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サステナブルもトム様らしい

 トム・フォードによる薄膜プラスチックの代替素材コンペ、本気ですね。素材審査では、1.生分解性があり、2.社会や環境への悪影響を最小化し、3.産業品質基準を満たし、4.コスト競争力があり、5.大量生産が可能で2025年までに市場に投入できるか?が審査され、「ステラ マッカートニー」や「J.クルー」などのブランドによる試験も受けるそうです。

 こういう協業を、「ステラとコラボ!」とか、「ラグジュアリーとマスの垣根を超えて」なんてアピールすることもなく、シレッとリリースするところも、カッコいいなぁ、なんて思ってしまいました。トム様っぽいのです。

「WWDJAPAN」編集長
村上 要
NEWS 01

トム フォードがレジ袋などに使われる薄膜プラスチックの代替素材コンペの最終選考者を発表 ナイキも参画

 トム フォード(TOM FORD)と非営利の環境保護団体ロンリー ホエール(LONELY WHALE)による“トム フォード プラスチック イノベーション プライズ”はこのほど、最終選考者を発表した。世界26カ国から64の応募があり、最終選考に残ったのは8団体。同プライズは、レジ袋などに使われる薄膜プラスチックの代替となる、大量生産可能で生分解性のある新素材の開発を目的としたコンペ。

 最終選考に残ったのは、カナダのバイオテクノロジー会社のジェネシス(GENECIS)やケニアの社会的企業ルワンダバイオテック(LWANDA BIOTECH)、インドに拠点を置くゼロサークル(ZEROCIRCLE)など。ジェネシスは、細菌を再プログラムして価値の低い有機廃棄物から希少な物質を生成。ルワンダバイオテックは、薄膜プラスチック代替品の開発を通じて、地域社会のプラスチック汚染と農業廃棄物問題に取り組む。ゼロサークルは養殖した海藻から、使用後に海中で無害に分解される安全な包装材を製造する。

 最終選考者は今後、ナイキ(NIKE)がスポンサーとなり、1年にわたって行う素材試験に進む。1.生分解性があり、2.社会や環境への悪影響を最小化し、3.産業品質基準を満たし、4.コスト競争力があり、5.大量生産が可能で2025年までに市場に投入できるかの審査を受ける。

 同試験は、ジョージア大学新素材研究所やシアトル水族館の協力により、海水を用いて行われる。シアトル水族館は、対象の素材を海洋生物が食べたときの内臓の変化を調べる。シアトル水族館のエリン・マイヤー(Erin Meyer)博士は、「これまで900種以上の海洋生物がプラスチックを飲み込んだことが確認されており、この数は増え続けている。クジラが食べた場合、25%近くが死亡する。安全に十分留意した上で、代替素材をクジラが食べたとき、どんな影響が出るかを調査したい」と述べる。

 また最終選考者の素材は、「ステラ マッカートニー(STELLA MCCARTNEY)」や「J.クルー(J.CREW)」などブランドによる試験も受ける。参加ブランドは、プライズ受賞者や最終選考者の素材を自社の包装材に試験的に導入することも表明している。

 ファッション業界だけで年間1800億枚の薄膜プラスチック製レジ袋が使用され、毎年1400t弱のプラスチックが海洋に流出しているとされる。これは、海洋を汚染する薄膜プラスチックの46%を占める数字だ。デューン・アイブス(Dune Ives)=ロンリー ホエール事務局長は、「リサイクル不可能な薄膜プラスチックからの、最大の商業的移行であると主張したい。われわれは協力することで、“海にプラスチックが存在しない未来”を実現することができる」と話す。

 トム フォードとロンリー ホエールは20年に“トム フォード プラスチック イノベーション プライズ”を立ち上げ、21年に応募受付を開始した。これに合わせ、「トム フォード タイムピース(TOM FORD TIMEPIECES)」は、海洋プラスチックごみを再利用した時計を発売した。

 プライズ受賞者は23年春に発表され、120万ドル(1億4640万円)以上の賞金が授与される。その後も数年間にわたり、市場投入に向けた支援を受ける。

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NEWS 02

オンワードHD副社長に知識氏 元カネボウ化粧品社長

 オンワードホールディングス(HD)は、同社社外取締役で元カネボウ化粧品社長、日本交通社長などを歴任した知識賢治氏(59)が、5月26日付で副社長に就任すると発表した。

 知識氏は1985年に鐘紡(当時)に入社。自身が立ち上げた子会社リサージの社長を経て41歳でカネボウ化粧品社長に就任するなど、化粧品業界でキャリアを重ねた。その後2010年にはウェディングのテイクアンドギヴ・ニーズ社長、15年から日本交通の社長を務めるなどプロ経営者として手腕を発揮。21年5月には化粧品や雑貨などライフスタイル分野の強化を進めるオンワードHDの社外取締役に招へいされた。

 22年2月期におけるオンワードHDの国内ライフスタイル事業は売上高が379億円。これは主力の国内アパレル事業(売上高1205億円)の3割程度の水準だが、前期と比較した売上高は8.7%増、営業利益は189%増とコロナ禍でも成長を続けている。

 今期以降は、保元社長が低調なアパレル事業のテコ入れに注力する一方、同事業と並ぶ成長戦略の柱と位置付けるライフスタイル事業の成長加速を知識氏が担う体制で臨む。7日に行われた同社22年 2月期決算会見(オンライン配信形式)で保元社長は、「ライフスタイル事業は堅調に拡大しているが、成長スピードをもう一段加速させていきたい」とし、知識氏について「ライフスタイル分野での豊富な営業経験やノウハウ、人脈を活用していただきたい」と期待を述べた。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。