ブランド古着店「ラグタグ」を運営するティンパンアレイは、2018年4月にワールド傘下に入った。以後、ワールドのシェアード・リユース戦略の中核を担う企業として存在感を増している。「メルカリ」をはじめ、競合が激化する二次流通市場でどのように戦うのか。平野大輔社長に聞いた。(この記事はWWDジャパン2020年1月13日号からの抜粋です)
WWDジャパン(以下、WWD):メルカリに代表されるフリマアプリの浸透は、「ラグタグ」にとって脅威か?
平野大輔社長(以下、平野):むしろ追い風だ。メルカリの普及でリユースへの理解が加速度的に広がった。リユース市場全体が拡大し、従来の業界の狭い枠組みでは語れなくなった。市場拡大に伴い、リユースはセグメント分けされている。気軽に日用品を売るならメルカリ、ハイブランドの服を売るなら「ラグタグ」、高級バッグはコメ兵という具合にお客さまが使い分けている。「ラグタグ」のお客さまからの買取点数も増えているし、既存店の売上高も5%増(20年3月期、12月時点)で推移している。19年3月期の売上高は55億円。今期も5%ほどの増収を見込んでいる。
WWD:EC化率は?
平野:およそ35%。率もさることながら、古着店はオムニチャネル化が進んでいると思う。当社が扱う商品は一点物ばかり。しかも安いわけではない。実際に袖を通して確認したいというお客さまの気持ちは、一次流通のブランドよりも強い。「ラグタグ」のECには、全国の店舗で並ぶ商品を含めて約24万点をアップしている。リアル店舗では物理的に2000〜5000点しか置けないが、ECでは全商品を見ることができる。お客さまはまずECで探して、気になった商品を最寄りの店舗に取り寄せる。在庫を一元化するだけでなく、リアル店舗と同等のクオリティやコンテンツをECに反映させてきた。これらの取り組みが奏功している。
WWD:ワールド傘下に入って今年春で丸2年。どんなプラス効果があった?
平野:グループ入りには2つの狙いがあった。第一にECの成長。自社だけではシステム投資などに限界がある。ワールドのデジタルプラットフォームに合流することで成長にドライブがかけられる。古着の基本は単品管理。しかも1日あたり約2000点の新商品が入荷されるため、常に情報を更新する必要がある。ワールドグループのオムニスが開発した新しい仕組みで、商品撮影したら自動的に採寸が終わる。これまで1点1点を手仕事で袖丈や身幅を採寸していたため膨大な手間暇がかかっていたが、業務効率が飛躍的に向上した。第二にリユース市場の変化への対応。一次流通と二次流通の垣根がなくなり、市場の形が変わってきている。価値や価格に対してリテラシーの高いお客さまが増えた。当社としても一次流通との連携を強めるメリットは大きい。
WWD:今年の新しい動きは?
平野:今年前半にECの全面刷新を予定している。このために1年以上前からグループで準備してきた。特に越境ECへの対応に本腰を入れる。原宿店で免税売上高が50%を占めるのを始め、海外のお客さまが急増している。彼らが帰国後に現地からECに流入する例が多いのだが、十分に対応できていなかった。ワールドのEC子会社ファッション・コ・ラボが昨年3月に合弁で設立したファスビーの支援を受けて、自動翻訳や決済システムを万全にする。
WWD:平野氏はワールドグループのオフプライスストア事業「アンドブリッジ」、高級バッグのサブスク「ラクサス」の取締役を兼ねている。
平野:グループのシェアード・リユース戦略として、相乗効果を高める取り組みも今年本格化する。私とティンパンアレイが両社を結びつけるキープレイヤーになりたい。オフプライスストアはキャリー品であっても付加価値をつけて販売できる。当社が提供できるのは、主にMDと売価変更のノウハウだ。当社は商品を一つずつデータ化して管理している。バラバラの商品で行うMDのキモは、エリアの客層に対してどんなジャンルの商品が何割あればよいかを決めて、販売結果と照らし合わせながら修正することだ。その過程の中で、求められるブランドや商品の買取を強化する。先に理想のMDがあって、そこから仕入れを組み立てる。オフプライスストアも基本的な考え方は重なる。また売価変更は、蓄積されたデータをもとに一定期間が過ぎたら自動的に行う。ここに人の思想は入れない。オフプライスストアにそのまま適用できるわけではないが、当社の経験は必ず生きる。
WWD:「ラクサス」とはどう連携する?
平野:「ラクサス」は二次流通の企業から仕入れるバッグが主力で、一般のお客さまから預かって運用するバッグが2〜3割。今後は「ラグタグ」の店舗などを仕入れ窓口として機能させる。お客さまはバッグを「ラグタグ」に売るか、「ラクサス」に貸すか、選択できる。家庭のクローゼットの循環がもっと効率的に行えるようになる。
【エディターズ・チェック】
M&A(企業の買収・合併)は企業規模の拡大だけでなく、異なる企業カルチャーが融合して相乗効果を生むところ妙味がある。ワールドとティンパンアレイの関係は、今のところその理想に適っている。一次流通と二次流通はかつて利益相反する関係だったが、メルカリに代表されるリセールの普及が市場の姿を根本から変えたことを象徴する。グループ化が3年目に入る2020年は、その成果が問われる年になる。