Fashion. Beauty. Business.

TOPICS

小指で持てるような道具で生活

 ウルトラライト(UL)登山、知っていましたか?恥ずかしながら私は知りませんでした。だから余計にこの記事を興味深く読みました。山で何週間か過ごすのに「小指で持てるような道具で生活できてしまう」って、一体どういうことなのでしょう?

 「数字は本当に大事なものを見えづらくしてしまう」「ブランドにはその時々の器ってものがあると思う」など、ブランドビジネスについてもいろいろ考えさせられる良記事です。リンクの記事を読んで興味を持ったら、来たる5月8日号の特集もぜひ。

「WWDJAPAN」副編集長
小田島 千春
NEWS 01

登山界隈の大人気ブランド「山と道」 夏目彰社長に聞く“ウルトラライト”な経営

有料会員限定記事

 ここ数年、山を歩いていると特徴的な丸いロゴの付いたパンツやザック姿の登山者と本当によくすれ違う。ロゴの正体は、“ウルトラライトハイキング(装備を軽くし、自然をより濃密に体験することを志向する登山スタイルのこと。以下、UL登山)”のガレージブランドの代表格「山と道」だ。2011年の立ち上げ以来、売り上げは年々1.5倍のペースで伸びているといい、もはやガレージブランドとは呼びづらい存在感だ。4月のある日、神奈川・鎌倉のアトリエを訪れると、社員たちが食堂に集まってランチタイムの真っ最中。家族のように和気藹々とした雰囲気の中、夏目彰社長に取材した。(この記事は「WWDJAPAN」5月8日号からの先行公開です)

WWD:前職はアートブックのプロデューサーだ。ブランドを立ち上げた経緯は。

夏目彰 山と道社長(以下、夏目):23歳から「ガスブック」を作り続けてきましたが、年齢を重ねて、仕事でうまくいくこと、いかないこと、いろいろ経験するうちに、自分の中でアートに対する思いが少しずつ変わっていきました。そんな時、山にガツンとハマっちゃったんです。僕は器用な人間ではないので、熱中しているものじゃないとうまくできない。山に行くことを仕事にすれば、いつでも山にいられる。ブランドとしてモノ作りすることに関しては全くの素人でしたが、熱中しているものに飛び込んで形にしていくことが一番いいと思いました。妻が衣装制作の仕事をしていたことも大きいです。アート好きな若い世代はどんどん出てくる。僕が前職に居座り続けるよりもバトンタッチしていく方が、業界にとってもいいだろうと考えたんです。

WWD:登山の中でも、“UL登山”に傾倒した理由は。

夏目:当時、(自然の中で最低限の道具と暮らした)19世紀の米国の作家・思想家、ヘンリー・ソロー(Henry Thoreau)の本を読み込んでいました。彼の考え方を具現化したようなハイキングのスタイルがULです。それまでは漠然と、人生では車とかいろんなものを持たなきゃいけないと思っていましたが、UL登山はシンプル・イズ・ベストを追求して、「本当に必要なものは何か」「少ないほうがより豊か」と問いかけてくる。実際に山を何週間か歩いてみても、小指で持てるような道具で生活できてしまう。必要なものは意外と限られているんだと実感しました。それをみんなにも伝えたいと思ったのと、夫婦でゆっくりモノ作りがしたいと考えて、ブランドを立ち上げました。

WWD:どんな商品から作り始めたのか。

夏目:自宅マンションでザックとサコッシュから作り始めて、最初に発売したのはスリーピングパッドです。基本的に、世の中に既にあるものは作りません。他の製品をリスペクトして、満足していればそれを使う。「これがあればハイキングの体験が変わる」「これがないから必要」と感じるものを作っています。立ち上げ当時は軽量の山道具がそもそもなくて、作るしかありませんでした。米国のごく一部のガレージメーカーしか作っておらず、それを日本の山で使うと違和感がある。例えば米国はトレイルが砂であることが多いですが、日本は岩場のため地面にザックを置くと傷付きやすい。日本は雨が多く、多湿で汗もかきやすい。

 欧米にはUL登山道具のDIY用に素材やパーツを売っているウェブサイトがいくつかあります。初期はそこで材料を買っていました。全て自宅生産で始めましたが、消費者向けに展示会を開いて受注を取っていく中でそれでは手が回らなくなり、ザックなら背面パーツだけ縫製工場に依頼するようになりました。ブランド立ち上げ後、割とすぐだったと思います。

「売り上げ計画は立てない」

WWD:立ち上げから順調だったようだが、ブランドとしてここまでどのような進捗できたのか。

夏目:立ち上げるときに5カ年計画を立てましたが、黒字化のタイミングを含め、全てが計画通りに進んできました。長期計画はそのとき立てただけで、それ以降は立てていません。設立10年を迎えた21年に再度長期の事業計画を立てようかと思いましたが、やめました。売り上げ計画もないし、社員からの売り上げ報告も中止しました。社内で何らかの指標はこれから作っていこうと思っていますが、数字は本当に大事なものを見えづらくしてしまう。実際は金額よりもどんな人に何をどんなふうに売ったかの方が重要なのに、売り上げが立っていると「俺は偉い」と思ってしまいがちです。麻薬みたいな部分があると思います。数字よりも最高の購買環境を目指していくことを重視しており、それができていれば(ビジネスは)うまく循環していく。数字だけを目指すようなことはしたくないので、お金は脇に置いています。

この続きを読むには…
残り4909⽂字, 画像6枚
この記事は、有料会員限定記事です。
紙版を定期購読中の方も閲覧することができます。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
トップページに戻る
NEWS 02

「RTFKT」が体験型イベントを開催 等身大の動くクローンやNFTガチャも

 4月30日、東京ビッグサイト西ホールでGEISAI#22 & Classicが開催された。GEISAIは村上隆とカイカイキキが企画・キュレーションする入場無料の体験型イベントで、数々のアーティストが出展する。審査員たちが一つ一つのブースを周り、受賞アーティストを決定するほか、会場では開催記念NFTや限定トレーディングカードが配布されるなど、アーティストや“ムラカミファン”にとってはかなりホットなイベントだ。今回はGEISAI特別審査員として「アーティファクト(以下、RTFKT)」の共同創始者ブノワ・パゴット(Benoit Pagotto)、スティーブン・ヴァジリー(Steven Vasilev)、クリス・リー(Chris Lee)の3人が参加し、一層の注目を集めた。3人とも昔からの“ムラカミファン”で、これまでにも「RTFKT」と村上のコラボNFTやグッズを発表している。

 「RTFKT」も同日、隣のスペースでスペシャルイベントを行った。こちらもGEISAI同様、事前登録不要・入場無料のイベントで、設営はパリコレ等のファッションショーを手掛けるプロダクション、ビュロー・べタック(BUREAU BETAK)が指揮を取った。

 早速受付でパスとチケットを入手し会場に入ると、目の前に大型サイネージが現れる。人気プロジェクト「クローン X(CLONE X)」や新プロジェクト「アニマス(ANIMUS)」の制作過程、村上とのコラボNFTのイラスト画、フォージングNFT“RTFKT x Nike Air Force 1”などの紹介映像が放映された。

 通路にはフューチャリスティックな光のランウェイを作り、その先にはNFTホルダーがフォージング(フィジカルアイテムに変換)することで入手できる限定フィジカルスニーカー“RTFKT x Nike Air Force 1”10種が並ぶ。現在オンライン上でフォージングイベントを実施している最中ということもあり、ホルダー達の期待を一層膨らませた。

 さらに続くランウェイの先には、「クローン X」と「アニマス」のモーションキャプチャーを設置。来場者が近づいたり写真を撮ろうとすると、スクリーン上のアバターが反応する仕組みだ。

 最終セクションにはNFTホルダー待望の“ミントマシーン”を設置。受付で得た“ミントトークン”チケットと引き換えに1人1回チャレンジできるガチャガチャのようなもので、本イベント限定のNFT“RTFKT × TAKASHI MURAKAMI × GEISAI EVENT”を入手できることから、閉場ぎりぎりまで人だかりができる大盛況となった。4種のNFTの中からランダムで当たる仕組みで、中でも「クローン X」ホルダー達に人気だったのは、自分が保有するクローンを“ムラカミ”仕様にできる“MURAKAMI PILL”。筆者はゴールドの“FROWER BLADE”が当たった。

 NFTを作り、ホルダーだけのさまざまな体験を提供し、さらにフィジカルなアイテムを入手できるーー今回の会場構成は「RTFKT」がNFTブランドからファッションブランドへと成長してきた道のりを表現しているという。

 出口付近では、来場者へのギフトとして、“スワッグトークン”チケットと引き換えで本イベント限定のTシャツとポスターを配布。来場者だけの特別な“フィジカル”体験を盛り込んだイベントの様子はTwitch「RTFKTstudio」アカウントで配信されており、共同創始者3人のインタビューも視聴できる。

 息をつく間も無いまま、22時からは新宿歌舞伎ホールで、GEISAIの開催を祝して「RTFKT」と村上によるアフターパーティーを実施。1ホルダーにつき同行者1人のみが参加できる限定イベントだ。貸切にした中央エリアは「RTFKT」と村上のNFT「Murakami.Flowers」仕様にアップグレード。ファンたちとカジュアルな交流を楽しんだ。

 前日の29日には、渋谷・T4 キッチンで「クローン X」ホルダー限定のミートアップを実施。ホルダー+1人のみが参加できる前夜祭で、「クローン X」ファンが制作したアイテムやアニメーションが展示される中、翌日に控えたGEISAIに向けてヒートアップ。

 創始者のブノワとスティーブンの誕生日が近いことからサプライズでバースデーケーキを用意したものの、残念ながら創始者らは翌日の準備のため急遽欠席。会場にいたホルダー達がバースデーソングを歌う様子を撮影し、連日忙しく働く3人にエールを送った。

この続きを読むには…
残り0⽂字, 画像0枚
この記事は、有料会員限定記事です。
紙版を定期購読中の方も閲覧することができます。
定期購読についてはこちらからご確認ください。
トップページに戻る

最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。