ファッション

起業家&カリスマホストROLANDが語る「自己資金でブランドをやる理由」(前編)

 カリスマホストとして知られるROLANDは4月15日、新ブランド「ミニマス(MINIMUS)」をスタートする。アパレルではすでに自らの名前を冠した「クリスチャンローランド(CHRISTIAN ROLAND)」を2019年3月にスタートさせていたが、同ブランドのサイトにアクセスすると自動的に「ミニマス」のページに切り替わる。実質的に自らの名前を冠した「クリスチャンローランド」を休止し、全く別のコンセプトでブランドを立ち上げることになる。数々の伝説的なエピソードを持つホストであり、同時にインスタグラムやツイッターなどのSNSの総フォロワー数290万を抱えるROLANDが、なぜアパレルに失敗したのか。新ブランドでは、D2Cブランド運営で実績のあるディーエスエスアール(DSSR)の本間英俊・代表取締役をパートナーに迎え、ブランドと同名のミニマス社を設立。デザイン監修にはメンズブランド「ジュンハシモト(JUNHASHIMOTO)」の橋本淳デザイナーを迎える。美容や飲食などの事業を運営する経営者でもあるROLANDはファッションビジネスをどう見ているのか?二人に話を聞いた。

WWD:なぜ新ブランド「ミニマス」を?

ROLAND:失敗を隠すつもりはないので、わかりやすく言うと「クリスチャンローランド」は敗戦だった。僕なりに全力でいろんなことに向き合ったが、ビジネスとしては失敗だった。ブランドを初めてからこの2年で、自分の服を着てる人を街で見かけたのは、2年間で驚くことに1回しかなかった。

WWD:「クリスチャンローランド」は単なる名前貸しのブランドではなく、自己資金だった?

ROLAND:もし名前貸しだけだったら「ああ、クリスチャンローランド、そんなの昔プロデューサー的にやってましたね」って言えるかもしれませんが、ブランド自体に名前も入っているし、自己資金も入れていた。いずれにしろうまく行かなかった全責任は僕にあります。振り返ってみれば知識や経験が不十分だった。まず第1に、インフルエンサーがアパレルやるときに言いがちなキメ台詞、「自分が欲しいものを作っていきます」っていうやつ。僕が欲しいと思ってるものを、世間はそんなに欲していなかった(笑)。そしてもう一つは、僕が全面的に出すぎることによって、仮にプロダクト自体が良かったとしても、ファングッズのような認識になってしまったこと。加えて、これがかなり大きいと思うのだけど、素人のくせに「アパレルをなめていた」んだな、と。

WWD:どういうことでしょう?

ROLAND:ホストクラブでも、アイドルがホストをするとすごく売れるんです。でもそれって本職の僕らからすると、内心は面白くないですよね。泥水すすりながら新人のときはトイレ掃除をして、先輩のヘルプをして勉強しながら這い上って、やっと日の目を浴びて、売り上げを上げられるようになってきたのに、超パワフルなインフルエンサーが来ると、リスペクトなく、業界を荒らすみたいな感覚になる。僕も同じこと、それに近いことを、インフルエンサーとして、アパレル業界に対してやってしまったら、やっぱり受け入れてくれないよなと。僕は自分なりに、パタンナーの方や取引先の方と熱を持って話をしていたつもりだけど、先方は僕に対してそこまでの温度感をなかなか持ってもらえないときもあった。でも当然ですよね。やっぱり心のどこかで自分がインフルエンサーで、これだけのフォロワーやファンがいれば、なんとかなると思っていたんです。

WWD:ミニマス社の代表取締役は本間英俊氏で、所在地も本間氏が代表を務めるDSSRのオフィスになる。ROLANDはどういう立場なのか。

本間:僕も出資していますが、ROLANDさんが筆頭株主であり、実質的なオーナーです。

ROLAND:「クリスチャンローランド」の失敗を踏まえ、誰がどういった役割で何をやるか、どういった座組がベストなのか、自分なりにかなり考えましたし、本間さんとも話し合いました。最終的には僕が一番責任がある立場であると同時に、任せるべきところは全部任せる。業務でいうと僕が担う業務は5%くらいで、95%くらいはプロの人達に任せようと。デザイン監修は、メンズデザイナーの重鎮である「ジュンハシモト(JUN HASHIMOTO)」のハシモトジュンさんに担っていただいてますし、売り方や販売戦略みたいなところは本間さんにお任せしています。二人ともプロ中のプロで、私が口を出す必要はない。ECサイトのモデルとしても、私は出ません。私が出ることでファングッズになるリスクがあるからです。

WWD:ではどういった役割を?

ROLAND:ブランドの方向性やコンセプトは僕自身が出しますし、最終的な商品の仕上がりも見ています。できるだけプロにおまかせしつつ、最終的な責任は私にある、そういった座組みですが、僕のイズムが全く反映されずにお金だけ投げてる出資者っていうようなものではない。これは言っておきたいのですが、例えば不祥事だったり、業績が良くなかったり、それらはすべて僕の責任です。名義貸しではないということです。

WWD:新ブランド「ミニマス」はアクティブファッションブランドと銘打たれていますが、どんなブランドでしょうか。

ROLAND:基本的なコンセプトは自分で決めたのですが、まずブランドパーパスとして「多くを持たない。消費するのではなく、一着を身につけ続ける」というメッセージを掲げています。わかりやすくいうと、日本人の質問の代表的なものに、無人島に例えたものがありますよね。僕が「無人島になにか1つ着ていくとしたら、何がいいですか」っていう質問をされたときにどう答えるか考えました。機能性でいったらアウトドアブランドなんでしょうけど、ギアに振ったものってシルエットがダボついたものが多くて。ヘリコプターでいきなり救助されて、めちゃくちゃカメラに抜かれたときに「こいつめちゃくちゃ暖取りに行ってるな~」と見えそうな、全然かっこよくない服を着るのは嫌なんですよ。かといって、エディ・スリマンが作ったようなタイトな服を着て、木の実を採りに行きたくないじゃないですか。それ着て魚は獲れないし、焚き火もできない。だから、エレガントさの中に、機能的なギア的な要素をミックスして、というものがあったら、僕は無人島に一着、それを着ていきたいなと思えるんですよね。デザイン性だと、おそらくハイブランドには勝てない。機能性でいくと、やっぱりギアに振ったアウトドアブランドには勝てない。ただふたつをミックスさせたら勝機があるんじゃないのかなと。ギアに振りすぎず、かつデザインに振りすぎない、とにかくシンプルなものです。

本間: ROLANDさんから、昔は着飾ることを重視していたけど今は引いていくことに美学を感じていると伺ったときに、どうやったらそれを服で実現できるかを考えました。ROLANDさんの世界観を表せるデザインの筆を取れるのは、橋本さんしかいないだろうとと、お願いに行きました。橋本さんももともとミニマルな世界がお好きなのでROLANDさんとお話が合ったんですよね。それで、橋本さんとスポーツウェアに使うような機能素材を使って、どうエレガントにできるか、素材探しから徹底的に行いました。

ROLAND:相当こだわってくれたと思います。素材の部分では、やっぱり良質なものにこだわりったことで、90%くらいは日本製の生地になった。

WWD:途中経過に関してあまり口を挟まないようにしていたということだが、上がってきたものを見てどうだったのか?

ROLAND:やっぱり専門家すげえな、と(笑)。バーバリーのトレンチって襟がアイコニックで、立たせるためにわざとステッチを入れてますよね。このジャージトップスも、襟の後ろに飾りのファスナーをつけることで、襟がしっかり立つようにしている。プロじゃないと思いつかないアイデアが散りばめられている。そして、もちろん普通にかっこいい。今着ているこのジャケットも、形はスーツだけどジャージー素材なのでジムにも行ける。ベンチプレスもできるし、ジョギングもできるくらいの吸水速乾素材を使っています。

本間: ROLANDさんと打ち合わせすると、基本は全部引いてくるので、服がすっごいシンプルになるんですよ。

ROLAND:ロゴ入れる位置も、最初はフロントにみたいな話もあったんだけど、橋本さんと色々話して、肩に同系色でできるだけさりげなく入れるのがかっこいいというアイデアをいただいて。

本間:どんどん引き算するので、放っておくとロゴもなくていいみたいな(笑)。それはさすがに目立たなくてもいいので入れてくださいとこちらからお願いしたり。

ROLAND:削ぎ落としていくのって、僕自身は好きなんすけど、難しいですね。足していくよりも全然難しい。

本間:逆に足すというポイントで言えば、ROLANDさんはサッカーをやるので、スパイク履いたまま脱ぎ着できるようにジャージパンツの裾にファスナーをつけたいって言ったんですよね。

ROLAND:あ、95%おまかせしていましたが、そこは5%の僕のこだわりです(笑)。

WWD:今売り方は?

ROLAND:常設の店舗を作りたいっていうのは今のところは頭にはない。EC中心で考えています。

本間:主にはD2C型という形ですね。あとはポップアップストアはやっぱり魅力の一つなんじゃないかなと思ってるんで、いいデベロッパーさんだったり、いい箱があれば、ぜひやりたい。

WWD:ライブコマースは?

ROLAND:時代に適した売り方ではあるなと思うので、選択肢のひとつとして興味はありますね。ただ、前回の反省の一つが「自分が出過ぎない」ってところなので、バランスを見ながら、と思っています。多数のフォロワーを抱えるSNSは強力な武器なので、そうした発信のところで出し惜しみするつもりはないですし、写真はモデル撮影の時に私の分も撮っていて、それは使っていくつもりです。いずれにしろ、やり方は決めつけず、様子を見ながら変えていこうとも思っています。

本間:やっぱりROLANDさんの持っているSNS合計290万人というは圧倒的なメディア。だからこそ、ブランドのメッセージやパーパスを、SNSを通じて丁寧に発信していきたい。お客様が望む限り製品を修理して使い続けられるシステムや、身体のサイズに合わせた補正、着なくなったアイテムの買取クーポンの発行、そのアイテムにメンテナンスを施したリバイバル商品の販売など、ブランドとしてのお約束も、予めきめ細かく決めています。

ROLAND:「ミニマス」は極めてシンプルで、一見してわかりやすいデザインではないので、何もしないと、そういうシンプルなものが好きな人にしか買われないかもしれない。でもSNSを通じて、現時点ではそういうものに興味ない人にも、メッセージを伝えられる。幸い芸能系の仕事もしているので、ブランドのパーパスが合っている方へのギフティングはする予定です。やっぱり手にとってもらわないと伝わりにくい服なので。アスリートが多くなるのかなと思っています。

本間:あと、ROLANDさんのメディア力で、実は海外にもすごく可能性を感じています。ROLANDさんの本は台湾でもベストセラーになっていて、日本と海外合わせて累計40万部も売れている。これはやっぱりSNSならではの強力な武器になる。なのでミニマスは最初から、海外対応をやっていきます。今の日本のアパレルだと、ゴルフウェアくらいしかあまり盛り上がっていないので、機能的でエレガントな服は可能性がある。

WWD:ROLANDさんのSNSの海外フォロワーの割合は?

ROLAND:正確にはわかりませんが、例えば今はフォロワー60万人くらいのInstagramで言うと、1割ぐらいは中国語圏の印象です。YouTubeコメントとかもかなり多いっていう話も聞きますね。なので東アジア圏とか、あとこんまりさんとかのライフスタイルがアメリカでヒットしたっていうのも、やっぱりアメリカも「大量消費、大量生産」なところに、少なからず疲弊している部分と思うので「ミニマス」のコンセプトはけっこう海外の方も共感してくれるんじゃないかな、というワクワク感がありますね。

(後編はこちらから)

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