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3人で「シャネル」のクリエイティブを加速する

3人のクリエイターが協業するというのは、それだけクリエイションが強くなりそうですが、「まとまるのか?」という疑問も残ります。起用のニュースから1年余り。3人でやっていけるビジョンが見えたのでしょうね。訳すのが難しい“アリュール”についてのコメントを興味深く読みました。

彼女たちの背景についてなど、関連記事の最後にある起用時のニュースも読むと理解が深まります。1人の巨匠ではなく、バックグラウンドが異なる複数のクリエイターの3人による「シャネル」ビューティの加速、楽しみです。

「WWDJAPAN」副編集長
小田島 千春
NEWS 01

「シャネル」の3人の若手メイクアップアーティストが語る、ガブリエル・シャネルが生み出したアリュールとスタイル

シャネル(CHANEL)」は3月12日(現地時間)、仏パリのパレ・ド・トーキョー(Palais de Tokyo)でイベントを開催し、壇上に登場したビューティのグローバル クリエイティブ パートナーを務める若手メイクアップアーティスト3人、アミィ・ドラマ(Ammy Drammeh)、セシル・パラヴィナ(Cecile Paravina)、ヴァレンティナ・リー(Valentina Li)が、創業者であるガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)への思いやメゾンを象徴する“アリュール(魅力)”の考え方について語った。

「シャネル」が若手アーティストからなるコミュニティー「コメット コレクティヴ(COMETES COLLECTIVE)」創設を発表した2022年10月以来、初期メンバーである3人がそろって公の場に姿を見せたのはこの日が初。「コメット」はフランス語で彗星を意味し、この言葉が呼び起こす無限の可能性から命名された。3人は当時「シャネル」から、同コミュニティーを“美の未来を形作る新進気鋭の才能集団”と説明を受け、シャネル メイクアップ クリエイティブ ストゥディオのクリエイションの勢いを加速させ、共同作業を通じて美の多元的なビジョンを手に入れることを使命に契約した。3人は現在、シーズナル・コレクションなどのプロジェクトに個別に取り組んでいるが、将来的には大きなプロジェクトで協働する予定だ。

3人で1つのブランドを
手掛けることへの思い

3人のアーティストのバックグラウンドは多様性に富む。スペインとガンビアの血を引くアミィ・ドラマはスペインで育ち、ロンドンに移住。セシル・パラヴィナはベルギーで生まれ、アントワープの学校を経てパリへ移った。ヴァレンティナ・リーは中国広西チワン族自治区出身で、北京とパリでメイクアップを学んだ。

リーは当初、3人のメイクアップアーティストが1つのブランドのために一体となって働くにはどうしたらいいかと考えていたという。「メイクアップアーティストは通常1人で仕事をする。クリエイションという点で、自分のビジョンを他人と共有することはない。それは少し孤独なことだ」と語った。彼女は集団の中で他人と仕事をすることに少し恐れを抱いていたため、ほかの2人の星座が自分の星座と一致するかを調べたという。しかし、自分のインスピレーションボードの中にパラヴィナの画像があり、書斎にはドラマが表紙を手がけた雑誌があるのを見つけた。「私たちは会って美について話し始めてすぐに意気投合した。私が抱いていた不安は完全になくなった」と振り返った。

アミィ・ドラマは、「シャネル」ではメイクアップアーティストが複数いることは特別なことではないと指摘した。現に、ドミニク・モンクルトワ(Dominique Moncourtois)とハイディ・モラウェッツ(Heidi Morawetz)は、1980年から約30年にわたり2人体制で「シャネル」のカラーコスメを作り上げてきた。「ガブリエル・シャネルにとってそれは異質なことではなく、彼女はさまざまなクリエイターとコラボしていた。私たちはメゾンが歩んできた道をたどっているだけ」と話した。

「シャネル」の“アリュール”とは?
24年春と夏コレクションの舞台裏

「シャネル」の創作では常に“アリュール”が鍵を握る。アリュールについて3人はこのように語った。セシル・パラヴィナにとってアリュールとムーヴメントは見分けがつかないものだという。「アリュールとは常に流れるように変化し、つかみ取れないものであり、美と結びついている。美とは何かを定義し枠にはめようとすると、それは途端に醜いものになり始める」と説明した。

ヴァレンティナ・リーは当初、アリュールの意味を知らなかったと打ち明けた。「私にとってそれはとても純粋なもの。ビーチで休暇を過ごす時の海の匂いなどの感情を伴う感覚的なもので、それは頭に浮かんだ素晴らしいアイデアかもしれない。全ての人がそれぞれにとってのアリュールを持っている」と話した。ヴァレンティナ・リーが手がけた2024年春の青を主役にしたメイクアップコレクションはすでに発売された。「海で泳いだ瞬間、海が私を呼んでいるような究極の自由、無限のインスピレーションを感じる。さまざまな色や形をした素晴らしい海の生物に囲まれ、孤立しているようで孤立していない。それは私たちにインスピレーションを与え続けてくれる」と話し、同コレクションでは海の生き物たちから着想したカラーを取り入れた。

アミィ・ドラマもアリュールについて「その意味を理解するのは難しい。何かを、あるいは誰かを動かすものかもしれない。だから私はそれをエネルギーに例えたい。物、人間、友情、あるいは場所の中に見出すものだ。それはメイクアップコレクションを作る上でとてもいい出発点だ」と語った。24年夏コレクションでは、彼女は自然の魅力とガブリエル・シャネルが操ったラズベリー、グリーン、パープルなどのカラーからインスパイアされた。

24年秋のコレクションは
“占い”にフォーカス

セシル・パラヴィナにとってアリュールは神秘の意味を持つ。「アリュールは無形だが、さまざまな側面がある」と語り、24年秋のコレクションではガブリエル・シャネルの個性の1つである占いへの情熱の要素を取り入れたという。「占い師のように、彼女はデザインの未来を予言していた」。パラヴィナは、「シャネル」の歴史的なコードを自分たちのものにするのは難しくなかったと説明する。「私たちは素晴らしいアーカイブにアクセスでき、ガブリエル・シャネルのアパルトマンにも行くことができた。このおかげで、すぐにガブリエルが体現していたエスプリに関する多くのものを手に入れられた」と語った。そして「ガブリエルのデザインに対する姿勢にとても感動した。彼女は決して妥協しない女性。とても誠実だった」と続けた。

ヴァレンティナ・リーは「ガブリエルは全てを持っていた。私たちが今行っているのは、美へのさまざまな視点を注入すること。その中に私たちなりの少しのひねりを加えている」と話し、アミィ・ドラマは「市場は新しいアイデアや新しいもので超飽和状態。大切なのは自分に忠実であり続けること。ガブリエル・シャネルに倣えば、彼女は本当に彼女自身に忠実であり続けた」と続けた。

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NEWS 02

リヴォルーション安藤社長「不正受給の意図は全くなかった」 雇用調整助成金に関する報道に釈明

宮城・仙台のセレクトショップ、リヴォルーションが雇用調整助成金約4320万円を不正受給していたと報じられた件について、このほど同社の安藤俊夫社長は「WWDJAPAN」宛の書簡で、一連の報道を事実と認めた上で「不正の意図は全くなかった」と説明した。

宮城労働局は今月7日、リヴォルーションが2020年6月から22年5月にかけて、従業員の休業について虚偽申告を行い、新型コロナに関連する国の雇用調整助成金約4320万円を不正受給していたと発表。地元の仙台放送や業界メディアなどが報じていた。

仙台のセレクトショップ「リヴォルーション」が雇用調整助成金約4320万円を不正受給 地元メディアが報道

安藤社長は「WWDJAPAN」宛の書簡で、「どういった制度の助成金であるのかを理解を深めることなく、顧問社労士に一任してしまった」と不正受給に至った背景を説明。「われわれは社労士が、当社が助成金受給の対象と判断した上で申請してくれていると認識していた。ただ労働局の調査を受けて社労士に確認したところ、『申請が通ったからには正しい申請である』という思い込みがあることが分かった。当社も顧問社労士も助成金制度について正しく理解しておらず、間違った内容で申請していることに気付くことができなかった」と述べた。同社は労働局の指摘を受け、ただちに助成金の返還命令に従ったという。

同社は再発防止策として、「当時の顧問社労士とは3月末で契約を解除し、新たな顧問社労士と契約を結ぶ」としている。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。