2017年9月に「WWDビューティ」が創刊10周年を迎えたことを記念してスタートしたフォトコンテスト“WWDJAPAN ヘアデザイナーズコンテスト”。全国の理美容師、ヘアメイクアップアーティストを対象に、モデルを起用したヘアデザイン作品を募集し、グランプリを決定するというコンテストです。5回目の開催となる今回は、2022年2月15日までの期間で、“2021~2022年のコレクション(NY、パリ、ミラノ、ロンドン)におけるファッションやビューティのトレンドを意識した作品”というテーマで作品を募集しました。

コンセプトは
「ビューティ×ファッション」

「WWDJAPAN ヘアデザイナーズコンテスト」のコンセプトは“ビューティ×ファッション”。「WWDJAPAN」や「WWDJAPANデジタル」のミッションの1つである「ファッション業界とビューティ業界の垣根を取り払う」ことを目的とした取り組みでもあります。そのため、審査員にファッションデザイナーやファッション関係者、ヘアメイクアーティストなどを迎え、両業界を“クロス”させることを試みました。

グランプリ受賞特典

グランプリ受賞特典

グランプリ受賞者(1名)には、賞品(星野リゾートグループ宿泊券)が授与されるほか、「WWDJAPAN」プロデュースのもと、「WWDJAPAN」2022年3月28日号のカバーのモデルシューティングのヘア&メイクを担当してもらいました。

HAIR:YUKI TAKENAKA (SIESTA.)
MAKE-UP:MASAAKI MURAI
MODEL:HANNA FROLOVA (TOKYO REBELS)
PHOTO:KODAI IKEMITSU (BE NATURAL)
COVER DESIGN:JIRO FUKUDA
STYLING:CHIKAKO AOKI

WWD Hair Designers Contest

結果発表

グランプリ・準グランプリは、原田忠・資生堂トップヘアメイクアップアーティスト、奈良裕也「シマ ハラジュク(SHIMA HARAJUKU)」アートディレクター兼クリエイティブスタイリスト、SAKURA「コクーン(Cocoon)」ディレクター、村上要「WWDJAPAN」編集長の4人が審査。また、ファッション業界で活躍するフォトグラファーのシトウレイと、メイクアップブランド「RMK」の協力を得て、それぞれの賞を設けました。

GRAND PRIX グランプリ

WWD Hair Designers Contest
グランプリ

竹仲祐輝 「シエスタ(siesta.)」オーナー
兼スタイリスト

何度か応募していたが、初めてグランプリを受賞できてうれしい。私はファッション業界出身なので、作品を作る際は服やモデルからインスピレーションを受けて、ヘアとメイクを合わせることが多い。今回の応募作品も、チャリティーTシャツを手に入れたことで、医療従事者への感謝と、明るい世の中への願いを作品で表現する、というコンセプトに行き着いた。ポイントはヘアカラーで、ウイッグを7色にカラーリングしてから、立体感が出るようにカットした。

審査員コメント
他の作品よりも、「“どう見せるか”より“どう伝えたいか”」といったメッセージ性を強く感じた。「WWDJAPAN」のコンテストはヘア&メイクに加え、“ファッション”という美容業界の他のコンテストとは違うハードルが1つある。そこをどういう風に見せて、トータルバランスも含めた表現ができるかがポイント。この作品はファッションを通じてメッセージや表現を届けていて、「WWDJAPAN」らしい、“今”を反映した作品だと感じた。(原田氏)
すごく今っぽい作品だと思った。盛っているところは盛っていて、抜いているところはすごく抜いていて、駆け引きのバランスがうまい。「WWDJAPAN」のコンテストだからこそできる表現や雰囲気を理解したうえで一枚の絵としてかわいいしく仕上げている。テクニックを細かく審査するというよりも、ぱっと見ですぐに「いい!」と思えた作品。(奈良氏)
見たときに「ムードがすごくいい」と思い、感覚的にまず選んだ。見れば見るほどシンプルで引き算だけれど、メッセージ性や今っぽさが詰め込まれている。それがわざとらしくないというか、変に「ここを見せたい」とか「作り込んだ」という感覚ではなく、「コンテストっぽくない」ところにも面白さや新鮮さを感じた。ポージングも自然で、ストーリーを決めて作っている感じがする。(SAKUA氏)
最初に不思議な作品だと思った。かわいいとも言えるし、強いとも言える。モードともラブリーとも言えるし、そういう「どうぞ、ご自由に解釈してください」といったところが今っぽい。化粧品やファッションでも、売れている製品は「手頃な価格」「効果実感が高い」など、いろいろな理由で愛されている。この作品も、見た人が各々解釈して、それぞれの理由で好きに思えるだろうな、と思った。(村上)

SECOND PRIZE 準グランプリ

WWD Hair Designers Contest

坂下壽野 「エピキュール(epicure)」代表

「WWDJAPAN」は私がファッション業界にいた頃から愛読しているので、受賞できてとてもうれしい。応募作品に関しては、ステイホームの影響から、一変して華やかでポジティブなイメージを作りたいと思った。21年春夏に見られた、優しげなペールトーンのピンクをイメージし、華やかな“桜”をヘアメイクで表現した。

審査員コメント
“全部ピンク”というくくりを作り、ヘアカラーやメイクの濃淡、まつげなど、繊細なところまでピンクで統一している。自分で表現の自由を狭めているにもかかわらず、ピンクの中で彩度や明度を調整し、思いっきり遊んでいる感じがすごくいい。何かの広告で使えそうで、例えばブルーやグリーンなどシリーズ化しても面白いと思う。そんな期待感も抱かせてくれるような作品で気になった。(原田氏)
WWD Hair Designers Contest

設楽悦子 「或美容室」代表

このような素敵な賞をいただくことができ、本当にうれしい。いつも撮影で関わっているカメラマン、スタイリスト、モデル、そして一緒に撮影している仲間のお陰だと感謝している。受賞作品は、自分の青春時代である90年代後半~「Y2K」前後のアーカイブ的な意味で、その時代をイメージした。今のハイトーンカラーブームと、90年代のヴィジュアル系のイメージをミックスして、ブルーのカラーにこだわった。

審査員コメント
髪型やメイクに関して、見せる角度がすごく絶妙。例えばメイクは、モデルの目のほりの深さの陰か、メイクで入れたのか……など、あれこれ想像させてくれる。衣装も正面だともっとインパクトが強いけれど、この角度だからバランスが良かったと思う。見れば見るほど、全体のトーンや光の加減にすごく引き込まれる。衣装も含め、作者が考えているテーマに対して、全ての要素でフィットがあって素敵。(SAKURA氏)

REI SHITO PRIZE シトウレイ賞

WWD Hair Designers Contest

下山浩二 「ドローアンドコー(draw&co.)」オーナー

受賞の連絡をいただいて率直にうれしく、とても光栄に思う。“ファッショナブルなマフィア”をテーマに、角刈りを少し歪なフォルムに仕上げ、少しだけ違和感が出るように作り上げた。これからも東北から世界にクリエイションを発信していけるよう、創作を継続していきたいと思う。

審査員コメント
ヤンキーヘアにピュアな表情、ヌーディーな肌の質感に相対するような涙袋に入れたスパークリング。呼応するようなメガネのフレームにおけるポイント、ピアスの大きさにも絶妙な計算を感じる。ヘアをメインに競う大会で、ここまでヘア以外のディテールにこだわるその姿に共感した。作りたい世界観への追及心、もっともっと見てみたい!(シトウレイ/フォトグラファー兼ジャーナリスト)

RMK PRIZE RMK賞

WWD Hair Designers Contest

坂下壽野 「エピキュール(epicure)」代表

準グランプリとダブル受賞ということで、本当にうれしい。「RMK」は色使いが鮮やかで、私自身使ったことがあるし、とても好きなブランド。今回の応募作品も“ピンク”という色彩にフォーカスし、それだけでは甘くなり過ぎるので、黒を差し込むなど工夫を凝らした。そうした色へのこだわりが評価されたのでは、と思っている。

審査員コメント
あるべきものだけがしっかりと1枚の写真の中に詰まっていて、何が欠けてもこの世界観を弱めてしまうと思った。メイクアップはもちろん、全体のカラーパレットのまとまりも素晴らしい。全体的に甘くなりやすいカラーを、ヘア・メイク・スタイリングのライン、質感、素材感でコントロールした、ナイーブさと強さがとてもかわいい。(YUKI/「RMK」クリエイティブディレクター)

審査員総評

4人の審査員それぞれに、「WWDJAPAN」がコンテストを開催する意義についてや、応募作品全体を見て感じたことについて話してもらいました。

原田忠 / 資生堂トップヘアメイクアップアーティスト

原田忠

奈良裕也 / 「SHIMA HARAJUKU」アートディレクター兼クリエイティブスタイリスト

奈良裕也

SAKURA / 「Cocoon」ディレクター

SAKURA

村上要 / 「WWDJAPAN」編集長

村上要

原田忠 / 資生堂トップヘアメイクアップアーティスト

原田忠 資生堂トップヘアメイクアップアーティスト

ファッションという切り口で
バランスを構成するスキルが向上

今回で5回目となり、応募者の皆さんも何となく模索していたものの霧が晴れて、「WWDJAPAN ヘアデザイナーズコンテスト」の見せ方とか、表現の仕方が見え始めていると感じた。明らかに他のコンテストと違うのは、ファッションという切り口。全体の割合の中にファッションが入っているので、そこでトレンドや全体のバランスをどう構成して、ちゃんと1つの形にするか。そこは私自身もすごく勉強になるし、年々レベルが上がってきていると思う。

奈良裕也 / 「SHIMA HARAJUKU」アートディレクター兼クリエイティブスタイリスト

奈良裕也 「SHIMA HARAJUKU」アートディレクター
兼クリエイティブスタイリスト

次回からはよりファッションに近い
コンテストになる気がしてすごい楽しみ

今回のグランプリ作品は、すごく分かりやすい形で「WWDJAPAN ヘアデザイナーズコンテスト」が、他のコンテストとは違うことをアピールする材料になったと思う。最初の頃は「WWDがやるコンテストって?」と疑問を抱きつつ、どこを目指していいか分からないまま応募している方も多いと感じた。しかし年々理解が進み、今回の受賞作品で「こういう感じでもいいんだ」と思って挑んでくれる若い美容師やヘアメイクアーティストが出てくると思う。よりファッションに近いコンテストになる気がしてすごい楽しみ。

SAKURA / 「Cocoon」ディレクター

SAKURA 「Cocoon」ディレクター

「こうじゃなきゃ」にとらわれず
好きなものを作り出している作品が多い

今は情報量が多いので、見たものを真似しようと思えば、いくらでもできる時代。その取り組みはスタートとしてはすごくいいことだけど、どうしても「髪型はこう作らなきゃ」などと自由度が狭められてしまう。でも今回の応募作品は「こうじゃなきゃ」みたいなことが減っていて、自分の好きなもの、見せたい雰囲気を自分で作り出している作品が多いと感じた。このコンテストは、そうした表現に取り組める場所だと、改めて感じた。

村上要 / 「WWDJAPAN」編集長

村上要 「WWDJAPAN」編集長

このモデルたちが街を歩いていたら
日本楽しそう!
もっと好きなようにやってもOK

ファッションでは今、みんな好きなようにやり始めている。コレクションを「ファッションウィークで発表しなくてもいい」と考えるブランドが目立つし、例えば「バレンシアガ(BALENCIAGA)」はゲームで発表すると言っている。好きなようにやって、「それでもいいよね」といったムードになっている。美容ももっと「やりたいことをやればいい」と思うけれど、今回は作品を見ていて「このモデルたちが街中を歩いていたら日本楽しそう!」と思った。

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