
アイウエアブランドの「アーレム(AHLEM)」は10月10日、日本・アジア初の旗艦店、アーレム東京を東京・南青山にオープンした。
同ブランドは2014年、パリ生まれのデザイナー、アーレム・マナイ・プラット(Ahlem Manai-Platt)が設立した。フランスでハンドメイドするフレームは、オーガニックなフォルムとエレガントな幾何学性が特徴だ。旗艦店はロサンゼルス、ベニスビーチ、サンフランシスコ、パリ、ニューヨーク(2店舗)に構え、今年後半にはパリ2店舗目をオー・マレ地区に開く予定だ。
長年日本各地を旅してきたマナイ・プラットにとって、今回の出店は念願だったという。「日本は私にとっても『アーレム』にとっても特別な場所。美しさは正確さ、抑制、クラフツマンシップへの敬意から生まれるという共通の価値観があり、私たちの作品を説明なしに理解してもらえる場所の一つだ」と話す。
南青山と西麻布の境に建つ平屋のパビリオン
設計は、パリやロサンゼルス、ニューヨークの店舗も手掛けたスウェーデン人インテリアアーキテクトのマヤ・ベルンヴィル(Maja Bernvill)が担当した。「オン(ON)」や「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」などの空間も手掛けてきた。ローカルアーキテクトとして協力したのは、STUDIO HASHIMURAを主宰する建築家の橋村雄一だ。杉本博司が主宰する新素材研究所を経て2015年に独立し、「ルメール(LEMAIRE)」や「イッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)」などの店舗を手掛けてきた。
店舗は南青山と西麻布の境、低層の建物やギャラリー、ミシュランの星付きレストランが点在する静かな一角にある。ベルンヴィルは「大きな建物に隣接しながらも、二面が外部に開かれた平屋のパビリオンであり、独立した一軒家のような親密さがある」と話す。
外観は隣の建物と同じクリーム色のセラミックタイルで景観になじませ、両側から光を取り込む。森を思わせるガーデンが、建築とランドスケープの境界を柔らかく接続している。
イサム・ノグチの曲線と杉本博司の“時間”
着想源は、イサム・ノグチの彫刻的な抽象表現と、杉本博司が探求する時間性だ。ベルンヴィルらは、ノグチが1927〜28年に描いた「パリ・アブストラクション(PARIS ABSTRACTION)」シリーズのドローイングを、パリやニューヨーク、ロサンゼルスの店舗でも設計図に用いてきた。東京では選んだ1枚から、細長く先細りしたエレガントな曲線を導き出し、空間の形に落とし込んだ。音符やコンマ(,)を思わせるこの曲線は、これまでの店舗で採用してきた、より幾何学的なデザインとは対照的だ。
杉本の影響は、空間を通じた「体験」に表れる。参照したのは、直島にあるガラスの茶室「グラス ティー ハウス モンドリアン(GLASS TEA HOUSE MONDRIAN)」や、小田原・江之浦測候所の海へと開かれた全長100mのギャラリーだ。マナイ・プラットは「江之浦のギャラリーを歩いたとき、時間が止まったような、ほとんど原始的ともいえる感覚を覚えた。それが、静けさと強度を併せ持つ彫刻的なエントランスにつながった」と語る。
通りからのアプローチは圧縮されたような感覚で始まり、奥のプライベートなカウンセリングルームへと開ける。都市のすぐそばで静寂に包まれる、繭のような空間だ。
着物の反物で仕立てた可動式の“障子”
ファサードのウインドーでは、白いパウダーコーティングを施したスチール製の特注ヴィトリン(陳列ケース)が一組のフレームを照らし出す。鋭い面に折り込んだ台座は、紙を使ったスタディーから生まれた折り紙のような形だ。店内は曲線を描くギャラリーウオールで、入り口からコレクション全体を見渡せる。中央テーブルの両側に検眼室とフィッティング用のワークステーションを設け、隠しパネルの奥に最新のフレームを収めた。
奥には、貝殻を思わせるプライベートルームがある。橋村とテキスタイルデザイナーの伊藤由賀が手掛けた可動式のテキスタイルドアで仕切り、着物用の白い絹の反物が天井の円形レールに沿って動いてプライバシーを確保する。障子の柔らかな透過性を再解釈したもので、光をたたえた軽やかな境界を生んでいる。
アーレム東京
オープン日:10月10日
住所:東京都港区南青山6-7-1