ファッション

ビーガンファーと人工ファーって何が違うの?

 動物や地球環境に対する消費者の意識の変化から、多くのブランドは毛皮の使用を廃止する“ファーフリー”を宣言し、アメリカでは2018年に毛皮製品の販売を禁止した州もある。毛皮製品をめぐってはこれまでサステナビリティの観点から「毛皮か人工ファーどちらを選ぶべきか?」という議論が活発に行われてきた。

 しかし近年は人工ファーから、ビーガンファーに注目が集まっている。一般的にビーガンとは、肉や魚だけでなく卵や牛乳などを含む動物由来のものを一切口にしないことをいう。しかしこれを食だけに限定するのではなく、身の回りの製品から動物由来のものをできるだけ避ける考えもある。ビーガンファーはそんな考えのもとに動物由来の成分や素材を一切使用せずに作られたファーだというが、これまでの人工ファーとどう違うのだろうか。またこういった人工ファーは毛皮と比べて“サステナブルでクリーン”という印象を押し出すが、エコラベルの乱用や“グリーン・ウオッシュ”(見せかけの環境配慮)の企業も存在する。ここでは人工ファーとビーガンファーの2つの定義の違いや、環境負荷を考えてみる。

人工ファーとビーガンファーはそれぞれどういう意味?

 専門家によると、この2つの間に材料による大きさ差異はないという。しかしビーガンファーの方が、サステナビリティへの関心の高まり比例して消費者の共感を呼んでいる風潮があるという。高級人工ファーで知られる香港のエコペル(ECOPEL)のアルノー・ブリュノワーズ(Arnaud Brunois)=コミュニケーション・マネジャーは、「ビーガンファーと人工ファーの間に物質的な違いはない。どちらも動物から得た材料を含まないもの。“ビーガン”という名称は最近になってファッションブランドが取り入れたように感じる。開発当初のビーガンアイテムは、ビーガンを名乗る人のみに認められたミステリアスなものという印象が強かった。ビーガンファーという単語はZ世代にうまく浸透したと思う」とコメントする。

 一方で人工ファーとビーガンファーの違いはブランディングによることも多いが、ニュアンスの違いはある。非営利団体テキスタイル・エクスチェンジ(Textile Exchange)のリーズル・トラスコット(Liesl Truscott)は、「簡単に言うと“ビーガン”は動物に由来する材料を排除して動物実験を行わず開発された製品のことで、“人工”は自然に対しての人造や代替品を指す」と説明している。これらの定義を用いることで、同じ製品でも人工ファーまたは、ビーガンフレンドリーなものとして販売することができるという。

人工ファーは本当にサステナブルな素材なの?

 定義の違いで揺れる部分はあるもののビーガンファッションは関心を集め続けており、ファッションブランドも動物を原料とする毛皮の使用を避ける傾向にある。19年にイギリスの調査会社であるテクナビオ(TECHNAVIO)が行った調査によると、人工ファー市場は19年から23年の間に19%以上の年平均成長率が見込まれている。そして人工ファーをよりサステナブルな材料から生産できれば、さらに市場は成長していく可能性を持っているという。開発者やブランドは毛皮に“人工”と“ビーガン”のどちらのラベルを付けるかだけでなく、その環境負荷や影響の大きさも考えなければいけない。

 多くの人工ファーは石油に由来する合成繊維から作られており、生分解(微生物の働きによって無機物まで分解されること)もできないので、海洋環境で大きな問題となっているマイクロプラスチックが排出されるケースも多い。またトラスコットは「トウモロコシやサトウキビといった農産物から作られるバイオ系素材の繊維も、肥料や水、土地利用など作物を生産する過程で環境負荷を伴う可能性もある。この意味でバイオ系素材を使用する人工ファーは、生産者とサプライチェーンに大きく依存している。動物の権利問題に直接的な影響は持たないものの、化石燃料やバイオ系素材を使用する人工ファーはどちらもマイクロファイバーの排出や化学物質の使用を通じて生態系に悪影響を与える可能性がある」と指摘する。

完璧な素材は存在しない 人工ファーとビーガンファーの今後

 サステナビリティを中心に考えたとき、人工ファー生産にとって完璧な素材は確かに存在しないのかもしれない。しかしエコペルのような企業は少しでも改善できるよう新たな開発に取り組んでいる。例えば同社は、37%がトウモロコシの副産物に由来するバイオ素材を使用した人工ファー“KOBA”を開発した。これによりエネルギーは30%減、温室効果ガスの排出量は63%減での開発が可能になった。

 また「アパリス(APPARIS)」は女性が主導で運営するビーガンファッションブランドで、16年に発売したカラフルな人工ファーでカルト的人気を獲得した。この8月には300万ドル(約3億円)の資金調達をして、ブランドの発展とより環境に優しい人工ファーの使用拡大を狙う。またリサイクルされたポリエステル素材の生産にも取り組んでおり、今年発売するビーガンカシミアに加えて、21年の秋にはトウモロコシがベースの植物繊維を使用した人工ファーを販売する予定だという。

 「アパリス」は、動物由来の素材を含まない毛皮を“ビーガン”ではなく“人工”と名付けている。ブランドとしてその二つに大きな違いを持たせてはいないものの、共同創立者のローレン・ヌチ(Lauren Nouchi)は「ビーガンメッセージを使い過ぎない」ようにしているという。さらに「私たちの目標は、人工ファーとともに背景のメッセージを発信すること。人工ファーは最初の一歩だった。ビーガンファーや人工ファーなど言葉の選択によって印象も変わってくるが、私たちはリアルな毛皮の使用と闘っている。それこそが本当の問題だ」と語った。

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