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次のメンズトレンドはスーツとアレ
現在、2024-25年秋冬メンズ・ファッション・ウイークの真っ只中で「WWDJAPAN」チームは現地からのリポートを更新中です。昨今のメンズは、テーラリングに何かを掛け合わせるというトレンドが続いており、今シーズンもその流れは継続しています。前半戦で特に目立ったのは、スーツと自然を掛け合わせるというもの。ビジネスを象徴するスーツに、ある意味対極である自然の要素を掛け合わせ、メンズのドレスコートを解放しようとするクリエイションが勢いづいています。「フェンディ」は田園の牧歌的ムードを、「ルイ・ヴィトン」は大地のエナジーを、そして最たる例が1本目に紹介する「プラダ」です。
後半戦もどのようなスタイルが登場するのか、現地リポートでお伝えしていきます。
「プラダ」が提案する新ビジネスルック 違和感を楽しむディテールに注目【2024-25年秋冬メンズコレまとめ】
「プラダ(PRADA)」は1月14日、ミラノ・ファッション・ウイークで2024-25年秋冬メンズ・コレクションを発表した。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)が共同で手掛けるようになり、メンズ・コレクションとしてはちょうど3年。今季は、ここ数シーズン継続しているユニフォームやワークウエアの探求を感じさせるとともに、イタリアの典型的な装いの概念を再解釈した新たなビジネスルックを提案した。
オフィスと自然の風景を並置した会場
エントランスを入ると、まず現れたのはパソコンのスクリーンが置かれたデスクとチェア、そしてブルーのパーテーション、蛍光灯からなるオフィスのような空間。その先に進んだ会場内も同じ趣で、ホイール付きのオフィスチェアの客席が並べられている。一方、透明になった会場の床の下をのぞくと、そこに広がるのは土や苔、草、落ち葉、小石、川を流れる水で再現された森の中のような世界。振り返ると、ホテルに届いた巨大なインビテーションも、自然の写真を背景に名刺型のインビテーションとシンプルなネクタイが収められていた。今季、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)は、街と自然あふれる田舎の関係性を考えながら、ファッションとして表現することを目指した。
そこで重きを置いたのは、「シーズン」という概念だ。「シーズンは今なお必要で、感情を掻き立したりするためにはリアリティーが欠かせない」と、ショー後のバックステージでミウッチャはコメント。その背景には、“人々の装いを決めるのは四季が移り変わる自然のリズムであり、衣服は周囲の環境を反映し適応する。そこには自分たちを取り巻く世界とつながりたいという人間の深く本質的な欲求がシンプルに主張されている”という意味が込められている。そんな自然のサイクルと共にあり続けようとする感情的な本能をテーマにしたコレクションは、「ヒューマン・ネイチャー(人間性)」と題された。
違和感を楽しむ「プラダ」流ビジネスルック
ファーストルックは、クリーム色のクレリックシャツにマスタードのネクタイを締めたスタイル。頭にはスイムキャップのような真っ赤な帽子を被り、少し短めのテーラードパンツにフラットなレースアップシューズを合わせている。その後も今季のポイントとなるのは、タイドアップ。秋冬らしい厚手のウールやツイードで仕立てた、ラペルや肩の大きなボックスシルエットのジャケットやコートと、細身もしくはゆったりとしたパンツを合わせた「プラダ」流ビジネスルックの提案が続く。
面白いのは、ちょっとした違和感を生むハズしのディテールだ。パンツは、腰にベルトがドッキングされていたり、ウエストバンドがなくサイドにファスナーがついていたり。ジャケットの前合わせはシングルなのにダブルのように少しずれ、スーツに素足でサンダルを合わせたルックもある。また、細長いトレンチコートは袖のストラップ位置が高かったり、背面のアンブレラフラップがトロンプルイユになっていたり。テーラードコートにはバラクラバ風のピッタリしたフードがついているものもあり、首にギュッと巻いたマフラーはやや小さい。
そして、テーラリング主軸のスタイルに加えたのは、スポーツやワークウエアの要素。冒頭のキャップをはじめ、ストレッチの効いたジャカードを用いたカラフルなレギンスのようなパンツやタートルネックトップス、ゴーグルのようにも見えるアイウエア、極薄のデニム地で仕立てたシャツやスキニーパンツ、ユーズド感のある風合いで仕上げたキャンバスのワークジャケットなどが、ユニークなスタイルを仕上げている。また、金ボタンのアウターやピーコート、船乗りのようなハットなどで、ラフたちが“最もエレガントなユニフォームスタイル”と考えるマリンのイメージも盛り込む。それらの要素は、自然の直接的もしくは抽象的な解釈や、ビジネスマンや労働者などさまざまな男性の自然との関わり方を参考したもの。ラフは、早朝に犬の散歩に出かける自分や、故郷ベルギーに近いオランダで開催されていた『エルフステーデントフト』という凍った運河を使って11都市を巡るアイススケートマラソンの特定のスタイルまでを例に挙げた。
存在感のあるベルトやストラップに注目
スタイリングを仕上げるアクセサリーで目を引いたのは、カットワークしたレザーパーツを組み合わせて作った存在感のあるベルト。“リナイロン”のバックパックやショルダーバッグには、ベルト同様のデザインのレザーストラップをプラス。ウィメンズの24年春夏コレクションで初登場したバックル&ベルトのディテールが特徴的な“プラダ バックル”バッグも、メンズ向けに大ぶりなサイズでアレンジした。
足元は、ビジネスライクなレースアップシューズのソールを削ぎ落とし、スーパーフラットなデザインで再解釈したモデルが印象的。スリッパのようなスタイルもある。また、2色のレザーを組み合わせたフィッシュボーン風のカジュアルサンダルや、建築的なソールをコントラストカラーのラインで縁取ったレースアップシューズも提案する。
「オフ-ホワイト」を生産し「アンブッシュ」などを擁するニューガーズ 伊ファンドが買収検討
伊ファンドのスタイル キャピタル(STYLE CAPITAL)が、アパレル企業ニューガーズグループ(NEW GUARDS GROUP以下、NGG)の買収を検討している。ロベルタ・ベナグリア(Roberta Benaglia)=スタイル キャピタル創業者兼最高経営責任者(CEO)が、ミラノで1月13日に行われた「MSGM」のショー会場で明かした。NGGの親会社ファーフェッチ(FARFETCH)は23年12月、韓国発のEC企業であるクーパン(COUPANG)によって買収されている。
NGGは「パーム エンジェルス(PALM ANGELS)」「アンブッシュ(AMBUSH)」「ヘロン・プレストン(HERON PRESTON)」など10ブランドを擁するほか、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」(以下、オフ-ホワイト)をライセンス生産し、「リーボック(REEBOK)」のヨーロッパにおける小売や卸を手掛けている。なお、故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)氏による「オフ-ホワイト」の商標権をもつオフ-ホワイト合同会社(OFF-WHITE LLC)は21年、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)に過半数株式を売却している。
スタイル キャピタルは、「MSGM」やロサンゼルスに拠点を置くデニムブランド「リダン(RE/DONE)」、伊ウィメンズブランド「フォルテ フォルテ(FORTE FORTE)」などをポートフォリオに持つファンド運営企業だ。21年には1億3000万ユーロ(約207億円)を投じ、イタリアの高級ECサイトを運営するルイーザヴィアローマ(LUISAVIA ROMA)の株式40%を取得している。
NGG親会社のファーフェッチは、イギリスの高級ブティックであるブラウンズ(BROWNS)や、スニーカーのリセールストアであるスタジアム・グッズ(STADIUM GOODS)などの数々のアセットを持っているが、それらの今後については不透明のままだ。ブラウンズについては売却の話がすでに出ているという。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。