Fashion. Beauty. Business.
「編集者は究極のプロジェクトマネジャー」
「ブルータス」が進化しますね。田島朗新編集長の“編集者は究極のプロジェクトマネジャー”という考えの下、業務拡大。クリエイティブ・ブティックやコミュニティー作りなどに取り組みます。
あれだけ多彩な特集ラインアップの媒体のコミュニティーって一体どんな感じになるのでしょうか? ウイークリーの「WWDJAPAN」も年50回発行するから、少々マニアックな特集も可能なので、「年23冊を維持したい」という気持ち、よく分かります。パッケージとして1冊にすることで意味を与えられるし、楽しいんですよね。「ブルータス」がさらに面白くなるといいなと思いますし、我々も頑張らねば!と刺激を受けました。
「ブルータス」がBtoB事業本格始動 新編集長の体制で“変わること”“変わらないこと”
PROFILE:(たじま・ろう)1974年生まれ。97年にマガジンハウスに入社し、「ブルータス」に配属となり、約18年間在籍。2016年に「ハナコ」編集長に就任し、リニューアルに着手する。雑誌作りに加え、デジタルや読者コミュニティ、海外事業、商品開発、クリエイティブレーベル事業などを幅広く手掛ける。21年12月から現職 PHOTO:ASUKA ITO
マガジンハウスの「ブルータス(BRUTUS)」は、4月から田島朗編集長が率いる新体制を本格始動した。年間23冊発行や雑誌作りの根幹はそのままに、今後はBtoBの制作案件などを受けるクリエイティブ・ブティック“プラン B(PLAN B)”を立ち上げる。さらに昨年9月にリニューアルしたデジタルの強化や、初夏をめどに読者コミュニティー設立を目指すなど、「ブルータス」ブランドのビジネスを拡張させていく狙いだ。過渡期を迎えるメディアビジネスで、「ブルータス」がこれから変わること、変わらないこととは。
【変わること】
編集者の知見を生かしメディアを“開放”
WWD:新体制で変わることは?
田島朗「ブルータス」編集長(以下、田島):クリエイティブ・ブティック“プラン B”の立ち上げや、デジタルの強化、夏ごろに読者コミュニティーを設立して、雑誌のイメージが強かった「ブルータス」を拡張し、同時に強くしていきたい。それが自分のやるべきことだと考えている。
WWD:“プラン B”発案の経緯は?
田島:「ブルータス」は、ファッションやカルチャーなどのジャンルを超越しながら、らしさを保ってきた珍しくて不思議な雑誌だ。マガジンハウスの中でもクリエイティビティで勝負してきたメディアである。新しい視点を常に探り続けてきた編集部の知見や人脈、センス、それに広いテーマに楽しんで取り組んできた彼らのパッションやパワーで、クライアントと一緒に何かを作れたら面白いと思ったのが出発点。編集者のスキルを雑誌作りだけではなく、企業の課題解決に役立てたい。これまでも付き合いのある企業の制作案件は受けてきたが、今後は誰でも気軽にアプローチできるようにどんどん開放していきたい。
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「メタバース・ファッション・ウイーク」を体験! カオスながらも発展に期待大
VRプラットフォーム、ディセントラランド(DECENTRALAND)が3月24~27日、世界最大のメタバースファッションショー「メタバース・ファッション・ウイーク(METAVERSE FASHION WEEK)」を開催した。「エトロ(ETRO)」や「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」「エスティ ローダー(ESTEE LAUDER)」など、60ブランド以上が参加し、ファッションショーやパネルディスカッション、パーティーなどを行うということで、行ってみた。
初日は「ドルチェ&ガッバーナ」のショー。メインのショー会場があり、時間が来るとオンタイムでショーが始まった。動物がアバターという時点でメタバース(非現実)感満点。8の字型のランウエイを、飛んだり跳ねたり、ポーズを決めたりする。ウオーキングはプログラミングされているようで、タイミングや動きが外れることはなく、曲や照明などの演出も華々しい。ウエアも「ドルチェ&ガッバーナ」らしい華やかさと3Dならではのデザイン。「ファッションを楽しもう!」というお祭り感にあふれ、「なるほど、これがメタバースでのファッションショーか!」と感心した。
しかし、フィナーレもなければデザイナーが最後に登場するようなことがなく、最後のアバターが歩き終えると、そこでいきなりショーは終了。MOVEで拍手を送る人は少なく、次に行く先を別画面で探しているのか、多くの観客がその場で直立不動。余韻ナシ。感動の分かち合いナシ。即座に別の場所へとテレポートする人、会場外へ走り去る人など、なかなかシュールだった。
ショー会場の周辺がラグジュアリー・ストリートになっていて、高級時計「フランクミュラー(FRANCK MULLER)」や「ジェイコブ(JACOBS&Co.)」、「エリー サーブ(Elie Saab)」などのショップが並ぶ。後日「ドルチェ&ガッバーナ」のショップを訪れると、コレクションがアバターごと展示されていた。アバターをクリックするとNFTのマーケットプレイスUNXDのサイトに遷移。このUNXDが“ラグジュアリー・ファッション・ディストリクト”をキュレートしており、「ドルチェ&ガッバーナ」のショーもUNXDとのコラボレーションによるもの。サイトには「ドルチェ&ガッバーナ」のNFTプロジェクトの告知があった。どうやら3種の箱のNFTを販売して、保有者による“DGFamily”というコミュニティーを作る模様。箱のランクによって異なるフィジカル、デジタル両方のアパレルやイベントへアクセスできるようになるようだ。NFTホルダーとのコミュニティー作りは、要注目。「ドルチェ&ガッバーナ」が先陣を切っている。
2日目は「エトロ」のショー。新作“リキッドペイズリー”コレクションを発表した。ブランドのアイコンであるペイズリー柄のウエアやバッグをまとった男女のアバターがランウエイを歩いた。こちらもUNXDとの協業。パステルカラーのウエアは品よく目立ちそう。録画したので、記事の最後に収めておく。
「エトロ」も会場の側にショップを構えており、ショー終了後、アバターごと展示。こちらはアバターのクリックで公式サイトへ遷移。ショーで見せたコレクションのリアルアイテムを買うことができる。メタバースでの集客がリアルにどれだけ影響するのか。プロモーションとしての効果が気になるところ。アバター向けのウエアラブルの配布もしていたらしいが、気付けずに終わってしまった。
3日目は「ホーガン(HOGAN)」のアフターパーティーへ。こちらはNFTのマーケットプレイス、エクスクルーシブル(Exclusible)との協業。「ホーガン」は5人のデジタルアーティストと共に500個限定のNFTを発売(完売)。DJのボブ・サンクラー(Bob Sinclair)は2D参加だったが、皆画面の前に集まり、ダンスを楽しんでいた。ダンスは15のMOVEを組み合わせられるようになっており、これによるダンス大会のエントリーも。メタバースでダンスするの、結構楽しい。そして、自身が持つNFTや3Dモデルで着飾ったアバターたちが、こぞって踊る姿を見るのも面白い。こちらも記事の最後の動画を参照のほど。
パーティーなどで全身が金色のキラキラで包まれたアバターを多数見かけたが、それこそが今回ビューティブランドで唯一参加の「エスティ ローダー」が配布したウエアラブル。人気の美容液“アドバンス ナイト リペア”の効果をウエアラブルで表現した。
「エスティ ローダー」の会場に入ると、中央に巨大“アドバンス ナイト リペア”のスポイトがあり、美容液の滴が光っている。その真ん中に入ってウォレットを接続するなどの手続きをするとウエアラブルがもらえるようになっている。
ディセントラランドで化粧品はなかなか表現が難しいと思ったが、美容液を使うことで得られる“金色のオーラ”を付与するというのは、いいアイデア。身に着けたユーザーの気分も上がったはずだし、目にした人も欲しくなって、「エスティ ローダー」へ急いだはず。私も手続きをして、「近々届く」的な通知を確認したが、結局どこにも届いた気配がない……(涙)。
「エスティ ローダー」はNFTマーケットプレイス等との取り組みではなく、単体で実施。プロモーション以外の何ものでもなかったが、来場者へのコミュニケーションは幅広く図れたのではないだろうか。
日本からは、アソビシステムが出資するメタトーキョーが参加し、ストリートスナップ誌「ストリート(STREET)」編集長でフォトグラファーの⻘木正一がAMIAYAを撮り下ろした写真を展示。原宿を中心としたストリートを舞台に、最新の東京ファッションを着用したAMIAYAの大写真が、ポップアップミュージアム「SPACE by MetaTokyo」に多数並んだ。同スペースではAMIAYAをモチーフのウエアラブルも用意。写真もNFTにしてマーケットプレイスで販売したという。オープニングパーティーを逃したが、ゆっくり写真を観賞できた。
メタバース発のブランドの動きもチェックすべしと考え、ファッション・ウイークのシメを飾る“デジタルネイティブ・ラグジュアリー・ファッションハウス”「オーロボロス(AUROBOROS)」による、グライムス(Grimes)のパフォーマスへ。会場には続々人が集まってきたが、待てど暮らせど、パフォーマンスは始まらず。
これまでのイベントは全てオンタイムだったため、何かの間違いかと思い、ディセントラランドのディスコードを覗くも特に情報ナシ。「オーロボロス」のディスコードに入って、皆が「見れない!」と投稿しているのを見て、一安心。主催者の一人らしき人が「もうすぐ」と知らせるも、なかなか始まらない。
突然、「こっちを見て」とインスタのアカウントがシェアされた。慌てて、インスタを開くと、バーチャルパフォーマンスが中継されている。「オーロボロス」の“ミスティック”ボディースーツに身を包んだ巨大グライムスが、光のシャワーを浴びながら歌い、踊る。しかし私に見えるディセントラランド会場ではグライムスの姿は見えなかった。理由は不明。人がいっぱい集まっていた、会場の上の方に上がってもグライムスは見えず。データが重すぎたか、人が集まりすぎたか。結局、インスタライブを見て終了した。
後日、ツイッターで検索すると、ちゃんとディセントラランドでバーチャルに楽しんだ人もいた模様。こういう運(?)のなさも初期メタバースの醍醐味か。再生可能なデジタルの世界だが、1回きりのイベントに立ち会う価値はリアルと同じと言えそうだ。
VRSNSのVRChatなどでは男性が美少女アバターを使用するケースが目立つが、ディセントラランドでは男性が女性アバターを使っている率は少ない感じ。男性アバターの方が多いし、男性ユーザーの方が多そうなので、ここはメンズコレの方が盛り上がったりするんじゃないかなと思った。
また、コアなユーザーのアバターは羽根が生えていたり、髪の毛が光っていたり、インドの神様の姿をしていたりと、だいぶ見た目が派手。デフォルトのアバターもいろいろ選択肢があり、そこそこ個性を表現できるが、コアなユーザーは一目瞭然で、変わった格好をしている。リアル服の3Dでは、少々物足りない気もした。上級者のアバターはだいぶ面白いので、ストリートスナップの需要も高いかもしれない。
上記以外にもセルフリッジ(SELFRIDGES)がオープンし、フォーエバー21(FOREVER 21)が池に豪華な船を停めていたり、「フィリップ プレイン(PHILIPP PLEIN)」や「エリー ペリス(PERRY ELLIS)」「デュンダス(DUNDAS)」のほか、デジタルファッションチーム「ザ ファブリカント(THE FABRICANT)」などによるショー、ニック・ナイト(NICK KNIGHT)を迎えたトークセッションやWeb3やメタバースに関するパネルディスカッション、セルフィーコンテストなど、全部カバーするのは難しいくらい、いろいろ行われていた。
ファッション・ウイーク終了後も建物はそのままなので、今も会場を訪れることができるが正直、閑古鳥が鳴いている。集客装置として、ファッション・ウイークは必須だと思う。手に入れたいと思うアイテムを探す場、手に入れたアイテムを披露できる場としても機能する。さまざまなVRプラットフォームが誕生しているが、アバターとファッションは自己表現をする上で間違いなく重要。今回、ディセントラランドが先行した形だが、今後こうしたメタバースイベントは増えていきそうだ。いかに多くの人が「行きたい!」「行かなきゃ!」と思わせるコンテンツを用意するか。次回開催も含め、どのように発展していくのか、とても楽しみだ。
「エトロ」のショー
「ホーガン」のアフターパーティー
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「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。
