「今はたくさんの仕事を抱えていて、すごく忙しいんだ」と語るアライア
アズディン・アライア(Azzedine Alaia)は自宅に友人たちを招いて、料理の腕を振るうのが好きだ。この日、モデルのゲイル・エリオットとその夫であるジョー・コフィーなどと一緒にランチに招待された「WWD」の記者は、ゲストたちが極上ワインと共に、野菜を添えたローストビーフに舌鼓を打つかたわらで、ゆっくりと緑茶を飲むアライアに、日々の仕事から現在のファッションシステムについてまで、多岐にわたる話題について聞いた。
現在のファッションシステムはクリエイティビティーのとてつもない損失
パリ・コレクションの1カ月後に発表した「アライア」2016-17年秋冬コレクション
[rel][item title="【関連ルック】「アズディン アライア」2016-17年秋冬パリ・コレクション" href="https://www.wwdjapan.com/collection/look/azzedine-alaia/2016-17-fw-paris-collection/" img="no"][/rel]
WWD:パリ・ファッションウイークの終了直後にコレクションを披露するのは、クリエイティブ面を考えてのこと?それともビジネス的選択?
アズディン・アライア(以下、アライア):時間的な問題だよ。スタジオのスタッフはとても少ない。アシスタントが2人いるだけなんだ。だから私は自分でとてもたくさんの仕事をこなさなければならない。特にフィッティングはすべて自分でやる。スケッチをスタッフに渡して、「あとはよろしく」というわけにはいかないんだ。つまり、私は誰よりも多くの時間、働いているんだ。そこが他ブランドとの違いだよ。私は年に8回もコレクションをやらない。でも、ブランドのあらゆることに、最初から最後まで関わっているんだ。出荷でさえ私がコントロールしている。ブティックも見て回って、何か改善点などないかをチェックしているんだ。
WWD:スケッチ、ドレーピング、素材開発、フィッティングなど、クリエイションのあらゆるステップが好きなようだが?
アライア:イエス。そうでなければクチュリエにはなっていないよ。
WWD:1年に作成するコレクションはいくつ?
アライア:4つ。これで限界だよ。多くのデザイナーが潰れるわけがわかるでしょう?今の状態はクリエイティビティーのとてつもない損失だよ。
WWD:あなたのリズムを変える気はある?
アライア:ノー。私たちは大規模なショーはやらない。私たちはバイヤーとプレスのためにショーを行っていて、それでうまくいっている。受注も順調だし、売り上げも伸びている。変える理由がないと思わないかい?これが私のリズムだ。他の人々のやり方を真似るつもりはないよ。
次ページ:コピーには徹底抗戦! ▶
コピーには徹底抗戦
WWD:あなたが小規模で控えめなショーをやるのは、コピーされるのを防ぐため?
アライア:いや、違う。そういう理由じゃないんだよ。確かに今はコピー商品が氾濫しているけれどね。
WWD:もしコピーされたらうれしい?それとも憤慨する?
アライア:デザイナーが他のデザイナーのアイデアを着服し、ジャーナリストがそれに対して何もいわないという現状は間違っている。例えば、今シーズンの「ロベルト カヴァリ(ROBERTO CAVALLI)」で信じがたいことがあった。私が1985年にデザインしてティナ・ターナーが着たドレスをそのまんまコピーしたものがあったのだけど、ジャーナリストを含め誰一人としてそれに気づかなかった。私の周りの人たちは、何も言わないほうがいいと言ったよ。「エルヴェ レジェ(HERVE LEGER)」のバンデージドレスでさえも忘れられる時代なのだからと。そして、ジャーナリストたちは、コピーされた私のドレスを、夏にピッタリのドレスだと撮影している。よくあることと言えばそれまでだけど、間違っているよ。コピーされた作品の撮影は拒否するべきだ。
WWD:「ロベルト カヴァリ」には抗議した?
アライア:もちろん!今は弁護士に任せている。さらにまた別のイタリア人デザイナーは、私の作品を全て、いいかい?「全て」だよ、コピーしている。しばらく前に彼を訴えたが、彼は懲りずにまたやった。間違っているよ!こういうことには徹底抗戦すべきだよ。
WWD:リシュモンがあなたのビジネスに干渉したことはある?
アライア:いいや、リシュモンに対しては多大な敬意を抱いている。私のやり方でうまくいっていることが分かっているから、自由にやらせてくれる。リシュモンとは良好な関係を築けているよ。
WWD:つまり、リシュモン傘下に入ってから、何も変わっていないということ?
アライア:いや、(リシュモンは)多くの可能性を与えてくれた。おかげでかなりの人員を雇うことができたし、マリニャン通りの邸宅に旗艦店を持つこともできた。何の見返りもなしに与えられたものではないとはいえ、彼らが「ノー」と言ったことは一度もない。実に寛大なパートナーだよ。
次ページ:テクノロジーの進歩はファッションを良い方向に変えたか?▶
真に新しいアイデアを2か月ごとに生み出すのは不可能
「スマートフォン、インスタグラム、ライブ配信はファッションを良い方向に変えた」とアライア
WWD:スマートフォン、インスタグラム、ライブ配信。これらはファッションを良い方向に変えたと思う?
アライア:イエス。大きな変化がもたらされたし、それは良いことだと思う。昔の方が良かったとか、つまらない時代になったなどと愚痴るのは馬鹿げている。私はコンピューターの使い方を知らないけれど、他の人に助けてもらって使っている。なんといっても、情報入手のスピードの速さはファンタスティックだ。だけど、コンピューターといえども、クリエイティビティーのスピードを上げることはできない。コンピューターのキーボードを叩いても、アイデアをアウトプットしてくれるわけじゃないからね。
WWD:ファッションシステムは過熱状態だと言う人々がいるが、それについては?
アライア:賛成だね。今のシステムは若いデザイナーにとって荷が重すぎる。だけど、われわれには手の施しようがない。業界が今の状態を作り、そしてその結果、現在の仕事量はほとんど非人道的とさえいえるものになったということだよ。
WWD:あなたは、このシステムのせいで、すでにかなりの数のデザイナーが潰されたと言ったが?
アライア:その通り。それが、このシステムが間違っているという証拠だよ。1人や2人じゃない、(潰されたデザイナーは)大勢いる。そして今シーズンも、全く突然に、何人かがブランドを去り、後任になり得る人材はごく限られている。とりわけ、ビッグメゾンともなれば、その膨大な仕事量をこなせるデザイナーはそうそういない。なぜならその地位に就けば、“生きる”時間がなくなるからね。ジャーナリストだって同じだよ。年がら年中、出張で、家族と過ごす時間がなくなってしまう。ジャーナリストに独身者が多いのはそのためじゃないかな。こんな猛スピードの生活に上手に対処できる者はほんの少ししかいない。
[rel][item title="【関連コラム】加速するファッションシステムはどこに向かうのか? 世界のトップデザイナーたちに尋ねてみた" href="https://www.wwdjapan.com/focus/column/designer/2016-01-02/11271" img="no"][/rel]
WWD:解決策は?
アライア:クリエイティビティーだね。それから、私は真に新しいアイデアを2か月ごとに生み出すのは不可能だと思う。だからビンテージが業界に溢れているんだよ。どこのメゾンも取り入れている。われわれは毎日、良いアイデアを思いつくことなんてできない。そんなことは誰にもできない。不可能なんだ。1年に一つでも良いアイデアを生み出せたら、それで上出来だと思う。
次ページ:アライア「昨夜は2時間しか寝ていない」▶
「独立してビジネスをできる時代は終わった」
「私は今日のことしか考えない」とアライア
ALEXANDRE GUIRKINGER (c) Fairchild Fashion Media
WWD:あなたの最新の良いアイデアは?
アライア:まだ降りてこないんだ。毎日、それを求めて駆け回っているのに!(笑)。馬に乗って走り回るカウボーイの気分だよ。
WWD:あなたにとって、独立していることが鍵のようだ。若手デザイナーにもそれを薦める?
アライア:いや、本当に独立してビジネスをできる時代は終わったよ。よほどの莫大な資産があれば別だろうけど、そうでなければ難しいね。証拠? 優秀なデザイナーは全員、ビッグメゾンで仕事をしている。自身の名を付けた自身のブランドを経営しているわけじゃない。
WWD:「アライア」の今の状況は?今も成長中?
アライア:そうでなければ、私がここにいるわけがないでしょう?うまくいっていなければ、クビになっているよ。「アライア」はきちんと組織され、全員が適切に配置されていて、最大限の努力をしてよい仕事をしている。
WWD:昨年スタートしたフレグランスのビジネスは?
アライア:フレグランス業界の人に評判を聞いてみて。サックス・フィフス・アヴェニューでNo.1の売り上げを上げているから、サックスに聞いてみてもいいね。来年には第2作が発売されるよ。
WWD:典型的なワークデイはどのようなスケジュール?何時から仕事を始める?
アライア:私は午前9時には準備ができているよ。アシスタントは午前10時にスタートして午後7時まで。でも私は午前3時か4時まで仕事をする。昨夜は2時間しか寝ていないんだ。アトリエのためにいろいろ準備することがあって、大忙しだったんだ。
WWD:あなたのデザインプロセスは?
アライア:まず素材のリサーチから始める。私は時代を追いかけようと努めている。とりわけ女性たちをね。
WWD:では、将来の「アライア」の姿は?
アライア:将来の?いいかい、私は今日のことしか考えない。将来なんて漠然としていてわからないよ。人生って何が起きるかわからないでしょう?