ファッション

JSB3山下健二郎がファッションでサステナビリティに挑む 漂着ペットボトルから生まれるモノ作り

 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの山下健二郎がDIYや釣り、キャンプなどのアクティビティーを楽しむ人に向けたファッションブランド「ハイ ファイブ ファクトリー プロデュース バイ ケンジロウ ヤマシタ(HIGH FIVE FACTORY PRODUCE BY KENJIRO YAMASHITA以下、ハイ ファイブ ファクトリー)」を立ち上げた。自身の趣味や経験を元にしたファッショナブルかつ機能的なアイテムを提案する。1月にファーストコレクションを発表し、初めての秋冬を迎えた今シーズンは、マウンテンジャケット(2万2000円)やフリースジャケット(1万3200円)などをラインアップするほか、豊島が扱うリサイクル素材「UpDRIFT(アップドリフト)」を用いたキャップ(4400円)も用意。「できることから始めたい」と話す山下が取り組むサステナビリティは、決して身構えず、多くの人が今日からできるアクション。その心意気から生まれるモノ作りをインタビューから探る。

「できることから
少しずつでもアクションを」

――山下さんがサステナビリティに興味を持つきっかけは何だったんでしょう?

山下健二郎(以下、山下):海や川、ダム、湖など、全国さまざまな場所で釣りをしていると、釣り場が汚れていることがあるんです。漂流ゴミや廃棄されたもの、釣り人が捨てた物などいろんなゴミがあるんですが、そういうのを見ていると悲しくなって……、何か自分でもできることはないかな?と、毎回、ゴミをビニール袋いっぱいに拾うことから始めました。そういう小さなことはしていたんですが、以前、仕事で(鹿児島県の)沖永良部島に行く機会があって。そこでは子どもたちが、毎朝5時半に起きてビーチクリーンをしているんです。大人たちが出したゴミを、“環境問題”という言葉も知らないような子どもたちが拾っている。その理由も、綺麗な海を守りたいとか生き物の住処を綺麗にしたいとか、そういうシンプルな気持ちです。その子どもたちに感銘を受けたことが、環境問題をより強く意識するようになるきっかけでした。

――今年に入って立ち上げた「ハイ ファイブ ファクトリー」はアウトドアユーザーに向けた服です。ブランドを通して環境問題に挑みたいという気持ちもあるそうですね。

山下:「ハイ ファイブ ファクトリー」は釣りやキャンプ、DIYなど、自然と関わっているアクティブな人たちに着てもらいたいという思いで立ち上げました。そういったブランドだからこそ、環境問題への意識を投げかけることができるだろうし、ブランドを通して釣り場を綺麗にしようとか、メッセージを伝えることはできると思っています。商社の豊島さんから漂着ペットボトルゴミを原料とした繊維「UpDRIFT」があることを聞いて、まずはできることから、少しずつでもアクションを起こすことが大切だなと。そこでまずは、「UpDRIFT」の生地をキャップに用いました。

――「UpDRIFT」のどのような点に魅力を感じましたか?

山下:本来は漂流ゴミが無くなるのが一番なので、繊維に変えて服を売る時代が来ないのが理想ですよね。でも現実的になかなか難しいし、今を生きる僕たちが環境問題に取り組まなければ未来にさえ繋がらない。今、余った洋服の廃棄が問題視されていますが、僕は洋服もギアも好きだから複雑な気持ちもあって……。だからこそ、好きなものを環境問題の解決に繋げられる「UpDRIFT」のような素材は素晴らしいと思ったんです。

――キャップを選んだ理由は?

山下:もちろんアパレルでもよかったんですが、僕が今作っている洋服はサイズ的にメンズ向きのものが多いので、キャップなら男女問わず、子どもから大人まで被れると考えました。今後はシーズンごとにキャップのデザインも新調して、ゆくゆくはグッズやギアに広げていきたいと思っています。

――改めて、山下さんにとってのサステナブルとは?

山下:今はまだ、どちらかといえばサステナビリティが“いいこと”だという感覚の人が多いと思いますが、近い将来、これが当たり前の生活レベルになることを願っています。僕も仕事で、たくさんの発信場所を持たせていただいていますが、それを惜しみなく使って、どんどん発信していきたい。日本は本当に海も川も湖も綺麗だし、魚も美味しい。釣りやキャンプを愛する男として、そのかけがえのない自然を自分たちの手で守っていきたいです。

漂着ペットボトルを回収し、
資源にする「UpDRIFT」

 「UpDRIFT」はライフスタイル提案商社の豊島が扱う、海岸などで回収したペットボトルなどを繊維原料に生まれ変わらせ、環境負荷の低い新しい製品として蘇らせる取り組みだ。地域活動団体や地方自治体、企業などと連携して行うビーチクリーンアップ活動によって砂浜に漂着したペットボトルを回収し、分別や粉砕、洗浄などを行ってから資源化する。

 クリーンアップ活動で回収した漂着ペットボトルは、分別、粉砕して溶かし、“UpDRIFTファイバー(糸)”として生まれ変わる。これには、回収漂着ペットボトル由来の再生樹脂を10%以上、残りの約90%相当は素材市場から調達したペットボトル由来の再生樹脂を使用している。その糸で織った“UpDRIFTファブリック(生地)”を製品に用いる。

 そもそも日本周辺海域(東アジア)には北大西洋の海域の16倍、世界の海の平均の27倍のペットボトルを含むマイクロプラスチックが存在すると推計されている。海域別1平方キロメートル当たりに存在するマイクロプラスチックの個数が、世界の海の平均約6万3000個に対して、日本周辺海域(東アジア)では172万個あったという調査結果があるほどで、海の環境や海洋生物にとって脅威となっている。海洋プラスチック問題の解決を目指すことを通じて、豊かな自然を守り、有限な資源の有効利用を実践するのが「UpDRIFT」だ。

 “UpDRIFT(アップドリフト)”とは、「緩やかな上昇、上昇運動」といった意味を持つ言葉。海洋プラスチック問題をジブンゴトとして捉え、「ひとりひとりができるアクションを起こし、より大きなムーブメントにしていきたい」という思いを込めている。世界規模の海洋プラスチック問題に対しては「小さなうねり」に過ぎないが、個人、地域、企業など、同じ意志を持つ仲間と協力することで、小さなうねりを大きな波へと変えられると信じ、活動を続けていくという。

INTERVIEW & TEXT:YUKI KOIKE
問い合わせ先
豊島 営業企画室
03-4334-6042