Fashion. Beauty. Business.
合成ダイヤの可能性にワクワク
松屋銀座の新ジュエリーブランド「エネイ」、気になってました。「セルヴォーク」などを手掛ける田上陽子氏がディレクションを担っている点も、期待度高まります。ラボグロウンのダイヤモンドはサステナブルなだけでなく、これまで天然だと躊躇するような大胆なデザインにも挑戦できるようで、いろいろ可能性が広がりそうですね。
ダイヤモンドをはじめとする宝石は、洋服と違って2次流通でも価値が下がりにくく、海外ではリサイクルダイヤモンドビジネスも活発になっているそうです。若年層のサステナへの意識の高まりももちろん、コロナ禍でそもそも採掘が難しくなってから、天然・新作だけにこだわらないダイヤモンドビジネスはさらに盛り上がりそうです。
キーマンに直撃 松屋がラボグロウンダイヤモンドに注力するワケ
松屋銀座本店(以下、松屋)は8月末に、ラボグロウンダイヤモンド(以下、ラボグロウン)に特化して独自のジュエリーブランド「エネイ(ENEY)」とブライダル需要に対応するラボグロウンに特化した「ネクストダイヤモンド ニューヨーク(NEXT DIAMOND NEW YORK、以下ネクストダイヤモンド)」2つのショップを1階にオープンした。同時に、各ECサイトもスタート。この2つのブランドで、売り場・EC合わせて通常のこの売り場面積の約1.7倍の年商が目標だ。プロジェクトのキーマンである古屋毅彦・松屋代表取締役専務執行役員 経営企画室長、経理部管掌、環境マネジメント部担当に聞いた。
WWD:ラボグロウンの存在を知ったのはいつか?それに対してどう思ったか?
古屋毅彦・松屋代表取締役専務執行役員 経営企画室長、経理部管掌、環境マネジメント部担当(以下、古屋):2019年に米ニューヨークの知人を通してジュエリーブランド「ニューヨークからの贈り物」を運営している二宮美生GFM & カンパニー代表に出会ったのがきっかけだ。2020年2月に1週間「ニューヨークからの贈り物」のポップアップショップを開催したところ好評だった。二宮さんから、ラボグロウンの話を聞いて興味が沸いた。それがどういうものか、研究を重ねて、新しい市場ができると感じた。
WWD:独自で「エネイ」というジュエリーブランドを立ち上げたきっかけは?
古屋:昨年の自粛期間中に、自粛明けに差がつく何かを考えたいと思っていた。店舗休業で、われわれも取引先も厳しい。今後の百貨店ビジネスはどうなるのかと考え、新しいチャレンジをするべきだと考えた。そこで、島田成一郎・松屋 事業推進部スタートアップ事業課長と話して、「自社ブランドを作ることにチャレンジする」という意見に合意した、ラボグロウンと出合い、それは、SDGsという時流の流れにも合っている、今後市場が広がる可能性も大きくチャレンジしがいがある。島田を中心とした現場が本気で、「いいブランドを作りたい」と動き始めたので、背中を押したような感じだ。チャレンジするなら、リスクがあっても勝算率が高く、市場が広まる可能性を持っているものがベストだと考えた。
WWD:「エネイ」を立ち上げた手応えは?
古屋:ビューティブランドの「セルヴォーク(CELVOKE)」などを手掛ける田上陽子さんにディレクションをお願いし、外部を巻き込めたのが良かった。今まで、“松屋オリジナル”的なものが多かったが、若年層にアピールするには、外部の力が必要だと考えた。ブランドのメディア発表後に行った一部顧客などを招いた販売会では予想の2.5倍を売り上げたので、期待以上の手応えを感じている。
WWD:「エネイ」のラボグロウンダイヤモンドの調達は?ラボグロウンを使用するメリットは?
古屋:「ネクストダイヤモンド」を運営する二宮社長と契約して入手する。“ハーフムーン”というシリーズは、石を真っ二つに割ったデザイン。天然だと躊躇するが、ラボグロウンだとこのような大胆なデザインにもチャレンジできる。
WWD:同時に「エネイ」と「ネクストダイヤモンド」2つのブランドを導入する理由と目的は?
古屋:ラボグロウンの市場を作って行きたいという志から。「エネイ」は、” エニー(ANY)”と“エナジー(ENERGY)”を組み合わせた造語だ。ファッション感度の高い女性にデザインでアピールし、使っているのがラボグロウンで、なおさらいい、かっこいいと思ってもらいたい。それで自然にラボグロウンのジュエリーブランドとして育っていけばいいと思う。「ネクストダイヤモンド」は、石が主役でデザインはベーシック。ブライダルなど、人生の節目に対応するブランドだ。「エネイ」と「ネクストダイヤモンド」2ブランドを展開することで、幅広い層にアピールできる。松屋の顧客は新しいものに対する関心が高いので、どちらも響くと思っている。
ラボグロウンによるジュエリー市場全体の活性化に期待
WWD:これら2つのブランドでラボグロウンに注力する理由は?同じ売り場にコーナーがある日本のジュエリー企業の反応は?
古屋:既存のジュエリーブランドは、いまだに、天然とラボグロウンが混ざることを懸念しているところが多い。松屋としては、天然の市場とラボグロウンの市場は別々で、それを消費者に理解してもらいつつ、ラボグロウンの市場を作っていくつもりだ。国内ジュエラーからは、「これら2つのブランドの導入によりジュエリー市場が活性化すれば」とポジティブに捉えられ、応援してくれている。
WWD:ラボグロウンを扱うメリットとデメリットは?
古屋:メリットは、他の百貨店と差別化できる点。また、消費者にとって選択肢が増えるという点。デメリットは、ほぼないと考えるが、天然の価値がラボグロウンの影響で落ちると思われるのは良くないので、天然とラボグロウンの価値、その違いを、きちんと説明していく。
WWD:ラボグロウンが天然と競合する可能性は?
古屋:「エネイ」も「ネクストダイヤモンド」も、新しい価値を提供するブランドだ。天然のオプションという選択肢だとは考えていない。それぞれのブランドの価値を理解して購入する顧客を増やすことにより、ブランドとして成長し、ジュエリービジネスが全体的に広がればいいと思っている。
若手の登竜門「LVMHプライズ」 優勝は全会一致でロンドン発「ネンシ ドジョカ」に決定
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)は9月7日、2021年「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE以下、LVMHプライズ)」の優勝者を発表した。優勝したのはアルバニア出身のネンシ・ドジョカ(Nensi Dojaka)。ドジョカが手掛けるのは、自身の名前を冠したロンドン発のウィメンズブランドだ。
「ネンシ ドジョカ」はランジェリーからインスパイアされたスリップドレスが有名で、グラフィカルなカッティングやストラップのディテールが特徴。モデルのベラ・ハディド(Bella Hadid)などをファンに持つ。ドジョカには、30万ユーロ(約3900万円)の賞金とLVMHグループのエキスパートによる1年にわたるコーチングを受けられる機会を獲得する。
14年から「LVMHプライズ」の審査員を務めているデザイナーのマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)は全会一致でドジョカが選ばれたと明かした。「覚えている限りでこんなことは初めてだ」とコメントしている。「LVMHプライズ」の立役者であるデルフィーヌ・アルノー(Delphine Arnault)=ルイ・ヴィトン エグゼクティブ・バイス・プレジデントも「プレゼンテーションが素晴らしかった。彼女のデザインはユニークな視点を備え、オリジナリティーにあふれている。品質も非常に高く、同時にとても謙虚だ」と称賛した。
他方、今年の“カール・ラガーフェルド審査員特別賞”は票が割れた結果、コルム・ディレイン(Colm Dillane)「キッドスーパー(KIDSUPER)」デザイナー、ルイ・チョウ(Rui Zhou)「ルイ(RUI)」デザイナー、そしてルクハンヨ・ンディンギ(Lukhanyo Mdingi)=デザイナーが受賞した。特別賞を受賞した3人は、それぞれ15万ユーロ(約1950万円)とLVMHグループからのメンターシップ・プログラムの参加資格を獲得する。
今年の「LVMHプライズ」には110カ国から1900通の応募があった。参加資格は40歳以下で、最低でも2回のコレクションを披露・販売していることが条件だ。
YU HIRAKAWA:幼少期を米国で過ごし、大学卒業後に日本の大手法律事務所に7年半勤務。2017年から「WWDジャパン」の編集記者としてパリ・ファッション・ウイークや国内外のCEO・デザイナーへの取材を担当。同紙におけるファッションローの分野を開拓し、法分野の執筆も行う。19年6月からはフリーランスとしてファッション関連記事の執筆と法律事務所のPRマネージャーを兼務する。「WWDジャパン」で連載「ファッションロー相談所」を担当中「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。