ビジネス

人気インフルエンサーとECのプロが語る「アパレルビジネスのこれから」

 EC市場の拡大とインスタグラム(INSTAGRAM)を筆頭にしたSNSの普及に伴い、リアル店舗を持たないネット専業ブランドが当たり前の存在になりつつある。中でも注目はSNSを駆使するインフルエンサーを軸にしたD2Cブランドだろう。リアル店舗とEC、インフルエンサーとECを、アパレル企業はどう融合すべきなのか。インフルエンサーであり、自身のブランド「RYO TAKASHIMA(リョウ タカシマ)」やセレクトショップ「+81(プラス エイティーワン)」のディレクター兼バイヤーを務める髙島涼と、長らくアパレルECに携わってきた自他共に認める“ECのプロ”であるインターファクトリーカスタマーサクセスチームの杉山嘉規氏に、アパレルECの今後について聞いた。

インスタグラムを駆使、
全方位で商品の魅力を伝える

WWDJAPAN(以下、WWD):D2Cブランドが次々生まれているが、その現状をどう見る?

杉山嘉規(以下、杉山):アパレルECに長く携わってきましたが、今はある程度フォロワーがいれば、ブランドを作れる時代になった。しかもSNSで「こんなものを作ってみたい」と投げかけて、反応が良ければ作る、ダメならやめるというやり方もできる。スケールアップさせることを別にすれば、売り手とその人から買いたいファンがいれば、ビジネスは比較的簡単に成立するわけで、個人的には、まずはやってみるというのはアリだと考えています。ただ、髙島さんが手掛ける「RYO TAKASHIMA」は、そうしたインフルエンサー発のD2Cブランドの中でもある種別格で、素晴らしいビジネスモデルだと思っています。

髙島涼(以下、髙島):「RYO TAKASHIMA」は原則、先行受注のみ。インスタグラムなどのSNSをフル活用して、受注のあった製品だけを定価で販売しています。重視しているのは商品数を絞り込んで、1品番あたりの販売数量に奥行きを出すこと。「RYO TAKASHIMA」の場合、月に売り出すアイテムは10品番ほど。商品は月に2回更新なので、2週間で5品番を売るというやり方です。そのため肝となるインスタグラムでも、2週間をかけてこの5品番の情報を、ビジュアルや動画、ライブなどを総動員してさまざまな角度から発信しています。重要なのは、とにかくファンを飽きさせない工夫を継続的に積み重ねること。雑誌のように「文字+写真」の投稿の場合は雑誌のライティングを自分なりに勉強して取り入れたり、ファッション情報に関してはトレンドや着こなしなどの新しい情報を常にアップデートして、分かりやすく伝えたり。投稿後は、保存数やコメント数をかなり細かくチェックしています。一番重視しているのはDM(ダイレクトメッセージ)です。コメントをためらう人もDMだと比較的気軽に送ってくれることもありますし。リアクションとしても一番分かりやすく、リアルなので情報の質が高い。自分のアカウントはもちろん、「+81」や「RYO TAKASHIMA」に関する問い合わせにも基本的には全て私が対応します。多いときだとDMが1日100件を超えることもあるので大変です。1日に長いときで9時間、平均でも5〜6時間は見ていると思います。お客さまのニーズをキャッチするという意味で情報をインプットするためでもあり、逆に情報発信の最も重要なツールでもあるので、ある意味当然なのかもしれませんが。

月商1000万円を超えたら
次のステップへ

WWD:現在の月商は?

髙島:「RYO TAKASHIMA」単体で月商1000万円超、「+81」など自分がディレクションしているブランドなども含めると、もっと多くなりますが、こちらは単独の事業ではないので詳細は非公表です。

杉山:これまで多くのECサイトやD2Cブランドの運営支援を行ってきましたが、感覚的には月商1000万円までいくと、ブランド運営のやり方を戦略的に見直す必要が出てくると思います。月商数百万円までは、ブランドの運用やECサイトの運営に大きな差はそれほどでない。ただ、それ以上になると、例えばどのツールを使うべきか、ECシステムに何を使うかなど、ブランドのタイプや戦略によってきちんとフィットさせる必要が出てきます。

髙島:同感です。振り返ってみても、瞬間ではなく継続的にビジネスを成長させることを考えると、一緒に組むビジネスパートナーやECシステムを再構築するタイミングだったな、と思います。その意味で一つの転機が、2020年9月にオープンしたセレクトショップ「+81」です。ディレクター兼バイヤーという立場で関わりつつ、実際には出資も行って運営自体にも関係しています。

リアル店舗はECを伸ばす、
大きな武器になる

WWD:「+81」は今年の5月、東京・中目黒にリアル店舗をオープンした。なぜリアル店舗を出店するに至ったのか?

髙島:そもそも、ですが(リアル店舗のオープンには)メリットしかないです。インスタグラムでどんなに工夫して情報発信をしたとしても、実際にお客様が店舗で商品を見て、手に取って、着てもらう、逆に私も実際に接客でリアルにコミュニケーションする、その情報の密度や量は圧倒的です。そのお客さまがその場で買わなくても、ECサイトで購入する場合も含めると、コンバージョン(購入率)は爆上がりしています。

WWD:コストよりもメリットがはるかに大きい?

髙島:はい。アクセスを重視していないので、家賃は低く抑えられています。これまでスタジオを使っていたルックの撮影を店舗で行ったり、ライブコマースやショールームに使ったり、単なる店舗というより、いろいろと活用しています。それにリアル店舗を作ったことで「+81」というブランドの世界観をより統一的に見せられるようにもなりました。リアル店舗ってこんなにもいろいろなことができるんだ、というのが正直な気持ちです。

WWD:「+81」の今後は?

髙島:ブランドを仕入れて売るセレクトショップは、利益率がどうしても低くなる。別注や共同開発商品を販売できるようなブランドを増やすなど、やり方は変えていきたいと思っています。いずれにしても、服が好きで、ブランドが好きで始めたセレクトショップなので、大前提はブランドとウィンウィンの関係を築くことです。

WWD:ECのプロである杉山さんから見て、これからの「D2Cブランド」や「ECの活用法」をどう考える?

杉山:昔は企画からPR、宣伝、販売が完全に分業されていましたが、今はSNSである種完結できるし、そのSNS自体にもショッピング機能がついている。自社ECサイトにしても好きなだけ情報を盛り込めるし、ライブコマースのようなメディアとコマースが融合したコンテンツを付け加えることもできる。全てがオンラインで完結できることを考えると、消費者とインフルエンサーが直結したD2Cブランドはますます増えていくと思います。逆にリアル店舗からスタートしたオフライン発のブランドは、デジタルとリアルをもっとうまく融合する必要があると思います。そのためには、PRや宣伝、SNS運用などのデジタルマーケティングに関わる全般的な業務を、リアル店舗とECに分けて別々に運用するのではなく、組織としては上位にもってくるように変えていく必要があると思います。髙島さんがリアル店舗を、ブランドのルックの撮影から接客、ライブコマースまで使い尽くすやり方は、リアルとデジタルを融合したユニファイドコマースの象徴的な事例だと感じます。

当社の「ebisumart(エビスマート)」は、ブランドを運営する上で必要なさまざまな機能に対応できる拡張性が特長です。カスタマイズが容易で、ユーザー企業がすでに使っている他社のシステムとの連携もしやすい。また、通常のASPを導入する場合は、そのカスタマイズの仕様もブランド自身で考えてオーダーする必要があり、時にはその役割の人をさらに社外から呼んでくるなど手間もかかることが多い。自分が所属するカスタマーサクセスチームでは、"EC事業全体のサポート"をミッションとし、「ebisumart」の利用の有無にかかわらず、上流の戦略コンサルティングから、広告運用支援や運用代行まで対応している。まずはお気軽にご相談いただければと思います。

クラウドコマースプラット
フォーム「ebisumart」とは?

 インターファクトリーが展開する「ebisumart」は、ファッションやビューティ分野で多くの有力ブランドが採用する高いシェアを持つクラウドコマースプラットフォームだ。大きな特長は拡張性と最新性、安心性が挙げられる。サイトのデザイン性が高く、機能をセルフでカスタマイズできる点、継続的な無料アップデート、安定した稼働率、万全のセキュリティー対策などがユーザーから高い支持を集めている。ECサイト導入実績は700サイトを超え、過去1年間のアップデート数はなんと252回と常に改善を重ねてきた。こうした特長から、まずはショッピングカードで自社ECサイトを立ち上げたブランドが次の成長ステップを目指す際のスタンダードシステムとなっている。

TEXT:MIWAKO ANNEN

問い合わせ先
インターファクトリー
https://www.ebisumart.com/input_ebisumart.html