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「ここまでやるの」をどう伝えるか

デサントが発表したパフォーマンスウエアの新カテゴリー“プロ”が、ストレートすぎるネーミングもありとても気になります。“まだ世にないスポーツウエア”をテーマに開発したスキーウエアとゴルフウエア、トレーニングウエアの3種類で、「デサントがここまでやるのか」と世に思わせるほど自信があるのだとか。

デサントの“プロ”に限らず、スポーツメーカーには“売る”よりもブランドイメージ向上を目的としたラインやチーム、プロジェクトがあり、スポーツ担当時代に取材してきました。個人的には、どのメーカーも技術は高いのに、発信方法で成否が分かれているのがもったいないという印象でした。デサントの“プロ”は、独自開発した技術やコンセプトをどう消費者に発信してくのでしょうか。プロダクトと共に注目しています。

大塚 千践
NEWS 01

デサントが“まだ世にないスポーツウエア”の新カテゴリー始動 「ここまでやるのか、と思ってほしい」

デサントは、パフォーマンスウエアの新カテゴリー“プロ(PRO)”を発表した。“まだ世にないスポーツウエア”を掲げて、独自技術を駆使したユニークな機能服を作る。デビューシーズンの2023-24年秋冬コレクションでは、デサントが独自開発した技術“スキーマテック(Schematech)”を押し出す。公式オンラインストアと直営店、一部百貨店で順次扱う。

“スキーマテック”は、1枚の生地を部位別に融解したり、編み方を変えたりすることで、伸縮性や通気性、耐久性など異なる機能をもたせる技術のこと。生地の切り替えを減らして、着心地を向上させる役割もある。

この技術をスキーウエア2型、ゴルフウエア3型、トレーニングウエア2型の全7型に落とし込んだ。スキーはジャケット(22万円)とパンツ(8万8000円)で、ウエアを提供するスイス代表のアルペンスキー選手の声を反映した。ジャケットは空気抵抗を減らすために、フロントに縫い代や切り替えを出さないパターンを採用し、背中は編みを変えて伸縮性を持たせた。また肩でスキー板を担ぐことから、肩周りを樹脂でコーティングして耐久性を高めた。さらに蒸れた空気を逃すため、背面上部に微細なレーザーホールを空け、内部のダウンはあえて隙間が生まれるように配置して、空気が移動するよう工夫した。通常の2倍ほどの価格設定は、テクノロジーに振り切った結果だ。

デサントは、グローバルスポーツメーカーを目指して、ブランドイメージの向上に積極投資している。今年はブランドロゴを刷新したほか、東京本社オフィスの改装、既存店のリニューアルなどを行っている。新カテゴリー立ち上げもその一環と言える。デサントマーケティング部門 部門長代行の大辻俊作氏は「(売り上げの)定量目標を掲げてやるカテゴリーではない。われわれの機能性とデザイン性を伝える、イメージ発信の意義が大きい。『デサントが、ここまでやるのか』と思ってもらえるカテゴリーにしたい」と語る。

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NEWS 02

ケリング、主力「グッチ」の不調で23年上半期は減益 北米の景気減速も響く

ケリング(KERING)の2023年1~6月期決算は、売上高が前年同期比2.1%増の101億3500万ユーロ(約1兆5709億円)、営業利益は同2.4%減の27億3900万ユーロ(約4245億円)、純利益は同9.7%減の18億4600万ユーロ(約2861億円)だった。

地域別の売上高は、観光客が増加した西欧が同5.1%増の27億3900万ユーロ(約4245億円)、中国が復調したアジア太平洋地域(日本を除く)は同11.1%増の37億1000万ユーロ(約5750億円)、インバウンド需要が回復しつつある日本は同18.4%増の6億8300万ユーロ(約1058億円)と好調だった。北米は景気減速による国内需要の低下や、アメリカ人観光客が対ドルでのユーロ安を背景に旅行先の欧州で買い物をする傾向にあることから、同16.2%減の22億6600万ユーロ(約3512億円)だった。

ブランド別の売上高は、主力の「グッチ(GUCCI)」が同0.9%減(現地通貨ベースでは同1%増)の51億2800万ユーロ(約7948億円)だった。不調が続く同ブランドは転換期にあり、22年11月に退任したアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)前クリエイティブ・ディレクターの後任として、23年1月28日に「ヴァレンティノ」出身のサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)を任命。また、ミケーレと二人三脚で「グッチ」を立て直したマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)社長兼CEOも、デ・サルノ新クリエイティブ・ディレクターのデビューショーを見届けた後、9月23日付で退任する。ケリングによれば、後任は9〜10月から探し始めるため、当面は同社のジャン・フランソワ・パリュ(Jean-Francois Palus)=マネージング・ディレクターが暫定的に同職を務める。

ほかの主なブランドとして、「サンローラン(SAINT LAURENT)」は同5.8%増の15億7600万ユーロ(約2442億円)と堅調だったものの、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」は同0.1%減の8億3300万ユーロ(約1291億円)だった。「バレンシアガ(BALENCIAGA)」が属するその他のメゾン部門は、同5.1%減の18億5600万ユーロ(約2876億円)だった。

なお、ケリングは7月27日、ヴァレンティノ(VALENTINO)の株式の30%を、同ブランドを擁するカタールの投資会社メイフーラ・グループ(MAYHOOLA GROUP以下、メイフーラ)から17億ユーロ(約2635億円)で取得した。取り引きは23年末には完了する見込み。これは両社のより幅広い戦略的提携の一環で、契約にはケリングが28年までにヴァレンティノの株式の100%を取得するオプションが含まれているほか、メイフーラはケリングの株主となる可能性があるという。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。