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リベンジ消費はあったのか?

 緊急事態宣言は明けましたが、飲食店ではコロナ以前のような夜遅くまでの営業は引き続き行わないというケースが少なくないようです。営業しても売り上げがコストに見合わないという判断ですが、こうなってしまうと経済が完全回復するまでにはあと何カ月、いや何年かかるのだろうと改めて暗い気持ちになります。

 ファッション消費はどうでしょうか。一部では「外出着のニーズが高まっている」「オケージョンアイテムが売れている」という声も聞こえてきます。本日1本目でご紹介する記事のように、10月は中旬以降急激に冷えこみ、一気に秋冬物が売れ始めました。「このまま下がり続けてくれ」と祈っていましたが、11月の気温予想を見てみるとまた高くなっている……。英国ではCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)が開催中ですが、気候変動はやはりわれわれの業界にとって、遠くの他人事ではないなと強く感じた次第です。

「WWDJAPAN」編集委員
五十君 花実
NEWS 01

「しまむら」は週間売り上げで過去最高を記録 専門店10月度、気温低下で中旬以降は好調

 専門店チェーン、セレクトショップの2021年10月度(既存店ベース)は、月中旬以降の急激な冷え込みで秋冬物衣料が一気に動き出したという店が中心だった。月前半の高気温に足を引っ張られ、1カ月間の数字としては各社あまりインパクトがないが、「中旬以降は2ケタ増」「都心部の商業施設にも徐々に人が戻っている」といった声が聞こえてくる。「このまま気温さえ下がれば順当に売れる」という期待が広がっている。

 ユニクロは前年同月比4.8%減と落としているが、これは前年が一昨年年同月比16.2%増と絶好調だった反動によるもの。「10月16、17日の週末を境に、それ以降は“ヒートテック”のインナーや、”ウルトラライトダウン“、”ハイブリットダウン”などが売れ出した」と広報担当者。1日に発売した「セオリー(THEORY)」とのコラボや、15日に発売した「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」とのコラボも反応があったという。

 しまむらの「ファッションセンターしまむら」は同9.5%減。ただし、同社は集計期間が9月21日〜10月20日であるため、気温が下がった月下旬の商況が加味されていない。実際、「10月18日週の売り上げは、週間売り上げとして過去最高を記録した」(高橋維一郎取締役執行役員)といい、話題性のある商品を次々と打ち出すこの間のMD政策に手応えを深めている。

 アダストリアは同0.1%増と、7月以来3カ月ぶりの前年実績超え。「18日以降、気温が下がって商況はかなり変わった。足元は非常に好調で、10月最終の10日間は同17%増ペースだった」(広報担当者)という。売れ筋商品は秋冬商品のパンツやニット、パーカ、ロングブーツなど。

 ユナイテッドアローズは同4.3%増と想定は若干下回ったものの、2カ月連続で前年実績超え。一昨年同月比でも4.2%減にまで戻してきた。緊急事態宣言が明け、「ビジネスシーンでも着用できる商品に対する購買意欲が高まってきた。都心部の店舗にも以前に比べてお客さまが戻っている」と広報担当者。売れ筋はウィメンズではブラウスやパンツ、カーディガンなど、メンズはニットトップス、ジャケット、パンツ、アウターなど。

 良品計画の「無印良品」は同9.6%減と、5月以降6カ月連続の前年実績割れとなった。客数は取れているものの、客単価が同10.7%減と奮わない。特に衣服は21.0%減という大幅な落ち込み。中旬までの高気温や、前年10月は値下げ効果で一昨年同月比6.5%増と衣服を伸ばしていたこと、ベトナムのロックダウンによる長袖カットソーの入荷遅れなどが響いた。食品も昨年テレビへの露出効果で絶好調だった反動で同10.4%減。ただし食品は「月末にかけて前年実績超えに転じた」とコメント。

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NEWS 02

若者がCOPに合わせ「渋谷COP2021」を開催 1.5度目標達成に向け呼びかけ

 一般社団法人SWiTCHは、10月31日からイギリス・グラスゴーで行われているCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締結国会議)に合わせ、「渋谷COP2021」を開催する。

 「渋谷COP2021」とは、2050年の気温上昇を1.5度以内に抑えるというパリ協定実現のため、気候変動やパリ協定について啓蒙し、脱炭素社会に向けて若者や大人、企業のアクションを促す。SWiTCH代表の佐座槙苗をはじめ、環境活動家の小野りりあんやアーティストのLemieら6人のコアメンバーを中心に、若者による環境活動団体などと連携して運営する。

 COP開催期間中は、オンライントークセッションを開催するほか、COPの現地レポートやアーティストの紹介を通してサステナビリティに関する情報発信に力を入れる。また、渋谷区と連携し、一般参加者や協賛企業などから集めたアイデアを元にSFプロトタイピング(*)と呼ばれる手法を用いて、「2050年のサステナブルな渋谷区の姿」を提言することに取り組む。佐座SWiTCH代表は、COP26に日本ユース代表として参加し、同プロジェクトを世界に向けて発信する。

*SFプロトタイピング:サイエンス・フィクションの発想をベースにまだ実現していない未来のビジョンを構築し、そこから逆算して、今何をすべきかを導き出す手法

 オンライントークセッションは、メディアアーティストの落合陽一や中井徳太郎環境省事務次官といったメンバーが参加し、世代や業界の垣根を超えて気候危機に対してどのようなアプローチができるかを議論する。11月7日にはファッションジャーナリストの生駒芳子や篠健司パタゴニア日本支社環境社会部らも参加し、ファッションをテーマに議論が行われる予定だ。

 佐座SWiTCH代表は、ロンドン大学大学院に在学中でサステナブル開発を研究している。10月27日に渋谷パルコで行われた記者会見で佐座SWiTCH代表は、「地球が危機的な状況にある今、世界中の若者が気候変動を本気で止めようとしている。私たちは安定した地球に住めるのか、灼熱化に進んでしまうのか大きな分岐点の上に立っており、ここ3〜5年が勝負所と言われている。日本にいると気候変動の影響を感じづらいが、南半球の友人たちはすでに多くの影響を受けている。日本でも1.5度目標を待ったなしで達成しなければいけないということを、ダイナミックに変化し新しい時代を作るシンボリックな街渋谷から広く伝えていきたい」と思いを語った。

 「渋谷COP2021」は2025年の大阪万博まで毎年継続して活動し、25年までに100万人のサステナブルアンバサダー育成を目指す。

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最新号の読みどころ

「WWDJAPAN」12月22日&29日合併号は、創業90周年を迎えた吉田カバン総力特集です。「ポーター(PORTER)」「ラゲッジレーベル(LUGGAGE LABEL)」「POTR」の3ブランドを擁し、日本を代表するカバンメーカー・吉田のモノ作りに迫ります。日本が誇る伝統技術を持つカバン職人たちと深い関係を築きながら、最先端の技術・素材を使い名だたるデザイナーズブランドとコラボレーションする相反した性質はどんな文脈から生まれているのでしょうか。