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『BLEACH 千年血戦篇』×グラニフ、キャラクターデザイン工藤昌史と語る“引き算”の共通言語

グラニフ(GRANIPH)は10月20日、TVアニメ『BLEACH 千年血戦篇』とのコラボレーションアイテムを発売する。同ブランドが『BLEACH』と組むのは今回が初めて。テーマに据えたのは、死神が斬魄刀の能力を解放する「始解」だ。Tシャツからニットカーディガン、スタジャン、財布まで全17型に、「始解」の解号や能力の演出を刺繍や織り、プリントで忍ばせた。企画を率いたグラニフの石川祐ライセンスプロデューサーと、2004年のTVアニメ放送開始から『BLEACH』のキャラクターデザインを手がける工藤昌史が、スタジオぴえろで向き合った。2人の話はアニメと服、異なる“キャンバス”に共通する、削ることの作法へと向かっていった。

「点ではなく線で」
——1年半前から始まっていた
“昼休みの企画会議”

WWD:まず、今回のコラボが動き出した経緯から聞かせてください。

石川:グラニフでは、どの作品とコラボしたいかを私がまとめ、社内の許可が出てから版元さんと交渉する流れですが、『BLEACH」』は個人的にずっと挑戦したかった作品でした。ちょうど『千年血戦篇』が放送されていたタイミングでしたし、グラニフとしてキャラクターを載せるだけの“点”のコラボではなく、豊かなストーリーやキャラクターを持つ作品を“線”で表現したいと常々考えています。その意味で、『BLEACH』はとても挑戦し甲斐がある作品です。私たちからするとまさに待望のコラボでした。

WWD:社内で企画書を出す前から、アイデアを膨らませていたんですよね。

石川:デザイナーと昼休みに、コラボが決まる前から「涅マユリを商品化するならどこかに金色を入れたいよね」「平子をやるならどこかをひっくり返したい。ポケットを裏返したら面白いかな」なんて話をずっとしていました。『BLEACH』世代のデザイナーも多く、『BLEACH』の話になると言いたいことが多すぎて全員早口になる(笑)。そして話も長くなりすぎる(笑)。ともあれ、社内の稟議からだと約1年半前から動いていました。

WWD:『BLEACH』だからこそ挑戦したかったことは。

石川:黒ですね。『BLEACH』の商品に黒は欠かせない。服でも白と黒はベーシックカラーの主役です。その黒の上に、黒をどう見せるか。黒に黒で刺繍したらどうか、違う生地を叩きつけたらどうか。そういうことを考えるのが楽しいだろうなと。『千年血戦篇』の、光が反射してエッジが光って見えるような光の使い方からも、何か学べないかと思っていました。アニメは連続して流れていくもので、僕らの服は静止画になる。その中から生まれるものがあるんじゃないかと。

WWD:工藤さんは今日、初めて実物をご覧になったそうですね。

工藤:サンプルのデータは見ていましたが、実物を見ないと全然分からないですね。黒の上に黒でも、刺繍があることで絶妙な立体感が出て、しかもきちんと見えるようになっている。同じ黒でも、テカリで違って見える。これをアニメで表現するのはめちゃくちゃ難しい。アニメは本当に色面だけなので、光沢はなかなか出せません。それがとても面白い!生地感や縫製の確かさもいいです。アニメの服だとTシャツに柄をプリントしただけというものが多い。それはそれで全然いいのですが、今回のコラボアイテムは素人の私でもディテールへのこだわりなど、着るものの良さが伝わってきます。


死覇装の黒と、アニメの表現

WWD:アニメのキャラクターデザインは、リアルな服をどこまで意識しているのでしょうか。

工藤:原作の絵を見ていると、原作の久保(帯人)先生は、おそらく服を日頃からたくさん見ていらっしゃるんだろうな、という気がします。例えば服のディテールの描き方がとても繊細で絶妙なんです。でも、アニメはたくさんの作画スタッフと一緒に作り上げていくものなので、それを表現するのはかなり難易度が高い。分かりやすくデザインしないとブレが出てしまうからです。逆にアニメやマンガは重力に関係なく描ける。風が吹いていなくても、なびいているようにふわっと上がっていたり。袖も、実際の着物ならまっすぐ下に落ちるところを、少し広げてシルエットを作ったりもできる。リアルをいろいろな角度から検証したうえで表現に落とし込む、という感覚です。

WWD:『BLEACH』は原作もアニメもスタイリッシュな印象が強い。死覇装はどうデザインしているのですか。

工藤:原作自体の絵のシルエットがかっこよくて、美しいんですよ。『BLEACH』の死覇装は黒ベタで塗って、ハイライトを白く残している。その白と黒の強烈なコントラストが、パッと目に入ってくるんです。連載を追っていくと、そのコントラストがより明確になっていく。そこで旧シリーズと『千年血戦篇』とでは、死覇装の描き方をより黒がぐっと締まるように意識して変えています。

石川:そういうことだったんですね。今回のコラボで僕ら軸を黒に据えたのは間違いではなかった(笑)。

WWD:そういう表現を誘発する作品なんですね。

石川:まさにそうで、『BLEACH』はライセンス商品を作る僕らのチャレンジ精神を掻き立てる作品です。こういう表現をしてみたいと思わされるし、うまくいくビジュアルも自然と浮かぶ。今回、改めてそう感じました。

WWD:そのスタイリッシュさは、どう生まれているのでしょうか。

工藤:原作がスタイリッシュなので、その味をそのままアニメに移すことに徹しています。アニメは1秒間に何枚も絵を描くので、見た目の印象を変えずにどこを省略し、どこを残すかを選び抜く。アニメ化は、削ぎ落とすことで原作の魅力を際立たせる作業なんです。

WWD:キャラクター1人につき、設定画は何枚ほど描くのですか。

工藤:主人公以外は基本的に、全身の前後と細部をまとめたものが1枚、表情を並べたものが1枚です。多すぎると、大勢のスタッフが一覧で見られなくなってしまうので。

石川:僕らも資料で設定画を拝見しているので、どの1枚のことか想像がつきます。それだけ削ぎ落とされた情報を指針に、プロが集まってアニメを作っている。『BLEACH』のクオリティーの高さは、そうやって作られているのですね。

藍染惣右介の
印象的なシーンを刺繍に
——始解を“隠す”デザイン

WWD:アニメの緻密な絵を服に落とし込む際、何を残し、何を削ったのでしょうか。

石川:着る人に、キャラクターをどれだけ感じてもらえるかを大事にしました。今回は始解をテーマにしたので、解号も入れたいし、斬魄刀の能力も、その演出も表現したい。実は服に漢字や日本語をプリントしたり刺繍したりするのは、かっこよく作るのが難しくてご法度に近いんですが、『BLEACH』ならやれるという確信がありました。たとえば平子(真子)のシャツは、逆撫の能力を表すために「ようこそ、逆様の世界へ」という台詞を英語にして、左右で反転させています。背面には「倒れろ 逆撫」を反転させて同色で刺繍しました。同色なので、漢字がリッチな表情になります。仮面もどこかで表現したくて、ボタンに入れています。

WWD:アニメのシーンそのものを使ったアイテムもあります。シーンはどう選んだのですか。

石川:始解がかっこよく見え、『BLEACH』ファンに伝わりやすく、服としてもかっこいい瞬間はどこか、です。朽木白哉なら、刀身が消えて花びらになっていく千本桜。袖まで花びらを散らせて、その中に「千本桜」の文字を入れました。藍染(惣右介)は、鏡花水月で自分の姿がパキンと砕けるところ。あそこが一番、藍染の始解だと分かりやすいよねと。選ぶ瞬間は、キャラクターごとに変えています。必殺技を出すところが好きなキャラクターもいれば、ふと見せる優しさや、敵を煽るところがいいキャラクターもいる。『BLEACH』ファンが、キャラクターのどこが好きなのかを徹底的に話し合いました。

WWD:涅マユリはニットです。

石川:涅マユリは、キャラクターデザイン的に編んでみたいという欲求があったんです。ニットは逆V字の積み重ねで、ドットアートのように編んでいくので、まっすぐな線は苦手でも曲線は割と表現できる。挑戦したくなるフォルムなんですよね。

工藤:線画をあえてドット状の編み地にしているんですね。線ではなく色で面を作っていて、グラフィック化されている。それがアパレルならではの表現になっていてとても面白い!

WWD:公式の設定資料を見て変わったことはありますか。

石川:刺繍で簡素化するにしても、細部がどうなっているのかを正確に分かった上で省略すると、完成度がぐっと上がります。蛇尾丸の刀の継ぎ目がこうなっているなら、このくらいの省略にしようとか。浦原商店のTシャツは、雨(ウルル)やジン太をシルエットにして、顔を描き込みすぎないようにしています。どこまで削ればキャラクターだと分かってもらえるか。やっぱり雨(ウルル)の水玉は必要だよね、とデザイナーと詰めていきました。好きなメンバーほどアイデアが次々に出てくるので、僕は社内で作品に一番近い立場として、その想いを削って伝えるメッセージを1つに絞り込む役割です。

工藤:キャラクターデザインやアニメのモノ作りと共通する部分も多いと感じました。本当にその通りで原作やキャラクターを知り尽くした上で、どこをどう変えていくか。「自由に作る」というのは、そういうことなんですよね。

「着ていたら、
きっとコンビニで声をかけられる」
——ファン全員と話がしたい

WWD:着る人のことも、かなり考えて作っていますね。

石川:服は着てから、雑貨は使ってからが本領を発揮するものだと思っています。財布は内側を金色にして「掻き毟れ 疋殺地蔵」と入れました。コンビニでお金を払おうとしたら、「それ見せてください」となるかもしれない。ボタンやパンツの内側には、着ているうちに見つける楽しみを仕込みました。ある日洗濯して裏返しになっていたときに「こんなところにいる」と喜んでもらえる。そういう投稿をSNSで見かけることもあります。僕自身、グラニフの服を着ていて電車で「それどこで買えるんですか」と聞かれたことがあります。

電車で「週刊少年ジャンプ」を読んでいる人を見れば、漫画好きだと分かったように、服は好きなものを周りに伝えてくれる。これを着ていれば、初めて会った人にも『BLEACH』好きが伝わり、会話が始まると思います。

WWD:工藤さんは、どのディテールに惹かれましたか。

工藤:僕は、裏側にこんなのが入っている、というところにグッときますね。主張しすぎないけれど、内側ですごく主張している。

石川:藍染も「私が天に立つ」など名言がありすぎて、どこに入れようかと考えた結果、裏地にプリントしました。着ていると鏡花水月にかかっている気持ちになれる、というか。

WWD:キャラクターを1枚に集約するキャラクターデザインと、それを服という“キャンバス”で広げるグラニフ。2つの仕事のつながりをどう感じますか。

工藤:キャラクターデザインの仕事はキャラクターの設計図を描くようなものです。それを使ってアニメーターがどう描くか、さらに言えばアニメがどう広がっていくか、その起点として描いています。今回コラボアイテムを見て、「こんなに広がった!」と、すごくうれしいです。アニメがここまでこだわりを盛り込んだアパレルになるのは、特別なこと。刺繍や加工の一つ一つに込められた思いは、実物を見てよく分かりました。

石川:アニメにも服にも、選び抜いて残すという共通の作法がある。それを工藤さんの言葉で確かめられたので、今日すごく楽しかったです。

WWD:最後に、ファンへのメッセージを。

工藤:服は他のグッズよりも日常にあるものだと思います。着ることで自分のテンションが上がるのはもちろん、「これが好きです」と言って回っているような感じがある。本当に会話のきっかけになったら、着ている人もうれしいですよね。「分かる」という同志が見つかる。自分の好きを表現するものとして、すごくいいなと思いました。

石川:願わくば、店頭で手に取ってくださった方全員と『BLEACH』の話がしたいですね(笑)。今回は初めてのコラボなので「始解」を選びましたが、いつかは「卍解」も、「帰刃(レスレクシオン)」も、「滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)」も、「完現術(フルブリング)」もある。「黒棺」などの鬼道もやりたい。デザイナーたちとは、もう「始解」じゃないものの話もいっぱいしているんです。

WWD:アニメの制作現場で、こうした服を着ることは。

工藤:たまにスタッフTのように着ることはありますね。これを着て作業してもらえたら、全員テンションが上がると思います。

石川:もし次があって、工藤さんが商品化の会議に出てくださったら最高ですね。一つだけ懸念があるとすれば、「工藤さんの降臨」でデザイナーたちが緊張していつも通りにしゃべれないことです(笑)。

工藤:出たとしても、たぶん皆さんと同じ会話にしかならないと思います。「これいい!」「これ入れたい!」って。

PHOTO:HIRONORI SAKUNAGA
©久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ
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