ファッション

ポストコロナを聞く 「正常こそが危機」サステナブルファッション研究の第一人者ロンドン芸術大学教授が警鐘

 新型コロナウイルスが猛威を振るい、“異常”な状況下で人々の価値観に変化が生まれている。大切なものとは何か?幸せとは何か?――終息後の世界はどう変わるのか。そのときにファッション産業は?

 ファッションやテキスタイルにおけるサステナブルデザインを定義づけ、その方面の研究の第一人者として知られるケイト・フレッチャー(Kate Fletcher)=ロンドン芸術大学(University of the Arts London)のサステナブルファッションセンター(Centre for Sustainable Fashion)教授にメールインタビューを行った。

WWD:新型コロナウイルスによって、人々の価値観や思考方法にどのような変化が起こっていると思うか?そして終息後はどのように変化していくと思うか?

ケイト・フレッチャー=サステナブルファッションセンター教授(以下、フレッチャー):新型コロナウイルスのパンデミックによって、人々の価値観や思考方法は大きく変わりました。私たちが気づいたことは、私たちが望めば私たちはとても素早く、そして決断力を持って行動できるということです。(ロックダウンによって)人間はつながっているということ、生き抜くためには他者の行動に頼る必要があるということを感じさせました。

グローバライゼーションによるシステムが崩壊し、私たちは地形がとても大切だということにあらためて気づかされました。隣人(隣国)のこと、そしてローカルのサプライチェーンについても考えるきっかけにもなりました。

物事が変わるか?――多くの人たちが、感染のピークが過ぎ去り“正常”に戻ることがいかに大事かと話しています。しかし、環境活動家のグレタ・トゥーンベリ(Greta Thunberg)も言うように、“正常こそが危機”なのです。

WWD:そもそも無理が生じていたファッション産業はこれを機にどのように“最適化”されるべきか?

フレッチャー:この危機を好機ととらえてファッション業界を見直すことがとても重要です。未来の業界のフォーマットがどうであれ、終息後も存在し続けるであろう根本的なシステムの問題について、決して目を背けないことが重要だとこのパンデミックは教えてくれます。今こそ、ファッション業界の変化を阻む最大の障害である成長論理の問題と向き合い、公平で正しく長期的で、地球環境を最優先した入念なアプローチを考案するべきときなのです。

ファッション経済を再構築するにあたり、まず物質的な要求を減らすことが必要となりますが、化石燃料や輸入に頼ることなく、原料や労働力といったファッションを表現するためのツールをローカルレベルで調達できるようにする必要があるでしょう。

今はこれまで以上に、古い方法や決まり切ったおなじみの“解決方法”に逆戻りしてはならない時です。私たちは困難や不確かなものに立ち向かいながら問題に寄り添い、そして変化をもたらすための新しい論理、地球の論理(アースロジック)をファッション業界のために作り上げなければならないと感じています。

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