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ニュース盛りだくさんな9月最終日

まず、おぉ!と思ったのは「ドットエスティ」の改名。せっかく築いた認知度を半分捨てつつ、新しく生まれ変わった感の演出としては、バッチリなのではないでしょうか。4100人のスタッフボードメンバーは間違いなく他ECとの差別化になります。

2本目は、マッシュが輸入販売&ライセンス展開する「バブアー」が好調で、後続ブランド続々の予感。本日公開予定の8月の「メルカリ」の取引上昇率でも「バブアー」が上がってきていました。今回はキッズ&ベビー。日本のママ市場に合わせた展開が期待されます。

3本目のマイケル・コースCEOの発言はなかなか赤裸々で、読んでいて「うわー」と思いました。その他、コレクション評も含めて気になる話題が多々上がっていますので、WWDJAPAN.COMのトップページも随時チェックしてくださいませ!

「WWDJAPAN」副編集長
小田島 千春
NEWS 01

アダストリア、自社ECを「アンドエスティ」に改称 「外部ブランドも使いやすいプラットフォームへ」

アダストリアが、会員数約1860万人(8月末時点)に育った自社ECモールのプラットフォーム化を加速する。10月23日付で、自社ECのサービス名称を「ドットエスティ(.st)」から「アンドエスティ(and ST)」に変更。それに先駆けて9月末から、「ワコール(WACOAL)」「ファンケル(FANCL)」など15ブランドが、順次同ECに乗り入れを開始する。

「アダストリアの『ドットエスティ』としては既に一定の知名度があるが、(自社だけでなく)外部の企業やブランドがもっと使いやすいサービスにしていきたい」と、木村治社長は改称の理由を説明。また、「“ドット”という言葉はデジタルのイメージが強いが、OMOとしてリアル店舗の力もさらに生かした、モノを売る場というだけではないサービスにしていく」と続ける。

「ドットエスティ」は2022年から、他社ブランドの乗り入れ=オープン化を進めてきた。現時点では、ソックスの「靴下屋」、シューズの「オリエンタルトラフィック(ORIENTAL TRAFFIC)」、美容機器の「ヤーマン(YA-MAN)」など、外部8〜9ブランドが参画しているが、ここに24年年末にかけて15ブランドが新たに加わることになる。

「ドットエスティ」の最大の強みは、アダストリアの販売員らが参加するスタイリング投稿コンテンツ“スタッフボード”だ。社内で教育制度を整えるなどし、同コンテンツに参加する販売員は24年2月末時点で約4100人にまで育った。彼らが「ドットエスティ」に乗り入れる外部ブランドの商品についても投稿し、フォロワーを多数抱える人気スタッフは協業で外部ブランドの商品デザインなどにも取り組むことによって、他社にとっても魅力的と感じられるECのあり方を追求している。

「ファウンドグッド」は
「すべてがうまくいっているとは言わない」

アダストリアは9月30日に、3〜8月期業績も発表した。売上高が前年同期比8.5%増の1442億円、営業利益が同3.8%減の99億円、純利益が同2.0%減の69億円だった。減益ながら計画は上回っているとして、通期目標は据え置く。

基幹の「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」「ニコアンド(NIKO AND…)」「ラコレ(LAKOLE)」などがけん引し、アダストリア単体は堅調だったものの、100%子会社の飲食のzetton、EC専業のBUZZWITなどが利益を押し下げた。「シーイン(SHEIN)」が猛威を振るうヤングマーケットで気を吐いてきたBUZZWITについては、「ビジネスモデルの転換が必要。今までは(子会社として)任せてきたが、アダストリアから営業責任者も着任し、てこ入れを進める」。

イトーヨーカドーと取り組む「ファウンドグッド(FOUND GOOD)」など、BtoB事業のシェアが増えていることも粗利を押し下げることになった。2月にスタートした「ファウンドグッド」は「すべてがうまくいっているとは言わない」と木村社長。「展開するイトーヨーカドーの店舗によって求められる価格帯も違い、(もともとは食品フロアの30〜40代客との買い周りを目指していたが)実際の売り場には60〜80代客も多く、そうしたお客さまをどう取り込むかなどが課題になっている」。修正を重ね、25年2月期に掲げている売上高60億円を目指す。

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NEWS 02

マッシュがニュージーランド発のキッズ&ベビー服「ジェイミーケイ」を国内展開  表参道ヒルズに1号店

マッシュスタイルラボは今秋から、ニュージーランド発キッズ&ベビー服ブランド「ジェイミーケイ(JAMIE KAY)」の取り扱いをスタートする。日本における販売とライセンス契約を結び、本国商品の輸入販売とオリジナル商品の企画・販売を行う。10月25日に表参道ヒルズ地下2階にブランドとして世界初の実店舗をオープンし、数年内に8〜10店舗程度のリアル出店を計画する。

「ジェイミーケイ」は2013年、デザイナーのジェイミー・ケイが2人目の息子の誕生を機にスタート。高品質なオーガニックコットンと、シンプルで愛着のわくデザイン、値ごろな価格にこだわる。SNS上でのファンコミュニティーの結び付きが強く、毎月投入する限定アイテムは争奪戦になるほどの人気。現状はECのみの展開に関わらず、年商は50億円以上に達している。

日本企画ならではの細やかな配慮

マッシュスタイルラボの日本企画のライセンス商品は、MD全体の3割程度となる見込みだ。現状、日本の企画チーム全員が子育て経験者の女性。「例えばベビー服では首のすわっていない赤ちゃんのためにボタンが前開きになっていたり、保育園には安全への配慮のためフード付のアイテムを着ていけなかったり。日本企画ならでは細やかな配慮を行き届かせた商品を作っていきたい」(企画担当者)と話す。親子でリンクコーデを楽しめるハンドバッグやポーチなどの雑貨類も展開する。

表参道ヒルズ店は、“おじいちゃんの書斎をこども部屋にリノベーションした”イメージのナチュラルな空間を作る。天井や壁面はブランドのオリジナルプリント柄をあしらう。オープン記念として、1点以上購入で隣接の「ジェラートピケ カフェ」でのミニパフェ無料券、1万1000円以上購入でオリジナルトートバッグをプレゼントする。また、7日間限定でお買い得なコーディネートセットを販売する。

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NEWS 03

マイケル・コースのCEO、親会社の買収に関する裁判で“正直すぎる”発言を連発

現在、「コーチ(COACH)」「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」「スチュアート・ワイツマン(STUART WEITZMAN)」を傘下に持つタペストリー(TAPESTRY)による、「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」の親会社カプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS以下、カプリ)の買収に関する裁判が進行中だ。結論が出るのはまだ先のことと思われるが、裁判の過程で詳らかになったカプリや「マイケル・コース」の実情が、業界関係者の間で話題となっている。

タペストリーは2023年8月、カプリを85億ドル(約1兆2155億円)で買収することに合意。24年末までに取引が完了する予定だったが、両社が保有するブランド間の競争がなくなることで独占状態になるとし、米連邦取引委員会(FTC)は本件を停止する仮処分を求めて4月に提訴した。9月9日に開廷した同裁判では、“アクセシブル ラグジュアリー(Accessible luxury)”市場の独占に関する懸念が大きな争点となっており、これまでにジョン・アイドル(John Idol)=カプリ会長兼最高経営責任者(CEO)や、ジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)=タペストリーCEOらが出廷している。

マイケル・コースのCEOによる赤裸々な証言

しかし、業界や市場関係者の耳目を最も集めたのは、12日に出廷したセドリック・ウィルモット(Cedric Wilmotte)=マイケル・コースCEOの証言だろう。

22年3月に退任したジョシュア・シュルマン(Joshua Schulman)前CEO(現バーバリーCEO)の後任として、23年4月にヴェルサーチェの最高執行責任者から現職に就いたウィルモットCEOは、「『マイケル・コース』は、当時から苦境に陥っていた」とコメント。法廷には、同氏が妻に送付したメールが提出されたが、そこには「(カプリと『マイケル・コース』の)米国市場は悲惨な状態だが、これは全て“JI”が売り上げを伸ばそうとして値引きばかりして、ブランド強化に力を入れないせいだ」と歯に衣を着せぬ文言が並ぶ。この“JI”は、アイドル会長兼CEOを指しているという。

なお、カプリの24年3月期決算は、売上高が前期比8.0%減の51億7000万ドル(約7393億円)、営業損益は前年の6億7900万ドル(約970億円)の黒字から2億4100万ドル(約344億円)の赤字に、純損益も6億1900万ドル(約885億円)の黒字から2億2900万ドル(約327億円)の赤字となっている。ブランド別に見ると、特にアジア太平洋地域や南北アメリカで不調だった「マイケル・コース」の売上高は同9.2%減の35億2200万ドル(約5036億円)だった。

マイケル・コースの業績悪化の要因とは?

法廷には、さまざまな内部資料も提出された。それには、マイケル・コースの業績悪化の要因として、値引きによるブランド毀損、希少性の低さ、類似した価格帯のブランドとの熾烈な競争、二次流通市場の隆盛に加えて、店舗のリニューアルを怠ったことによる“時代遅れ感”、「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」と「マイケル マイケル・コース(MICHAEL MICHAEL KORS)」の差別化不足、社員やスタッフの間に徒労感が蔓延している恐れがあることなど、数多くの問題点が挙げられている。

こうした事態を受け、ウィルモットCEOは、「マイケル・コース」のリブランディング、デザインや商品開発の強化、店舗のリニューアル、“手が届く価格帯”の中での高級化、“どこでも売っている”状況を脱するための販売網の見直しなどの戦略を打ち出したが、「実行できているとは言い難い」と説明。「設備投資やマーケティングの予算が大幅にカットされたこともあり、多くの施策が停滞している。当社の変革は、タペストリーに委ねたほうがいいように思う。消費者のデータ分析など、さまざまな面で彼らは私たちの何光年も先を行っている」と心情を吐露した。

今回の証言が裁判の行方に与える影響は未知数だが、9月30日(現地時間)に本セクションの最終弁論が行われる予定だ。

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最新号の読みどころ

「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。