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ついに「期間限定」ブランドも登場
ウィメンズブランド「メルト ザ レディ(MELT THE LADY)」はルミネエスト新宿の地下1階にお店があるんですが、主軸はECであり、いわゆる“D2Cブランド”に括っていいブランドだと思います。このブランド、20歳前後の女子に大変人気があるにも関わらず、「2024年7月でブランドを終了する」と既に決めているそうです。
期間限定のポップアップストアはもはや当たり前になりましたが、とうとう期間限定ブランドも登場してきたか!率直に私はそう感じました。「メルト ザ レディ」含め、数年前にぽこぽこ生まれた“D2Cブランド”の次なる一手や戦略は、編集会議でも最近話題になります。動向をまとめて、来年の「WWDJAPAN」でお伝えしますね。
本年も読者の皆さま、取材先の皆さまに支えられ、「WWDJAPAN」の本紙やウェブを無事発行&更新してくることができました。この場を借りてお礼申し上げます。ウェブは年末年始も更新し続けますが、こちらのモーニングダイジェストは次は年明け1月5日のお届けになります。2023年も引き続き「WWDJAPAN」をよろしくお願いいたします。
Z世代に人気の「メルト ザ レディ」 24年7月でブランド終了を掲げる「終わるからこそ尊い」の美学
(PROFILE):1996年生まれ、広島県出身。高校卒業後、小井手ファッションビューティ専門学校に入学、同時にモデルとしての活動も始める。2017年にメソニックデザインオフィスで「メルト ザ レディ」をスタートした PHOTO:MELT THE LADY
新宿ルミネエストの地下1階といえば、ヤング向けファッションの殿堂的フロアの1つだ。バロックジャパンリミテッドやマークスタイラーなどのブランドが並ぶ中に、少し毛色が異なるショップ「メルト ザ レディ(MELT THE LADY)」がある。大きな長テーブルが置かれた店の内装も販売員のスタイリングもなんだか他とは違う。売れ筋を追求した結果似た商品が並ぶこともあるフロアの中で、異質な存在感を放っている。それなのに、ルミネに取材すると好調ブランドとして名前が上がることがよくあり、商品入荷日には実際に女の子たちの行列ができている。
同ブランドを手掛けるのは、宮内敦社長率いるメソニックデザインオフィス。宮内社長は以前、ギルドコーポレーションを運営していたヒットメーカーだといえば、ヤングファッションに詳しい業界人ならピンとくるはず。「メルト ザ レディ」に取材を申し込むと、ディレクターのAyaさんが対応してくれるという。キャットストリート近くにあるショップ兼アトリエを訪ねて彼女に話を聞いていたら、「あと2年でブランドを終了します」というコメントも飛び出した。
「少女が溶けて大人になるイメージ」
WWD:ルミネで売れているという話をよく聞くし、現役大学生の「WWDJAPAN」インターンに聞いても「『メルト ザ レディ』が今周りで人気」といった声が出る。でも、ブランドとしてはあまり情報が出ておらず謎も多い。改めて、どんなブランドなのか。
Aya:私自身、こういった取材を受けるのは初めてです。ブランドを立ち上げたのは2017年の7月、自分が20歳のときでした。私は広島県出身なんですが、ブランド立ち上げ前は地元で服飾・美容の専門学校に通いつつ、ときどき上京してモデルの仕事もしていました。(メソニックデザインオフィスが手がけるブランド)「バブルス(BUBBLES)」のECサイトのモデルなどをしていて、その縁で、知人を通してメソニックデザインオフィスに「将来自分のブランドがやりたい」と相談しました。それで、「バブルス」の原宿店(当時)でコーナー展開するという形で、「メルト ザ レディ」をスタートしました。
WWD:ブランドのコンセプトは?
Aya:ブランド名自体がコンセプトです。少女から女性へと成長していくその抜け殻や、少女が溶けて大人へと変わっていくといったイメージ。成長過程そのものをブランドとして掲げています。元々私は服がすごく好きで、ロリータや原宿系といった周りの目を気にしないファッションが中学生のころから好きだった。そんな自分が、世間の目を気にせず等身大で着たいものを作るブランドです。お客さまはファッションに敏感な20代が中心。太もも部分にホックがついていて、それを外すと肌がのぞくスラックス“ホックスリットパンツ”(1万2000〜1万4000円前後)などが人気商品になっていて、それはふらりと入った古着店で店員さんが着ていたこともあります。Y2Kのブームもあって、肌見せのデザインがジャンルを問わず幅広い層に支持されたという面もあると思います。
WWD:立ち上げの際に、宮内社長からブランドの方向性などについて指示があったのか。
Aya:特になく、まずは自分が作りたいものを作ろうという感じでした。最初の2年間は、私とMD担当、生産管理の3人で模索する日々。広島で服飾の専門学校に通ってはいましたが、ファッションビジネスの知識はほとんどなくて赤ちゃんみたいな状態だったので、何度もトライ&エラーを重ねて今があります。OEMメーカーさんに対し、言葉でうまく指示を伝えることもできませんでしたが、絵は習っていたので絵で伝えることはできた。それでも、上がってきたサンプルを見て驚愕するといったことが何度もありました。
転機は立ち上げから3年目。宮内とブランドのあり方や今後をしっかり話し、もっと本格化させようとなりました。それで19年3月にここ(キャットストリートそばのアトリエ兼ショップ)をオープンしました。普通の路面店にするのではなく、コンセプトや内装をそのときどきでガラッと変えて、毎回期間限定で開けていくポップアップ形式の運営方法を考えていたんです。ただ、19年9月にルミネエストにもお店を出したので、まずはルミネエストに注力しようとなり、そのままコロナ禍になってしまった。このアトリエ兼ショップを店として開けられた期間は、これまでほんの数週間だと思います。
「自分の中で区切りをつけたい」
WWD:具体的に、どのように商品を企画し、売っているのか。
Aya:毎月店頭やECで発売するのは計30〜40型。1カ月分が1つエピソードになっていて、2回に分けて投入するので、それぞれがエピソードのボリューム1、ボリューム2という位置づけです。エピソードはシーズン1からシーズン3までの3部構成になっていて、実はブランドの最初から最後までの流れをもう決めています。そこから逆算して、リアルな時間軸とともにストーリーが進んでいくようになっています。
WWD:ブランド終了が既に決まっているという意味か。
Aya:はい。今はシーズン2の途中ですが、シーズン3が23年3月に始まって、24年の7月で終了する予定です。自分自身、(モデル業を含め)10代のころから服の仕事に関わってきて、今年で26歳になります。この期間はすごく尊い時間だったと思う。流行はどんどん変わっていきますし、“成長型”のブランドでやっているからこそ、自分の中で区切りをつけたい。SNSやECサイトで動画や写真でエピソードを発信していますが、お客さまは「このエピソードって一体何のこと?」と思っているかもしれません。シーズン1の終了時である22年の3月に発信した動画に、時計の針が24で重なる、終了を匂わせるシーンを入れました。シンデレラの話ではないですが、24時間で魔法が解けるといったイメージです。お客さまには、エンターテインメントとして、こうしたエピソードも楽しんでほしい。
WWD:ブランドが終了してしまうと知ったら、驚くファンは多そうだ。自身も寂しくないのか。
Aya:大切にしているブランドなので、もちろんすごく寂しいですよ。でもそれも尊いなと思う。終わりがあるから今も一生懸命にそこに向かって頑張ることができています。ダラダラ続けるのではなく、そこからまた新しいスタートが切れたらいいなと思っています。24年7月を迎えたらどうするかはいろいろと考えています。大人になった自分とともに、また成長していくブランドができたらいいなという思いもあります。
WWD:先ほどからよく“成長型ブランド”という言葉が出る。“成長型ブランド”という言葉をどういう意味で使っているのか。
Aya:私がそのときに着たい、等身大の服を作るという意味です。だから、立ち上げ当初とはテイストも結構異なっています。以前のような、もっとガーリーなテイストの服が好きだとお客さまに言われることもありますよ。ただ、自分と向き合って、そのときの自分が作りたいものが何なのかを突き詰めていますし、自分の成長と共に質も上げていきたい。年齢を重ねていく自分自身が違和感を感じないように、生地や縫製などの質も徐々に高めています。自分が常に納得して、自信をもって伝えられるブランドという意味で“成長型ブランド”と表現しています。シーズン1のころは私自身が商品ビジュアルのモデルも務めていましたが、それに対しても段々違和感を覚えるようになったので、シーズン2からは海外のモデルさんを起用しています。
期間限定ブランドはポップアップの進化系?
WWD:ビジネスの規模は今どれくらいなのか。
Aya:20年の春以降、売上高は特に増減なく10億円弱で安定しています。ブランドの終了を決めているので、商品の供給量も変えていません。ルミネエスト以外からも出店オファーはいただきますが、規模感は抑えている。もっと多くの人に着てもらいたいという気持ちがないわけではないですが、発売日に並んで商品を買ってくださるお客さまの気持ちを大事にしたい。せっかく並んで買ったのにみんなが着ていたら、きっとがっかりしてしまうから。1着1着に愛情を込めて作っているので、本当にこれが着たいと思うお客さまに届けたい。この規模では(生産ロットなどの問題で)難しいこともありますが、反対にこの規模だからできることもある。ブランドを大きくするよりも、この規模で作るべきものをしっかりお届けしたいと考えています。
WWD:世の中全体を見ても、期間限定のポップアップショップやポップアップイベントがますます増えている。そこからさらに一歩進んで、期間限定のブランドとして出てきたのが「メルトザレディ」というわけだ。こういう、ある種の話題性が今の時代はブランド作りに欠かせないと考えているか。
Aya:マーケティングなどは本当に得意でないので、なぜ「メルト ザ レディ」が売れたかなどについて私から言えることはないです。一生懸命作りたいものを作ってきただけで、命をかけてブランドをやっていると言ってもいいくらい。それがたまたま、お客さまの心に刺さったんだと思います。そういう熱量はお客さまに伝わると思う。
ただ、今の時代は単にいい商品を作るだけではダメです。作ったものをしっかり伝えないといけない。いいものを作っても、それを発信しないと日の目を見ずに流れていってしまいます。今は(あらゆるコンテンツで)時間の奪い合いだから、お客さまも新作発売日だからってわざわざECサイトを見るということはありません。だからこそ、パッと目に入るように写真や動画をSNSで発信することの重要性は大きい。しっかり売るはずで仕込んでいたアイテムが、私がほかの業務でバタバタしてしまってSNSの打ち出しが弱まってしまったという失敗はあります。
WWD:あと2年間、どのようにブランドを育てていきたいか。
Aya:自分の作りたいものに向き合って作っていますが、店頭スタッフとの月一回のミーティングでお客さまの声もしっかり聞くようにしています。ブランドはお遊びではないので、(自分自身の世界と)お客さまのニーズとの融合が「メルト ザ レディ」だと思う。エピソードも単なる自己満足で出していたら意味がありません。(エピソードやそこに込めた思いを)お客さまにしっかり伝えていって、楽しんでいただきたい。実際、SNSのDMなどで「このエピソードって、もしかしてこういう意味ですか?」といったことを送ってきてくださるファンの方もいますよ。“成長型ブランド”として、「もうこのブランドからは卒業」と思われないように、今のお客さまと一緒に成長したいです。
「ロレックス」が「認定中古」ビジネスに参入 需給ギャップ改善と疑義ある中古品流通の改善が狙いか?
世界で最も人気があり売れている時計ブランド「ロレックス(ROLEX)」が12月1日、時計業界を驚かせる歴史的な重大発表を行った。認定中古プログラムを導入し、1905年の創業以来これまで関与してこなかった中古時計ビジネスに参入したのだ。同時にロレックス本社ともっとも関係が親密で、スイスを訪れる日本の時計愛好家にはおなじみの老舗時計販売店「ブヘラ(BUCHERER)」が、地元スイスを含めヨーロッパ6カ国(ドイツとオーストリア、フランス、デンマーク、イギリス)で展開するブティックで、3年以上前に販売され、「ロレックス」の正規アフターサービスを受けてメンテナンスされ、2年間の国際保証が付いた認定中古(Certified Pre-Owned、以下CPOと略す)プログラムに基づく「ロレックス」の時計の販売を開始した。なお「3年以上前に販売されたモデル」という条件は、「購入後は2年間は転売禁止」という販売ルールに基づいて決められたものだろう。
認定中古ウオッチは認定中古車同様に、メーカー自身が純正の整備を行って新品同様の状態に戻し、その品質を一定期間保証する中古時計。超高級スポーツウオッチブランド「リシャール・ミル(RICHARD MILLE)」を筆頭に、需要と供給のギャップが大きい時計ブランドがこのプログラム(システム)を導入し始めている。SDGsへの取り組みにもなるため、導入を秘かに検討している高級時計ブランドも少なくない。
だが人気も売り上げも世界No.1の「ロレックス」がいきなり導入したことに、ここ数年、新品が供給不足なこともあり価格が高騰する一方の中古の「ロレックス」を主な商材として史上空前の利益を上げてきた中古時計業者たちはショックを隠せない。「ロレックス」はこれまで中古市場に自ら関与したことはなかった。それだけに中古時計業者たちにとっていちばんの「飯の種」である中古「ロレックス」でこの先、これまでのような利益を上げることが難しくなると危惧しているのだ。
では、なぜ「ロレックス」は認定中古プログラムを導入したのか。それには2つの理由が考えられる。ひとつは2年間の国際保証付きのCPO「ロレックス」を「限りなく新品に近い中古」として位置付け、需要と供給の大きなギャップを埋め、市場のニーズを満たすため。そしてもうひとつの理由が、まさに中古時計販売業者が危惧するように、品質や値付けに問題・疑問のある中古「ロレックス」ビジネスの現状を参入することで改善し、ブランドのイメージや価値を守るためだ。
需要過多と問題や疑問のある中古ビジネスで、「ロレックス」は常に「いわれのない中傷」を受けてきた。「『ロレックス』は意図的に生産数を少なくしている」という根拠のないデマがネットで拡散されたり、「毎日正規販売店に通えば購入しやすい」という噂を聞いて“「ロレックス」マラソン”を行う人々が出現したり。人気の新品モデルは「転売ヤー」の標的になって異常な高値で転売され、それを知った投機目的の購入者が増えて購入はさらに難しくなり、中古モデルの価格が異常な高値になるなど、好ましくない状況が続いてきた。
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