ファッション

アメリカ、中国、韓国で多種多様に活躍する3人が語る「次世代が育つ業界のためにできること」

 ルミネと「WWDJAPAN」によるファッション&ビューティ業界の次世代を応援するプロジェクト「MOVE ON」は3月2日、「ファッション&ビューティ業界をみんなで動かす」ことを目指し、業界人から消費者まで門戸を幅広く開放するフォーラム「Next Generations Forum」を開催する。当日登壇するのは、「WWDJAPAN」が続けてきた次世代の逸材発掘プロジェクト「NEXT LEADER」で選出する注目株と、彼らを選ぶアドバイザーたち。国内からすでに選ばれている7人のアドバイザーに加え、今年は初めて米中韓の「WWD」とタッグを組み、それぞれの国からアドバイザーを立て、リーダーも選出する。さまざまなフィールドで活躍する3人に、「MOVE ON」や候補者に望むことやリーダー論を聞いた。

次世代を育てるには、「自らロールモデルになることが一番の近道」

 韓国発のファッション&ビューティも日本の生活者に幅広くファンを抱える中、2007年にパリ・コレクションでデビューしてストリートウエアとモードを融合させたファッションを届ける「ジュン・ジー(JUUN.J)」を手掛けるジュン・ジー(Juun J)クリエイティブ・ディレクターは、「自らロールモデルになることが、次世代に影響を与え、業界を変えていく一番の近道だ」と語る。「私を含め、同年代の仲間たちのこれまでの経験は、次世代に伝えていくべき価値のあるもの。実体験をもとに、次世代のリーダーを教育し、同じ失敗をするリスクを減らす助けになりたい。また夢に向かって努力していくきっかけの一員でありたい」と、今回プロジェクトへの参加を決めたという。

 自身が駆け出しのころの目標は、「あらゆる障壁や世代を超えて愛されるブランドを作ること」。「目標を設定することはキャリアの中で重要なステップで、今日にも生きている。ゴールがあるとそれに向かって最適な方法を模索するので挑戦につながる。挑戦は課題の発見につながって、それを乗り越えようと努力に変わっていく。新しい目標を絶えず設定し続け、達成していくことが、よりクリエイティブであるための原動力となって私を前進させるものだ」と語る。

 日本のファッション&ビューティ業界については、「イノベーターやデザイナーの育成に力を入れていることで世界的に知られている」とコメント。現在拠点を置く韓国や、日本だけでなく世界から新しいリーダーが育つ業界になって欲しいと願いを胸に、業界の“当たり前”への挑戦や、革新的かつ経済的にポテンシャルを感じる若手たちの登場に期待を込めている。リーダーとしての素質やビジョン、目的だけでなく「ファッション業界を良い方向に導けるか」に注目する。

中国市場でリーダーで在り続ける鍵は、「変化」と「適応」

 ニューヨークの「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」でキャリアをスタートして20年、米国と中国をまたいで活躍するレジーナ・ゼトー(Regina Szeto)=デルセー・チャイナ最高経営責任者(CEO)。時代は大きく変わった中、「変わらないのは生活者とつながる方法を模索し、彼らの生活を見据えたバリューを創出することの大切さ」と説く。まだ若手だった当時、ゼトーCEOは街に繰り出し、人々が着ているものや読んでいるもの、買っているものを肌で感じ取ってブランディングに落とし込んでいった。そうした経験から、「世代や国籍を問わず共感を届けるには、まずつながりたい生活者像をよく理解することが必要。そうすることで初めて、ニーズがわかり、新しい挑戦に踏み出せる」ことに気がついたという。

 中国のファッション・ビューティ企業は、越境eコマースや、ソーシャルメディア上の強力な市場開拓を後押しする政策とともに、メキメキと成長している。業界をけん引する“リーダー世代”になってもなお、「常に学び続けることで、変化する生活者とブランドの間にエモーショナルな関係性を築くことができるはず。オンライン市場の可能性に適切に目を向け、『変化』と『適応』を続けなければ」と、歩み続ける大切さを体現する。

 リーダーとして大切なのは、「好奇心や学ぶ意欲が旺盛で、常に世の中に問いを投げかけていること。目的意識がはっきりしていて、確かなビジョンを持っていることだ。これからは個人としてパフォーマンスを発揮することも、チームとして活躍することも必要になってくる」と言う。「オンライン上の国境はいつになくオープンになっている。次世代の日本ブランドにとっては、ブランドの位置付けやターゲットを明確にして確かな訴求をすることで中国や欧米の生活者にもリーチできるチャンスだ。私にとって日本は昔からイノベーティブなアイデアや商品が飛び交う中心だった。『MOVE ON』への参加を通して次世代のリーダーたちやそのブランド、企業、コンセプト、アイデアに触れ、それを海外にも紹介するきっかけにしたい」と述べた。

「若い世代を育てることは業界の死活問題」

 「次世代のリーダーはあらゆるところに存在している」と語るのは、米「WWD」でファッションとビジネスやテクノロジー、政治、金融に精通するエヴァン・クラーク(Evan Clark)副編集長。日頃から業界を鋭くウオッチする同氏は、「新しいアイデアや画期的な考えはいつも大手企業から生まれるわけではない。業界が進化を続けるには若い世代が声をあげられる環境と、それを聞く体制が必要だ。若い世代に光を当て、育てることは業界の死活問題に関わる」と言う。

 クラーク副編集長が描くリーダー像は、「マルチタスクに非常に長けているか、飛び抜けて1つのことに優れている人」。生活者の価値観の変化をキャッチし、「業界は今、洋服の作り方からそれらが持つ意味、ジェンダーのラベリング、使用する素材の一つ一つまで多くのものを改めて見つめ直す段階にいる。大きなトレンドを生み出す力を持つ日本のファッション&ビューティ業界のリーダーたちも、模索しながら成長していくだろう。深いルーツを持つ文化を持ちながら、新しいイノベーションも果敢に取り入れていくはず。次世代のリーダーたちはメタバースなど新しいものを取り入れていく上で、伝統的なものと新しいものを融合・調和させていくことが鍵となる」と期待をにじませる。「業界で“成功する”ということは、必ずしもトップに立つことや市場で力を持つこと、経済力があることだけではない。何よりも大事なのは、ビジネスを続ける力。変化を続けていくためにも、まずは存続することが重要だ」と語る。

 自身のこれまでの歩みから現在を振り返り、「記者としてキャリアをスタートしたときは、世界やビジネス、ファッションについて学び、何か大きなことがしたい!と漠然と思っていた。しかし何がしたいかはよくわかっていなかった。一方で今はほとんど逆のことが起こっている。メタバースからサステナビリティ、ダイバーシティの推進など、進めるべきことがたくさんありすぎて、どこから手をつけたらいいか分からないほどだ。じっくり時間をかけて、でもスピーディに、今起こっていることから何かを学び、意味あるものを吸収して、新しいチャレンジをしていく人が活躍していくだろう」と述べた。


【INFORMATION】

 3月2日には東京・新宿のルミネゼロで、「Next Generations Forum」を開催します。選出されたネクストリーダーを称えると共に、アドバイザーも交え、ファッションやビューティの未来やカルチャー、サステナビリティなどをテーマにトークセッションを行います。ファッション&ビューティ業界のプロフェッショナルはもちろん、一般生活者の方も楽しんでいただける内容となっており、LIVE配信も行います。

問い合わせ先
ルミネ代表電話
03-5334-0550