ファッション

「大島紬」の歴史と文化を伝える やまとが京都で展示会

やまと(東京、矢嶋孝行社長)と一般財団法人「きものの森」が主催する奄美群島日本復帰70周年記念展示「島と自然と大島紬」が、京都・烏丸の新風館・POP UPスペースで17日まで開催中だ。

鹿児島県の奄美大島は、琉球王国、薩摩藩、米国と3度の統治を経験したが、島民の強い団結力で多くの困難を乗り越えてきた歴史がある。とくに太平洋戦争終結後の米軍統治下では、物資や経済のみならず、文化や教育などすべてにおいて厳しい生活を強いられた。そんな中、高まりをみせた日本復帰運動は非暴力と無血を掲げた島民たちの熱い訴えが国を動かし、ついに1953年12月25日に日本復帰を実現。今年は復帰から70年の節目の年であり、本展は記念事業の一環として開催されている。

大島紬はどうやって作られるのか

会場では奄美と島⺠の歩んだ歴史をパネル展示すると同時に、一時は生産反数がゼロになるなど苦難の中でも途絶えることなく島を支え、島民の誇りとなってきた「本場奄美大島紬」のモノ作りを紹介する。機織り機(はたおりき)の実物を配置したほか、糊張りから染色、機織りの様子を伝えるショートムービーを放映。染料のもとになるテーチ木のチップや大島紬に実際に触れられるコーナーも設置した。

本場奄美大島紬は、丈夫でシワになりづらく、精緻な絣や泥染めによる特有の風合いとツヤが特徴だ。柄のモチーフには、ソテツやハブなど島に群生する自然や動植物、ザルなどの生活道具が取り入れられているものが多い。

工程は30以上にも及ぶ。整経した絹糸を糊付けし、天日乾燥させた後、絣の模様を作るために1度目の織り「締め機」を行う。その後、自生のテーチ木での下染めと、鉄分を多く含む泥による泥染めを繰り返すことで深く美しい漆黒の色ができあがる。2度目の織りでは、針と指先を用いて経絣糸を1本1本調整し、経(たて)と緯(よこ)の絣を手で正確に合わせていく。このすべてが手仕事で複雑かつ繊細なため、1反ができあがるまで短くても10カ月を要するという。

「均等できれいな生地に織り上げるために、例えば織工さんは、その日の湿度にあわせて糸の張り方を変えないといけない。それぞれの職人の研ぎ澄まされた感性と熟練の技によって1反の大島紬が作られている」と、やまとの広報担当の山井茜さんは話す。

ただ、最近は作り手の高齢化と後継者不足が深刻化し、最盛期に約30万反だった年間生産数は3000反まで落ち込んでいる。そこで、1999年から累計約10万反の本場奄美大島紬を販売してきたやまとは、2018年に行政と連携して職工を育成する「本場大島紬技術専門学校」を開校した。今年5月には、龍郷町とパートナー協定を締結し、技術の発展と後継者育成の問題に取り組む。

パリでも和装のポップアップ

会場内では、奄美大島の織元と共にやまとが開発した今夏のオリジナル新作をはじめ、日本復帰70周年記念ゆかたと同生地のシャツやトートバッグなど限定グッズを販売。また、奄美大島を拠点に活躍する画家・絵本作家のミロコマチコさんが、泥染で染めた布をキャンバスに奄美の自然を描いた色鮮やかな作品も展示されている。オリジナルグッズは会期後、オンラインストアでも販売する予定だ。

「国内のみならず、観光客をはじめとした海外の方にも奄美のモノ作りや自然を知っていただき、未来につなぐ機会にしたい」と山井さん。同社は、海外進出の第一歩として、24年1月からの半年間、パリのマレ区に初のポップアップショップを開く。訪日客に人気の高い仕立て上がりのきものや羽織を中心に販売する。「きものを通してエキサイティングな世の中をつくる」(山井さん)というビジョンを海外にも広める挑戦だ。

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