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ジョナサン・アンダーソンのクラフトへの愛を受け継ぐ
ロエベ財団が主催する「ロエベ クラフト プライズ 2026」のファイナリスト30人の中に、日本からはタペストリー作家の中平美紗子さん、漆を使用して制作活動を展開する田中信行さん、ガラス作家の吉積彩乃さんの3人がノミネートされています。
「ロエベ」のクリエイティブ・ディレクターだったジョナサン・アンダーソンが発案した、クラフツマンの発掘と顕彰を目的としたこのインターナショナル・アワードの審査員を、後任クリエイティブ・ディレクターのジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスが務めます。今年からは過去ファイナリストを支援する取り組みを始動するそうで、次の世代へ進化しながら引き継がれています。
「ロエベ クラフト プライズ 2026」のファイナリストを発表 日本からも3人が選出

ロエベ財団(LOEWE FOUNDATION)が主催する「ロエベ クラフト プライズ 2026(LOEWE FOUNDATION CRAFT PRIZE)」のファイナリスト30人が発表された。日本からは、タペストリー作家の中平美紗子、漆を使用して制作活動を展開する田中信行、ガラス作家の吉積彩乃の3人が選出された。ファイナリストの各作品は5月13日〜6月14日にナショナル・ギャラリー・シンガポールで展示する。
「ロエベ クラフト プライズ 2026」のファイナリストを発表
16年に当時のクリエイティブ・ディレクター、ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の発案により設立された「ロエベ クラフト プライズ」は、現代の優秀で斬新な美的センスのあるクラフツマンの発掘と顕彰を目的としたインターナショナル・アワードだ。このコンテストは「ロエベ」がクラフト工房からスタートしたという歴史にちなんで始まり、17年に第1回が発表された。クラフトの重要性の認知や、現在活躍するクラフツマンたちの才能やビジョンを将来につなげる狙いがある。
今年は、133の国と地域の参加者から寄せられた5100点を超える応募作品の中から、選考委員会によって30人のファイナリストが選ばれた。ファイナリストは、陶芸、木工、テキスタイル、家具、製本、ジュエリー、ガラス、金属、漆など、さまざまな分野や素材で作品を制作している。
初めて審査員を務める「ロエベ(LOEWE)」のジャック・マッコロー(Jack McCollough)と、ラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernandez)=クリエイティブ・ディレクターのほか、昨年の大賞受賞者である青木邦眞、デザイン、建築、ジャーナリズム、評論、美術館の学芸員など、各界の第一人者で構成する審査委員会が大賞と2つの特別賞の受賞者を決定する。発表は、5月12日に行われ、大賞受賞者に5万ユーロ(約914万円)、特別賞受賞者にそれぞれ5000ユーロ(約91万円)が授与される。
また、デジタルプラットフォーム「ザ ルーム(THE ROOM)」では、「ロエベ クラフト プライズ」にノミネートされたアーティストの作品を紹介している。
ベルモンドと提携したアーティスト・イン・レジデンスを開始
さらに、今年から本イベントの過去ファイナリストを支援する取り組みを始動する。その一環として、ラグジュアリー旅行ブランドの「ベルモンド(BELMOND)」と提携し、スペイン・マヨルカ島のホテル「ラ・レジデンシア」で年間3回、2カ月間のレジデンシープログラムを実施する。参加者は、多くの芸術家が住んでいるデイアの村を舞台に、1846年「ロエベ」が創業したスペインの地の文化的景観と対話しながら創作活動を行う。
カール・ラガーフェルドの元秘書が秘蔵コレクションをオークションに出品 「ルイ・ヴィトン」や「シャネル」の希少アイテムも
カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)の長年のパーソナルアシスタント兼ボディーガードを務めたセバスチャン・ジョンドー(Sebastien Jondeau)が、ファッションやアート作品などを含む希少なコレクターズアイテムの数々をオークションハウス「ジュピター(JOOPITER)」に出品することを発表した。
「ジュピター」は、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)が2022年に創設したデジタル・オークション・プラットフォーム。今回のジョンドーによるオークションのタイトルは、「The Collection of Sebastien Jondeau: My Life With Karl Lagerfeld(セバスチャン・ジョンドーのコレクション:カール・ラガーフェルドとともに歩んだ私の人生)」で、3月3日まで世界各国からの入札を受け付けている。
生前、ラガーフェルドは、身近な人々に対して非常に気前が良かったという。頻繁に足を運んでいたパリのセレクトショップ、コレット(COLETTE)でショッピングをした際には、ジョンドーが気になるものを見つけても、それをラガーフェルドに知られるとカゴいっぱいに買い足してしまうことを心配して、あえて口をつぐむこともあったほどだという。「なかでも印象的だったのがガジェット類だ。ある日コレットに行ったとき、彼はiPadを30台ほど購入していた。まだ他の店ではiPadを扱っていない頃で、それを『シャネル(CHANEL)』のスタッフ全員に配っていた」と語る。「彼は、私や身近な親しい人たちに、本当に気前よくしてくれた。『これが好きか?あれは欲しいか?』と聞いてきて、私が『いや、大丈夫です。もう十分持っています』と断ると、『そんなに遠慮しないでくれ』と返されてしまう」。
「ルイ・ヴィトン」の特注品や「シャネル」の希少アイテムも出品
注目のロットには、推定落札価格15〜25万ドル(約2325~3874万円)の、アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)が1985年に制作した「Chanel, from Ads」と題された絵画や、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」によるトースターやテーブルリネン、カトラリー、クリスタル製サーモスを収納できる特注の“朝食用スーツケース”が並ぶ。後者は2002〜03年頃に制作されたもので、10〜20万ドル(約1550~3100万円)での落札が予想されている。
「ルイ・ヴィトン」の朝食用スーツケースはもともと、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)LVMHグループ会長兼CEOのがラガーフェルドに贈ったものだ。ジョンドーによれば、ラガーフェルドは旅先に必ず、お気に入りだったフランスのサンドイッチパンブランド「アリーズ(HARRYS)」のパンを持参し、アメリカ滞在中はニューヨークのザ マーサー ホテル(The Mercer Hotel)が冷蔵庫に用意してくれる「I CAN’T BELIEVE IT’S NOT BUTTER」のマーガリンを塗って食べていたという。なお、ザ マーサー ホテルはラガーフェルドとファレル・ウィリアムスが親交を深めた場所でもある。ファレルはのちに、「シャネル」の広告キャンペーンやスニーカーコラボレーション、カプセルコレクションにも参加することになった。
ファッション愛好家たちが競い合うことになりそうなのが、「シャネル」2014年春コレクションの“グラフィティ”バックパックだ。すでにコレクターから高い人気を誇るこのバッグは、ジョンドーが旅の必需品として愛用していたもので、自身とラガーフェルドのパスポートをはじめ、本人いわく“クレイジーな”アイテムを詰め込んでいたという。
写真家ヘルムート・ニュートン(Helmut Newton)の代表作である1981年“モンテカルロシリーズ”からのヌード作品2点も出品される。ラガーフェルドはジョンドーに3点セットを贈ったが、そのうち1点は特別な思い出があるため手元に残すという。きっかけは、ジョンドーが10代の頃、ニュートンの“ワンダーウーマン”のポスターを部屋に飾っていたと打ち明けたことだった。長年の憧れを語ったジョンドーに対し、ラガーフェルドはほどなくしてオリジナル作品を贈ったのだ。
そのほか、ラガーフェルドが晩年に信頼を寄せたメンズウエアデザイナー、エディ・スリマン(Hedi Slimane)によるブルゾンや、「ゴヤール(GOYARD)」のトランク、「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」のゴールドジュエリー、「バンフォード(BAMFORD)」がカスタムしたポール・ニューマンダイヤル仕様の「ロレックス(ROLEX)」“デイトナ(Daytona)”なども出品する。
最も珍しい品物の一つが、2014年に「ルイ・ヴィトン」が創業160周年を記念したプロジェクト「The Icon and the Iconoclasts」のために制作した、専用スタンドとトランク付きのサンドバッグだ。このバッグは限定25点で販売され、ジョンドーのものはシリーズのNo.2だ。本人は、「手元に置いておきたかったのですが、置く場所がなくて」と語る。
ラガーフェルドは、「シャネル」のスポーツ関連製品のテストもジョンドーに任せていた。その中の一つである黒のカーボンファイバー製サーフボードは、予想落札価格1万〜1万5000ドル(約155~232万円)とされている。このサーフボードはラガーフェルドのサイン入りで、実際にジョンドーがサン・バルテルミー島で頻繁に使用していたものだ。
オークションに出品するものは、すべてがラガーフェルドからの贈り物というわけではない。2016年にジョンドー自身が購入した、コレットと「ベスパ(VESPA)」コラボレーションの一点物のスクーターも出品され、これは1万〜1万5000ドル(約155~232万円)での落札が見込まれている。
「ジュピター」のグローバルセールス責任者ケイトリン・ドノヴァン(Caitlin Donovan)は、このオークションを「友情と忠誠心、そしてラガーフェルドが体現した文化的影響力の“生きた記録”」と表現する。「今日のコレクターが求めるのは、物語と作者の存在が感じられる品々だ。製品自体の質の高さと文化的意義が重なるとき、市場は必ずそれに反応する。今回の出品物の多くは、ファッション、アート、デザインに影響を与えた"起点"となる作品であり、ラガーフェルドの創造的な世界に近接していたという事実が、他には代えがたい物語性を与えている」と語る。ラガーフェルドが85歳で逝去してすでに7年が経つが、その遺産は今も色褪せることなく輝き続けている。「彼の美学と哲学は、年齢も時代も超えて、世代を越えて参照され続けるだろう」とドノヴァンは締めくくった。