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ナイキCEO、大いに語る
デジタル戦略やウィメンズ強化、アスリートとのスポンサー契約、「ナイキ」の50年後などのビジネスの話から、メンターやキャリアといった自身のことまで幅広く網羅しています。なんと9000字!誰が読んでも、どこかに刺さるメッセージがあると思います。
私は“スポーツ=「ナイキ」”の話と、キャリアの上で大切にしていることが刺さりました。ちゃんと「ルルレモン」の躍進や卸の削減についても突っ込んでいて、さすが米「WWD」。今日と明日も「ナイキ」キーパーソンのインタビューが続きます。どうぞお楽しみに。
ナイキのジョン・ドナホーCEOが語る、巨大企業のパーパスと舵取り キーパーソン3人が見据える今とこれから【前編】
ナイキ(NIKE)のジョン・ドナホー(John Donahoe)社長兼最高経営責任者(CEO)が、2020年1月にマーク・パーカー(Mark Parker)前会長兼社長兼CEO(当時。現エグゼクティブ・チェアマン)からバトンを受け継いで2年余りが経った。同社に加わる前、ドナホー社長兼CEOは米IT企業サービスナウ(SERVICENOW)の社長兼CEOを、それ以前は米大手リセールEC企業イーベイ(EBAY)のCEOを08年から15年まで務めている。14年からはナイキの社外取締役も務めていた。経営者としての経験が豊富な同氏に、設立50周年を迎えた巨大スポーツメーカーのパーパスやミッション、将来の展望、リーダーシップ論などについて、米「WWD」が聞いた。
WWD:CEOに就任した20年1月は、ナイキがドーピングやセクシャルハラスメント問題の影響で揺れている時期だったが、当時の心境について。
ジョン・ドナホー=ナイキ社長兼CEO(以下、ドナホー):ナイキのミッションは、世界中のアスリートにインスピレーションとイノベーションをもたらすこと。そして、体があれば誰もがアスリートだと考えている。ナイキの社外取締役だったころから、こうしたパーパスとミッションに触れて感銘を受けていたので、フィル(・ナイト共同創業者兼名誉会長、Phil Knight)とマークに入社を誘われた時には、それならばと承諾した。
私は現在61歳だが、世界はこれまでにないほど多様化している。その一方で、国内外でさまざまな分断も起きている。スポーツはそうした違いを越えて人々を結びつける数少ないものの一つであり、ワールドカップやオリンピックはその好例だろう。スポーツはルールを決めてプレーする公平な場なので、D&I(ダイバーシティとインクルージョン、多様性と包括性)がかなり実現されている環境だと思う。また、今の時代だからこそさらに重要かもしれないと思うのは、スポーツでは誰かと競い合い、ライバル視し、場合によっては嫌い合っても構わないということだ。ただし、ルールには従わなくてはならないし、試合が終了すれば握手をして互いの健闘を称え合う。こうした理由で、私は世界にもっとスポーツが必要だと感じている。
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化粧品各社の“中国頼み”、そろそろ再考の時?
ここ数年、多くの化粧品企業は売り上げを伸ばすために急成長中の中国市場を頼ってきた。ヨーロッパや米国など業績が低迷するほかの地域に代わって中国市場に注力することも少なくない。実際、中国の化粧品市場は他地域の損失をカバーするほど爆発的な成長を続けてきた。
ユーロモニター(EUROMONITOR)によると、2020年の中国の化粧品市場の売り上げは750億ドル(約9兆5250億円)を超え、21年は888億円(約11兆2776億円)まで拡大した。一方、米国の20年の売り上げは927億ドル(約11兆7729億円)に落ち込み、21年は1026億ドル(約13兆302億円)に回復した。現在、中国の化粧品市場は世界で2番目に大きな規模にまで成長したのだ。その結果、多くの化粧品企業は中国市場を“最も注力する市場”と位置付けてきた。
ジェフリーズ(JEFFERIES)のステフ・ウィシンク(Steph Wissink)アナリストは、「ロレアル(L'OREAL)が数年前から中国市場の成長に目を付け、いずれ米国と同等もしくは上回る規模になるとの考えを持っていた。中国市場は元々アクセスしにくく、閉鎖されているイメージが強かった。しかし越境ECのTモール国際(T MALL GLOBAL)が、現地の厳しいルールやインフラ構築の労力に縛られることなく数十億の消費者に迅速にリーチすることを可能にし、一気に中国市場への扉が開いた」と話す。
これをきっかけに、ロレアルやエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)など大手化粧品企業が中国ビジネスに本腰を入れるようになった。しかし最近は両社ともに中国市場の成長が鈍化している。アナリストによると、新型コロナウイルスによるロックダウンと、中国政府が急激な経済成長にブレーキをかけたことが影響しているという。スタイフェル(STIFEL)のマーク・アストラチャン(Mark Astrachan)=アナリストは、「20年9〜12月期の売り上げが前年同期比65%増と成長幅が極端に大きかったことも関係あるだろう」と分析する。
ウィシンク=アナリストによると、3月の中国の化粧品売り上げは前年同期比6.3%減だった。プロクター・アンド・ギャンブル(PROCTER & GAMBLE)も1〜3月期は減収となり、中でも「SK-II」の中国ビジネスが苦戦したという。ロレアルも中国のロックダウンの影響を受け、エスティ ローダーも1〜3月期は中国事業が売り上げを落とした。HSBCのシアラ・オシェイ(Ciara Oshea)=アナリストは、バイヤスドルフ(BEIERSDORF)も中国事業が難航していると指摘する。「『ラ・プレリー(LA PRAIRIE)』の中国売り上げの75%は未だオフラインによるもので、上海のロックダウンや海南島への渡航制限が大きな影響を及ぼすだろう。ただし、その影響は一時的なものになるだろう」。
中国で成長が落ち込んでいるのはビューティに限らない。「政府が安定した経済成長を持続させるために、高級品の消費に関する措置をとり始めている」とウィシンク=アナリスト。中国市場に依存して急成長を成し遂げ、株主を満足させ、株価を上げてきた企業にとって、この経済成長のスローダウンは大きな問題になりうる。ウィシンク=アナリストは「多くの企業にとって今最も懸念すべきことは、成長ドライバーとしての中国の影響が大きすぎる点だ」と警告する。「エスティ ローダーのビジネスをジェット機に例えることが多いが、これまでビジネスを動かす巨大なエンジンは中国とトラベルリテールだった。しかし近年はトラベルリテールの売り上げが落ち込み、その代わりをD2Cが担っている」。
ディストリビューターのスーパーオーディナリー(SUPERORDINARY)のジュリアン・リース(Julian Reis)最高経営責任者(CEO)によると、ロックダウンのほかに新興ブランドが大手ブランドのシェアを奪い始め、CAC(Customer acquisition cost、顧客獲得単価)も高騰しているという。「今の中国ではマーケティング費用をどんどん上げなければ売り上げを落としてしまう」と競争が激化していることを指摘する。中国市場はこれからも成長を続けるだろうが、そのスピードが落ち込み始めている今、ほかのマーケットにも目を向ける必要があり、中でもシンガポールやマレーシア、タイなどの市場はポテンシャルがあると説明する。「これらの国のインフラは整っており、社会階級の幅が広い。マーケット自体は大きく、消費者は新しい製品やブランドを求める意欲を大いに持っている」。
リースCEOは中国市場について、「5〜10年の長期で戦略を立てるべきだ。短期的な売り上げばかりを気にしてブランド力を構築できずに失敗するブランドが多い」とアドバイスする。
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「WWDJAPAN」12月8日号は、2026年春夏シーズンのメンズ・リアルトレンド特集です。この特集は、国内アパレル企業やセレクトショップのクリエーションの“今”を捉えるために、毎シーズン続けている恒例企画です。今回は特に、「シャツの着こなし」に焦点を当てました。夏の暑さがますます厳しくなる影響もあり、26年春夏の欧州コレクションでは、シャツの見せ方がより自由で軽やかになり、着方そのものがクリエーションとして際立つブランドが目立ちました。その発想や潮流は、国内のリアルクローズ市場ではどのように解釈され、取り入れられているのでしょうか。
