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セレブ報道だけじゃないんです

現在は2025年春夏メンズ・ファッション・ウイーク取材の真っ只中で、今はパリ・メンズの中盤戦です。今シーズンもドタバタとデイリーのコレクション・リポートを随時更新しています。SNSでは、セレブ情報を僕たちも含めた各メディアが日々発信しており、「最近のファッションメディアはセレブ追っかけばかり」という風潮がますます強まっているかもしれません。

ひさしぶりにコレクション取材に来た関係者は、「PRが気に掛けるポイントがコロナ前とはあまりに変わっていて驚いた」と戸惑いながら、慣れない手つきでセレブリティーにスマートフォンを向けていました。もしもうんざりしている方がいたら、まずは情報を探してみてください。日本メディアの多くは、コレクションの情報をしっかり届けるため試行錯誤しています。情報を能動的に探せば、デザイナーの思いやコレクションの背景は見つかるはずです。少なくとも、「WWDJAPAN」はそんな情報を必要とする読者のために全力で取材しています。

大塚 千践
NEWS 01

「プラダ」で三度見「JWアンダーソン」で夢見心地、今季ワーストのショーも 2025年春夏メンズコレ取材24時Vol.3

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2025年春夏コレクションサーキットが開幕しました。イタリア・フィレンツェからミラノ、パリまで続くメンズからスタートです。「WWDJAPAN」は現地で連日ほぼ丸一日取材をし、コレクションの情報はもちろん、現場のリアルな空気感をお伝えします。担当は、大塚千践「WWDJAPAN」副編集長とパリ在住のライター井上エリ、そして藪野淳・欧州通信員の“浪速トリオ”。愛をもって、さまざまなブランドをレビューします。(この記事は無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)

10:00 「サントーニ」

「サントーニ(SANTONI)」はアーケード、ガレリア メラヴィッリ(Galleria Meravigli)を会場にプレゼンテーションを開催しました。“夢の国(Land of Dreamers)”と題した今季のコンセプトは、生きる芸術である職人技術を日常へと溶け込ませること。靴職人の実演とともに、柔らかいレザーを編んだスリッポンに、ハンドペイントによるグラデーションが美しいダブルバックルのシューズ、1970年代のスタイルを再解釈したテニスシューズを披露しました。

バッグバンドにレザーを巻きつけたデザインのダブルバックルのサンダルは、カジュアルとフォーマルが同居する、夏の新定番になりそうなアイテム。一方で、スカイブルーのグラデーションをペイントしたレザーのテニスシューズは、履きこなすのに超高等テクニックを要しそう。そんなことを考えながらコレクションを見ている間、会場全体にはペピーノ・ガリアルディ(Peppino Gagliardi)の楽曲”ガラスの部屋”がずっと流れていました。哀愁漂うこの楽曲は、自虐漫談でかつてブレイクしたピン芸人ヒロシのテーマ曲です。「サントーニ」と一発屋ヒロシ――接点のなさそうな両者が、私の頭の中でタッグを組む、不思議なミラノ・メンズ3日目の朝となりました。

10:30「ガムズ ノート」

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NEWS 02

「プラダ」2025年春夏メンズは、自由な精神や若々しい楽観主義の賛歌 見るものをあざむく仕掛けが満載

「プラダ(PRADA)」は6月16日、ミラノで2025年春夏メンズ・コレクションを発表した。今季のテーマは“クローサー(CLOSER)”。その言葉通り、近づくことでハッキリ見えてくるデザインの仕掛けを多用しながら、新たなプロポーションバランスのスタイルを見せた。

簡素な小屋からモデルが登場

アート施設プラダ財団(Fondazione Prada)の中にある自社会場は、毎シーズン全く異なるコンセプトで作られるセットが楽しみの一つだ。今季は中に入ると薄暗い空間が広がり、奥の方の高い位置には簡素な小屋。会場にテクノ音楽が流れる中、その扉や窓の隙間から眩い光が漏れている。それは、まるで小屋の中でパーティーが開かれているかのようだ。ショーが始まると照明が点き、白い小屋の中からモデルが現れ、スロープを下って曲がりくねったランウエイを歩いていく。

上はコンパクト、下はルーズなシルエットが主軸に

ファーストルックは、着丈が短くタイトシルエットで仕上げた紺のVネックセーターに、裾をたるませて履くゆったりしたスラックス。その後もカーディガンや無地から花柄まで多彩なシャツ、ステンカラーコート、ミリタリー調のアウター、レザー製のフーディーなどが登場するが、上は着丈や袖が短くコンパクト、下はルーズといったバランスが主軸になっている。両親や祖父母からの借り物を組み合わせたかのようにも見えてくる。

デザインでは、トロンプルイユ(だまし絵)の技法を多用しているのが特徴だ。例えば、パンツに見られた厚手のツイードやセカンドスキントップスのゆがんだボーダーが実はプリントだったり、ベルトも忠実に再現したパーツをパンツに圧着して表現していたり。ポロニットの襟もトロンプルイユで、ニットのレイヤードに見えるものは全て1枚のセーターだ。さらにフランス人画家ベルナール・ビュフェ(Bernard Buffet)の絵画の作品を大胆に載せたグラフィックTシャツは一見平面のプリントだが、近づくと上からペイントを重ねたように立体的になっていることが分かる。

そして、シャツやミリタリースタイルのアウターの襟や袖口、裾にはワイヤーを入れ、クシャクシャに。パンツやジャケット、ニットには完璧なものを崩すためにミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)が好むシワ加工を施し、レザーにはパティーナ加工を施すことでビンテージライクな風合いを加えている。そこには、「そのものに命が宿っているような、生きている服を作りたかった」というミウッチャとラフ・シモンズ(Raf Simons)の思いが込められている。

そんな今季のクリエイションに背景にあるのは、自由な対話から生まれた直感的な思いつきだという。ミウッチャは「若々しい楽観主義を表現するようなことに取り組みたかった」とコメント。一方、ラフも「年をとると、考えすぎて自分を制限してしまうことがある。「若者の心は、なんて新鮮なんだろう。若い頃は、ただ突っ走る。私たちは、その精神を気に入っている」と説明する。2人が表現したのは、自由な精神、若々しい楽観主義、そしてエネルギー。それは、緑や黄色、紫、ピンク、シアンといった鮮やかな差し色使い、スーパーヒーローをイメージしたという大ぶりなファスナーを配したジャンプスーツなどからも感じ取れる。

ユニークなアレンジを効かせたアクセサリー

バッグは、ウエアに通じるポップなカラーで彩ったスエードや風合いのあるスムースレザーの新作が充実。横長のスクエアボストンやトート、ウエア同様のコントラストカラーのファスナーをアクセントにしたスリングバッグを提案する。また、先シーズンのランウエイに登場した“プラダ バックル”バッグは、ベルト部分にスタッズをあしらいアップデート。バッグのベルトやパンツにトロンプルイユで表現されたベルトと同じようなデザインは、実際のベルトとしても販売される。

シューズは、カラフルな配色で仕上げたジャーマントレーナーやクラシックなモンクストラップシューズのアレンジに注目だ。どちらも先シーズン(24-25年秋冬)に見られたような極薄ソールを使い、バレエシューズのようにかかとに伸縮性があるデザインとスリッパスタイルを用意。それだけでなく、ジャーマントレーナーは、人気シューズ“モノリス”のチャンキーソールと合わせたモデルや、つま先をメタルパーツで覆ったものもラインアップする。

サングラスは、スポーティーかつフューチャリスティックな一体型レンズのデザインが印象的。鏡面仕上げのレンズには、身の回りの風景を反射するかのようにビーチやライブ会場の写真が部分的にプリントされたものもあって面白い。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。