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「大橋会館」にクリエイターが集う理由 池尻大橋に生まれた新たなコミュニティーハブ

池尻大橋駅から東へ徒歩5分。目黒川がそばを流れ、洗練されたショップや飲食店が点在する閑静なエリアに2023年8月、新たな複合施設「大橋会館」が誕生した。

建物の随所に残るレトロな趣が、かつて研修・宿泊施設として運営されてきた48年の歴史を物語る。所有者である東急がクリエイティブスタジオ301inc.とともに、長きにわたる構想・工事期間を経てリノベーション。ホテル&レジデンスを核に、シェアオフィスやワインバー、ギャラリー、レストラン、サウナまで備える複合施設として生まれ変わった。ホテル&レジデンスについては、Airbnb(エアビーアンドビー)で宿泊予約することができる。

築48年の建築をリノベ
つながりが刺激を生む空間

館のコンセプトは“交差点”。バラバラの目的意識を持って集まった利用者同士がここでつながり、新しい発想や感性の芽を育てる。レジデンスの居住者とオフィス利用者が、共用ラウンジで新しいビジネスのアイデアを話し合ったり、ホテル客の外国人とバーの利用客が、館内で定期的に開かれるイベントで交流したり。「池尻の街の内と外をつなぐハブにし、エリアのポテンシャルを引き出したい」とプロジェクト発起人である東急・都市開発事業部の小池和希氏は語る。

玄関口となる1階のレストラン「マッシーフ」は、日本橋で人気のカフェベーカリーなどを手がけるTerranによるプロデュース。朝はコーヒーやペイストリーを提供するカフェ、昼から夜はワインとのペアリングで和洋折衷の創作料理を楽しめるバー&ダイニングへ様変わりし、街ゆく人の居場所となる。館内外を巻き込んだ交流パーティーやイベントも定期的に開催されており、すでに新しいコミュニティーが芽吹き始めている。

街のソトと交差し
カルチャーや思想が混ざり合う

都心への良好なアクセスと、洗練され落ち着いたムードが魅力の池尻大橋。「大橋会館」は街並みに溶け込みながらも、カッティングエッジなカルチャーの発信拠点となる。同じく1階には、独立系クリエイティブ集団のCEKAIが運営する、気鋭の作家のオリジナルプロダクトなどを販売するストア、アートの展示やイベントなどを行う多目的スペースを設置した。

2、3階は、個人や50名程度のチームが入居できるオフィスルームのフロア。各階中央には、オフィス利用者が利用できるラウンジスペースがある。空間設計には、池尻大橋の人気ストリートバー「ロビー(LOBBY)」を運営するクリエイティブスタジオ&Supplyが参画。アートやグリーンが彩る開放的で洗練された空間は、集まった人々が共感し、つながり、化学反応を生み出す実験場になる。展示会やギャラリー利用にも対応するスタジオ付き多目的スペースもある。

「リレント」システムが
新たなつながりを拡張する

「大橋会館」では、さまざまな志を持つ人と交わることで刺激が得られるだけでなく、各々のライフスタイルに合わせた自分らしい暮らしが叶う。「大橋会館」では“泊まる”と“住む”が表裏一体のユニークな仕組みを採用する。居住者が居住していない期間は、部屋を観光客など向けにホテルとして貸し出し、その分だけ賃借料を減額できる「リレント」システムだ。例えば普段は自然豊かな地方で暮らし、都心への出社や遊びの際には「大橋会館」をセカンドハウスとして利用するという楽しみ方もあるだろう。なお、宿泊予約はAirbnbですることができる。

居住者の映像カメラマンに聞く
「大橋会館」のリアルな魅力

オープンから一定期間は、Airbnbとの協業により、さまざまな分野で活躍する4人のクリエイターが滞在し、彼・彼女らがデザインした部屋を宿泊部屋として提供している。居住するクリエイターの1人である橋本拓実さんは、フリーランスの映像カメラマン・エディターとして、ファッション分野を中心にWEB広告・PV・SNSショートコンテンツなどの制作活動を行っている。都内で一人暮らしをしていたが、新しい出会いや刺激を求めて「大橋会館」での2拠点生活を始めた。東急の小池氏との対談を通じ、「大橋会館」のリアルな魅力をひも解く。

WWD:デザインした部屋について教えていただけますか。

橋本拓実(以下、橋本):「ヴィトラ(VITRA)」のテーブルや「ヘイ(HAY)」のダストボックスなど、好みの北欧系インテリアを中心にセレクトしました。室内はコンパクトですが、(リレント利用者には)一つ一つの家具の存在感を楽しんでいただけると思います。部屋を自分の好きなものだけで固めて暮らすのは、意外と難しいですよね。あれやこれやと、生活を便利にするために、モノが部屋の中に増えていきますから。そういった考えから一旦離れて、削ぎ落とした非日常を楽しめるようにしました。

WWD:「大橋会館」では印象的な出会いはありましたか?

橋本:館のオープン当初の交流会で、映画関係の記事を執筆しているライターさんと知り合いました。同じ映像に関わる分野ということで盛り上がりましたね。「『大橋会館』で皆が好きな映画の上映会ができたらいい」ともおっしゃっていて、なんだか面白そうだなと。

小池和希・東急都市開発担当(以下、小池):交流会は大々的に告知せず、口コミベースでの拡散だったんですが、1000人以上もの方に集まっていただけました。予想以上の反響に驚きましたし、新たなコミュニティーへの期待値と手ごたえを感じることができました。

WWD:新しい刺激がありそうですね。

橋本:映像コンテンツを制作する上では、映像「以外」の分野で活躍する人の考え方が、インスピレーション源になることも多いんです。もちろん、仕事ではさまざまな人とお会いする機会があるのですが、忙しない毎日の中では、集まれる“場”がないとなかなか関係が深まらないんですよね。きっと「大橋会館」のようなコミュニティーを待ち望んでいたクリエイターは多いのではないでしょうか。

小池:オーガニック農業関連の仕事をされている入居者さんは、ラウンジスペースで料理会ができたらいい、と話していました。館側で音頭を取らずとも、利用者の皆さまが主催するようなイベントが徐々に増えていけばといいなと思っています。一人一人のスキルや趣味、価値観が掛け算で生まれるような催しならば理想的ですね。

WWD:今後については。

橋本:最近は動画制作の仕事が忙しくなっていることもあって、頻繁には(「大橋会館」に)顔を出せていないのですが、もっと積極的にコミットできたらいいなと思っています。自分の動画制作の仕事はクライアントワークが中心なので、自分のスキルをどんなふうに生かせばコミュニティーに貢献できるか考えているところです。

小池:利用者は皆さん、「ここにいたら何かが生まれそう」という漠然とした、しかしながら大きな期待感を持ってくださっています。あまり肩肘張らず、気軽に顔を出してみてもらえるとうれしいです。プロジェクトはまだ走り出したばかりです。居住者、宿泊者、イベント参加者、オフィス利用者。これらの“点”がつながり、「大橋会館」という一つのコミュニティーが生まれるための環境や仕組み作りを、私たちも精一杯サポートしていくつもりです。

問い合わせ先
大橋会館
080-3691-6221