプルが上がってきて、もうちょっとココを直したいんだけどお金がないからできないじゃなくて、時間の制約が無い分、お金ができたときにもう一度じっくり作り直そうとか。シーズンごとに服を作らず、納得するものを提供したい。夏までに約30型が完成する予定です。テレビやラジオの仕事と伝えたいことは一緒なので、全部楽しんでやっています。


WWD:コンセプトは?

マリエ:アルパカ100%のニットは、オーガニックで育ったアルパカの毛を使ったり、ファスナーもスイスのファスナーメーカー「riri」の最高級ラインのモノを採用しています。生地も自分で何度も洗濯して可能な限り色抜けの少ないものを選びました。どんなに素晴らしいモノを作っても劣化してゴミになるなら、できる限り良いゴミを作り出したいって思って。タグやラッピング袋などもコーンスターチでできた土に還るモノを使用しています。エシカルなプロダクトに賛同してくれる人が手に取ってくれたらうれしいです。


WWD:インスピレーションリソースは何ですか?

マリエ:普段は完全に自分の周りにいる人たち。周りの人たちに自分の服を着てもらいたいし、その人をかっこよくするならどんな服がいいかな、と考えるところから始まります。


WWD:服作りを始めてのエピソードは?

マリエ:まだまだ小さな会社なので、日本の生地屋さんの良い生地を使いたいと思っても一反だけの小売りはなかなかしてくれないのも現状。だから自分で電話して出向き、“偉い人出してください”って。それで一生懸命説明すると「そんなにうちの生地が使いたいのか。そんなに言ってくれるなら一反でもいいよ」って言ってくださったりして、そういったやり取りができることが本当にうれしいです。縫製工場に行った時も『俺たちの技術を使えるようになるまで頑張れよ』と、言ってくださいました。売り手として妥協していないからそういうことが言えるわけですよね。そんな職人さんたちを相手にするんだから自分も本気で挑戦しないとダメだと思いました。


WWD:今ニューヨーク・コレクションを目指していると。東京で活動するという選択肢もあったと思いますが、なぜニューヨークを選んだのですか?

マリエ:ニューヨークでは、ショーを11シーズンぐらい見ているのですが、やっぱりファッションをエンターテインメントやアートとして捉えているブランドに興奮してしまう自分がいます。以前、「アレキサンダー ワン」がブライアントパークで行ったセールを空中からドローンで撮影した映像は、会場の熱気が伝わってくるぐらいすごかった。私も全体をムーブメントとしてデザインできるようなデザイナーを目指しています。それに目標は「CFDA(アメリカファッション協議会)/ヴォーグファッション基金アワードを取ること」。そのためにはニューヨークで2年間活動しなければならないというルールもあって、予算などブランドの将来的なビジョンと自分の夢を逆算していると時間が足りないなと思うくらいです(笑)。ニューヨークのショールームも自分の足で回って探したいと思っています。


WWD:日本での販路は?

マリエ:今は東京やニューヨーク、世界のどこの都市も同じお店が並んでいて、同じモノが手に入るし、ネットでどこにいても買い物ができる時代だと思います。だったらそうではなくて、自分の服が着たいと言ってくれる人たちに自分の好きな場所を紹介して、自分の好きな場所を応援したいなとも思っています。だから東京には店舗は構えず、まずは仙台や福岡など地方で販売します。東京では店舗に縛られない販売方法を考えています。


WWD:NO FASHION,NO LIFEって感じですね。

マリエ:はい。今後もファッションをずっとやっていきたいです。今はファッションを通じてファンとも交流できているし、人生に余裕を持てるようになったのもファッションのお陰ですね。