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世に出たものは誰のもの?
デザイナーもブランドもアーティストも作家もわれわれ記者も、一度発表したものを世の中にどう受け止められるかについては何も言えないし、それは世の中に委ねるべきと思っています。でも、公の場で批評やコメントする場合は、相手に対しリスペクトを持ってするべきだと考えています。例えばコレクションレビューでネガティブな意見を書く際、その点は非常によく考え、どうすれば前進につながるか意識します。
芸人の千鳥が「ジョン ローレンス サリバン」のジーンズを下品な言葉で茶化した番組についても、「一度世に出た商品にどんな感想を持つかは受け取り手の自由だ」というコメントをSNSやヤフコメで多数見かけました。それはその通りだと思いますが、問題なのはテレビ番組という公の器で扱う際に、作り手に対しあまりにもリスペクトが足りていなかったことではないでしょうか。事のあらましは本日ご紹介する記事1本目をお読みください。
「サリバン」の柳川デザイナーが「テレビ千鳥」に抗議 番組が謝罪
バラエティ番組「テレビ千鳥」(テレビ朝日)が5月22日、5月4日放送の番組内容に「ジョン ローレンス サリバン(JOHN LAWRENCE SULLIVAN)」の柳川荒士デザイナーが抗議を表明した問題に対して、謝罪文を公式サイトに掲載した。
発端となったのは、同番組のMCを務めるお笑いコンビ千鳥の大悟が、自腹で洋服を購入する企画“春服を買いたいんじゃ”において、セレクトショップ「ステュディオス(STUDIOS)」で「ジョン ローレンス サリバン」のジーンズを試着したシーンだった。このジーンズは、前身頃のウエストから裾にかけて大胆にファスナーを走らせたデザインが特徴で、2017-18年秋冬シーズンに登場して以来ブランドを代表するシグネチャーアイテムの一つとなっている。大悟は同アイテムを試着した自身の姿に対して性的な表現を含むコメントをし、それが放送されていた。
これを受け、柳川デザイナーは自身のインスタグラムで、「何年もの時間を費やし、社内スタッフ、営業やPR、そして何より工場などの方々の協力を得てブランドのシグネチャーアイテムへと育ててきたデニムジーンズが、テレビ番組でこのような扱い方をされた事が残念で仕方ない。創設から20年、妥協することなく少しずつ築き上げてきたブランドイメージを、自分達の笑いの為に一瞬にして踏み躙られた事が本当に悔しい。これからも店頭でこの商品を売っていくスタッフの気持ち、何よりこの商品を買ってくれたお客様の気持ちを考えると本当に心が痛い(原文ママ)」と投稿した(*投稿は現在削除済み)。その後、SNSではツイッターを中心に賛否両論が起こっていた。
「テレビ千鳥」はこうした意見を受けて、「アパレル商品を着用した出演者の姿を評した際に、一部商品に対して性的表現や犯罪者を想起させるような演出表現がありました。なお、この過程でブランド側に許諾を求めておりませんでした。『ジョン ローレンス サリバン』およびご迷惑をおかけしたブランドの関係者の方々、ならびに取材にご協力いただいた皆様に多大なるご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます(原文ママ)」と公式サイトで謝罪した。なお、番組は公式インスタグラム(約5万フォロワー)では謝罪文へのリンクを投稿しているが、公式ツイッター(約17万4000フォロワー)では23日現在まで更新がない。
ブランド古着の「ラグタグ」から低価格の新業態 倉庫に眠る在庫をフル活用
ブランド古着買い取り・販売の「ラグタグ(RAGTAG)」を展開するワールド傘下のティンパンアレイは、低価格品を取り扱う新業態「ユーズボウル(USEBOWL)」の1号店をららぽーと横浜1階にオープンした。
店舗面積は35坪で、取り扱い商品はSPAブランドやセレクトショップのオリジナル品など。中心販売価格は2000〜3000円と、「ラグタグ」(中心価格9000〜1万円)と比較すると3分の1以下に抑えている。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「マルニ(MARNI)」など一部デザイナーズブランドの商品もあるものの、1万〜2万円と手に取りやすい価格帯のものに限られる。また、売り場はブランド別に陳列する「ラグタグ」と異なり、「トラディショナル」「ストリート」などカテゴリー別に編集する。ファッションの知識がない客への敷居を下げる工夫だ。店舗の年間売上高は6000〜8000万円程度を見込む。
販売できなかった在庫を
「ユーズボウル」で流動化
新業態開発の背景には、「フリマアプリの浸透などによる古着マーケットの拡大」(平野大輔ティンパンアレイ社長)がある。「消費者は低価格品かハイブランド品かに関わらず、中古品を手にとることへの抵抗がなくなっている。古着市場に追い風が吹いている」と平野社長。同社の売上高は2023年3月期は55億円と、コロナ前の水準に回復した。「ただ、市場の広がりに追従して『ラグタグ』のラインアップを広げれば、ブランド古着に特化してきた強みが薄れてしまう。それとは切り分けた業態として(『ユーズボウル』が)必要だと考えた」。
「ユーズボウル」は将来的に、現在23店舗を展開する「ラグタグ」と同程度の店舗展開を計画する。6月にはららぽーと新三郷に店を出す。「ユーズボウル」の積極出店によるメリットが、在庫の流動化だ。「ラグタグ」では年間70万〜80万点の古着を仕入れているが、そのうち約3分の1はブランドや状態などが理由で売り値が付かない。寄付やリメイクなどに回してきたこれらの古着を「ユーズボウル」で販売する。それにより、これまで低く抑えてきたブランド品以外の買取価格を底上げできれば、接点のなかった客を取り込むことにもつながる。
「ユーズボウル」とは差別化する形で、「ラグタグ」のラインアップはハイブランド品などの取り扱いにより先鋭化する。ラグジュアリーブランドやハイデザイナーズブランドに特化した業態「アールティー(RT)」は現在銀座の1店舗に留まるが、これも拠点を増やしていく考えだ。
「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。