Fashion. Beauty. Business.
「サロモン」が重視していること
人気スニーカーの顔ぶれがすっかり変わりました。数年前は「オフホワイト」コラボのナイキ、カニエ(改めイェ)コラボのアディダス「イージー」を、街でも編集部内でも本当によく見ましたが、今は「サロモン」「アシックス」「オン」「ホカ」などが席巻。昨日、経済メディアのニューズピックスに、山でここ数年本当によく見かけるトレランシューズの「アルトラ」創業者の記事が出ていましたが、「アルトラ」もここから街にも広がるのかもしれませんね。
でも、老婆心ながら心配もしちゃいます。今名前をあげたようなブランドって、どれもガチのパフォーマンス性が支持されて成長してきました。ファッションとして広がり過ぎると、ブランドとして飽きられてしまうのではないか。そんな記者の指摘に、「その点は心配ない」と、「サロモン」を日本で展開するアメアスポーツジャパンのヒリアー社長は力強く語ってくれました。ファッションとして消費されないために「サロモン」が重視していることは何なのか。是非1本目の記事をお読みください。
「アークテリクス」「サロモン」のアメアスポーツ パフォーマンス製品がファッションとしても売れる理由
PROFILE: ショーン・ヒリアー/アメアスポーツジャパン社長

「アークテリクス(ARC’TERYX)」「サロモン(SALOMON)」などを擁するアメアスポーツの動きが活発だ。2018年に中国のスポーツメーカー大手、アンタの傘下となり、24年2月にはニューヨーク証券取引所に上場。グローバルで出店を強化しており、日本法人も「アークテリクス」で都心に大型店を続々出店。「サロモン」で新宿ルミネ2に長期ポップアップ出店し、デベロッパーから出店ラブコールが絶えない存在になった。21年から日本法人を率いるショーン・ヒリアー(Sean Hillier)社長に、ビジネスの手応えや戦略を聞いた。
WWD:ここ数年、出店のニュースが絶えない。本国が上場したこともあって、企業として大きな変化の中にある。
ショーン・ヒリアー アメアスポーツジャパン社長(以下、ヒリアー):確かに変化は多く、毎朝「今日は何が起こるだろう」と楽しみだ(笑)。変化の背景にあるものは2つ。1つ目はコロナによって、アウトドアや登山といった、ヘルシーさを求めるトレンドが強まったこと。われわれにとっては追い風だ。2つ目は、企業として卸売り中心から直営ビジネスも強化するように舵を切ったこと。日本では上場前も直営店出店を進めていたが、グローバルで出店が加速している。ただ、出店による規模拡大などのビジネスの話はもちろん重要だが、われわれがビジネスの上に掲げているパーパスは「スポーツを通して世の中をよりよくする」こと。当社の製品を使うとスポーツがもっと楽しくなり、スポーツをするとコミュニティーができて体も心も健康になる。スポーツは本当にいいものだから、是非やってみてほしい。日本の皆さんの人生をより楽しくするのがアメアスポーツジャパンの使命だ。
軸はあくまでもパフォーマンス
WWD:積極出店中の「アークテリクス」と「サロモン」の、日本で目標としている直営店舗数は。
ヒリアー:「アークテリクス」は今秋新宿に出店する路面店で16店(アウトレット除く)となるが、ここからさらに大量に出店するというより、面積の大きな店舗を持ちたい。「サロモン」は(祖業のウィンタースポーツやトレイルラン、ハイキング、ファッション性の高いスポーツスタイルなど)カテゴリーが多く、カテゴリーの切り分けによって少なくない数の店舗を出店していく考えだ。新宿ルミネ2の2階に3月からオープンしている、「サロモン」の10カ月ポップアップは非常に順調。元々男性客が中心のブランドだが、ルミネでは女性客が50%を超え、新規客が取れている。若い世代は「サロモン」の祖業がウィンタースポーツだと知らないかもしれないが、5月にオープンした大阪・心斎橋の路面店では、試着用ベンチなどにスノーボードを生かしている。スニーカーなどストリートカルチャー好きのお客さまとスノーボードのブランドイメージがつながれば、シナジーが生まれ、面白いことが起きると期待している。
WWD:「サロモン」は「MM6 メゾン マルジェラ(MM6 MAISON MARGIELA)」とのコラボなども話題だが、ファッションに寄りすぎるとブランドがトレンドとして消費され、飽きられてしまう恐れはないか。
ヒリアー:その点は心配ない。「サロモン」は多様なコラボレーションが今後も続くが、売れているのはパフォーマンス製品であり、ファッション向けに作っている製品ではない(編集部注:ファッション向けのスポーツスタイルカテゴリーでは、パフォーマンス製品のアーカイブを色を替えるなどして販売している)。パフォーマンス機能そのままの製品がファッションとしても売れている。今までスポーツをしてこなかった若いお客さまが、コラボモデルをきっかけにスポーツをするようにもなるかもしれない。ファッション分野でも存在感が強まることで、パフォーマンス製品やウィンターカテゴリーにもいい影響をもたらすと思っている。
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アンティローザの「アイバー」 ファッションコンシャスなZ世代を惹きつける魅力
コロナ禍でEC売り上げを伸長したブランドにとって、人々が対面でのコミュニケーションを求めて外出するようになった現在が、存続をかけた運命の分かれ目だろう。そんな中、アンティローザ(AUNTIE ROSA)のEC専業ブランド「アイバー(AIVER)」は、10代〜20代の若者の支持を集め、勢いを加速しているという。顧客のジェンダーを固定化しないムード、凝ったデザインにもかかわらず手ごろな価格設定、顧客との積極的なコミュニケーションが大きな要因だ。
メンズブランド「キャスパージョン」から独立
自社ECとゾゾで売り上げ伸ばす
「アイバー」は、アンティローザの河嶋翔ディレクターが2014-15年秋冬シーズンに、セレクトショップ業態のブランドとしてスタート。当初は、同社によるメンズブランド「キャスパージョン(CASPER JOHN)」で、店舗の一角に並ぶ小さなブランドだったが、徐々に人気を高め、1年後にはブランド名を「キャスパージョン アイバー」と連名にするまでになった。19年春夏シーズンから、オリジナルアイテムのみを扱う「アイバー」として独立。現在は実店舗を持たずに、自社ECサイトと「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」で販売を行い、順調に売り上げを伸ばしているという。
人気の秘密は、着こなしによってはストリート、モード、メンズ、ウィメンズのいずれとしても捉えられるようなバランスの取れたデザインと、5000〜3万円という手ごろな価格設定だ。全50型ある最新コレクションには、ダークトーンの生地で全面をパッチワークした「アウトドアプロダクツ(OUTDOOR PRODUCTS)」コラボのリュックサックや、極太のバギーデニム、ビッグシルエットのサッカーシャツなど、カジュアルさと無骨さを併せ持つアイテムが並ぶ。かと思えば、パンキッシュな“尻当て”とセットで着用するラッププリーツスカートや、マイクロショート丈のトップスといった、フェミニンでありながらストリートなムードをはらむアイテムも。前シーズンに登場して大きな反響を得たというプラットフォームのスニーカーは、いわゆる韓国系ファッションや“地雷系”ファッションを好む若者とも親和性が高そうに見える。
難易度高めなアイテムに触手を伸ばす若者
メンズだってヘソ出し&スカート
広報担当者によれば、「ひと癖あるアイテムでも、躊躇なく手に取ってくれるお客さまがとても多い」という。実際、一般向けに開催した展示会では、ファッションコンシャスな若者がひっきりなしに姿を現した。例えば、ベースボールキャップではなく、フライトキャップを真っ先に選ぶ女性や、上述のヘソが見えるほどのショート丈トップスやスカートを試着し合う男性客も。高校生の頃からブランドのファンだというダンサーの男性(27)は、「『アイバー』はストリートすぎず、モードすぎない。そのバランス感覚がちょうどいい」と話す。
コロナ禍が明けてから、「アイバー」はこれまで以上に顧客とコミュニケーションを図る。外出がはばかられていた時期から、その重要さに気づき、いち早く動き出せたかどうかが、EC専業ブランドにとっては大きかったに違いない。今年4月には初のポップアップショップも実施したほか、21年以降の展示会は、業界関係者だけでなく一般客にも開放している。また、「販売員出身だからこそ接客を大事にしたい」と考える河嶋ディレクターは、展示会期間中も常に店頭に立ち、来場者のスタイリングのアドバイスも行う。「次の目標は実店舗をオープンすること」と、次なるステップも見据えている。
アンティローザは、1998年創業のアパレル企業。EC領域を主販路とする「キャスパージョン」「メルロー(MERLOT)」「ヴァカンシー(VACANCY)」など70以上の自社ブランドを保有する。14年にはRIZAPグループに買収された。現在は事業を拡大し、アパレル事業のほかに撮影スタジオやイベントスペース運営、カフェ経営にも取り組んでいる。
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「クワイエット・ラグジュアリー」の静寂を破り、2026年春夏のウィメンズ市場に“カワイイ”が帰ってきました。しかし、大人がいま手に取るべきは、かつての「甘さ」をそのまま繰り返すことではありません。求めているのは、甘さに知性と物語を宿した、進化した“カワイイ”です。「WWDJAPAN」12月15日号は、「“カワイイ”エボリューション!」と題し、来る2026年春夏シーズンのウィメンズリアルトレンドを徹底特集します。
