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「推し活」するファンにとっての購買とは?
パリコレでも、「聖地巡礼」という“推し活”が可能なのですね(笑)。
ちょうど昨日、「WWDビューティ」4月号の特集「推し活、燃ゆ(仮)」の企画会議で、いろんな“推し活”がビジネスチャンスだ、という話で盛り上がりました。特集を読んで欲しいので多くは語りませんが、例えば、商機の1つは「概念コスメ」。「あの色が“推し”っぽいよね?」と、勝手に“推し”を概念化・コスメ化して、それを買うという消費行動および購入したコスメの総称です。
私が聞いているポッドキャストでは、中年女性が“推し”をホテルに例え、そのホテルに泊まると“推し”に抱かれるような感覚で楽しいという話が登場ありました。「なんのこっちゃ!?」でしょうか?
この場合、購入は完全にモノ目当てじゃないですよね?だって「概念コスメ」は、自分には似合わないかもしれません。それでも購買させちゃう“推し”のパワーと、ファンにとっての購買の新しい意味に驚かずにはいられません。
「セリーヌ オム」が最高すぎて撮影地まで行ってみた シャンボール城に“聖地巡礼”
ファッション・ウイークがデジタル化されて1年が経ち、リアルのショーが恋しい今日この頃。2021-22年年秋冬シーズンもほぼ全てのブランドがデジタルで発表する中、印象に残っている映像がいくつかあります。特にフランスのシャンボール城を舞台にした「セリーヌ オム(CELINE HOMME)」の完成度は今のところ私的ナンバーワン!これまで新生「セリーヌ」について賛否両論だった現地フランスメディアからも高評価でした。コレクションもさることながら、小さなスマホのスクリーンでもダイナミックで美しいシャンボール城にはとにかく感動。アーティスティック、クリエイティブ&イメージディレクターのエディ・スリマン(Hedi Slimane)は10代の頃に城を訪れて魅了されたようで、私もエディの気分を理解するため「現地に行くしかない」という衝動のままに、シャンボール城に向かいました。
パリから車で2時間の名城エリアへ
目的地は、私が住んでいるパリから車で約2時間のロワール地方にあります。この地域はフランスで一番長い川のロワール川が流れ、ルネサンス期に貴族たちが競うように建てた大小300以上の名城が点在しています。その中でシャンボール城は最大の規模。建設したのは当時の国王だったフランソワ1世。マリニャンの戦いでミラノに遠征中、イタリアのルネサンス芸術の素晴らしさに感銘を受けて、勝利した記念にルネサンス建築様式を取り入れた城をの建築を命じました。彼の権力の象徴を石に刻むことが目的であったため、居住用としてではなく、狩猟のための滞在先として着工したのが1519年です。またフランソワ1世は芸術に関心が高く、文芸の保護やイタリアの芸術家をフランスに招き入れた人物として知られており、フランス独自のルネサンス芸術を開花させた重要人物としても名を残しています。特にレオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)の才能に惚れ込み、シャンボール城の設計にも加えたといわれています。ダ・ヴィンチはイタリアからフランスへ渡って晩年の3年間をロワール地方で過ごしましたが、着工する前に亡くなっています。城の中にはダ・ヴィンチが考案したという2重のらせん階段があり、2つある登り口からそれぞれが登ると、途中で顔を合わすことがないというユニークな構造になっているのだとか。城の建設と芸術の発展に情熱を注いだフランソワ1世は、シャンボール城が完成する1547年に亡くなったため完成形は見ていません。であれば、私が見届けようじゃないですか!という意気込みで車中で予習をし、ようやく現地に着きました。
服の幾何学柄は城から着想?
5440ヘクタールのヨーロッパ最大の森林公園に取り囲まれており、森を抜けた先に壮大な城が現れる演出で、一気に中世にタイムスリップした気分になりました。そういえば、「セリーヌ オム」の映像のBGMはザ・ルーム(THE LOOM)による“タイム スリップ(TIME SLIP)”でしたね。脳内でBGMが再生されながら気分も高まっていたのですが、なんと!新型コロナウイルスの影響で城内への入館は不可!ガーン。ただ、外観だけでも見応えたっぷりだったのです。シャンボール城は高さ56メートル、幅156×426メートルで、城内には暖炉が262もあるのだとか!そんなに使う!?維持するだけでも莫大な費用がかかりそうです……。
モデルたちが歩いていた城壁のあたりには、見る角度によって表情が異なる複雑な装飾の塔やテラスがあり、何度も立ち止まって見入ってしまいました。当時の城にはこのような装飾はなく、“無骨な要塞”という城のイメージを覆したといわれているようです。他の城ではあまり見かけない丸やひし形の模様を眺めながら、ルックで登場した格子柄やフェアアイル柄はもしかしてこれがインスピレーションなのでは?と想像を膨らませていました。デニムベストの中に着ていたニットの柄は、ルネサンスを代表する直線と曲線を複雑に組み合わせた装飾とどこかシンパシーを感じます。
古きと新しきを衝突させた背景
シャンボール城が建設された中世は芸術運動であるルネサンスが最盛期を迎え、中世から近代化へと向かった重要な時期でした。古いものと新しいものが衝突して社会が根本的に変化し、近代ヨーロッパが形成されていった大きな過渡期でした。やがて、古典主義を打破して自由な表現が生まれ始め、文芸運動やロマン主義が始まりました。まさに、今シーズンの「セリーヌ オム」とつながりませんか?異なる時代感やシルエットをぶつけて飽和気味のメンズファッションに新たな風を吹き込む――エディは激動の中世と現在を重ねて、個人を尊重する芸術であるロマン主義を現代風に表現し“ニュー・ロマンチック”を掲げたのかもしれません。騎士や1990年代風スケーター、スクールボーイにロマン主義のエッセンスを加えたスクエアシルエットのスタイルは、コレクションを通じて物語が語られているようでした。
通常は城の敷地内や城内に入れて、乗馬もできます。だから映像冒頭の乗馬シーンを再現したり、上着のポケットに手を入れて城壁の通路を肩で風を切りながら歩いたりする“オムごっこ(『セリーヌ オム』ごっこ)”ができるのです!落ち着いたらまた再訪したい!リアルなショーを恋しく思いつつも、画面上で見た撮影舞台を実際に訪れてあれやこれやと思いを馳せる聖地巡礼的な楽しみは、デジタル時代の新たな発見でした。私たちが迎えているこの過渡期を乗り超えて、マスク無しで自由に撮影地巡礼の旅に行ける日がそう遠くないことを願っています。
韓国で“皮膚再生”と話題! 「シカクリーム」に新たなトレンド
世界に目を向けると、日本とは異なる美容トレンドが生まれている。そこで連載「海外ビューティ通信」ではパリやニューヨーク、ソウル、ベルリンの4都市に住む美容通に最新ビューティ事情をリポートしてもらう。
シカクリームブームのきっかけは?
韓国では皮膚再生クリームとも呼ばれるシカクリームは、日本でも注目を集めている。人気のきっかけをさかのぼると、2000年代に韓国で大ブームとなったBBクリームにたどり着く。ドイツ発祥のBBクリームは元来、医薬品として皮膚科で使われていたもので、紫外線などの外部刺激を遮断し、肌を保護しながら赤みをカバーし、肌の再生を促す機能を持ったメイクアップクリームとして生まれた。ドイツから韓国に入ってきたのは1980年代。皮膚科やエステサロンで浸透した後、2000年代に入って韓国女優がこぞって使い始め、ナチュラルメイクブームのきっかけになった。
シカクリームの「シカ(CICA)」は、ツボクサ(学名:Centella Asiatica、センテラアジアチカ)を指す。ツボクサの抗酸化力や抗炎症力が肌の回復を促すほか鎮静効果があるといわれていることから肌再生クリームと呼ばれている。ツボクサは欧米などでも昔からポピュラーなスキンケア成分ではあるものの、美容大国の韓国で「シカ」と名付けて売り出されたことで、18年ごろから人気が爆発してデイリーなスキンケアアイテムとして定着。世界中でトレンドとなり、さまざまなブランドが独自の機能を加えたシカクリームを続々と発売している。
話題の次世代シカクリーム
そんな中で最近話題になっているのが、韓方ベースの次世代シカクリームだ。昨年7月にロダム韓方クリニック(ソウル市江南区)が発売した“バイロダム リペア ゴールドライン”は、現代医学と韓方医学を融合したハイブリッド再生クリームだ。同クリニックのホン・ムソク(Hong Museok)代表院長が、ニキビ痕の再生治療を通じて発見した肌の力に注目し開発した。シカ成分のほか、西洋医学で注目されている次世代再生成分のタマネギ抽出成分や、韓医学で肌に良いとされている韓薬剤を配合。タマネギに多いスピレオシード成分は、紫外線などでダメージを受けた肌を鎮静、保護すると同時に肌の再生を促進する。低刺激なので乳幼児や敏感肌にも安心だ。
敏感肌向けスキンケアブランド「ラゴム(LAGOM)」も昨年10月、“センシティブ シカクリーム”を発売した。ツボクサから得られる4つのシカケア成分と、亜鉛とカルシウム、マグネシウムの3つのミネラル成分が肌トラブルを沈静して保護する。高い保湿効果が肌の回復を促し、過剰な皮脂と毛穴を集中的にケア。べたつかないテクスチャーも特徴だ。有害成分20種は無添加、皮膚刺激テストとニキビ肌の適合化粧品テスト済みで敏感肌でも安心して使える低刺激処方だ。
ほかにも製薬会社が最新の肌研究に基づく製品を発売するなど、シカクリームの開発競争が活発化している。環境や時代の変化により生まれるさまざまな肌悩みに対応する、進化したシカクリームの登場に期待したい。
チョン・ジャキョン:フリーランスコーディネーター兼ライター。ソウル生まれ。アート関連会社と映画製作会社の演出部を経てメディアコーディネーターに転身。雑誌を中心にテレビ、広告、スポーツなど幅広い分野で活躍。携わった書籍は「ソウル美容完全ガイド」(講談社刊)など多数
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。