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現代アート専門のオークションハウスに聞く日本と現代アート

 オークションハウスのフィリップス・オークショニアズ(PHILLIPS AUCTIONEERS以下、フィリップス)をご存知だろうか。サザビーズ(SOTHEBY‘S)やクリスティーズ(CHRISTIE’S)はよく耳にするが、フィリップスは初めてという人も多いだろう。フィリップスは1796年、クリスティーズの創業者であるジェームズ・クリスティー(James Christie)の下で働いていたハリー・フィリップス(Harry Phillips)がイギリス・ロンドンで設立。一時期LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のベルナール・アルノー(Bernard Arnaud)会長兼最高経営責任者(CEO)がオーナーだったこともある。現在ではコンテンポラリーアートをメインにオークションハウスとして成長している。今年4月に、コンテンポラリーアートなどを扱うギャラリーが何件も入る東京・六本木のピラミデビルにオフィスを移転オープンした。「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するスタートトゥディの前澤友作・社長をはじめ経営者の間でもコンテンポラリーアートへの関心は高まっており、訪日観光客の多くが草間彌生などのアートがある香川県・直島を訪れるなどちょっとしたアートブームが起きている。そのような動きもあってか、フィリップスでも日本からの出品・落札作品が年々増加しているという。服部今日子フィリップス日本代表に、同オークションハウスや日本のアート事情について聞いた。

WWD:フィリップスの最大の強みとは?他のオークションハウスとどのように差別化を行っているか?

服部今日子フィリップス日本代表(以下、服部):歴史的にはサザビーズやクリスティーズと肩を並べているが、現在では“コンテンポラリー”をキーワードに特定分野に絞ってオークションを開催している。20 世紀およびコンテンポラリーアート、エディション(版画作品)、写真、デザイン(家具など)、時計、ジュエリーの6分野に特化することで専門性を高め、質の高いサービスを提供している。アートをより身近なものにすること、そして、新たな市場をつくることを目指している。

WWD:具体的にどのようなことを行っているか?

服部:新進アーティストの作品を最初にオークションに出し、セカンダリーマーケット(二次市場)の創出に積極的に取り組んでいる。アウル・エリック(Awol Erizku)やセレステ・デュピ・スペンサー(Celeste Dupy-Spencer)の作品を初めてオークションで取り扱った。5月に香港で開催したオークションでは、ダナ・シュッツ(Dana Schutz)の作品をアジアで初めて扱った。また、エディ・マルティネス(Eddie Martinez)による作品の落札価格の世界記録を1日3回更新した。また、フィリップスは2008年にカウズ(KAWS)の作品を初めてオークションに出した。

WWD:六本木にオフィスを移転した理由と目的は?

服部:アジア市場の開拓は戦略の中心だが、日本はなかでも、コレクターの洗練度や成長の可能性の両面で重要視している。六本木は、森美術館や国立新美術館だけでなく、世界的なギャラリーが多く、“コンテンポラリー”“アート”“カルチャー”という意味において最適なロケーションだからだ。

WWD:今後、オフィスではどのような活動を行うか?

服部:展示スペースを併設しているので、オークション参加窓口としてだけでなく、年間を通してプレビューやイベントを行い、日本のコレクターらと交流する場にしていきたい。また、ギャラリーやアーティスト、コレクターなどさまざまな人たちと合同でイベントなども開催したい。

WWD:フィリップスにおいて20世紀およびコンテンポラリーアート、時計、ジュエリー、家具などの占める割合は?

服部:割合は公表していないが、取り扱い総額が最も高いのは20世紀およびコンテンポラリーの分野で、その次が時計。ニューヨークでは全ての分野のオークションを開催する。ロンドンでは20世紀およびコンテンポラリーアート、エディション、デザイン、写真のオークションを行う。香港では、アートとデザインを一つのオークションで扱うほか、時計とジュエリーのオークションを開催している。ジュネーブでは時計のオークションを行う。

WWD:オークションの入札時のエントリー価格は?

服部:カテゴリーごとに幅があるが、アートやジュエリーではオンラインオークションも開催しており、500ドル(約5万4000円)程度から入札できる作品もある。オークションというと敷居が高く難しそうと思うかもしれないが、一度経験してみると簡単だと分かるはず。東京オフィスでは入札のサポートを日本語で行っている。

WWD:落札時の手数料は?

服部:落札した際はハンマープライス(落札額)に加え、40万ドル(約4300万円)以下では25%、それ以上で400万ドル(約4億3000万円)までは20%、それ以上は13.5%。

WWD:デジタル戦略に力を入れているそうだが、オンライン入札の割合はどれくらいか?

服部:デジタル戦略にはかなり力を入れている。全てのカタログをオンラインで見ることもできるし、スマートフォンからも入札ができる。オークションでは、会場、電話、書面、オンラインで入札が可能だが、出品作品の60%以上に対してオンラインからの入札がある。1回のオークションに50カ国もの人々がオンライン参加することもある。

WWD:日本のコレクターに人気が高いコンテンポラリーアーティストは?

服部:日本人では、草間彌生、杉本博司、奈良美智、村上隆、五木田智央など。海外のアーティストでは、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)、ジャン・ミッシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)、ジョージ・コンド(George Condo)、カウズ(KAWS)、ジョナス・ウッド(Jonas Wood)、ハロルド・アンカート(Harold Ancart)、シャラ・ヒューグ(Shara Hugues)など大御所から若手まで人気がある。

WWD:日本ではまだ成熟していないオークション文化をどのように広めていくか?

服部:できるだけ多くのコレクターと接点を持ち、オークションに限らずプライベートセールを含むコレクションのアドバイスや、海外市場の動向の情報提供などグローバルなプラットフォームを生かしたサービスを提供したい。フィリップスを通じて、アート、オークション、コレクションについて語れるコレクターの輪を広げていければと思う。オークションは一度参加するとリピートする率がとても高いので、多くの人に“最初の一歩”を経験してもらえるよう認知度アップを図る。