Fashion. Beauty. Business.
初任給で“大人買い”したモノとは
ファッション&ビューティ業界にとって「ギフト購入」というのは、売り上げを左右する重要な要素の1つです。ビューティでいえば特に香水やハンドクリーム、美容機器などは、売り上げに占めるギフト購入の割合はかなり大きなものになっています。
ギフトにはもちろん、自分へのギフト(ご褒美)も含まれます。例えば私は、1年間頑張った自分へのご褒美と、次の年の運試しのため、毎年必ず福袋を購入しています。これまで百貨店の福袋で、「ルンバ」や輪島塗りのお盆(10万円相当)などを引き当ててきた強者でもあります。
今年買ったのは、グミの「シゲキックス」などで有名なUHA味覚糖の、お菓子83種類を20kg用の米袋に詰め込んだ福袋(1万円)です。商品のかぶり無しで、店頭ではあまり手に入らないレア商品もたくさん入っており、「こんな商品あったんだ!」という発見がありました。この企画を考えた人、その大胆な発想に脱帽です。ただ思っていた以上に「飴」が多く、いまだに食べきれず残っております……。
今回ピックアップした記事では、新入社員へのエールも込めて、業界人の先輩方が初任給をどのように使ったのかを紹介しています。自分へのギフトに使った人、家族への感謝の気持ちをギフトに込めて贈った人など、さまざまな使い道に注目です。中でも花王 化粧品事業部門 グローバルリーディングビジネスグループ長の山口聡一さんは、フルタ製菓の「セコイヤチョコレート」100個を“大人買い”しており、勝手に親近感を感じてしまいました。
「初任給で何買った?」 ファッション&ビューティ業界の先輩に聞いてみた

5月も下旬ですが、いまだに初任給の使い道に迷っている新入社員はいますか?私はその1人です(笑)。「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」の“タビブーツ”がどうしても欲しくて、財布とずっとにらめっこ。初任給は特別だからこそ、おいそれとは散財したくないものです。今回は、業界人の先輩方が初任給をどのように使ったのか聞いてきました。(この記事は「WWDJAPAN」2024年5月20日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)
寺田典夫
「ヨーク」デザイナー
Q1. 初任給の購入品・使い道
「ディオール オム(DIOR HOMME)」 2006-07年秋冬のジーンズ
Q2. 金額
7万〜8万円
Q3. 当時のエピソード
専門学生時代には高くて買えなかった憧れの 「ディオ―ル オム」(編集部注:現在は「ディオール(DIOR)」に統合)。その中でもやはりデニムが欲しくて購入しました。
Q4. 新入社員にアドバイス
初めは思い通りにいかないことが多いと思いますが、その経験がいつか全て自分に返ってくると信じて頑張ってください。
遠藤美和
エム&アソシエイツ 代表
Q1. 初任給の購入品・使い道
腕時計(ノーブランド)

Q2. 金額
3万円程度
Q3. 当時のエピソード
新卒入社は航空会社。CA時代はジュンアシダ(JUN ASHIDA)さんの制服を誇らしく着ていました。今、ご縁があってジュンアシダさんのランウエイショーを見せていただいているのが、感慨深いです。初任給で腕時計を買ったのは、職業柄、日本と現地の時刻が分かる必要があったので。いろいろ探している中で、大きさ、地球儀の文字盤など一目ぼれして買ったのを覚えています。
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尖った服が売れる店、代々木上原「デルタ」の強さの秘訣 「ファッションは生きる行為そのもの」
PROFILE: 大倉綾/「デルタ」オーナー兼バイヤー

仕入れの基準は服を通してデザイナーの哲学が見えるかどうか
「デルタ」は当時27歳だった綾さんが、夫の有記さんと一緒に東北沢に5坪の店舗をオープンしたのが始まり。綾さんは学生時代スタイリストを目指して文化服装学院を卒業しますが、実際にスタイリストの仕事で食べていくのはいばらの道。知り合いのブティックなどで販売員としてキャリアをスタートさせます。当時のお客さんから「あなたがお店を出したら通うわ」と言われたことに背中を押され、夫の有記さんと一緒に起業。2004年に東北沢に出店し、08年に現在の場所へと移転しました。
白を基調にした店内は、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)大丸京都店などを手掛けた建築家の永山祐子氏による設計です。以前はラグジュアリーブランドも扱っていましたが、今は「ノワール ケイ ニノミヤ(NOIR KEI NINOMIYA)」や「ワタル トミナガ(WATARU TOMINAGA)」「ハトラ(HATRA)」など国内ブランドが中心。顧客層は女性を中心に、20代〜50代までと幅広い。業界関係者以外にも、医療関係やクリエイター、SEなどさまざまな職業の人が訪れるそう。
「業界関係者にはよくカテゴライズしづらい店と言われますが、商品はあらかじめテーマを設けたり、スタイリングを想定したりすることもなく自由な感覚で仕入れています。お客さまもブランドにこだわりがなく、その自由さ楽しんでくれている方が多い。大事にしているのは、デザイナーの哲学や人柄が服を通して見えることです」と綾さん。
店作りの際に影響を受けたのは、ニューヨークのインディペンデントカルチャーだったと言います。今は閉店してしまいましたが、「オープニングセレモニー(OPENING CEREMONY)」をはじめ、ファッションと音楽、カルチャー全体が自然に交わるシーンの面白さにも心を動かされたそう。私自身も初めてニューヨークの「オープニングセレモニー」を訪れたとき、店内に並ぶ服1つ1つの強さに圧倒された記憶がありますが、現在の「デルタ」にも似た感覚を抱きます。
「地球環境と人権」をテーマにした姉妹店での挑戦
商品ラインアップはもちろんですが、国連(UNHCR)などへの寄付を目的としたチャリティーイベントや、選挙期間中には投票証明書を提示すると割引きになる「選挙割」を実施して投票を促すなど、ファッションを消費するだけで終わらせない店のアティチュードこそ私がこの店を推す理由です。

「ニューヨークに行った時にちょうど選挙期間中で、マーク・ジェイコブスがヒラリー・クリントンのTシャツを作って売っていて、これぞファッションと感じたのを覚えています。さかのぼれば、キャサリン・ハムネットやヴィヴィアン・ウエストウッドなどにも影響を受けてきました。ファッションは時代を映す鏡で、生きるという行為そのもの。そこを無視して服を売ることは、私たちには表面的に見える。店はコミュニケーションの場所で、社会とは切っても切り離せないんです」と綾さんは語ります。
20年には「地球環境と人権」をテーマにした姉妹店「ブレス バイ デルタ」をオープンしました。店内には「ベースマーク(BASE MARK)」によるアップサイクルプロジェクト「リ:マーク プロジェクト(RE:MARK PROJECT)」や、非動物性の素材にこだわる「ビーガンタイガー(VEGAN TIGER)」、社会的運動へのオマージュをテーマにしているパリ発の「カルネボレンテ(CARNE BOLLENTE)」などが並びます。
サステナビリティ担当記者として、環境問題や人権問題を伝える難しさは日々痛感していますが、「デルタ」はそれを軽やかにそしてかっこよく実践します。「私たちも最初は手探りでした。やっぱりモノが持つ力や見た瞬間に楽しさを感じることが絶対です。私たちが上手く提案しているというよりは、サステナブルな理念と両立した良いブランドが出てきたことが大きいと思います」。
コロナ禍のロックダウン中には、産業の環境問題や人権問題に関わる現状を店のスタッフと一緒に学び、「ファッションの根本を考えること」に時間を割いたと言います。「コロナ前から何を基準に仕入れるべきか分からなくなっていたんだと思います。そこである意味、視野を狭めることによってこれまでと違った角度から魅力を発見できた」。
サステナビリティとファッションを考える時について回るのが、「だったらもう服買わなければいいんじゃないですか?」という極論。あえて、というかちょっとすがるような気持ちでこの質問をぶつけてみました。すると綾さんは少し表情を変えて、「私たちはファッションの人間ですから、やめるってことはないんです」と一喝。「私はこの先もファッションが好きな人たちと一緒に未来を見たい。難しい課題があるからこそ、この場所でより良い未来に向かって一緒にクリエーションをしていきたい」と力強く答えてくれました。「デルタ」はファッションの持つ大事なパワーを感じさせてくれる店であり、持続可能な未来を一緒に試行錯誤してくれる心強いパートナーでもあると感じます。
20周年を迎える今年は、原点である音楽とファッションを交えた周年イベントも12月に企画しているそうです。ぜひ「デルタ」の世界観と、そこに集まるコミュニティーを体感してみてください。
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「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。
