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ビジュアル・マーチャンダイジングがウィズコロナ時代に必要なわけ

 営業が再開されて店頭に活気が戻りつつあるが、かつてのようなにぎわいを取り戻し、さらに発展するためには“集客装置”が必要だ。そこで名乗りを上げたのが、ビジュアル・マーチャンダイジング(以下、VM)のプロフェッショナルであるVISUAL MERCHANDISING STUDIO(以下VMS)の堀田健一郎社長。堀田社長の言う、“VMの本質はコミュニケーションだ”の真意とは?旧知の仲であるラジーブ・シャルマ(RAJIV SHARMA)=マーク ジェイコブス ジャパン ジェネラルマネージャー(以下、GM)とのトップ対談から、VMの潜在能力を探りたい。

営業が再開された店頭で
VMはどう機能する?

ラジーブ・シャルマ=マーク ジェイコブス ジャパンGM(以下、シャルマ):自粛期間中にネットショッピングが活性化し、オンラインで事足りることに気付いた人も多い。だからこそ実店舗にはVMが必要だ。空間作りやその一部である販売員との会話を通じて、ブランドやショップの思考を感じてもらいたい。

堀田健一郎VMS社長(以下、堀田):コロナショックを受けて、僕の両親世代でもECで買い物ができるようになった。これからは、いっそう実店舗の力が試される時代だ。店舗をメディア化し、ますます個性を出していく必要がある。

シャルマ:事前にウェブでリサーチしてから買い物へ、という動きはさらに一般化するだろう。しっかり“助走”した上でたどり着いた店頭で、お客さまを落胆させないためにもVMが重要な役割を果たす。オンライン上で、われわれは常にターゲティングされている。つまり、自分の好きなものの情報は集まってくるが、“未知のもの”に遭う確率は減少している。通勤や通学の際に見かけるショーウインドーは、アナログに見えるがインパクトや気付きを与えるのに十分な装置と言える。

堀田:一方で、ビーコンを使った動線解析データなどによって什器の配置を換えたりディスプレーを替えたりと、デジタルとVMを融合した戦略も活発になるはずだ。

“VMの本質は
コミュニケーションである”(堀田)

堀田:僕が信念としているのは、“VMの本質はコミュニケーションだ”ということ。

シャルマ:確かにVMは、それまでそのブランドやショップのことを知らなかった人に気付いてもらうための、また既知の人には世界観や物語、コアバリューを伝えるためのツールだと言える。

堀田:MDを視覚化するという考え方から“VMD”としていたものを、2012年ごろから“VM”と呼ぶようになった。かつてはMDが用意した商品をもとにビジュアルを作っていたが、“どう見せたいのか?”からイメージを膨らませ、それに合わせて必要なSKUをMDに伝えて商品を準備するフローになった。VMSでは、この動きに合わせてSNSでの打ち出し方も提案している。VMDがMDに管理されMDのために活動していた時代から、現在はマーケティング活動の中で重要な役割を担い、新客を作り、同時に既存客を維持しながら売り上げを伸ばすためのキーファンクションとして機能し始めている。

VMのプロ人材を養成する
「VMアカデミー」を今秋開校!

 VMSは東京で9月5日から、大阪で9月12日から、ビジュアル・マーチャンダイザーを養成する「VMアカデミー」を開校する。従来のVMDの考え方から脱却し、最新のVM手法を理解して実践できるプロの人材を育てるという。第1弾となる基礎編では、初歩的な陳列テクニックなどは身に付いていることを前提に、今日的なVM知識をレクチャーする。堀田VMS社長は、「座学のほかにデモストアを使ったワークショップ、受講生同士のグループディスカッションも行い、手と頭を動かしてVMの理解度を深めていく」と説明する。2時間×10回の座学と研修(ワークショップ)を修めると修了証書が授与され、さらにVMのスペシャリスト資格である「VMS認定ディプロマ」の試験を受けられるようになる。

 2021年度からは応用編の開設も予定する。「ラグジュアリーブランドやセレクトショップ、大手SPAメーカーのVM担当者をゲスト講師に、リアルなVM制作現場や彼らの知見や考えを聞くことができる場にする」という。

“VMを通じて生まれる客・
店・販売員に良い環境に期待”
(シャルマ)

堀田:シャルマGMと出会ったのは、VMの潮流が変化し始めた12年ごろ。僕がVM責任者としてルイ・ヴィトン ジャパンに入社し、シャルマGMは当時一番の規模と売り上げを持つショップの店長だった。そして、そこではスタッフ全員がディスプレー作りに携わっていた。“優秀なVMD担当者に一任する”がまだ主流だった時代に、シャルマ店長が先頭に立って販売員によるレイアウト変更を行っていた。全スタッフにブランドおよびショップのビジョンが共有されていなければできないことであり、VMを通じてコミュニケーションが取れていた。シャルマ店長がVM作業を通じて各スタッフの能力を見いだして伸ばしているのも分かり、とても感動したことを覚えている。VMSでも、VMは店舗スタッフ全員で行うことが大事だと訴えている。“VMの本質はコミュニケーション”と言ったが、VMはチームワークの結束や人材育成にも役立つ。

シャルマ:店長からしたら、VMは売り上げを期待して戦略的に作るもの。一方でVM担当者が重要視するのは美しさ。どうしてもアート的な感覚になる。またショップスタッフは、機能的で販売しやすい空間を望む。それぞれの主張をくむのは難しいが、良いバランスが取れれば良い売り場になる。だからこそVMでコミュニケーションを図り、皆が理解を一つにする必要がある。そうして生まれるのが、お客さまにとって気持ちのいい環境、スタッフが誇りを持って仕事ができる環境、売れる環境だと思う。

堀田:「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」のショップに行くと、VMでコミュニケーションしていることがよく分かる。VMの専門家が設営すればその瞬間は美しいだろうが、絶えず流動する店頭をどう維持し、時にアレンジしていくかも課題となる。

シャルマ:例えばECサイトはいくらトラフィックがあっても見た目は変わらないが、実際のディスプレーは人が触れば崩れてしまう。触れたくなるディスプレーに仕上がったことはうれしいが、繁忙期こそ多くのお客さまにきちんとしたものを見せたいもの。そこでスタッフは接客する者、ストックを補充する者、それらをフォローする者といったふうに連携しなくてはならない。これもVMというコミュニケーションツールがあってこそ実現する。

堀田:VMによって店舗フローに芯ができ、全スタッフが共通のゴールを目指せるようになる。VMは点ではなく面、いや立体になってこそ、その力が最大限に引き出される。

PHOTO : TAKUYA FURUSUE
TEXT : KAORI TOMABECHI

問い合わせ先
VISUAL MERCHANDISING STUDIO
03-3320-2053