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世界中からコメントが集まる日本の縫製工場
ユーチューブの影響力の大きさは今や誰もが知るところですが、個人的にこの半年ほど見続けているのが、日本の縫製工場のユーチューブチャンネル。「Atelier Saison」さんという名前で、チャンネル登録者数は28.3万人。日本のファッション関連ユーチューバーの中ではかなり多い方だと思います。それもそのはず、コートやジャケットの仕立て方を丁寧に紹介する動画には、英語、スペイン語、ロシア語などのコメントがびっしり。日本のち密な縫製を、世界中の人が参考にしているんでしょう。
このように、業界内や自分たちにとっては当たり前になっているけど、改めて発信すると大きな需要があること、スゴいと思われることってきっと多いんでしょうね。本日紹介する記事に出てくる熟練のプレス工場もその一つ。こうした服作りの工程を知ることは着るものへの愛着にもつながります。ファッション生産の現場で働く人たちにとっては当たり前の日々の仕事の現場も、ユーチューブやSNSで発信すれば大きな注目を集め、同時に“服育”につながるのかもしれません。
服の印象を決める「熟練のアイロン」 プレス加工の仕事
服は縫製されて完成ではない。美しいシルエットに欠かせないのがプレス加工だ。
東京・足立区の住宅街にあるセキグチ(関口謙一郎社長)の本社工場では、今の時期、夏物の追加発注品のプレス加工が行われている。手がけるのは主に国内の縫製工場から届くブラウスやワンピース。縫製工程の縫い針などが紛れ込んでいないか調べる検針、アイロンによるプレス加工、値札つけ、最終検品などを行う。その後、ハンガーに掛けられた状態で百貨店やセレクトショップの店頭に出荷される。
プレス加工はシワを伸ばすだけでなく、服の魅力を最大限引き立てる作業である。スカートのドレープ感、シャツのパリッとした印象、ジャケットやコートの曲線、フリルやプリーツの微妙なニュアンスをアイロンの技によって完成させる。服の素材だけでなく、その日の気温や湿度にも出来上がりが左右される繊細な仕事だ。工場内では熟練の技術者が手際よくブラウスにアイロンをかけていた。店頭での商品の印象に大きな影響を与えるため、ブランド側もプレス加工の出来を厳しく確認する。
1963年創業の同社の本社工場では、この道40年のベテラン技術者を含め約20人が働き、1日平均500着の服のプレスや検品を行う。イトキン、トゥモローランド、TOKYO BASE、アルページュなどの大手から新興のデザイナーブランドまで幅広い服を扱っている。
爽やかなサマールックは、透ける“シアーパンツ“が鍵!
透ける“シアー素材”のパンツの人気がじわじわ高まっています。これまでシアー素材といえば、ブラウスやスカートなどに生かすケースが多かったですが、この夏はパンツに取り入れているブランドを多く見かけます。透け感のおかげで見た目も涼しく、軽やかなスタイリングに仕上がります。多彩な重ね着コーディネートが登場して、装いの表情も豊かになってきました。
「アクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)」は、オーバーサイズのジャケットに薄いカーキ系のシアーパンツを合わせました。ジャケットの落ち感とパンツの軽やかさがコントラストを際立たせています。さらに、シアーなハイソックスを合わせることで、透け感に濃淡が生まれました。エアリーでありながら、ほんのり色香を薫らせたムードが大人っぽい印象。レッグラインもすっきり見える、今夏おすすめのレイヤードです。
上下シアーは異素材ミックスでメリハリを強調
「ガブリエラ ハースト(GABRIELA HEARST)」は白のシアーシャツとシアーパンツをコーディネート。ノーブルな印象のある白は、透けて見える肌となじんで上品に仕上がります。腰にケーブル編みのニットを巻いて、素材のコントラストを際立たせました。結び目を正面ではなく、わざと横にずらすことでこなれ感も演出。シアーとニットの異素材ミックスが、やわらかい雰囲気を生んでいます。
ワントーンまとめは部分透けが効果的
ブルーのワントーンでまとめたのは「ハイク(HYKE)」。五分袖のトップスと裾がフリンジのスカートのセットアップに、シアーなブラウスとパンツを忍ばせる、“透ける×透けない”のミックスレイヤードです。膝下、肘下といった中心から離れたポジションにシースルーを取り入れて、エアリー感をさりげなくプラスしているのがポイント。同系色でまとめることによって、透け感も落ち着いてみえる仕掛けです。
パンツ2枚ばきで立体感をプラス
通常のパンツの上からシアーなパンツを重ねれば、ボトムスにフェアリー(妖精)な雰囲気が漂います。「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」のサマールックは、白のストレッチパンツの上にシアーパンツを重ねて立体感を引き出しました。歩くたびにチュールがなびき、ロマンチックな風情に。優しげなムードが宿るのがシアーパンツのいいところ。素肌は透けないのに、“透け感”だけをまとえる欲張りコーディネートです。シアー素材をやさしいムードで演出したいときに使える手です。
ワイドパンツでセンシュアルな着こなし
シアー素材のワイドパンツを選べば、シースルーのスカートのようにロマンチックな装いに仕上がります。「エリコカトリ(ERIKOKATORI)」のグリーンパンツは、まるで花柄のロングスカートをはいているかのよう。裾広がりのシルエットが風をたっぷりはらんでクールに揺らめきます。ワイドな幅のおかげで、レッグラインがほっそり映る効果も発揮。袖のベルスリーブとも好相性です。素足を露出するミニボトムスよりも、センシュアルで大人っぽいヌーディー感を醸し出せます。
ショートパンツに重ねて変化球のストリートスタイル
透けないボトムスとのレイヤードは、シアー素材の持ち味を引き立ててくれます。「スリュー(SREU)」は黒のショートパンツの上から、同じく黒のシアーパンツを重ねるコーディネートを披露。レッグラインをカムフラージュするだけでなく、膝から下だけが透けるシルエットが、かえってシースルーの印象を強めています。トップスは、Tシャツで合わせてストリート風にアレンジ。夏らしいTシャツ姿をフェミニンに整えるテクニックです。
シアーパンツは涼しげなイメージが強く、サマールックにぴったり。ショートパンツや同系色のパンツ、レギンスの上から重ねると、表情がいっそう深まります。ソックスやショートブーツの上からかぶせてスパイスの効いたコーディネートに仕上げるのもおすすめ。チュニックやワンピースの下からのぞかせて、夏の生足カバーにも役立つアイテムです。1枚使いと重ね着の両方で便利な着回し度の高いシアーパンツを、夏のコーディネートのキープレーヤーに迎えてみませんか。
「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。