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中国進出は、いろんな意味で体力勝負
中国市場、なかなかに苛烈ですね。日本ではプロパー販売にこだわるプレステージビューティも、中国ではセールやお得なキットを開発しないと生き残れません。安さを求めるなら、外資SPAではなく、国内SPAに目が行くのは当然のことでしょう。
「有名なKOLをアンバサダーに起用しないと」とか、「1級都市に、大きな旗艦店を4、5店舗構えてからがスタート」と言われたのは、数年前。現在は、「ライブコマースは、1日中。どの時間から見始めてもいいように、ず〜っとやり続けるのが大事」と言います。政治的な問題もあります。中国進出は、いろんな意味で体力勝負ですね。
グローバルSPAの中国事業の撤退や売却相次ぐ 市場攻略のヒントは?
ギャップ(GAP)社や「ザラ(ZARA)」の親会社であるインディテックス(INDITEX)など、グローバルSPA企業の中国市場での不調が続いている。
ギャップは傘下ブランドの「オールドネイビー(OLD NAVY)」の中国撤退を決定しているが、今後について中国事業自体の売却を含めて検討しているようだと米「ブルームバーグ(BLOOMBERG)」が報じた。インディテックスは2021年1月、傘下ブランドの「ベルシュカ(BERSHKA)」「プル&ベアー(PULL & BEAR)」「ストラディバリウス(STRADIVARIUS)」の中国にある全店舗約100店を閉じると発表。ECに専念する方向に切り替えた。ほかにも、オランダのシーアンドエー(C&A)は中国事業を北京を拠点とする金融企業へ売却すると決定。投資持株会社のミュルザンヌ・グループ(Mulsanne Group)と提携して中国ビジネスの強化を図った「エスプリ(ESPRIT)」も、その後中国本土での事業を終了した。19年には「フォーエバー21(FOREVER 21)」が、18年には英国発の「ニュールック(NEW LOOK)」がそれぞれ撤退している。
「ザラ」は21年1月末時点で、141店を中国に構えるがそれまでの12カ月間に38店を閉店している。H&Mは約500店舗を運営し、さらなる強化に向けて今後姉妹ブランド「アンド アザー ストーリーズ(& OTHER STORIES)」を上海に、同じくベーシックウエアを中心に生活雑貨などをそろえる「アーケット(ARKET)」を北京に、それぞれ旗艦店をオープンする予定だ。しかし19年12月〜20年11月に中国で17店減らしており、売上高は現地通貨ベースで前期比17%減だった。一方、「ピースバード(PEACEBIRD)」や「メタスバンウェイ(METERS/BONWE)」「セミル(SEMIR)」といった中国ファストファッションブランドはより厚い人気を獲得しており、数1000店舗規模でビジネスを展開する。
グローバルに展開するブランドなら、その国によってデザインを変えるなど、地域に合わせる工夫も時には必要となる。アパレル業界のベテランであるエディー・リム(Eddie Lim)は、「不調の大きな要因は、商品のデザインだろう。制作チームの拠点はデザインにも影響を持つ。欧米ブランドの多くは商品を地域に根付かせる努力が足りなかった」と語る。例えば、中国で人気のブランド「ジャック&ジョーンズ(JACK & JONES)」「ヴェロモーダ(VERO MODA)」などを擁するデンマークのアパレル企業、ベストセラー グループ(BESTSELLER GROUP)は中国に独立事業を設立し、国内独自のコレクションを販売する。
続けてリムはベストセラー グループでの経験を振り返って「在籍した7年間、デンマークからアイテムを取り寄せたことはほとんどない。中国で生活する女性の多くは細いストラップのワンピースにTシャツを合わせて着るか、時にはジャケットを羽織る。しかし欧米ではそのまま肩を出して着る人が多い。こういった違いを理解して、ディスプレイ方法などの教育を行うことが大事だ」と言う。地域ごとの文化や気候など考慮しなければいけない要素はさまざまだが、今は新型コロナからの回復程度も重要な要素だ。中国では新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せ始めており、生活様式がコロナ前に戻りつつあるという。3、4度目のロックダウンに突入する欧米諸国では、ルームウエアコレクションの需要が高いかもしれないが、中国で今求められるのはお出かけに着られる洋服だ。
また、ギャップや「フォーエバー21」、「ニュールック」「エスプリ」を見てみると、そもそも本国で苦境にさらされた結果から撤退などに至っており、中国ビジネスでのみ失敗したとは言えない。10年前は5000店をこえる店舗を持っていた人気中国ブランド「ラ・シャペル(La Chapelle)」であっても、20年上半期のうちに504店を閉鎖している。またローン返済が停滞したことで、上海証券取引所から強制的に下される可能性があると投資家に報告している。ジェーン・ドゥ(Jane Du)=チャイナ・ワールド・エキシビジョンズ ジェネラルマネジャーは、「新鮮味を加えるコラボレーションを行ったり、インフルエンサーと共同でライブ配信を活用したり、マーケティングとコミュニケーションにも工夫が必要となる。『ユニクロ(UNIQLO)』の商品開発やコラボレーションは、消費者を絶えず惹きつけている。また、日本のブランドでサイズの調整がいらないのもポイントだ」と評価する。
「ユニクロ」などを運営するファーストリテイリング(FAST RETAILING)の2020年9~11月期決算(国際会計基準)は、営業利益が同23.3%増の1130億円と大幅な増益となった。国内と中国本土、台湾のユニクロ事業が増収増益で全体に寄与したと報告しており、セールを調整しながらブランディングの強化と新商品情報の発信に工夫を凝らした戦略が功を成したという。ドゥ=チャイナ・ワールド・エキシビジョンズ ジェネラルマネジャーは、「今の30代の人々は、20代の時には『ザラ』などから洋服を買っていただろう。しかし年齢に合わせて、より高価なブランドを買うようになる。そして今の20代は『ザラ』に魅力を感じていない。マーケット層の移り変わりに合わせて進化しなければいけないが、対応できず撤退するものが多い」と分析。
中国市場を生き抜くには、目まぐるしく変化するスピードへの対応も必要だ。中国では国内最大手ECのアリババグループのECサイト「タオバオ(淘宝)」に絶えず新しいEC専業ブランドが登場し、商品の制作にかかる時間もどんどん短縮されている。中国ファストファッション関係者は「流行のサイクルがどんどん短くなっているので、トレンドを掴むことがますます難しくなっている。ブランドはよりタイトなスケジュールで新商品を展開して追いつく必要がある。中国で『タオバオ』は、価格設定や再編のスピードなどに大きな影響を持つ」と語る。
続けて、「中国の消費者はサステナビリティを意識することなく、価格の安いアイテムを簡単に見つけることができる。まだ価格が優先事項の高いところにあるのも、グローバルブランドが成功しない一因だ。しかし、少しずつ志向に変化はみられ、サステナビリティを意識するマインドが普及しつつある」と述べた。
オンワードHDの最終赤字231億円 21年2月期
オンワードホールディングス(HD)の2021年2月期連結業績は、純損益が231億円の赤字(前期は521億円の赤字)だった。コロナによる国内外での店舗休業と、百貨店など都心部での消費低迷が痛手になった。子会社の伊オンワードラグジュアリーグループなどの売却損51億円、固定資産などの減損損失32億円といった構造改革費用も影響した。
売上高は同29.8%減の1743億円だった。コロナに加えて19年10月から着手した国内外での店舗撤退が計1700店舗に及んだことも減収の要因。EC(ネット通販)の売上高が同26%増の416億円と拡大したものの、リアル店舗の落ち込みを補うには至らなかった。国内の売上高構成比はECが33%、百貨店が29%、ショッピングセンターその他が38%だった。コロナ下とはいえ、かつて6割以上を占めていた百貨店の売上高をECが上回った。本業のもうけを示す営業損益は212億円の赤字(前期は30億円の赤字)だった
22年2月期の業績予想は売上高1905億円(前期比9.3%増)、営業利益32億円、純利益63億円。EC売上高は500億円を想定する。19年10月にスタートしたグローバル構造改革によって営業利益で200億円の押し上げ効果を見込む。
「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。