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どうなる? 池袋西武

 かつて埼玉県民だった私にとって、池袋は東京の入り口。中学生の頃、友だちと池袋西武に出掛けた思い出があります。そして、今も実家に帰る途中で降りて、寄ることが多いです。特に屋上が良いんですよ。この先どうなるのか、一生活者としても非常に気になります。

 池袋といえば、ビックカメラの本拠地でもあります。ヤマダデンキLABIの大型店もあり、ここにヨドバシが出店すれば、さらに家電量販の激戦区になりますね。さて、ヨドバシ出店フロアはこの記事の予測通りになるのでしょうか。

「WWDJAPAN」副編集長
小田島 千春
NEWS 01

百貨店売上高3位「西武池袋本店」はヨドバシ主導でどう変わるか

 セブン&アイ・ホールディングスは、子会社のそごう・西武を米投資ファンドの米フォートレス・インベストメント・グループに売却することを正式発表した。フォートレスは百貨店再建のパートナーとして家電量販店のヨドバシホールディングス(HD)と組む。ヨドバシHDはそごう・西武の一部店舗の不動産を取得した上で、ヨドバシカメラを出店する。具体的な再建策は今後明らかになるだろうが、最大の注目は基幹店である西武池袋本店だ。

 西武池袋本店はコロナ下の2022年2月期でも売上高は1540億円。伊勢丹新宿本店、阪急本店(阪急うめだ本店、阪急メンズ大阪)に次ぐ百貨店売上高の日本3位である。旧セゾングループが消費市場を席巻した1980年代には1位だったこともある。現在でも西武池袋本店が一番店(全国で最大の売り上げ)というアパレルブランドが少なくない。

 JR、東京メトロ、西武、東武が乗り入れ、1日の乗降客数が260万人という池袋駅に直結する好立地に、7万3000平方メートルの巨大な売り場を構え、その集客力は日本トップクラスといえる。全国に百貨店を10店舗運営し、その他の事業と併せて売上高4469億円(22年2月期)のそごう・西武にとって、その3分の1を占める虎の子だ。しかし近年はそのトラフィック(通行量)を生かしきれていないという指摘も多い。

ヨドバシカメラはどこに入るのか

 同店は今年7月末、約10年ぶりの大型改装を発表した。対象は地下1階~2階の食品、2階のアート雑貨、化粧品、プレステージ雑貨、3階のハンドバッグ、婦人靴売り場の全4フロアで、合わせて2900平方メートルになる。9月上旬から2023年1月中旬にかけて、段階的に改装している最中だ。10月28日にもZ世代やミレニアル世代に向けたナチュラルコスメの売り場がオープンしたばかりだった。

 コロナ禍から消費が戻りつつある中、反転攻勢をねらった大型改装が、ヨドバシカメラの入居を前提に計画されていたかは不明だ。セブン&アイは、入札を経て優先交渉権を得たフォートレスと7月以降、具体的な条件面をすり合わせてきた。最も収益のポテンシャルが高い西武池袋本店をどうするかは重要事項だったはずである。

 ヨドバシカメラが入居することは、ほぼ確実と言われている。読売新聞オンラインは「西武池袋本店は、ヨドバシが建物のほとんどを取得するとみられる。1階などに家電量販店を出店したうえで、百貨店全体をヨドバシが運営する可能性がある」(11月12日付)と、かなり踏み込んだ見方を紹介している。

 「建物のほとんどを取得する」のは“自前主義”を重視し、全国の店舗で不動産を所有してきたヨドバシHDの定石といえる手法だ。実行に移されれば、いよいよヨドバシ主導が鮮明になる。また、気になるのは「1階などに家電量販店を出店」という見通しである。百貨店では上層部の1〜2フロアに家電量販店がテナントとして入ることは、現在では特段珍しいことではない。ただ、家電量販店が百貨店の顔である1階に入るとなると話は別だ。

 西武池袋本店は山手線に沿って長細い形をしているが、1階フロアには「ルイ・ヴィトン」「エルメス」「ロエベ」といったラグジュアリーブランドと化粧品の売り場が入る。長期低迷が続く百貨店において、ラグジュアリーブランドと化粧品は貴重な成長領域であり、特にラグジュアリーブランドは高単価で収益性が高い。1階の一等地を家電専門店に譲ることは、従来の常識では考えにくい。売上高が落ちているにもかかわらず、4フロア前後を占めている衣料品売り場などを集約して、ヨドバシカメラを入れるのが妥当だと思われる。

百貨店のブランド力を生かした再建

 大都市の百貨店は、成長領域であるラグジュアリーブランド、時計・宝飾品、アートといった高額品に経営資源を集めている。三越伊勢丹、大丸松坂屋百貨店、高島屋、阪急阪神百貨店も大都市の基幹店は、これまで以上に高額品の拡充に乗り出す。所得の2極化が、コロナを機にさらに顕著になったからだ。「ユニクロ」「ザラ」「無印良品」「ニトリ」「西松屋」といったカテゴリーキラー、あるいはショッピングセンター、ECモールと競合しない高額品こそが百貨店の強みを生かせる分野として認識されるようになった。

 コロナ前からラグジュアリーブランドや時計・宝飾品売り場の増床を進めてきた伊勢丹新宿本店は、22年4〜9月期の売上高が統合後最高を記録した(2008年に三越と伊勢丹が経営統合して以降の最高売上高)。中華圏の訪日客が戻り切っていないにもかからず達成した最高売上高は、国内の富裕層の購買力をあらためて印象付けた。そごう・西武も環境は同じだ。百貨店各社は、富裕層を対象にした外商事業の再強化にしのぎを削っている。

 西武池袋本店も豊島区や西武沿線を中心に、ロイヤリティの高い上顧客を大勢持っている。同社が長年かけて築き上げた最大の財産と言ってよい。ヨドバシ主導の再建イメージが前面に出過ぎると、こうした百貨店ならではの強みが削がれる懸念がある。読売新聞が報じたように「百貨店全体をヨドバシが運営する可能性がある」とすれば、「のれん」のイメージを守れるかが大きな鍵になるだろう。

 ヨドバシHDは11日にリリースを発表した。「不動産、事業再生等に関する豊富な経験を有するフォートレスと協力し、そごう・西武の百貨店と連携した新たな店舗の出店をはじめ、最先端の情報システム活用や、豊富な品揃え等により、お客様のご期待にお応えするよう、より一層、価値ある店づくりに努めてまいります」とコメントしている。ヨドバシといえば、小売業の自社ECとして屈指の成功事例といわれるヨドバシドットコムがある。家電だけでなく食品、書籍などを最短で即日配送する物流システムを持っている。そごう・西武とのECとの連携も注目されるところだ。

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NEWS 02

アパレル物流トップのセンコーが廃棄ゼロを目指すEC事業を始めるワケ

 センコーグループホールディングス(HD)傘下で、ファッション物流最大手のセンコーが、アパレルの在庫ロス削減と廃棄ゼロを支援する循環型のファッション・サステナブル・プラットフォーム「ゼロブランズ(ZEROBRANDs)」を構築する。子会社ゼロブランズを8月に設立し、まずは11月15日に余剰在庫品を中心に新価格で再販する社内向けのクローズドECサイト「ZEROBRANDs」をオープンする。廃棄予定品は買い取ってリメイクしたり、再資源化するなどまとめて効率的にリサイクルさせる。中古品を扱う2次流通が増える中で、物流のノウハウを生かして、余剰在庫品や返品商品などを回収・再販する「1.5次流通」とも呼べる静脈物流を確立。来年には一般向け販売や古着回収も予定する。センコー執行役員ロジスティクス営業本部副本部長であり、ゼロブランズ社長を兼任する小林治彦氏に、新事業に賭ける思いやビジネス構想を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):センコーグループHDの概要と、ファッション物流業界トップという根拠を知りたい。

小林治彦ゼロブランズ社長(以下、小林):センコークループHDは東証プライムに上場する総合物流企業だ。年間売上高は6231億円 ( 2022年3月期 )で、中核企業のセンコーに加え、東京納品代行、M&Aによりグループ入りしたアクロストランスポート(元オンワード物流)や江坂運輸(元阪急百貨店系)など、国内外にグループ161社を有している。ファッション物流の年間売上高は495億円で、小売価格換算で約1兆円分の商品を取扱っている。国内アパレルの小売市場規模は7兆5000億円前後と推計されるが、物流費は概ね5%と言われているので、金額ベースで日本のファッション商材の13%ぐらいを扱っている計算になる。

WWD:ファッション系の主な取引先は?

小林:百貨店やショッピングモール、路面店、ECなどの販売網を持つ大手アパレルやセレクトショップ、ラグジュアリーブランド、インポートブランド、そしてスポーツブランドなどを物流面で支えさせていただいている。それらの企業の倉庫や商業施設、店舗に常時配送をしている状態で、帰りの便に載せる静脈物流を活用することや、データ連携をすることで、環境負荷を低減して効率的に循環型事業ができることになる。

WWD:センコーのファッション物流サービスの特徴とは?

小林:ファッションの生産物流から販売物流まで、一貫物流サービスを提供している点だ。「海外生産地からのフォワーディングサービス」「ファッションロジスティクスセンターの運営」「商品の集荷・全国店舗への配送」などを提供している。特に「ファッションロジスティクスセンターの運営」では、商品やハンガーの保管、繊維製品品質管理士(TES)や衣料管理士たちによる商品の検品、補修、洗濯タグの発行・取付、店舗納品のための流通加工、たとえば値札の発行・取付なども行っている。EC出荷の梱包・ささげ・コールセンター等のECフルフィルメントサービスや、「ゼロブランズ」にもつながるが、静脈物流として店舗やECの返品、社員セールや催事への出荷なども手がけている。またWMS(倉庫管理システム)についてパッケージソフトを使うところが多いが、我々はいろいろな経験を生かしてセンコーグループ独自のファッションクラウドWMSを構築して共通利用しているのも特徴だ。

WWD:「ゼロブランズ」では物流×サステナビリティによる新たな循環型事業を展開するというが、センコーではこれまでどのようなサステナブル物流に取り組んできたのか?

小林:3つ挙げるとしたら、1つ目はEVトラック(電子トラック)による配送で、2019年7月に「ルイ・ヴィトン」の都内配送を開始して以来、ラグジュアリーブランドを中心に取り組みが広がっている。2つ目はオンワードHDと三陽商会と共同して、洋服を包装しているビニール袋を回収してプラスチック容器にリサイクルするなど、資源循環を推進している。参画企業が増えつつある。3つ目は循環型経済の構築を支援する静脈物流サービスの提供だ。三菱商事によるレンタル商品・EC商品の返却・返品サービス「スマリ(SMARI)」の物流業務を昨年11月から開始。ローソンへの通常配送車両が「スマリボックス」から回収した返品・返却品を帰りに載せて運んで物流センターに集約し、各EC事業者に配送する。既存物流網を活用することで物流コストの抑制と、低・脱炭素につながるグリーン物流化を図っている。

WWD:新会社ゼロブランズに込めた思いとは?

小林:新会社ゼロブランズの社名の“ゼロ”は、廃棄ゼロの実現、ゼロからのスタート、また循環という意味を持つサーキュラーの輪を表しており、“ブランズ”には信頼ある、価値ある商品・企業という意味を込めた。すでにわれわれは生産地から日本の物流倉庫、さらに店舗網をカバーする輸送網を世界規模、全国規模で構築し、日本国内のファッション物流の約10~15%を担う1次流通の基幹ハブとなっている。これまで培ってきたプラットフォームやネットワーク、人材、財力、中立性、信用力を生かして、主旨に賛同いただいた企業との協働で、商品廃棄ゼロの循環型のファッション・サステナブル・プラットフォームを構築する。「シン物流」とも言える「1.5次流通」を実現し、日本のファッション産業全体のサステナビリティ推進を目指したい。物流会社なのに、なるべく動かさない、Don’t Moveの精神で、服の状態でトコトン売り切り、全量循環させていく。ECサイトに加え、サステナブル関連のニュースなどを集めたオウンドメディアから情報発信も行っていく。

WWD:新たにファッション・サステナブル・プラットフォームを創るというが、そのきっかけと狙いは?

小林:自社の倉庫で大切な商品をお預かりしたり運んだりしたりする中で、たびたび商品が廃棄されるシーンを見て、ずっともったいないという声が挙がっていた。サステナビリティのニーズの高まりはもちろんのこと、コロナ禍や原材料や物流費などのコスト上昇などで、在庫の適正化に取り組む企業も増えているが、セールやアウトレットを行っても残ってしまう商品はどうしても発生する。また、ECが台頭する中で返品が増え、滞留してしまって売り時を逃してしまうものもある。そんな中で、余剰在庫費や不良在庫、返品商品などを集めて新価格で販売するECを作って、極力モノを動かさずにデータをつないでユーザーに販売することができれば、CO2排出も削減でき、取引先の方々の課題解決にもつなげられると考えた。

 洋服として生まれてきた以上はそのまま販売するのが一番のサステナブルだと思っている。なるべくもとの形のまま販売したい。ただし、店頭で販売したり、店舗やECで販売して返品された際に、キズや汚れ、焼けなどが発生して、そのままでは売れない不良品はどうしても発生してしまうもの。それをわれわれが買い取って、回収して、すでに機能を有している品質チェックや修理、リメイク・リフォーメーションを施して、再び販売できる状況に生き返らせることができる。

 どうしても修復不可能なものは、リサイクル会社とネットワークを構築し、まとめてリサイクルしていく。個別ではかさみがちな費用の負担軽減や、量が足りなくてリサイクルできないという状況を解決して、循環型を推進し、CO2削減にも寄与させたい。

WWD:11月15日にスタートするECサイト「ZEROBRANDs」の詳細は?

小林:スタート時には、有名セレクトショップや大手アパレルなど5社・21ブランドに協力いただき、1000~1500アイテムを販売していく。平均の元値は2万円で、質の高さも特徴だ。まずはセンコーグループ161社のグループの社員に向けてクローズドサイトで販売する。これだけで約10万人いるので、廃棄ゼロに向けた購買力にも期待したいし、UI/UXなども検証し改善していきたい。クローズドサイトの中でも、社員だけが限定して買えるものと、パートやアルバイトで働いてくださってる方々まで購入できるものなど、閲覧、購入ができる範囲を各企業と各々設定したり、購入者には登録時に誓約書へのチェックを求め、ネームバリューやブランド価値を守っていく。どれを買っても廃棄から服を救うサステナブルな行動につながるし、今まで定価やセールでも手が出なかったブランドのアイテムを購入して身に着けることで、そのブランドや商品の良さに気付き、ファンになるきっかけにもしていきたい。来年9月には一般向け販売を開始する予定だ。その際にも、クローズドで販売したり、その取引先の社員や関係者に限定したファミリーセールサイト的な販売にするなど、公開範囲(購入可能対象者)を自由に設定できるオプションを設けていく。

WWD:取引先からの調達条件は?

小林:データ連携して委託販売していただくケースや、買い取らせていただくケース、そのままの形状で販売するケースやネームタグを外すケースなどいろいろ選んでいただける。テキスタイルやB品、不良品などについては無料で回収することも。今まで廃棄にかかっていた費用の削減と環境負荷の削減とを。とくに商談を通じてわかったのが、外資系ブランドからもニーズが高いということだ。ラグジュアリーブランドやライセンスブランドなどでは、本国のアプルーバルが必要になるので交渉に時間がかかるが、ブランドを毀損せず、しかも日本のローカル内で消化・解決することが求められる中で、今回の「ZEROBRANDs」のECサイトや循環型モデルなどに高い関心や期待を寄せていただいていると感じている。

WWD:リメイク・リフォーメーションや、リサイクルの部分の構想は?

小林:社内にいる繊維製品品質管理士(TES)の資格保有者や服飾系専門学校卒業生などでリメイク・リフォーメーションを行ったり、クリエイターの方々と協業することも構想中だ。ブランドと協力してテキスタイルなどを専門学校に寄付することも検討していく。リサイクル分野ではBPラボや「パネコ」を手がけるワークスタジオなど外部と連携していく。カシミヤやウールの再生素材化や、什器やボード化などから着手し、再資源化を図り、単純廃棄をゼロにしていく。環境やサステナブルに対して同じ思いや技術を持つ企業と手を組んでいきたい。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。