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ジャパンラグジュアリーって幅広い
3月10日にオープンする「東京ミッドタウン八重洲」の内覧会に行ってきました。物販の面積はそれほど大きくないですが、“ジャパンラグジュアリー”がコンセプトだという1階は、確かに各店内装も凝っていて見応えアリ。メインエントランスの西陣織の「ホソオ」はもちろん、メンズ単独店は初出店というマッシュスタイルラボの「ジェラート ピケ オム」や、「CFCL」「ポーター」「オニツカタイガー」などもブランドらしさが溢れていて、“ジャパンラグジュアリー”と一口に言ってもその切り口は広い!と感じました。
入国制限が緩和された昨年10月以降、訪日外国人客数は急増しています。内覧会の前後も、八重洲地下街の飲食店で非常に多くの訪日客や大きなトロリーケースをひいた日本人客とすれ違いました。こうした旅行客を通し、さまざまな切り口の“ジャパンラグジュアリー”が国内外に急速に広がっていきそうです。
「東京ミッドタウン八重洲」を公開 “ジャパンラグジュアリー”で海外観光客を取り込む
三井不動産は7日、東京駅八重洲口東側エリアの複合型商業施設「東京ミッドタウン八重洲」のオープン(3月10日)に先駆け、館内を報道関係者に公開した。4層からなる商業エリア(地下1階〜地上3階)は、日本のブランドを中心とした構成。最上層40〜45階には「ブルガリホテル東京」(4月4日開業予定)、地下2階には羽田空港などから発着するバスターミナルを備えるなど、復活が見込まれる海外観光客の取り込みを強く意識した設計となっている。
日本ブランドを世界へ発信
約5500平方メートル(店舗面積)の商業エリア全57ショップのうち、初出店が6店舗、東京初出店が11店舗。商業エリアのみで年間売上高70億円、来場者1000万人を目指す。内覧会の前に行われた記者会見で菰田正信・三井不動産社長は「ジャパンプレゼンテーションフィールドとして、日本のブランドを世界に発信する場所にしたい」と語った。
その考えを最も色濃く表現するのが “ジャパン・ラグジュアリー”をコンセプトにした1階。伝統技術や素材などを駆使した、「日本のクラフトマンシップを体現するブランド」(菰田社長)を集積した。西陣織の老舗・細尾(京都、細尾真孝社長)は、東京初となるショールーム&ストア「ホソオ トーキョー(HOSOO TOKYO)」を出店。西陣の伝統織物を使ったテキスタイルや家具、小物などを展示販売する。高橋悠介デザイナー手掛ける「CFCL」はMMA Inc.が設計した静謐な空間に、代表アイテムのニットをそろえた。三陽商会は、同社の高級コートブランドの「サンヨーコート(SANYO COAT)」と高級紳士靴の「三陽山長」が並び立つ新業態「三陽山長 粋(すい)」を出店し、モノ作りをアピールする。ビューティでは、竹や昆布などの日本由来の原料を使った機能的なスキンケアやフレングランスを提案する新鋭ブランド「アーレス(AHRES)」が目玉だ。
また菰田社長は東京ミッドタウン(六本木)、東京ミッドタウン日比谷との違いとして「都心生活者やインバウンド、ビジネスマン、地方の方など多様なお客さまの利用が想定される」ことを挙げた。「単に『都心らしい店』をそろえるのではなく、どんな気分で、何を欲しているお客さまに対しても満足いただける施設を目指した」。2階はスポーツやアート、食などを絡めた新しいライフスタイルを提案する。立ち飲みの飲食店や物販、休憩スペース、アートギャラリーが境目なくつながる空間設計により、回遊性を高めた。物販では「雑誌を編集するように」季節やテーマにより雑貨やコスメの仕入れを変化させるセレクトショップ「エディトリアル(EDITORIAL)」、東京をホームタウンとする14のスポーツチームの関連グッズを販売する「トーキョーユナイト(TOKYO UNITE)」などが出店する。
エリア一体でシナジー創出 「ミッドタウン」の開発は継続視野
商業ゾーン以外では、オフィス(7〜38階)、小学校、認定こども園、産学共同のアカデミックスペースなどが入居し、都心生活者の「働く・遊ぶ・暮らす」のニーズに応える。三井不動産は、東京ミッドタウン八重洲に隣接する区画で「八重洲一丁目東地区プロジェクト」(2025年度竣工予定)「八重洲二丁目中地区プロジェクト」(28年度竣工予定)と題した2つの開発案件を進めており、ここにはレジデンスや劇場、インターナショナルスクールなどが加わる計画。同社が多くの不動産を持つ日本橋地区とともに、エリア一体で魅力創出を進める。
また菰田社長は、これで3件目となった「ミッドタウン」の今後の開発計画についても言及。「八重洲はミッドタウンの集大成ではなく、これからも進化を続ける。地権者との折り合いがつけば、4つ、5つと(ミッドタウンの)開発を続けていきたい」と語った。
「アンプリチュード」「イトリン」ブランド終了で「THREE」に課せられた課題とは

ポーラ・オルビスホールディングス(HD)傘下のACROが展開する「アンプリチュード(AMPLITUDE)」と「イトリン(ITRIM)」が2023年度中にブランドを終了すると昨日発表があった。いずれもACROが創業10周年を迎えた18年9月にブランドを開始していたが、「業績は計画を下回っており、今後の事業継続に利点を見出すことは困難」(ポーラ・オルビスHD)とわずか5年で幕を閉じることになった。ACROは今後主力の「スリー(THREE)」と総合メンズブランド「ファイブイズム バイ スリー(FIVEISM × THREE)」で巻き返しを図ることになる。
現在「アンプリチュード」は国内に22店舗、海外(韓国)1店舗、「イトリン」が国内13店舗、海外(韓国)1店舗を展開する。これら店舗は年内に順次閉店する計画だ。また、2ブランドに関わるスタッフは、「ACRO以外のグループ会社も含め、最大限雇用の確保に努める」という。販売スタッフについては「スリー」への転身を推奨。本部スタッフはACROおよびグループ内への異動のケースもあるが、退職も想定する。「再就職となる場合においては、会社として転職支援を実施する」という。
華々しくデビューも……
2ブランドのデビュー時は、久々に大型百貨店ブランドが誕生したとビューティ業界で話題になったのを記憶している。「アンプリチュード」はメイクアップアーティストのRUMIKOがクリエイティブディレクターをつとめ、大人女性をターゲットにしたメイクアップブランドとして発信。タレントの田中みな実が愛用するファンデーション“ロングラスティング リキッドファンデーション”(全10色、各30mL、税込各9900円)は、SNSでも話題を集め、多くのベストコスメを獲得するなど順調な滑り出しをきっていた。他方、「イトリン」はプレミアムオーガニックスキンケアブランドとしてデビュー。日本市場でプレミアムオーガニックブランドが希少であり、その市場開拓の立役者として期待がかかっていた。日本古来の植物を主成分にし、完成度の高い商品に美容賢者からの支持が高かったものの、多くの顧客を獲得するまでには時間を要した。
4ブランドを擁した18年12月期決算時には、毎年15〜20%の売り上げ拡大、21年に黒字化を目指すと掲げていたが、コロナ禍で想定通りの進捗が難しかった。その一因には、いずれも高価格帯(「イトリン」のスキンケアは約1〜2万円、「アンプリチュード」のアイメイクは約5000円〜1万円)であることから、気軽に購入することが難しかったこと。コロナ禍により各社がデジタルシフトを推進する中で、主軸となるべく公式ECサイトが第三者による不正アクセスの影響を受け約8カ月停止していたことなどもマイナス要因となった。
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