Fashion. Beauty. Business.
ワクワク、ドキドキの通信簿
最初の記事は、米「WWD」恒例のファッション通信簿。この手の記事については最近、時々批判的なツイートを見かけます。「本人に失礼なのでは?」というニュアンスです。
言わんとしていることは、よく分かっているつもりです。でも米「WWD」を創刊したジョン・B・フェアチャイルドは、「シリアス(真面目な)」と同時に、「いたずらっぽさ」も必要だと説きました。私たちが扱うのは、ファッション。楽しいものだからです。この記事は、「いたずらっぽさ」の範疇に収まるものであり、悪意に基づくものではない。私は、そう思っています。
ただ、「いたずらっぽさ」と「悪意」の境界線は、人それぞれ。時代によっても変わります。読み違えたくありません。敏感であり続けなければ、敏感であろうと心掛けなければ。そう思っています。
楽しい記事ですが、同時にドキドキもする記事。それがこの、ファッション通信簿です。本当に通信簿みたいですね(笑)。
ファッション通信簿Vol.65 スクリーン史上最もおしゃれな悪役は誰!? 名女優たちのファッションを米「WWD」が勝手にジャッジ!
第65回は、歴代のテレビドラマ&映画から、女優のユマ・サーマン(Uma Thurman)、メリル・ストリープ(Meryl Streep)、レイチェル・マクアダムス(Rachel McAdams)、ジョディ・カマー(Jodie Comer)、グレイス・ジョーンズ(Grace Jones)、グレン・クローズ(Glenn Close)、サラ・ミシェル・ゲラー(Sarah Michelle Geller)、シャロン・ストーン(Sharon Stone)が登場。気軽なコメディから背筋が凍るスリラーまでーー名女優たちが演じた悪役ファッションに対する評価はいかに!?
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ユマ・サーマン/「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」:拍手!
サーマンが演じたポイズン・アイビー(Poison Ivy)は最も有名なバットマンの悪役のうちの1人で、ハロウィーンのコスチュームとしても人気が高い。燃えるようなオレンジ色の髪の毛と彫刻のように印象的な眉は、たくさんの美容系ユーチューバーにも影響を与えたに違いない。グリーンのコルセットに透け感のあるタイツとアームカバーを合わせた装いは、舞台の上でもパリのランウエイでも通用するだろう。ハイファッションをまとった悪役の夢が叶いそうだ。
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メリル・ストリープ/「プラダを着た悪魔」:驚き!
「アンドレア、パトリック・デマルシェリエ(Patrick Demarchelier)に電話して!」――ストリープはオリーブグリーンのファーコートの下にミニマルな黒いドレスを着用し、目立つベルト、オレンジ色のシルクのスカーフ、そしてお洒落なグレーの手袋でアクセントを付けて、往年のファッション誌編集長役をそつなく演じた。シルバーの髪の毛と冷たい態度も相まって、すべてが恐ろしいほど完璧に仕上がっている。
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レイチェル・マクアダムス/「ミーン・ガールズ」:めまいがする
校内の最強女子グループ、“プラスチックス(The Plastics)”のリーダーであるレジーナ・ジョージ(Regina George)を演じたマクアダムス(写真右)は、2000年代初頭の雰囲気をしっかりと体現した。ミニスカートに細身のタンクトップ、おまけにピンクの大量使いーースターバックス(STARBUCKS)のお飾りはもちろんのこと、こうしたスタイルはかつての10代女子の憧れだった。身に覚えのある人たちが結構いるかも。
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ジョディ・カマー/「キリング・イヴ/Killing Eve」:とても素敵!
風船ガムのようなピンク色のお人形さん風チュールドレスを着た暗殺者の女以上に恐ろしい人は、この世に存在しない。ファッションを用いてキャラクターの持つ二面性を表現した場合、視聴者は「どんな一面があってもおかしくない」と、受け入れてくれるものだ。それはさておき、とても素敵なドレスだ。
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グレイス・ジョーンズ/「007 美しき獲物たち」:とても素敵!
「007 美しき獲物たち」のグレイス・ジョーンズ以上に素晴らしい悪役はいない。ものすごい魅力や活発さ、そして現代にも通用する80年代風のスタイルが合わさったことで、たちまちアイコニックなキャラクターが誕生した。黒のレオタードにレッグウォーマーとアームウォーマーを着けたスタイルは、かなり激しい格闘シーンにうってつけな装いだ。
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グレン・クローズ/「危険な情事」:驚き!
タートルネックと黒のパンツにベルト付きの黒いレザーコートとグローブを合わせたスタイルは、破滅を引き起こすための地ならしとしては完璧かもしれないーーなんと言っても、交際相手への憎悪からペットのウサギを煮てしまったのだから。一方で80年代風のパーマヘアはとても魅力的だ。
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サラ・ミシェル・ゲラー/「クルーエル・インテンションズ」:驚き!
サラ・ミシェル・ゲラーは「クルーエル・インテンションズ」で、優雅なアップタウン住まいが似合う若くてリッチな悪役を演じた。賢い上にファッションセンスもあって、尚且つ殺人の才能まで兼ね備えているとは--まさに理想的なイットガールだ。ダークブラウンのヘアスタイルとタイトなブラックドレスは、シックでありながら狡猾さも感じられる。とても印象的な役柄だった。
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山本寛斎の弟子が渋谷スクランブル交差点で前代未聞のショー 「一歩踏み出す決意表明」

渋谷からファッションとアートを発信する「渋谷ファッションウイーク2021春」が3月15日に開幕した。31日までの期間中、商業施設や路面店などを活用してアートを展示する回遊型イベントや、街中の壁面にルック画像を貼り付ける企画などを実施する。
初日には、初参加の「カンサイ ヤマモト(KANSAI YAMAMOTO)」が渋谷スクランブル交差点を舞台とした無観客ショーを配信した。新作とアーカイブで構成したコレクション“TOMORROW”を着用したモデルたちが、深夜の渋谷を闊歩する映像だ。コレクションは、渋谷駅の通路に展示されている岡本太郎の作品「明日の神話」(1968-69年制作)に着想した。
同ブランドは山本寛斎が他界した昨年7月以降、山本と活動を共にしてきたデザインチームがブランド事業を継続。今回もデザインチームが中心となりコレクションを制作した。ブランドを受け継いだクリエイティブ・ディレクターの1人、高谷健太にファッションウイーク参加の経緯と同コレクションに込めた思いを聞いた。(記事最後でコレクション動画を視聴可能)
師匠の言葉に突き動かれた
前代未聞への挑戦
WWD:渋谷ファッションウイークへの参加を決めた経緯は?
高谷健太クリエイティブディレクター(以下、高谷):渋谷ファッションウイークを運営する東急さんからのオファーがきっかけだ。昨年手掛けた「渋谷スクランブルスクエア」のクリスマスツリーの演出も評価してもらい、「目玉企画のランウエイショーをぜひお願いしたい」と熱い依頼を受けた。われわれは「誰もやったことのないことにチャレンジすること」と「世の中に元気を届けること」を目指し、企画を実施してきた。コロナでネガティブなイメージさえ生まれる渋谷をもっと元気にしたいと、ファッション・ウイークへの参加を決めた。
WWD:今回のランウエイの演出の肝は?
高谷:渋谷スクランブル交差点というロケーションだ。オファーを受けた翌日、800枚以上の写真を撮りながら渋谷を歩き回り、あらゆる場所で街のエネルギーをもらった。セルリアンタワーには能楽堂があり、文化村ではオペラ鑑賞ができる。その中間には欲望渦巻く円山町が位置する。形状は起伏に富み、谷底の交差点で人と文化が自然と重なり合う。渋谷を象徴する交差点でやりたいと思うのは自然な流れだった。通常なら撮影許可が下りない場所だが、多くの人に協力いただき、撮影にこぎつけることができた。本当に感謝している。
WWD:ルックの半分をアーカイブから選出した意図は?
高谷:アーカイブと新作は、いわば過去と未来。新たな一歩を踏み出す“決意表明”のようなコレクションにしたかった。アーカイブは、ファッション・ウイークのテーマ“CROSS OVER”を意識し、チベット密教の柄からロシアのイコン画の刺しゅう、インドの刺し子、江戸時代のボロなど、時代と場所を超越したモチーフのアイテムを選んだ。新作は、第五福竜丸(“明日の神話”に描かれた船)に着想した竜や渋谷の写真をコラージュしたグラフィック、街中の落書きをイメージしたタギング、明治神宮に咲く花菖蒲の柄など、自分たちが渋谷の街で発見したエネルギーあふれるモチーフを散りばめた。デザイン構想に時間をかけた分、服作りは2~3週間の突貫工事。でも、だからこそぜい肉がそぎ落とされ、純度の高いクリエイションになった。
WWD:寛斎さんのデザインをどのように受け継いでいく?
高谷:寛斎のクリエイションは継承できるものではないと考えている。生前「あなたは私になれないし、私はあなたになれない」と言っていた。これが全てだ。ただ、僕は寛斎と23年一緒に動いてきたし、他のクリエイティブ・ディレクターも同じくらいの時間を共にしてきた。意識せずとも、寛斎に似た部分がにじむだろう。
WWD:寛斎さんとの思い出は?一番刺激を受けた言葉は?
高谷:「苦しくても前へ前へ」というメッセージ。あとは、「人が財産」という言葉だ。寛斎が亡くなっても絶えず仕事の依頼が舞い込んでくるのは、彼から刺激を受け、面白いと感じてくれた人がいるから。今回のショーも「寛斎さんのためなら」と、モデルや関係者が手弁当で作り上げたものだ。「何事も最後は人なのだ」と痛感している。思い出はたくさんありすぎて、どれを言えば良いかわからない(笑)。最後に同行した海外出張は、2019年10月に訪れたスコットランド・ダンディだった。そこには隈研吾さんが設計した博物館ヴィクトリア&アルバート・ミュージアム ダンディ(V&A Dundee)があり、「ここで来年ショーをやるぞ」と意気込んでいた。コロナによる渡航規制も重なり、寛斎の生前でのショーはついに叶わなかったが、われわれが必ず実現してみせる。彼の意志が消えることはない。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。