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20年後にありたい姿ために
ワコールは日本を代表する歴史ある下着メーカーでありながら、米国等海外でも支持が高く、3Dスキャナーによる計測やアバター接客などテクノロジーの導入にも積極的で、先進的な企業です。そんなワコールの最新の取り組みが「元気計画」。社員の健康アップが生産性アップにつながり、企業に成長をもたらす、という計画です。
お客さまのウェルビーイングを実現するには、まず社員から、というこの発想はすごくいいなと思いました。もちろん数値目標ありで、仮説を立て、実験し、検証します。20年後に“ウェルネスのワコール”となっているための1歩。効果に期待です。
ワコールが社員の「健康推進計画」スタート 女性特有の課題に取り組む
ワコールホールディングス(HD)は12月3日、京都市内のホテルで2022年上期の振り返りと「ワコールGENKI計画2025(以下、元気計画)」発表した。安原弘展ワコールHD社長は、「欧米市場は新型コロナのリベンジ消費で回復したが、日本は“戸惑い消費”。12月に入ったがジングルベルが聞こえてこない状況だ」と語った。欧米市場は新型コロナに対する規制の緩和により、店舗売り上げがECを上回る状況になっているという。一方で、日本は10月以降、回復傾向にあるが欧米ほどの勢いはない。ワコールHDの2021年4〜9月期連結業績(米国会計基準)は、売上高が前年同期比19.5%増の874億円、営業利益が同211.6%増の39億円、純利益が同67.4%増の29億円だった。国内事業は7月以降の感染者数増加により苦戦したが、欧米の業績回復によりカバーした。
伊東知康ワコール社長は、「CX戦略、コスト構造改革、サステナビリティの推進が最成長の3本柱。CXはデジタル技術活用などにより、新規顧客獲得および既存顧客のロイヤルカスタマー化を目指すものだが、上期はコロナの影響で既存顧客の購買人数は増加したが新規顧客獲得に苦戦した」と話す。ECに関しては自社が前年同期比1%増、他社が同11%増と好調で、売り上げ構成比率は23%。コスト削減に関しては、人件費や諸経費の最適化、自主管理店舗への移行、ブランドや品番の集約により計画通りだった。「卸と直営店(百貨店、テナント店を含む)の20年3月期の割合は約8対2だったのを25年3月期には6対4にしたい」と伊東社長。サステナビリティに関しては、30年に向けた環境目標「自社排出量・製品破棄ゼロ、環境配慮型素材50%」を発表したばかりだ。
これらの戦略に新たに“健康経営”「元気計画」が加わった。これは、食事や運動、睡眠など社員の心身の健康を整えて生産性をアップして仕事へのエンゲージメントの向上を目指すもので、ワコールと健康保険組合、労働組合が三位一体となって戦略的に推進する。小川直子ワコール執行役員 人事総務本部 人事部長は、「ワコールの社員の9割が女性、消費者も女性が多いため、女性特有の健康課題への取り組みを強化していく」と語った。
25年度までの目標数値と活動計画を策定し、社員の“ウェルビーイング(心も体も社会的に満たされた状態)の実現”を目指す。ベースとなる心身の健康を整える項目に関してはKPIを設定済み。追って生産性やエンゲージメント向上の目標数値を定める。伊東社長は、「まずは、社員に健康でやる気になってほしい」とコメント。20年後の企業像に“ウェルネスのワコール”を掲げる同社ならではの取り組みだ。
百貨店×町工場のジーンズ再生プロジェクト 「3.1フィリップ・リム」「ダブレット」など参加
三越伊勢丹、阪急阪神百貨店など6社は、ファッションブランドやクリエーターと協業し、廃棄された「リーバイス(LEVI’S)」の“501”ジーンズをリメイク販売する「デニム de ミライ」プロジェクトを来年3月23日にスタートする。
プロジェクトは、東京・足立区で小さなプレス工場(アパレル製品の仕上げや検品などを行う)を営むヤマサワプレスの山澤亮治社長が2019年夏、米ロサンゼルスの市場に捨てられた約20トンの“501”ジーンズを、「後先顧みず」(山澤社長)引き取ったことに端を発する。この取り組みに三越伊勢丹と阪急阪神百貨店が共鳴し、輪を広げてきた。
井野将之の「ダブレット(DOUBLET)」、落合宏理の「ファセッタズム(FACETASM)」森永邦彦の「アンリアレイジ(ANREALAGE)」など国内有力ブランドだけでなく、「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」「セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI」)「ゴールデングース(GOLDEN GOOSE)」など海外ブランドも含めて約50ブランド・クリエーターが参画。このほど開かれた展示会で、リメイク商品第1弾として150型以上におよぶ商品サンプルが披露された。
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ジーンズはヤマサワプレスの工場での検品補修・洗浄を経てクリエイターの下へ送られ、新たな命を吹き込まれる。リメイク商品は三越伊勢丹、阪急阪神百貨店が運営する店舗のほか、岩田屋三越の岩田屋本店、エスティーカンパニー(群馬・桐生市)やミッドウエスト(名古屋市)、佐藤繊維(山形・寒河江市)が運営するセレクトショップでも販売する。
山澤氏とともにプロジェクトを主導してきてきた三越伊勢丹の神谷将太・伊勢丹新宿本店「リ・スタイル」バイヤーは、「工場で見た廃棄ジーンズの塊がデザイナーの手で生まれ変わるのを目の当たりにし、このプロジェクトが『ビジネス』として成り立つという実感が湧いてきた」と話す。「サステナビリティという大義が根底にはあるものの、それを押し付けがましい形ではなく、お客さまの気持ちが高揚するようなファッションアイテムとして届けていけたらいい」と話す。
「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。