3月で退任した富川栄「SABFA」前校長(左)と原田忠「SABFA」校長
資生堂が運営するヘア&メーキャップスクール「SABFA(サブファ)」を、7年に渡り導いてきた富川栄・校長が退任。第7代校長に、原田忠・資生堂トップヘア&メーキャップアーティストが4月1日付で就任した。ここでは、創立30周年の節目の年にバトンタッチを行った2人の話をもとに、SABFAが担うべき役割、今後のビジョンについて考えていく。
SABFAは“プロがさらにうまくなるためのスクール”
SABFAは1986年4月、優れた技術と創造力を持ったヘア&メーキャップアーティストを育成することを目的に創立された。ヘア&メーキャップアーティストが在籍し、資生堂グループの「クリエーション」「美容情報開発」「美容技術教育」を担当する資生堂ビューティークリエーション部(旧・資生堂ビューティークリエーション研究所)の人材育成分野を担っている。特徴的なのは、美容師免許を持っていることを入学資格とする、“プロがさらにうまくなるためのスクール”であること。ビューティークリエーターコースとサロンメーキャップコースの2コースがあり、特に1年間のカリキュラムのビューティークリエーターコースは、神宮司芳子・資生堂トップヘア&メーキャップアーティストや進藤郁子・資生堂ヘア&メーキャップアーティストなど、第一線で活躍する数多くの卒業生を輩出している。
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44歳という若さで校長に就任
「SABFA(サブファ)」卒業生の一人である原田校長
その卒業生の一人が原田校長だ。2004年と12年の2回、日本の美容業界における最高峰と称されるアワード「JHA」でグランプリを受賞した他、人気漫画のキャラクターをヘア&メーキャップとファッションで3次元化して話題を集めるなど、表現の新たな可能性を模索し続けているトップアーティストでもある。SABFAの歴代校長にはアーティスト出身者も少なくないが、44歳という若さで、第一線を走る現役アーティストである同校長の就任は業界に驚きをもたらした。「卒業生なので、いつかそういう話もあるかな……と漠然と思っていたが、このタイミングでのオファーは考えていなかった。しかし、どうせやるなら今でも後でも同じだし、会社全体として若い人に任せる風潮があるので、その流れに乗る意味でも引き受けることを決めた」と原田校長。
現役型の校長先生
「校長」というと、一般的に椅子に座っているイメージがあるが、同校長が目指す“校長像”は真逆のようだ。「今やっているアーティスト活動を続けて業界をつっ走りながら、校長をやるというのも新しいかなと。生徒たちに『校長も頑張っている』『まだ戦っている』という姿勢を示すことができれば、若い人たちに勇気を持ってもらえるのでは、と考えている。校長という立場にありながら、挑んでいるものは生徒と変わらない。そんな新しいタイプの校長として、業界をけん引していきたい」。
一方で、原田校長を後継候補の一人として推薦した富川前校長は、原田体制に期待を寄せる。「原田の特徴は、数多くの講師活動を通して美容師たちと触れ合ってきたため、彼らのことを深く理解していることと、資生堂以外のアーティストたちとの間にも幅広いネットワークを持っていることだ。そうした要素で、OB・OGたちが築いてきたSABFAの礎の上に、新たなものを築いていってもらいたい」。“SABFAの礎”とは、年齢、環境、持っている世界観など全てが違う生徒たちが集まり、刺激を受け合いながら成長し、最後にはクラス一丸となって終了制作に挑んで卒業していく校風のこと。富川前校長が在任中に強く意識して作り上げてきた、現在のSABFAの“核”でもある。
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3月で退任した富川栄「SABFA」前校長
原田校長は、そうした「チーム力」「人間力」形成のための校風・カリキュラム作りを引き継ぐことにプラスする形で、新たな要素をもたらそうとしている。「同級生たちと話をしていると、『また学びたい』『新しいことを知りたい』という声を聞くことが多い。そうした、学ぶ意欲を持ち続けているOB・OGに対応できるカリキュラムを考えていきたい。またSABFAの講師陣には魅力的な人が多いので、そういった人たちをしっかりと対外的に見せていく広報・PR活動も行っていきたい。その一方で、関連会社とどうつながっていくかを考えることも、私の役割の1つだと考えている」。
「関連会社とどうつながっていくか」という課題は、資生堂グループならではの課題でもある。同グループには資生堂の他、ヘアサロンを運営する資生堂美容室、美容室専売品を扱う資生堂プロフェッショナルなどさまざまな関連会社が存在するが、会社間の連動性が希薄なことが課題であった。しかし数年前からは、資生堂プロフェッショナルで、資生堂が持つ圧倒的な経験値を生かす取り組みがスタートするなど、連動性を模索する動きが出始めている。SABFAも、資生堂美容室の美容師を生徒として受け入れ、また卒業生の資生堂ヘア&メーキャップアーティストが資生堂美容室の技術指導を行うなど連動し始めている。原田校長は、そうした動きを促進・進化させていくことを自らのテーマの1つと考えているようだ。
数年前まで“知る人ぞ知る”存在であったSABFAは、卒業生が次々とJHAのグランプリを受賞することで飛躍的にその知名度を上げた。業界の第一線で活躍できるアーティストを排出するスクールに成長した一方で、最近では資生堂グループを“人材”というキーワードでつなぐ役割も求められるようになった。その舵取りを、高いスキルと挑戦心に加え、類まれな“遊び心”を持った現役アーティストが担うことになった新体制。校長が“暴れる”ことで、今後の業界が活性化していくことは間違いない。