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みんなの疑問に弁護士がスッキリ回答 ファッション業界にまつわる法律相談~番外編~

 「WWDジャパン」12月9日号ではみんなの疑問・不安に4人の弁護士がスッキリ回答 業界にまつわる18の法律相談」と題したファッションロー特集です。ファッション業界から集めた50以上の疑問やお悩みを、ファッションビジネスに精通した弁護士4人が分かりやすく回答しました。

 本記事では、“よくある質問”と、紙面で紹介しきれなかったそのほかの質問を一挙に公開します。

【“よくある質問”編】

Q:トレンドを追うと、どうしても他ブランドと類似してしまうことがあります。模倣品と呼ばれないためには何ヵ所変えればセーフ?

海老澤美幸・弁護士(以下、海老澤):「〇カ所変えればセーフ」が都市伝説です!

ちまたでは「〇カ所変えればセーフ」というルールが出回っているようですが、都市伝説です!海外でも「5カ所」とか「7カ所」とか言われているという話を聞きますが、何の根拠もありません。模倣品かどうかの判断は、「その服の最も特徴のある部分がどの程度似ているか」ということがポイントなので、それ以外の部分を3カ所変えても5カ所変えても意味がない可能性もあります。

Q:SNSが炎上してしまったらどうしたらいい?

小松隼也・弁護士(以下、小松):PRと法務がタッグを組んで対応にあたるべし。

内容にもよりますが、最近は法的に問題がなくても炎上してしまうケースの方が多い印象です。法務担当者としては、なるべく自社に法的な責任がないなら認めたり謝罪したりしたくないものですが、「法律違反ではないからうちは悪くありません」というリリースを発表しても消費者を納得させられないどころか火に油を注ぐ事態に発展しかねません。たとえ裁判になって企業側が勝ったとしても、それまでに消費者に与えたマイナスイメージを回復するのは難しいので、結果としてブランドがダメージを負います。

だからこそPRや法律家、法務が一丸となってリリースの文言を一言一句検討するなどPR戦略を考えることで企業がダメージを負わないように事態を収束させることが重要です。このように専門家同士が協力してチームを組む方法は海外では浸透していますが、日本で実践できているところはわずかなのでもっと広がってほしいですね。法律論だけを企業に伝えても、担当者がそれをうまく咀嚼して成果物を作成できないと意味がないので、一緒に対応方法を検討することが大事だなと感じています。

【紙面で紹介できなかったその他の質問】

Q:ウェブサイトのキャプチャーや、セレブのSNSをキャプチャーして使用するのはNG?

池村聡・弁護士(以下、池村):トリミングには要注意!

“引用”という整理で使用できる場合もあるでしょう。その場合は出典の明記が必須です。SNSの場合は最低でもアカウント名は明記しましょう。
また、キャプチャーの問題で最近気を付けた方がよいのはトリミングの問題です。2018年に、画像付きのツイートをツイッターのリツイート機能を使用してリツイートしたところ、画像の上下がトリミングされて表示されたことに対して、その画像を撮影したフォトグラファーが無断で画像を改変されたから著作権侵害だと主張し、裁判所がその主張を認めるという衝撃的な判決がありました(リツイート事件)。この判決に対しては、本当にそれでいいのかという議論が起きていて著作権業界はざわついているんですよね。

これは極端な例ですが、写真を“引用”する際に、中心だけ切り取るとか、特定の人物だけを切り取るとか、そういうのはアウト(著作権侵害)ですので、改変をしないよう注意が必要ですね。

Q:転売禁止のファミリーセールで買った商品が転売されていた。防止策はある?

関真也・弁護士(以下、関):チケット転売事件を参考に転売防止策を検討しましょう。

この場合は真正品なので、B品や端材のように商標権侵害で対応するのは難しいです。なぜなら真正品をいったん売ると、その物に対する知的財産権は“消尽した”ため、これ以上行使できないという原則があるためです。

ここで参考になるのは、チケット転売が詐欺事件になったケースです。この場合は、チケットを購入する際に「転売の意思はありません」という項目に了承しないと購入手続きに進めないようになっていましたが、転売するつもりだったのにそれを隠して了承し、いわば騙して自分に販売させたため詐欺事件として立件されました。どこまで真剣に対応するか次第ですが、ファミリーセールなども転売防止のために同じ対策をとることは可能です。

Q:知り合いのタレントにイベント来場を直接依頼した。お車代を渡したり衣装提供したりする場合、闇営業に該当する?

海老澤:マネジメントを介すことでトラブル回避につながります。

最終的にはそのタレントさんと事務所が交わしている契約の内容によります。もし契約的に問題がある場合、タレントさんと事務所の間で無用なトラブルが発生するリスクがあるため、必ずマネジメントを通してやり取りすることをオススメします。

Q:ギフティングの法的注意点は?

小松:賃金は現物支給できないことに注意しましょう。

ギャラとして金銭を支払った上でギフティングするのは問題ありません。ですが、ギフティングのみでインフルエンサーに仕事をさせることは注意が必要です。ニューヨークでは15年ごろからギフティングだけでインフルエンサーに仕事をさせてはいけないという業界ルールができました。ギフティングが欲しいからという理由だけで仕事を受けてしまう若いインフルエンサーが続出して、最低賃金や労務環境の観点から問題となりました。

インターンの問題と近いものがありますね。ファッションブランドがインターンと称して若者に倉庫管理やタグ付け、PRの仕事を無償でやらせていたことが大問題になって、ブランド側が裁判で負けるケースが続きました。

日本ではインターンの問題はそれほどないですが、ギフティングをボーナスとするのはありか、という質問は多いですね。現物支給のみはダメです。

Q:「数量限定アイテム」と謳う場合、実際の数量は公開義務がある?

関:あります。悪質な場合は企業名を公表される場合も。

景品表示法の5条3号で「おとり広告に関する表示」というのが指定されていて、供給量が著しく限定されているにもかかわらずその限定の内容が明瞭に記載されていない広告は景表法違反です。悪質な場合は、企業名を公表されたり、措置命令を受けたりすることがあります。

実際には多くの人が購入できない数量しか用意していないのに魅力的な文言を使って消費者を呼び寄せようとするのがいけないことなので、その文言につられて来店するであろう消費者全員に対応できる購買数量の半数にも満たない数量に絞っている場合は、具体的な数量の明示が必要です。

Q:歴史上の人物をデザインとして使っても問題ない?

池村:海外では死者のパブリシティー権が認められているのでトラブルになる恐れも。

①第三者が描いた歴史上の人物の写真やイラストを使う場合と、②歴史上の人物を新たにイラスト化して使用する場合で考え方が異なります。前者の場合、既存の写真なりイラストなりを使うので、歴史上の人物自体の権利の問題以前に、写真等の著作権者の許可が通常必要です。

他方、例えば、「聖徳太子のイラストを自分で描いてTシャツにプリントをする」ということであれば、聖徳太子のことだけ考えればいいですよね。有名芸能人やスポーツ選手の肖像にはパブリシティー権という権利がありますので、無断でTシャツにプリントしたらNGですが、聖徳太子ほど昔の人になるとパブリシティー権はなく、TシャツにプリントしてもOKという結論になります。

“歴史上の人物”の法的な定義はないので線引きが難しいですが、没後、まだそんなに年月が経過していない著名人の場合は、無断で肖像をデザインとして使うと遺族や財団からクレームが来るケースもあるので注意が必要ですし、特に、アメリカの一部の州などでは死者のパブリシティー権が認められているので、著名外国人の場合、きちんと権利処理をして使用しないとトラブルになりがちです。

なお、日本では死者のパブリシティー権が認められるかどうかは見解が分かれていますが、芸能プロダクションなどは、権利が認められるんだという前提の下で主張をしてくる場合があり、最終的に裁判でどう判断されるかは別として、クレームリスクはついて回ります。

Q:デッドコピー商品のタグを見ると製造は中国で行われているようだ。どう追求していくべき?

関:国内から対応するなら警察や税関と連携を!

中国製と書いてはあるけど具体的にどこが製造しているか分からないという状況ですね。その場合は、中国の弁護士や知り合いの流通経路を使って情報収集するというのが一つ目の手段です。それ以外で日本国内から取れる法的な手段は2つあります。一つは刑事事件にして警察に調べてもらい、流通経路を割り出してもらう方法です。もう一つは、税関に協力してもらう方法です。

知的財産権侵害の物品が海外から日本に入ってくると、必ず税関が内容を確認します。その際に侵害品の場合は「こういう物が出てきたんですけど、御社のニセモノじゃないですか」と連絡してくれますし、通関書類などから流通経路や生産者が分かる場合は情報を提供してくれます。そういった情報を蓄積しておくと、中国での流通経路の解明に役立つと思います。そのために、積極的に輸入差止申立てをするなどして、税関との良好な協力関係を築くことが大切です。

 

YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中