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企業再生の光と影

とある経済誌がスクープとして報じた、TSIホールディングスの元法務部課長によるリストラ関連のW提訴。その報道を読んでいて、一会社員として思わず胸が締め付けられる思いがしました。1本目の記事では、その一連の問題の背景にあるTSIの構造的な課題が描かれており、経営の難しさを改めて考えさせられます。

しかし、課題だらけのように見えるTSIにも確かな希望の光が差しています。今期買収したデイトナ・インターナショナルとのシナジーは、新しい価値創出のきっかけとなり得るのではないでしょうか。個人的に傘下のアングローバルが展開するブランドが好きなので、陰ながら応援したいです。

「WWDJAPAN」副編集長
新関 瑠里
NEWS 01

「リストラ騒動」 に揺れるTSIホールディングス 問題の深層にある“主力ブランドの不振”

TSIホールディングスが揺れている。

一部報道によると、同社が進める構造改革の過程で、外部コンサルティング会社ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に一任して進めていたとされる人員削減策の問題が表面化し、訴訟問題にまで発展しているという。

ただ、この騒動の水面下には、長年解決されずに積み上がってきた「主力ブランドの立て直しの遅れ」という、根深い課題が横たわる。

「パーリーゲイツ」頼みと「ナノ・ユニバース」改革の遅れ

TSIホールディングスは昨年4月、3カ年の中期経営計画「TSI Innovation Program 2027」を打ち出し、2027年2月期に売上高1650億円(24年2月期は1554億円)、営業利益100億円(同17億円)を目指す方針を掲げた。

その柱のひとつが、今回のリストラ騒動にもつながる「2025年2月期末までに本社人員を約20%削減する」施策だった。広告費や物流費の圧縮など、固定費を中心とした効率化にも積極的に取り組んできた。

こうした改革の結果、26年2月期中間期(25年3〜8月)は営業損益が6億4000万円の黒字(前年同期は2億2100万円の赤字)、純損益も13億円の黒字(同7億9100万円の赤字)と、収益面では黒字転換を果たした。一方で売上高は前年同期比12.0%減の661億円。減収に伴う粗利の縮小が響き、計画には未達となった。主力ブランドの多くが2ケタ減収に沈むなど、固定費削減で補いきれない収益構造の脆さが鮮明となった。

とりわけ大きな痛手となっているのが、「ナノ・ユニバース(NANO・UNIVERSE)」の長びく低迷だ。かつてTSIの業績をけん引するセレクトショップ業態だったが、近年は売り上げが振るわず、22年に大規模リブランディングを敢行したものの改善には至らなかった。25年3〜8月期も前年同期比6.4%減と、依然として回復途上にある。

一方、コロナ禍のゴルフブームで伸びた「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」は特需の終了とともに売り上げは落ち着きつつある。25年3〜8月期は前年同期比22.4%減。この“ゴルフ特需”の期間にナノ・ユニバースの再構築を完了すべきだったのだろう。

TSIはここ数年、値引き依存から脱却し、プロパー販売比率の改善に努めてきた。方向性としては正しいが、その大前提となる「商品力の底上げ」が伴わなければ、ユーザーには“割高感”を与えてしまう。「マーガレット・ハウエル(MARGARET HOWELL)」「ナチュラルビューティーベーシック(NATURAL BEAUTY BASIC)」などは一時的な回復を見せたが、この3〜8月期はいずれも2ケタ減収。「ナノ・ユニバース」や「パーリーゲイツ」の落ち込みを補うまでには至っていない。

「商店街型」ポートフォリオの構造的難しさ

TSIは東京スタイル、サンエー・インターナショナル、上野商会など複数企業の集合体として形成された“商店街型”ポートフォリオを特徴とする。多様性は強みである一方、ブランド間で世界観が統一しにくく、束ねる難易度が高い。

近年はアングローバルや上野商会の機能をTSIに統合し、横串を入れて効率化を進めてきたものの、各ブランドが持つ“個性”が薄まる懸念は常につきまとう。趣味性や嗜好性の強いブランドが多いTSIでは、単純な集約ではシナジーが生まれにくい構造的問題を抱えている。

今年2月には、ブランド別に分散していた公式ECを「ミックスドットトウキョウ」に統合し、ポイント共通化や運営効率化を狙った。しかし、ブランドに紐づくファンから見ると“コンセプトの見えないモール”と映るリスクがある。ブランドを横断したコーディネート提案などコンテンツ面でシナジーを生み出そうとしているものの、現在は旧サイトからの会員移行が想定を下回っているという。

アパレル業界全体を見渡すと、店舗の集約・大型化とOMOによる運営効率化の動きが進んでいる。大手アパレルのオンワードホールディングスは、デジタルによる在庫引き当てサービス“クリック&トライ”を軸に、婦人服ブランドを集約した「オンワード・クローゼット・セレクト」で郊外モール出店を成功させ、百貨店依存から脱却しつつある。その一方で、TSIは“個の強いブランドを束ねた集合体”という特性上、大型化・集約と相性が良くない側面がある。11月20日からは、上述の統合EC「ミックスドットトウキョウ」初のポップアップストアを東京ミッドタウン日比谷に期間限定出店するが、試みは成功するだろうか。

「個」への立ち返りを

効率化を目的とした過度な“集約”は、ブランドの“個の魅力”を損なうリスクを高める。TSIが再び成長軌道に乗るには、彩り豊かなブランドそれぞれのファンの解像度を高め、世界観を改めて強固にすることが不可欠だ。

かつてウィメンズセレクトショップの旗手だった「ローズバッド(ROSE BUD)」はオリジナル比率の拡大によって個性を失い手放す結果となり、今春には「ジルスチュアート(JILL STUART)」のアパレル事業も終了した。一方で、「アヴィレックス(AVIREX)」や「エトレトウキョウ(ETRE TOKYO)」は25年3〜8月期に共に増収しており、熱烈なファンや感度の高い層に確実に支持されている。

規模の大小に関わらず、「誰に向けたブランドなのか」が明確であれば、持続的な支持につながるということだ。固定費削減と同時に、ブランドとしてどこに熱量を届けるのかという“絞り込み”が求められている。

BCGとの関係含め、再設計を

BCGを巡るリストラ報道は、外部委託やガバナンスの問題として注目されている。しかし、その根底にあるのは、「ナノ・ユニバース」をはじめとする主力ブランドの改革遅延であり、収益を生む“個性”を再構築できていないという数年来の課題だ。コストカットに軸足を置きすぎた印象が否めないBCGとの関係性も含め、TSIがブランドの強みを最大限に生かせるよう、経営体制を再設計してほしい。

TSIは今後、9月に買収したデイトナ・インターナショナルとのシナジー創出や「アルファ・インダストリーズ(ALPHA INDUSTRIES)」の販売開始など、新たな成長施策も計画している。「下期(9月〜26年2月)はあらゆる施策を打って活性化させる」(下地毅社長)。新事業と並行して既存ブランドを改革し、再び“商店街の個性”を取り戻せるかが問われている。

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NEWS 02

絶好調のロート製薬、今期2度目の上方修正 「オバジ」日本商標を取得し事業拡大へ

ロート製薬は、2026年3月期連結の業績予想を8月に続き再度上方修正した。修正後の予想値は、売上高が3385億円(修正前は3345億円)、営業利益が395億円(同390億円)、経常利益が440億円(同430億円)を見込む。日本、米国、アジアの全地域で想定を上回る推移を見せており、売上高・経常利益・純利益のいずれも過去最高を更新する見通しだ。

4〜9月期は、売上高が前年同期比18.1%増の1642億円、営業利益が同8.6%増の193億円、経常利益が同32.4%増の246億円、純利益が同36.6%の176億円だった。全地域で増収を達成し、とりわけアジアと欧州がけん引した。研究開発費の減少も寄与し、増益となった。

セグメント別では、日本の売上高は同2.6%増の835億円、営業利益(セグメン利益)は12%増の110億円だった。プランパーを採用したリップクリームや「肌ラボ」、サプリメントの「ロートV5」、ヘアマスク「ギュット(GYUTTO)」などの好調が続いた。

アジアは、売上高が同51.3%増の573億円、営業利益が同18.3%増の71億円と大幅増を記録した。ベトナム、インドネシアを中心に東南アジアで販売が拡大。ミャンマーでは輸入ライセンス取得により生産が再開されたほか、ユーヤンサン・インターナショナルの連結効果も加わり、業績に寄与した。製品では「肌ラボ」、「アクネス」、フケ抑制シャンプー「セルサン」目薬などが伸びを支えた。

欧州は、売上高が同43.7%増の115億円、営業利益が同58.2%減の2億円だった。ポーランドのグループ会社ダクス・コスメティクスが展開する「パーフェクタ(PERFECTA)」や「ハダラボ トーキョー(HADALABO TOKYO)」が堅調に推移した。21年から進めている目薬市場の開拓も奏功し、“ロート ドライエイド”が拡販した。しかし英国では、消炎鎮痛剤の容器供給業者の倒産による生産量低下と代替業者のコスト上昇が響き減益となった。

米国は、売上高が同0.6%増の101億円、営業利益が35.1%減の4億円だった。「肌ラボ」がブラジル市場で健闘した一方で販売費・一般管理費の増加が響き、減益となった。

「オバジ」商標を自社保有に
国内全チャネルで展開

ロート製薬は13日付で、ウォールデンキャスト傘下のオバジ コスメシューティカル(以下、オバジ社)から、日本のおける「オバジ(OBAGI)」関連の商標権を取得した。取得金額は約124億円。日本における商標権のほか、全販売チャネルにおける永久的なライセンス権および販売権を取得した。

これまで同社は、オバジ社にロイヤリティを支払いながらコンシューマーチャネル(ドラッグストア・量販店など)で自社開発の「オバジ」製品を販売してきた。今回の商標取得により、新規市場となる美容クリニックやエステサロンといったプロフェッショナルチャネルへの展開が可能となる。今後は国内における「オバジ」ブランドのさらなる強化・拡大を図る方針だ。

「オバジ」は米ロサンゼルスの皮膚科医ゼイン・オバジ氏が提唱した「SHR理論(肌本来の力を生かし健康的な素肌を目指す理論)」をもとに、ロート製薬が日本人の肌に合わせて改良を重ね、2001年から日本で販売している。

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