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「リサイクル可能」、実は可能じゃない?
サステナビリティに関する記事を書くことが増える中で、自身の勉強不足を痛感する機会がこれまで以上に増えています。知らない用語や考え方が多く、厳密に表現していくのがとても難しい。同時に、厳密に表現しすぎて読者の方にあまり内容が伝わらなくても意味がない。悩ましいです。
「リサイクル可能」といった表現は私も使ってきましたが、今回ご紹介する1本目の記事によれば、実際のところはそう単純ではないという話もあるよう。今回も自分の勉強不足を感じましたが、最初からサステナビリティというものを完璧に分かっている人や実践できている会社は存在しない。その都度学んでいくようにしたいです。
“地球に優しい”って本当? ビューティ誌「アルーア」がサステナビリティについて幾つかの表現を廃止
「ヴォーグ(VOGUE)」などを発行する米コンデナスト(CONDENAST)によるビューティ雑誌「アルーア(ALLURE)」は、4月22日の「アースデー(EARTH DAY)」に際して、パッケージのサステナビリティをめぐる用語の使用について再考した。
多くのプラスチックの容器がリサイクル可能ではあるものの、実際9%ほどしかリサイクルされていないという報告をもとに、“リサイクルが可能なプラスチック”という言葉の使用をやめる。ほかにも“地球に優しい”“環境に優しい”“エコフレンドリー”“生分解性”といった表現も雑誌内での使用を禁止にする。生分解性は微生物の働きによって製品や素材が無機物まで分解されることを指すが、この働きに時間の制限を明記していないことやほとんどのゴミ処理に使われる埋立地には分解に要する十分な酸素が足りていないと指摘する。
“堆肥化が可能”という表現は、一般的なコンポスターで約90日間のうちに分解できるものとその過程で土壌の有毒性がゼロになる製品のみに適用する。環境に優しいことにしばしば用いられる“グリーン”という表現も、文字通り製品の色味を表す時のみに使用する。まずはパッケージにまつわる言葉から再考し、段階的に成分に関する用語も見直していくという。
ジェニー・バイリー(Jenni Bailly)「アルーア」エグゼクティブ・ビューティ・ディレクターは、「過去数年間にわれわれがみたサステナビリティについての調査の中で、多くの言葉や表現がそれほどの意味を持たず使われていると感じた。耳触りの良い“バスワード(流行語)”が多用されている。現実とは違って、よりドラマチックな印象を与えているのではないか。こうした言葉の使用について立場を明確にしなければいけない。より多くの消費者が理解を深め、用語について考え始めることを願っている。購買活動は今や投票と同じ働きを持つ」と語った。
2017年には同媒体は、「加齢はいたって自然なことにもかかわらず、良くない・抗うべきものだとする考えを助長している」という理由をもとに、“アンチエイジング”という用語の使用を廃止した。「当時の編集長とともに、加齢についての考えを変えるには、まず年をとるということについて話すときの言葉を変えるべきだと話し合った。今、サステナビリティも、考え方の視点を変えるべき地点にある。まずは言葉や表現を考え直したい」と述べた。
「アルーア」はストア・グループ(STOUR GROUP)とライセンス契約し、21年秋、実店舗をオープンする。ニューヨーク市マンハッタンのラファイエット・ストリートに約260平方メートルを有する2階建の店舗を構え、300ほどのビューティやヘアケア、スキンケア製品をそろえる予定だ。
「サステナに取り組んでいる」という企業の説明を信じる人はたった20% 英比較サイトの調査
環境保護に対する関心の高まりとともに、サステナビリティに取り組む企業が増えている。しかしアパレルブランドのエシカル度(倫理的かどうか)の比較サイトを運営するコンペア・エシックス(COMPARE ETHICS)の調査によれば、“サステナブルな商品を扱っている”というブランドの説明を信頼すると答えたのは、回答者の20%にすぎなかったという。
同社のアビー・モリス(Abbie Morris)共同創業者兼最高経営責任者(CEO)は、「最近はサステナビリティなど、自分の価値観と合致する企業やブランドの商品を買いたいと考える消費者が増えているが、見せかけだけの対応をしてもいずれ見破られる。データや情報を正直に公開して誠実に取り組んでいることを示さない限り、消費者の信頼を失ってしまう。“グリーン・ウオッシュ(見せかけの環境配慮)”は、最終的に大きな損失を生むことになる」と語った。
コンペア・エシックスは、アパレルブランドの環境や人権問題に関する情報をまとめて検索および比較できるサービスがないことから、2018年にロンドンで創業。独自の評価テクノロジーを使い、社会や環境、動物に配慮しているかなどの条件に基づいてさまざまなブランドを格付けしており、現在50ブランドとその商品およそ3500点の評価が完了している。なお今回の調査は、18~65歳の男女1250人を対象に行われた。
地球温暖化などの問題に取り組む非営利団体CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト、Carbon Disclosure Project)と、気候変動に関する調査などを行う非営利団体クライメイト・アカウンタビリティー・インスティテュート(Climate Accountability Institute)が17年に発表したリポートによれば、1988年以降、世界の温室効果ガスの70%以上がたった100社によって排出されているという。
こうした情報が容易に入手できる現代において、大企業や大手ブランドに向ける消費者の視線が厳しくなるのは当然のことだろう。コンペア・エシックスの調査では、回答者の83%が“第三者機関の認定を受けているブランドのほうが信頼できる”とし、53%が“縫製業の環境改善に最も影響力があるのはアパレルブランドだ”と答えている。また“労働者に最低限の生活賃金しか支払っていないブランドはサステナブルだと思うか”という質問に対して、そう思うとしたのは回答者の22%のみだったことを考えると、環境問題だけでなく人権問題への取り組みも重要だ。
人身売買の被害者支援や女性の貧困問題に取り組んでいるオーストラリア発のデニムブランド、「アウトランドデニム(OUTLAND DENIM)」のジェームズ・バートル(James Bartle)創設者は、「消費者はよりエシカルな商品を買いたいと思うようになっており、ブランド側にその証拠の提示を求めている。そうしたデータを正直かつ積極的に開示するブランドは、今後大きく成長できると思う。消費者と真の意味での信頼関係を結ぶことが大切だ」と述べた。
ファッション業界のサステナブルでエシカルな起業家に投資するロンドン・ファッション・ファンド(LONDON FASHION FUND)のウェンディー・ハメット(Wendy Hammett)=アドバイザーは、「コロナ禍の影響で個人消費は減少している。消費者とのつながりや市場シェアを維持するため、ブランドはサステナビリティに関する実績や信頼性をしっかりと築く必要がある」とコメントした。
環境や人権問題に真剣に取り組んでいることを証明するのは、企業やブランド側の責任だ。米アマゾン(AMAZON)は顧客が環境に配慮した商品を簡単に見つけられるようにするため、「クライメイト・プレッジ・フレンドリー(Climate Pledge Friendly)」プログラムを9月23日に立ち上げた。これは自社で扱う商品を対象に、サステナビリティに関するさまざまな外部の認証機関と連携して条件を満たすものに独自のラベルを貼るというものだが、今後は小売店などでもこうした試みが広がっていくかもしれない。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。