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高額な指名料という選択があっても良い

 京極琉・代表は例外的かもしれませんが、信頼されているヘアアーティストは、それなりの指名料を頂戴すべきだと思います。ファッションやビューティ業界のみならず、日本は対価であっても金銭の話をするのが無粋と思われがちですが、その考えから改めるべきとも思っています。

 もちろん、それは選択肢の話。だからこそ、指名料などを頂戴しないという選択があっても良いと思っていますが、一方で頂戴する人をとやかく言うのは、それこそ無粋です。その道の未来を託す後輩のことを考えれば、そう気づくでしょう。違うでしょうか?あなたは下のニュース、率直にどう思いましたか?

「WWDJAPAN」編集長
村上 要
NEWS 01

ヘアアーティストの京極琉が指名料を16万5000円に改定 国内最高クラスに

 ヘアアーティストで、ヘアサロン「サロン リュウ キョウゴク(Salon Ryu Kyogoku)」の代表を務める京極琉氏は5月1日、指名料を16万5000円に改定した(5月1日以前から指名している顧客は改定なし)。

 料金改定に関して、同氏は「日本美容を世界発信する先鋒役として現状に満足することなく、より一層厳しい目で京極琉をジャッジしていただきたい。そんな熱い思いから料金改定を致しました。日本美容業界の教育のために力を注ぎ、そして日本から世界をリードできるような美容師の教育、商品作りに注力するためにも、1件1件のクオリティーを高めるべく、覚悟とともに料金改定に踏み込みました」と理由を綴った。

 また、改定の理由の1つに“時間”をあげ、以下のようにコメントした。「一人一人のお客さまと真剣に向き合い、“なりたい”をかなえて参りましたが、京極琉がサロンでお客さまの満足のいくヘアスタイルをかなえる時間にも限りがございます。職人としてのクオリティーは絶対に下げたくありません。私が作るヘアスタイルはオートクチュールです。真剣に、丁寧に時間と技術を使います。そうなると有限の時間の中で対応できるお客さまの人数は限られてしまいます。最高なラグジュアリーを提供するために、指名料の見直しをさせていただきました」。

 欧米と比べて、日本の美容師のカット料金・指名料金は低いと言われている。世界でも最高クラスの技術力を持っているにも関わらず、料金が低いのは業界の課題の1つとされており、その壁の打破に挑む京極琉氏の取り組みは注目を集めている。

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NEWS 02

レナウン破綻から再出発の「ダーバン」 パターンオーダーに活路

 小泉(大阪、郷原文弘社長)傘下オッジ・インターナショナルが展開する紳士服の「ダーバン(D‘URBAN)」が復調している。2023年春夏シーズンはコロナ禍の終息でスーツ需要が回復し、前年比25%増で推移。ビジネスシーンでの一張羅を求める客に向けた、パターンオーダーの強化が奏功している。
 
 同ブランドは20年5月のレナウン破綻後、大阪の老舗・小泉が「アクアスキュータム(AQUASCUTUM)」などともに事業を譲受。子会社のオッジ・インターナショナルが21年春夏から商品を展開している。

 「ダーバン」はレナウン時代、ビジネススーツ需要の低下による長年の不振から抜け出すことができなかった。「(事業を受け継いでから)しばらくは再起を目指すフェーズということもあり、商品の仕入れ面は慎重にならざるを得なかった」とオッジ・インターナショナルの企画担当者。既製スーツの仕入れを減らし、在庫リスクの少ないパターンオーダーに力を入れた。輸入生地のバリエーションを拡充し、百貨店でのオーダーフェアなど発信を強化した。「ブランドのメインターゲットである、40代後半〜50代の役職付きのビジネスマンから特に好評」という。ブランドの売上高に占めるパターンオーダーの比率は、レナウン時代の50%から65%まで高まった。

 23-24年秋冬は、パターンーオーダー用の生地仕入れ量を前シーズン比1.7倍、既成スーツの商品仕入れ量も同1.4倍にする。パターンオーダーをフックに獲得した客を、本来の強みである既成スーツの購買にもつなげていく狙いだ。既成スーツは価格帯ごと、ニーズに合わせてバリエーションをそろえる。8万〜10万円はエントリー品の位置付けながら国内素材を使用し、「新規のお客さまに『ダーバン』の品質を知っていただく入り口にする」。10万円以上のものはブランドオリジナルのインポート生地で仕立てる。海外のハイブランドと比較すれば値ごろな価格設定で、目の肥えたエグゼクティブ層にアプローチする。

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NEWS 03

カール・ラガーフェルドへのオマージュが満開 メトロポリタン美術館の「ア・ライン・オブ・ビューティ」現地リポート

 アメリカ・ニューヨークのメトロポリタン美術館で5月2日(現地時間)の朝、2019年に亡くなったカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)の偉業を讃える回顧展「ア・ライン・オブ・ビューティ」のオープニングイベントが行われた。メトロポリタン美術館コスチューム・インスティテュートの今年の特別展は、5日にスタート。7月16日までの期間限定でお披露目される。偉大なるデザイナーへオマージュを捧げる回顧展を一般公開に先駆けてリポートする。

メットガラ同日のプレスプレビューは
すでに熱気を帯びていた

 毎年エンターテインメントとしても注目の「メットガラ」当日の朝に行われた「ア・ライン・オブ・ビューティ」のオープニング。メトロポリタン美術館のエントランスは、カール・ラガーフェルドの横顔を模したイラストの大きなテントで覆われ、朝からセレブ待ちの人々やマスコミのカメラマンでごった返していた。オープニングイベントの会場も、立ち見が出るほど。カールにオマージュを捧げるべく、「シャネル(CHANEL)」に身を纏った人々があちこちで見受けられた。

 オープニングでは、今回キュレーターを務めたメトロポリタン美術館コスチューム・インスティテュートのアンドリュー・ボルトン( Andrew Bolton)や友人のカーラ・ブルーニ(Carla Bruni)が生前のカール・ラガーフェルドとのエピソードを交えながら挨拶した。オープニングにはアナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ(VOGUE)」編集長兼コンデナスト(CONDENAST)アーティスティック・ディレクターをはじめ、トム・ブラウン(Thom Browne)の姿もあった。

 本展では、1950年代から生前最後となった2019年のコレクションから厳選した200点以上の作品がカールの直筆のデッサンとともにトリビュートとして展示されている。「シャネル」「フェンディ(FENDI)」「クロエ(CHLOE)」、そして自身のブランドとなる「カール・ラガーフェルド」といったさまざまな特徴を持つブランドを多彩なアイデアと精緻な手仕事で未来を見据えたデザインとして形にしてきた様子が垣間見える。一人のデザイナーの功績は、まるでファッションの一つの時代を切り取ったかのような見応えだ。

曲線が織りなす対比のクリエーション

 ドキドキとした心持ちで会場へ足を踏み入れると、カールの華麗なデッサンの様子を映し出したスクリーンが出迎えてくれた。今回の回顧展でもほとんどのルックにデッサンが添えられているが、彼のクリエイションはデッサンから始まると言っても過言ではないほど、要となるものなのだろう。ちなみに「ア・ライン・オブ・ビューティ」の展示スペースのデザインは、安藤忠雄が手がけている。両者の出会いは1996年というが、ラガーフェルドのアトリエを再現した展示スペースの中にも安藤の本が置かれているなど、生前から交流があったという。今回は直線と曲線が生み出すダイナミズムを表現している。

 展示スペースの最初の部屋は、カールのデッサンを緻密な手仕事によって具現化してきたプルミエールたちがラガーフェルドとの思い出をフランスの映像作家ロイック・プリジェン(Loïc Prigent)によるインタビューで語った映像とともにコレクションが紹介されている。ファーやスパンコールがさまざまなテクニックによってルックに落とし込まれているのを間近で見ることができるが、カールという一人のデザイナーが「シャネル」「フェンディ」「クロエ」のメゾンの特徴を捉えながら、プルミエールが最高のテクニックで仕上げているチームプレーに感嘆する。

 テーマによってさまざまな部屋が登場するが、「ア・ライン・オブ・ビューティ」はロココ時代の画家ウィリアム・ホガース(William Hogarth)の「美の解析」から着想を得ている。カールのコレクションは直線と曲線からインスピレーションを得て二面性を強調していると言われているが、本展でもさまざまな曲線に焦点をあて、「フェミニン・ライン/マスキュリン・ライン」「ロマンティック・ライン/ミリタリー・ライン」「ヒストリカル・ライン/フューチャリスティック・ライン」など、対比するテーマを掲げたコレクションが一つの部屋に飾られている。実際に一つ一つのルックを間近で目にすると、オートクチュール並の精緻な技術に驚かされる。また「シャネル」や「フェンディ」など、元々メゾンが持つイメージをラガーフェルド流にデザインに落とし込んでいるのは理解できるが、一つの回顧展を通して見ると、そのクリエーションの幅の広さを改めて感じることができる。

常に未来を見据える。
ファッションには遊び心を

 約65年にも渡ってファッションデザイナーとしてトップを走り続けてきたカールは固定概念に捉われず、常に未来を見据えてきた。さまざまな年代が入り混じる回顧展を見回しても、全てのルックがタイムレスなものに見えてくる。メゾンのアーカイブを大切にしながらも、ファッションの楽しさを忘れないデザインを盛り込むなど、ここでも二面性を大切にしている。特に「カール・ラガーフェルド」では自身をキャラクター化するなど、ちょっとした皮肉や遊び心を最大限に活かしている。

 多くの偉大なるデザイナーの中でもさまざまなメゾンを手がけ、一時代を築いてきたカール・ラガーフェルド。彼へのオマージュとなる「ア・ライン・オブ・ビューティ」をお見逃しなく。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。