ファッション

「プラダ」のミウッチャとラフが学生たちと語り合ったことは? 21-22年秋冬メンズ発表後の対話を紹介

 「プラダ(PRADA)」は、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)が共に手掛ける初のメンズとなる2021-22年秋冬メンズ・コレクションをデジタルで披露した後、ファッションや建築、哲学などを学ぶ世界の学生たちからの質問に答えた。これは、事前にインターネットで募集した質問に答えた21年春夏ウィメンズ・コレクション後の対話を発展させたもの。そこには、2人の教育の力と次世代のクリエーター育成の重要性に対する強い関心が垣間見える。

 まず、セント・マーチン美術大学でファッション・ジャーナリズムを学ぶ学生から「コラボレーションの中で意見の不一致が生じた場合、どのように解決するのか?」と聞かれ、ミウッチャは「私たちの意見が食い違うことは、あまりない」と回答。「どちらかが本当に嫌いなことはやらない。だから、それはとても明確なこと」だと続ける。ラフも「私たちはアイデアについての対話を絶えず続けている。だから、もし意見が合わないことがあればスキップして他のことに取り組むというのは、自然なことだ。意見が一致することの方がもっとたくさんあるからね」と話す。

 ただし、どちらかが説得された場合は例外だ。ミウッチャは、これまでずっとピンストライプが嫌いだったというが、今回のコレクションでは随所に取り入れた。そして、「マインドを変える可能性があるのは、いいことだと思う。私はいつでも話し合い、自分の意見を変えることにオープン。自分が持っていないアイデアを提示されることで、別の角度から考えることができる」とコメント。「私たちは自分たち自身でコラボレーションすることを決めたし、誰かに強いられたわけではない」とし、ラフとのアイデアの交換を楽しんでいるという。

 今回2人が対話を行ったのは、さまざまな色や質感の素材で飾られた複数の部屋からなるショーのセットだった。その中で、空間デザインの重要性について聞かれたラフは、新型コロナウイルスのパンデミックによる制限と移動の自由が失われたことを「私たちは想像もしなかったような状況に直面している」と表現。「対話の中で、私たちは絶えず自分たちのファッションを社会と結びつけて考えているから、大きな影響があった。そんな中で、このコレクションに対してストーリー性のある建築的文脈を生み出すことは重要ではなく、感情的文脈の方が大事だという結論に行き着いた」と説明する。

 一方、ミウッチャは「私たちはデザイナーとして、人々の生活に興味を持っている。服はそのほんの一部で、環境がもっと重要であることは間違いない。だから、人々の生活を定義するものが、ファッションにとって興味深いのは当然のこと。そして、建築は私たちが持っている感情やアイデアを表現し、伝えるのに役立つ」と語る。触感や官能性につながる素材を用いた屋外か室内か分からないような抽象的な今回のショー空間も「自分たちのメッセージを定義するために欠かせなかった」という。

 そして、文化服装学院でファッションデザインを学ぶ学生からは「前回の質疑応答で私たちの生活の中でのテクノロジーのインパクトの大きさについて話していたが、今回のコレクションではどのような技術革新が最も影響を与えたか?」と聞かれ、「正直なところ、このコレクションは主にテクノロジーとは別の側面と向き合った。人間の感情や私たちが今生きている世界と強く結び付いたコレクションだからね」とラフ。今シーズンは、テクノロジカルなものの反対にある感覚や触感、コントラストに目を向けたという。ミウッチャは人々とつながるための方法としてテクノロジーを捉え、その点で依存していることを認めつつ、「テクノロジーを私たちの感情やアイデアを可能な限りベストな方法で伝えるためにツールとして使わなければいけない」と述べる。

 続いて、話題に上がったのはロングジョン(ボディースーツ)だが、2人はそこに21年春夏ウィメンズのキー要素であった“ユニフォーム”としての意図はないことを強調した。そして、ラフはショー映像の中でロングジョン姿のモデルたちが踊っていたのは、もともと計画されていたものではなく自然発生的に起こったと明かし、「その空間にいる彼らがよころび、ワクワクしていることを感じられた」と話す。

 そんなラフにとって最も答えるのは難しかったのは、ハーバード大学デザイン大学院で建築を学ぶ学生からの「誰のためにデザインしているのか?」という質問だった。これに対し、彼は「自分のブランドでの最初の15年は大抵、誰かのことを念頭に置いてデザインしていた」と認めた。ただ、その後状況は変わって、「あまりに幅広くなった観客を定義することはますます難しくなってしまった」ことに気付き、「今は興味を抱いたり、つながりを感じたりする人のためにデザインしている。私は人々がどのように服を着こなすかに惹かれ、そこからインスピレーションを得ている」と説明する。

 一方、ミウッチャにとっては常にその反対だったとし、次のように語る。「私は常に服を物体として見ている。自分の好きなものや自分にふさわしいものをデザインしてきたけれど、誰が自分の顧客であるかなんて考えたことはない。要は、自分の理に叶うかだった。そして、その服を買った人々は、自分たちの着たいように着る。もし私の作った服が似合っていない人に対して腹を立てるかと彼らに聞かれても、決して服の着こなしで人を判断することはない。信じられないかもしれないけど、本当のこと。私が気付くのは、特にインスピレーションを与えてくれるようなものあったときだけ。それに、私はアイコンというアイデアが嫌いで、アイコンを持ったことがない。私がより世界に対してオープンな姿勢で、知的で、現実に接していれば、それは人々にとって理に叶うことだと思うから、(その服を)買ってくれると思う」。

 また、弘益大学高等研究国際デザイン学校の学生からの「どのように自分の好みと商業的な価値、現在のトレンドのバランスをとっているか?」という質問に対しては、次のように答えた。「たとえクリエイターであっても、私たちの仕事は服を売る商売。だから、私たちの仕事は、最大限クリエイティブであることと同じくらい、人々のニーズに応えることでもある。つまり、自分のアイデアに忠実でありながらも、人々が欲しくなるものを生み出すこと。それこそが最も重要なポイントで、ファッションデザイナーである限り、あらゆる面で表現の自由やクリエイティビティーとリアリティーの組み合わせに向き合うことになる」。

 そして、自分の好みとトレンドのどちらに従うすべきかと聞かれると、「常に自分自身に従うべき。私にとっては、それが極めて重要であり基本なことでもある」とキッパリ。「服はあなたのアイデアやパーソナリティーを表現するもの。かつて、どうすればエレガントになれるかと聞かれたことがあるけれど、重要なのは自分自身を知り、自分らしくあること。そうすれば、自分が本当に何を求めているか、何を必要としているかは分かる。自分自身を知ることはそんなに簡単ではないから、難しいと思う。でも、それはどんな人の生活においても基本となるもの。自分の仕事や考え、自分がどんな人間であるかを選ばなければいけないようにね。それができたら、ファッションを選ぶのは簡単。大切なのは “人”だけで、服はその人の生活に役立てるもの」だと続ける。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。20年2月からWWDジャパン欧州通信員

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