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ずっと居たくなるVRワールド
ここ数年でヒットしているゲームのキーワードに、“オープンワールド”があります。かつてのゲームは、作り手が設定したストーリーに沿って進めていき、ラスボスを倒すとゲームクリア、といったものが主流でした。対して“オープンワールド”は、スタートとラスボスだけは決まっているものの、そこに行くまでの道のりは自由。どこから始めてもいいし、どんなルートを通ってもOK。つまり10人がプレイしたら、10通りのクリアの仕方があるのです。
一昨年大ヒットした「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」、昨年大ヒットして、発売から3日で1000万本を売り上げた「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」もオープンワールドです。オープンワールドの特徴として、最速でクリアしようと思えば可能だし、ゆっくり世界観を楽しみながら進めようと思えば、それもできることです。マップの各地にさまざまなイベントが用意されているので、後者の方が多い印象です。
そうするとプレイ時間が長くなるので、ゲームの世界の“居心地の良さ”を追求したさまざまな工夫がなされています。「ポケモン」と「ゼルダ」の共通点は、とにかくグラフィックが美しいこと。例えば「ゼルダ」のゲーム空間には朝・昼・夜があり、日によって天気も変わります。風をうけて緑の絨毯のように揺れる草原や、太陽を反射してきらきらと光る池の水面、その池も深さによって透明度が違うなど、“ここまでやるか”と感心してしまう程の精緻なグラフィックで、「ここにずっと居たい」と思わせてくれます。
今回ピックアップした記事によると本日、ビームスがVR映画スタジオのカデシュ・プロジェクトと協業し、VRプラットフォームVRChat内に初のオリジナルワールド「トーキョームード by ビームス」を公開するそうです。新橋や裏原宿を思わせる居酒屋や飲食店、ゲームセンターやコンビニ、ミュージックホールなどが軒を連ねる路地など、新旧入り混じるいかにも東京らしい空間に仕上がっているようです。その雑多な感じがとても居心地良さそうで、要注目ですね。
ビームスが初の常設VRワールド 居酒屋や高架下がある理由とは?
ビームスは5月31日、VR映画スタジオのカデシュ・プロジェクトと協業し、VRプラットフォームVRChat内に初のオリジナルワールド「トーキョームード by ビームス」を公開する。ビームスは2020年から世界最大級のVRイベント「バーチャルマーケット」に年2回参加してきたが、常設の自社ワールドを設け、今後拠点とする計画だ。
ワールドに入ると、そこは薄暗い高架下。ビームスのショップの姿はなく、新橋や裏原宿を思わせる居酒屋や飲食店、ゲームセンターやコンビニ、ミュージックホールなどが軒を連ねる路地に出る。高架上を電車が走り、その横には川が流れる。遠くに高層ビルが並び、わい雑感がありつつ、新旧入り混じる感じがいかにも東京らしい。路地を進むと、奥にモダンな建物のビームスのショップがある。
ウインドーには2023年末に発表したオリジナルバーチャル衣装が飾られ、店内にはこれまで発売したオリジナル3Dアイテムを展示して、一部着替えができるギミックを用意。店内のマネキンやディスプレーに手をかざすと出てくる「Use」をクリックすると、PCのブラウザ上でマーケットプレイスBOOTHへと遷移する。2階は撮影スタジオになっている。
「『バーチャルマーケット』に出展し続けたなかで、こだわったアバターがカッコよく撮影できる空間や、ユーザーが気軽に集えるような拠点が欲しいと考えるようになった」とビームスの木下香奈VR担当。ビームスのオリジナルバーチャルアイテムも制作するクリエイターを通じて、カデシュ・プロジェクトに出会い、ワールド制作を依頼した。
全ての建物や店に入れるわけではないが、街を歩くとさまざまな音が聞こえてくるし、5分ごとに電車が走る音もする。リアルな街っぽさにこだわった。「みながわいわい集え、おしゃれなリアルクローズが映える空間作りを心掛けた。ショップ裏の感じや川沿いの抜け感など細部にこだわっているので、ぜひ空間を楽しんでほしい」。
「10年愛されるワールド」を目指す
昨年9月から会議を始めて、目指したのは「10年愛されるワールド」。まずはオープンを記念して、31日夜にヤマハとのコラボで3組のアーティストを迎えてローンチイベントをする。また、VR空間で映画を撮り、ロールプレイングイベントも行う「ホテル・カデシュ」3周年を記念して、登場アバターをビームスがスタイリング。主人公役2人のスタイリングに使用した商品を3D化したアイテムも同日に発売する。
常設ワールドが盛り上がるためには、運営する側のコンスタントな仕掛けが必要だ。オープン後は、リアルクローズを着たアバターの集会「リアクロ集会」や新衣装発表会などのほか、インフルエンサーを起用した「一日店長」居酒屋イベントや撮影イベントなどを企画している。
VRChatは表現の自由度と精度が高く、人気のプラットフォームで、京セラやモスバーガー、日産自動車などが企業ワールドを設けているほか、カシオが「G-SHOCKストア」を設けている。没入感のある楽しみ方をする場合、ハイスペックなPCとVRゴーグルが必要なのと、現在iOSに未対応なため、良くも悪くもユーザーが限定されている。
ビームスは「バーチャルマーケット」で店舗スタッフを数十人単位でシフトを組んでバーチャル接客を3年間続け、ショップイベントも開催してきたため、ノウハウの蓄積とネットワークの構築ができている。「バーチャルマーケット」の店舗からリアル店舗への送客実績もある。原宿のビームス3階にVR部屋を設け、VR体験を提供したり、ユーザーとリアルな交流も行ってきた。バーチャルな拠点を今後どう活用していくのか、どうコミュニティーを広げていくのか注目したい。
コスメ界の未来を根本から変えてしまう、止まらぬマルチ化に思うこと
「WWDJAPAN」には美容ジャーナリストの齋藤薫さんによる連載「ビューティ業界へのオピニオン」がある。長年ビューティ業界に携わり化粧品メーカーからも絶大な信頼を得る美容ジャーナリストの齋藤さんがビューティ業界をさらに盛り立てるべく、さまざまな視点からの思いや提案が込められた内容は必見だ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年5月27日号からの抜粋です)
今、化粧品のマルチ化が止まらない。それは、消費者にとっては大変喜ばしいこと。でも化粧品会社にとってはどうなのだろう。老婆心ながら、それがちょっと気になっている。例えばAIが人の仕事を奪うのと同じように、化粧品のマルチ化が化粧品市場を縮小させてしまったりはしないのだろうかと。
もちろんそんなものはまだまだずっと先の話。だからこれはひょっとすると、触れるべきではない問題なのかもしれない。でも、化粧品はどっちにしろ進化していかなければならない運命にある。とすれば、そういう未来がいつか来ることは、きちんと想定しておかなければいけないのではないかと考えたのだ。
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「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。
