Fashion. Beauty. Business.

TOPICS

レインボープライドへの参画は、モノを買うときの最後の理由になるかもしれない

金曜日は強風のため中止となりましたが、週末は「東京レインボープライド2024」が開催されました。今年はLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン(以下、LVMHジャパン)が初参加。LVMHは今年、東京を皮切りに、世界各国のレインボープライドを支援します。それぞれの地域から自発的な提案があった際、それを支援するというスタンスです。

当事者の一人として、単純に嬉しく思います。そして、共感します。それは、モノを買うときの最後の理由になるかもしれないし、就職する際も背中を押す一つのきっかけになるかもしれません。スタンスを示すことは、ビジネスにつながるんだと思います。

「WWDJAPAN」編集長
村上 要
NEWS 01

「東京レインボープライド2024」に参加するビューティ企業まとめ LVMH、ユニリーバ、ファンケルなど


「東京レインボープライド2024」が4月21日まで、代々木公園イベント会場で開催中だ。イベントを通じて、性的指向や性自認に関わらず全ての人が、差別や偏見にさらされることなく、より自分らしく、前向きに生きていくことができる社会の実現を目指す。LGBTQをはじめとするセクシュアル・マイノリティーの存在を社会に広め、「“性”と“生”の多様性」を尊重する狙いもある。

ここでは、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン(以下、LVMHジャパン)、ユニリーバ・ジャパン、資生堂、日本ロレアル、ファンケルなど、趣旨に賛同したビューティ企業の取り組みを紹介する。なお、初日の19日は強風の影響で中止し、20日は予定通り開催する。

LVMHジャパン

メイン会場では、「ディオール(DIOR)」「ゲラン(GUERLAIN)」「ジバンシイ(GIVENCHY)」「メイクアップフォーエバー(MAKE UP FOR EVER)」がジェンダーレスメイクの体験ブースを出展する。2年連続となる「ジバンシイ」のブースではタッチアップのほか、サンプルを配布し、数量限定のレインボーカラーの“4Gロゴ”ステッカーを抽選でプレゼントする。また、日本のプライドパレード30周年を祝し、写真家のレスリー・キーによる写真展を原宿で開催する。世界各国のセレブリティー30組と、LVMHのエグゼクティブ30人を撮り下ろした。

【企業背景・賛同理由】
LVMHは世界80カ国以上に拠点を置き、平均年齢34歳、 190を超える国籍のスタッフが従事する。さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まる中で、個人のユニークさ、才能、特異性、視点の違いを大切にすることで、より創造的で革新的に、強くなれることを信念とする。グループ全体でジェンダー平等、LGBTQI+、障がい者、出自(国・社会)、世代、包括的文化の醸成の6つの側面からダイバーシティ&インクルージョンを推進する。

2019年に国連による「職場におけるLGBTIに関するビジネス行動基準」に署名して以来、各ブランド、各地域でプライドパレードへの参加をはじめとした活動をする。日本国内では、20年にプライド月間記念イベントを開催し、ALL LVMH プライドジャパン コミュニティーを設立した。22年からコミュニティーメンバーが「東京レインボープライド」のパレードに参加し、今回初めてグループ全体の協賛へと発展した。

ユニリーバ・ジャパン

ユニリーバ・ジャパンは「あなたらしさが、美しさ」をパーパス(目的・存在意義)に掲げる「ダヴ(DOVE)」など、ブランドや商品に込めたメッセージを紹介する。今年のテーマには「Be Proudであり続ける」を掲げ、来場者に元気を与えるフォトセッションを企画する。

同社はさまざまな部署からの有志の社員が集まり企画・運営する。19年に男性化粧品ブランド「アックス(AXE)」が出展し、ユニリーバ・ジャパンとしての出展は23年に続き2回目となる。昨年は「Be Yourself. Colourful is Powerful.」をテーマに、7000人以上が来場し、メッセージウォールには約600人が「自分が誇らしく思うこと」のメッセージを寄せた。全社員の5.5%にあたる22人が、ブースでボランティアスタッフとして参加した。

【企業背景・賛同理由】
ユニリーバは、「Be Yourself」(自分らしくあること)が、一人一人が最大限能力を発揮し、事業を成長させながら「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」というパーパスを実現していく基盤であるとの考えから、エクイティ、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する。「東京レインボープライド」は、変化をさらに広げ、誰もが自分らしく、誇らしく、幸せに生きることが“あたりまえ”になる社会を多くの人たちと目指す大切な一歩だと考え、賛同した。

ジョイ・ホー=ユニリーバ・ジャパン社長は、「ユニリーバは多様でインクルーシブな企業だと自負しているが、より公平でインクルーシブな世界をつくるためにはまだなすべきことがたくさんある。多くのLGBTQI+当事者の人たちは今も恐れを抱いて生きている。私たちは声なき声を代弁し、声を広げ、LGBTQI+コミュニティーを含む全ての人々が自分らしくいられるようにしたい。そうすることで世界はよりよくなると信じている。『Colourful is Powerful』」とコメントを寄せた。

ユニリーバ・グローバルの21年の調査では、10人のうち6人が「ビューティ業界が“ふつう”の基準や“美”の理想像をつくっていて、自分の外見をそれに合わせなければならないと感じている」ことや、74%の人が「ビューティ業界は“美”の定義を広げるべきだと感じている」ことを発表。同社はLGBTQI+コミュニティ含む多様な人々を広告に起用する。ジャパン社では、誰もが自分らしく働ける組織文化や福利厚生制度などを整備する。選考過程から性別欄・写真・ファーストネームの記載を廃止する取り組みを進めた。また、同性パートナーにも配偶者と同様の福利厚生制度を適用し、準婚姻契約書の費用を補助する。

資生堂

資生堂は15年から6回目の参加で、24年は5年ぶりにシルバースポンサーとして協賛出展する。ブースでは、来場者に同社のLGBTQ+への取り組みや近隣直営店を紹介したパンフレットの配布を行う。21日のパレードでは資生堂のオリジナルTシャツを着用し、横断幕やレインボーグッズをもって行進する。

過去にはメイクに関心の高い人だけでなく、初心者やアドバイスを受けること自体初めての人が来場した。店頭で接客をしているPBP(パーソナルビューティーパートナー)にもパーソナルビューティー提案の必要性を理解する学びの場となった。

【企業背景】
資生堂は企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現に向けて、社員がジェンダーや年齢、国籍などに関係なく、個々の違いを尊重し合い、シナジーによりイノベーションを生み続ける組織風土を作るため、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を重要な経営戦略の柱と位置付ける。美の力によるエンパワーメントや性的マイノリティーへの支持を可視化することで、当事者の方々が自分らしい人生を送れる社会の実現を目指す。

日本ロレアル


日本ロレアルは初参加した23年に続き2回目の出展となる。出展ブースのテーマには「"beauty gives us confidence in who we are and who we want to be"~今の私は美しい。だから、なりたい私も美しい~」を掲げる。21日にドラァグクイーンのモデルによるメイクアップショーを開催するほか、同社商品を使用したメイクのタッチアップコーナー、リップを使用したメッセージボード企画、フォトフレームの写真撮影など、多様な美の実現を応援する体験型アクティビティーを用意する。

社内委員会であるDE&Iを推進するグループのメンバーとアライの有志で構成しされているタスクフォースメンバーが、企画・運営を担う。今年パレードに参加する社員とその家族・友人の数は約250人を予定するなど、社内における認知度も上がっている。23年は開催2日間で1200人が出展ブースに来場した。

【企業背景・賛同理由】
ロレアルグループは、「世界をつき動かす美の創造」をパーパスとして掲げる。美とは多様で公正、包摂的なものと考え、「社員の人権に関する方針」を定め、社員に対する、ジェンダー、性自認、性的指向、障がい、年齢、国籍、宗教などの理由に基づくあらゆる差別を一切許容しないことを宣言し、社内外でDE&Iを推進する。この取り組みの一環として、「東京レインボープライド」へ出展・協賛した。

ファンケル

ファンケルのダイバーシティ推進を目的とした取り組みを展示し紹介する。当事者が求めるサービスや商品情報、企業へのアライの理解度などについて、来場者にシールアンケートを実施する。昨年は初めて「東京レインボープライド」に出展し、来場者とのコミュニケーションから多くの学びを得たことから、2回目となる今年も出展を決めた。

【企業背景】
ファンケルはさまざまな価値観や考え方を持つ多様な人材の活躍の場を提供すべく、17年にダイバーシティ推進スローガン「みんな違ってあたりまえ」を制定した。女性活躍や障がい者雇用の促進し、性的指向や性自認に関わらず誰もが自分らしく生き生きと働ける社会の実現を目指す。具体的には、LGBTQなど性的マイノリティーに対する理解促進のための社内研修や、従業員による有志団体「LGBTQアライ」の設立、パートナーシップ規程の策定など環境整備を進めてきた。

■東京レインボープライド2024
開催日:4月19〜21日
場所:代々木公園イベント広場、ほか協力施設、公共スペース
参加費:プライドパレードとプライドフェスティバルは入場無料、他プログラムは施設入場料及びプログラム有料

トップページに戻る
NEWS 02

「フレデリック マル」創業者がブランドを去る “香りの出版社”としてニッチ市場を開拓

エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)傘下の仏フレグランスメゾン「フレデリック マル(FREDERIC MALLE)」の創業者であるフレデリック・マル(Frederic Malle)が、6月末でブランドを去る。マルはニッチなフレグランスビジネスの先駆けとして、2000年に同ブランドを設立。“エディション ドゥ パルファム(香りの出版社)”というアイデアをもとに、自身は“編集者”として有名調香師たちがブレンドした香りが主役のフレグランスに焦点を当て、それまでは裏方に徹していた調香師の名を前面に押し出したことで知られる。また、過去には調香師と共にドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten)や故アルベール・エルバス(Alber Elbaz)との協業による香水も手掛けており、最近は「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」初の香水を発表したばかり。ファッション界とのつながりも深い。

マルは、声明の中で「今から25年前、私は業界屈指の調香師と最も要求の厳しい生活者との間に直接的なつながりを生み出すために、“エディション ドゥ パルファム”の仕事を始めた。そうすることで、私は(調香師の)鼻が彼ら自身を存分に表現し、彼らが自分の名前を記したいと思うほど作品に誇りを持てるようなプラットフォームを作り出した。“鼻”のための初の出版社になったブランドが、このようなパワフルな方法で香りのアーティストたちを世に知らしめるとともにフレグランスが芸術であることを世間に示し、職人的なフレグランス作りのムーブメントの礎を築くことになるとは予想だにしていなかった」と説明。「この成功は、当時私に賛同してくれた調香師たちの才能と寛大さのおかげだ。そして、他の全てのアーティストやスタッフ、特にショップで働く香水の専門家に感謝したい。彼らの日々の仕事が、私たちが調香師に与えている創造的な自由を可能にしている。また15年以来、『フレデリック マル』を発展させ、守り続けてくれているエスティ ローダー カンパニーズのメンバーにも感謝したい。彼らは、私が立ち上げたブランドのユニークな創業理念をこれからも実践してくれることだろう」と続けた。

一方、エスティ ローダー カンパニーズのステファン・ドゥ・ラ・ファヴェリー(Stephane de La Faverie)=エグゼクティブ・グループ・プレジデントは、「フレデリックが00年にブランドを立ち上げたとき、彼は世界の偉大な調香師たちに声を上げる力とプラットフォームを与え、フレグランス業界の常識を打ち破った。香水に自由と創造性を取り戻そうと取り組む彼の前衛的なアプローチによって、フレグランスの傑作を提案する真のラグジュアリーブランドが生まれた」とマルの功績を賞賛。また、「私たちは、フレデリックと共にブランドを成長させてきたことを誇りに思っている。そして、これからも彼のインスピレーションとフレグランス作りへの妥協なき献身を称え続けていく」と述べた。

トップページに戻る
NEWS 03

ステラ・マッカートニーがラグジュアリー、注目の技術、グリーンウォッシュを語る

PROFILE: ステラ・マッカートニー

ステラ・マッカートニー
PROFILE: 1971年英国ロンドン生まれ。95年ロンドン芸術大学のセントラル・セント・マーチンズ校卒業。97年「クロエ」のクリエイティブ・ディレクター就任。ケリングとのパートナーシップにより出資比率50対50としたジョイントベンチャーでステラ マッカートニーを設立し2001年10月にデビュー。04年アディダスと長期パートナーシップ締結。18年4月からケリングの保有していた50 %の株式を取得し独立企業に。19年7月、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンとの提携を発表

ステラ・マッカートニーは今、何を思いどのように行動しているのか。「WWDJAPAN」は数年にわたり、サステナブル・ファッションをけん引するステラに、日々変化する状況を踏まえて質問を投げかけてきた。今回は、改めて考えてみたいラグジュアリーという言葉や難易度もコストも高い廃棄物利用、グリーン・ウォッシュへの対応について聞いた。

WWD:年々地球環境が危機的状況にある、というニュースを耳にする機会が増えている。ファッションを楽しむことと、地球環境の保護を両立できると思うか?

ステラ・マッカートニー(以下、ステラ):私はブランド設立時からレザー、羽毛、毛皮、エキゾチックレザーを使用していません。これは母なる地球を守るための大きな一歩です。アマゾンの森林伐採地域の80%が牛肉や皮革のための牛の飼育に直結していることをご存知ですか?畜産業は世界の温室効果ガス排出量の14.5%を占めており、これは航空産業全体よりも多いのです。

しかし、多くの人はハンドバッグや新しい洋服を買うとき、このようなことを考えません。私は望むものを妥協する必要はないと思っています。私たちは、環境負荷の少ない代替素材に投資し、先駆的なテクノロジーを駆使して革新しています。私たちが取り組んでいるのは、動物や地球に害を与えず、美しくラグジュアリーなファッションを手にすることができる、より良い方法があることを人々に伝えること。

そういったイノベーションとそれを支えるイノベーターたちを称えたのが、パリでの2024年サマーランウェイショー、ドバイで開催されたCOP28、そして今回の伊勢丹新宿本店で行った「ステラズサステナブルマーケット」です。私は、日本のコミュニティの情熱が大好きで、植物、ブドウ、リンゴから作られたレザーの代替素材や、私たちの他の最先端技術を紹介したいと思い、日本で行いました。イノベーションは、より地球に優しい未来に向かうために必要不可欠なものだから、私たちの取り組みを共有することで、ファッション業界だけでなく、それ以外の分野の人たちにもインスピレーションを与えられることを願っています。

WWD:春夏キャンペーンは、リサイクル工場を舞台に撮影をし、循環型社会への移行を訴求した。廃棄物の活用は、回収や分類に始まり、サプライチェーンの再構築、素材の品質担保のための技術革新などが欠かせないが、これらは難易度が高くコストもかかる。それでも廃棄物を活用する意義について改めて教えてほしい。

ステラ:私は、母なる地球から素材を採取することを止め、彼女の再生に貢献できるよう、リサイクル素材とリジェネラティブ素材のみを使用することを達成したいと考えています。従来の選択肢を使う方がはるかに簡単で安価ですが、次世代の素材に投資しなければ、ステラではありません。

アイコンバッグ“ファラベラ”が、ボディにリサイクル素材や、ハンドルにリサイクルブラスやリサイクル可能なアルミニウムのチェーンを用いることで進化してきたことをとても誇りに思っています。これは始まりにすぎず、私は常に調達やサプライチェーンの改善をチームに働きかけています。

私を知る人なら誰でも、私が廃棄物を嫌っていることを知っています。毎秒トラック1台分の衣類が埋立地や焼却炉に運ばれます。ファストファッションは年間1000億着以上の衣料品を生み出していますが、リサイクルされているのはその1%にも満たないのです。

24年サマーキャンペーンでは、廃棄物の中に見出される美しさを強調し、より循環的な未来への希望を鼓舞したかった。コレクションはこれまでで最もサステナブルなもので、ノナソース(NONA Source)のデッドストック生地の再利用を含め、95%が環境に配慮した素材から作られています。リサイクル素材を使うことで、必要なエネルギーはバージン繊維生産の半分以下となり、地球から多くの資源を採取する必要がなくなります。

キャンペーンでは、プロテインエヴォリューション(Protein Evolution)社のバイオピュア(BioPure)テクノロジーから作られた世界初のパーカーを撮影しました。このテクノロジーは、酵素と技術の融合により、プラスチック廃棄物を無限にリサイクル可能なポリエステルに変えるという驚くべき革新技術です。私は、共同設立したSOSファンド(SOS Fund)サステナブル投資ファンドであるを通じてこれを支援しており、その可能性にこれ以上ないほど期待しています。

WWD:廃棄物を原料とした素材について。サプライチェーン構築から行ったヴーヴ・クリコとの協働プロジェクトでは、ブドウの残渣や、プレコンシューマー、ポストコンシューマーのコルクを活用したプロダクトをわずか18カ月で開発した。特に苦労した点は?

ステラ:23年以上この仕事に携わってきて言えるのは、あらゆる素材の革新には課題があるということ。幸いなことに、「ヴーヴ・クリコ」でサステナビリティ、革新、再生への情熱が私と一致するパートナーを見つけることができました。マダム・クリコ自身が女性のパイオニアであり、私たちがレザーに代わる次世代素材に使用したブドウが、彼女が200年ほど前に購入したフランス・ランスのブドウ園で収穫されたものであることを、とても気に入っています。

私たちはすでにベジア社(VEGEA)と、ブドウをベースにした動物性レザーの代替素材に取り組んでいて、彼らがヴーヴ・クリコとのコラボレーションで提携し、18ヶ月でこの素材を作り上げました。彼らとは、地球への影響を最小限に抑えながら最もラグジュアリーな製品を作るという私たちのビジョンを分かち合っています。この代替素材は、80%が植物由来、再生可能、そしてリサイクル原料で作られています。

WWD:あなたが考えるラグジュアリーとは何か。

ステラ:真のラグジュアリーとは、自分たちが着たいと思う服やアクセサリーを、生き物や母なる地球に害を与えていないと知りながら身につけられることや、誇りを持って次の世代に引き継ぎ、彼らもまた身に付けたくなるようなタイムレスな製品です。真のラグジュアリーとは、デザイン、伝統的な職人技、高い品質だけでなく、素材革新やサステナブルな解決策を生み出す先駆的な思考を評価する必要があることを私たち全員が理解する必要があります。それこそが、私たちの作品を希少で特別なものにします。

WWD:重視している技術・技法について、最新技術はもちろん、今見直されている伝統技法で、注目しているものあれば教えてほしい。例えば、伝統技法はあなたの制作活動にどのような役割を果たしているか?

ステラ:その完璧な例が、15年前に発売され、ヴィーガンバッグの起源となった、ブランドのアイコン“ファラベラ”バッグです。私たちは、動物皮革に代わる代替素材を扱うために、イタリアのなめしなどの職人に対して改めてトレーニングを実施してきました。“ファラベラ”には、他の高級バッグと同じレベルの職人技が施され、残酷性が一切ありません。ファラベラの象徴であるチェーンは、ひとつひとつ手作業で穴を開けたバッグ本体に、オーガニックコットンの紐で取り付けられています。これは、私たちの地球が必要としているリサイクル、バイオベース、そしてサステナブルな解決策を見据えながら、お客さまが求める伝統的な技法や技術を用いたものです。

WWD:グリーン・ウォッシュと言われることを恐れてサステナビリティの発信を控える企業や人が増えていると聞く。この傾向についてどう思うか?批判を恐れている人にアドバイスがあれば。

ステラ:グリーン・ウォッシュを避ける最善の方法は、自分たちが行ってきたこと、あるいは行っていることだけを伝えることです。言うばかりでなく、実際に行動することで、実直で透明性があり、信頼できる発言になります。行動は言葉よりも説得力を持ちます!

トップページに戻る

最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。